さてと、猛攻が始まりました。
(やっべぇ、スイッチャ―決まってるけどゾディアーツ決めてねぇなんて言えねぇ・・・
日菜を背負ったままの弦太朗は彼女の指示に従って事務所内を歩き回っていた。
「日菜達ってやっぱアイドルなんだな・・・。そんな風に見えねぇけど」
「ちょっとゲンちゃん?それってどういうこと?」
「いや、事務所の中にお前たちのポスターとかいっぱい貼ってあるし・・・」
「あ~あれね~。ちょっと前は全部私達のポスターだったよ?」
「軽くホラーじゃねぇか・・・ん?」
「どうかしたの?」
他愛ない会話の中、ここで弦太朗はふとした疑問が浮かび上がる。
その事に気が付いたのか日菜が弦太朗へと視線を向け、それに答えるように弦太朗は疑問を口にした。
「そういえばよ、なんでみんなアイドルやってるんだろうなって思ってよ」
「面白いから・・・?」
「いや、そうじゃなくてアイドルを始めたんだって思ってな」
彼女達がバンド―――アイドルを始める切っ掛けが気になった弦太朗は素直に聞くと日菜は笑いながらそれに答えた。
「――――――それで麻弥ちゃんは千聖ちゃんがパスパレに入れたんだよ」
「でも、日菜は何で入ったんだ?アイドルとか興味なかったんだろ?」
「う~んとね。私はオーディションがあって面白そうって思って受けたら受かっちゃったんだよね~」
「すっげー日菜らしいな」
「でも、一番すごいのは彩ちゃんだよ?アイドルに憧れてアイドルになっちゃうんだもん!!」
「へぇ~なんか彩らしいな」
「だよね~。ゲンちゃんそろそろ練習も休憩だと思うから戻ろ?」
「あいよ」
「それとちょっと演奏したいな~」
「無理すんなよ?」
そんな他愛ない話をした彼らは再びスタジオに戻っていくと日菜の予想通り彼女たちはちょうど休憩中であり、彼女達もまた弦太朗達に気が付いた。
「ただいま~!!」
「ホントに休憩中だったな・・・」
「ヒナさん!!キサラギさん!!おかえりなさい!!」
「弦太朗、事務所はどうだったかしら?」
「お前らのポスターばっかで軽くホラーだったな」
「ですよね・・・ジブンも慣れるまでは怖かったです・・・」
そんな話の中で彩だけは静かに弦太朗から距離を取っていたが日菜はそれを見逃さなかった。
「彩ちゃん?なにしてるの?」
「うぇ!?にゃんでもないよ!!」
「噛んだな」
「噛んだね~」
「彩ちゃん・・・」
「噛みましたね」
「流石彩さん!!ブシドーです!!」
若干一名を除いて彩が噛んだことに呆れた様子を見せていたが、それでも構わずに彩は弦太朗から距離を取るその姿に弦太朗は首を傾げていると日菜は弦太朗から降りるとそのまま彩へとにじり寄っていく。
「でも、彩ちゃんなんでゲンちゃんから逃げるの?」
「逃げてるわけじゃないよ~!!」
「アヤさん、逃げてますよ?」
「何かあったんですか?」
「ふふっ・・・。彩ちゃんったら・・・」
彩の行動の意味が理解できた千聖のみで他の全員は未だにその意味が分かっていなかった。
そんな光景に彩が観念したのか顔を赤くしながら理由を語った。
「うぅ~!!だって!!練習で汗かいてるし!!」
「でも、彩ちゃん汗臭くないよ?」
「そうだとしても、恥ずかしいんだよ~!!」
「そんなことないよね?ゲンちゃんちょっと来て?」
「うぇ!?」
「おう・・・」
「えいっ!!」
「痛てぇ!?何すんだよ!?」
「弦太朗?流石に汗かいた女の子の匂いを嗅ぐのは犯罪よ?」
「しねぇよ!!てか、なんだよそのスリッパ!!」
「”ドすけべ”・・・さっきのとは違いますね・・・」
「チサトさんはどこから出したんでしょうか・・・?」
「2人とも?気にしちゃだめよ?ほらそろそろ練習に戻るわよ?」
「じゃあ、千聖ちゃん。私もやる~!!」
「そうね・・・。あんまり激しく動いたらダメよ?」
「はーい!!」
「さっき如月くんに飛び乗ったりしたのはいいの・・・?
日菜に呼ばれた弦太朗はそのまま日菜の元へと行こうとするが、それを見かねた千聖は弦太朗の頭にスリッパを叩きこむ。
いきなり叩かれたことを怒る弦太朗を無視して千聖はイヴと麻弥に笑っていない笑顔を向けると2人はこれ以上の追及を辞める。
そして、日菜も条件付きで練習に加わり、弦太朗もその場に残って5人の練習が終わるまで邪魔にならない隅でそれを眺め続けていた。
「あら、もうこんな時間なのね?」
「そうですね。もう結構やってましたから今日は上がりましょうか」
不意に時計を見上げた千聖が呟くと、麻弥も時間を確認してそれに同意する流れで練習の終了を提案すると全員が賛同して片づけを始めていく。
そんな中で日菜は弦太朗へと向かっていった。
「ねぇねぇ!!ゲンちゃんどうだった!?」
「ん?・・・良かったんじゃねぇか?」
「お姉ちゃんたちよりも?」
「如月くん、そういえばRoseliaの練習にも出てるからちょっと気になるかも・・・」
日菜の言葉に彩も気になったのか弦太朗へと視線を向けて彼の言葉を待つが、弦太朗は思ったことをそのまま答えた。
「友希那達とは違うけど、日菜達もスゲーと思うけど?」
「う~ん。よく分かんないな~」
「そっか!!」
日菜は弦太朗の言葉に不満そうな顔を浮かべる一方で彩は満足そうな表情を浮かべながら胸を張る。
その光景に千聖は呆れながらも2人へ声をかける。
「はいはい。とりあえず2人とも片付けたら着替えにいくわよ」
「はーい」
「ゲンちゃん。更衣室まで連れてって~」
「「なぁ!?」」
「・・・」
日菜の爆弾発言に弦太朗と彩は声を挙げて狼狽える。
それを見た千聖は先ほどの"ドスケベ"スリッパを取り出してゆっくりと構えて勢いよく3人へ向けて振り下ろした。
「ぐえっ」
「あうぅ・・・」
「もーあぶないなー」
「日菜ちゃん・・・?」
「・・・はーい」
弦太朗と彩が直撃する横で、その攻撃を日菜だけは身体を逸らして躱して千聖へ文句を言うが彼女の笑顔を見てそそくさと片づけを始め、弦太朗は着替えを終えた彼女達と事務所の入り口で合流することとなった。
「如月くん!!お待たせ!!」
「いや、そこまで待ってねぇよ?」
「じゃあ、帰りましょうか?」
「帰りにどっか寄ってかない?」
「そうね・・・。じゃあ、日菜ちゃんが抜けてきた病院に行きましょうか?」
「そう言えばそうでした!!ヒナさん!!病院に戻りましょう!!」
「えぇ~千聖ちゃん。今それ言うの~?」
「さっきジブンが病院に連絡を入れておきました。病院の方も心配してましたから・・・」
「・・・はーい」
「こころちゃんの家関係の病院だから良かったわね?それじゃイブちゃん、取り押さえて?」
「はい!!」
突然の千聖の言葉に日菜から不満の声が挙がるがそんな声を千聖は聞き流し、麻弥の追い打ちによって日菜は観念したようで大人しくイヴに腕を掴まれた。
それを見て彼女達は移動しようとするが―――
「それじゃあタクシーで・・・」
「千聖ちゃん、ちょっと待って?タクシーって4人までしか乗れないよね?どうするの?」
「俺のバイクは、多分駐輪場に止まってるから取ってくるわ・・・」
「えぇ。行ってらっしゃい」
「それに日菜さんは一応怪我人ですからタクシーで決定として・・・」
ここで日菜を除いたパスパレの全員が顔を見合わせると何を思ったのか拳を前に突き出した。
「「「「最初はグー!!じゃんけん!!ぽん!!」」」」
彼女達はいきなりじゃんけんを始めると、3人が同じ手を出す中で1人だけみんなと手が違っていた。
「あはは!!千聖ちゃんだけ負けてる~!!」
「そんな・・・私が負けるなんて・・・」
「それじゃ、負けた千聖ちゃんは・・・」
「勝ったみんなは快適なタクシーで行って頂戴。定員オーバーだから私は弦太朗のバイクの後ろに乗っていくわ」
「うぇ!?」
「そうですね。ちょっとこの時期にバイクの風は辛いですからね!!それじゃあ彩さん。行きましょうか」
「ブシドー!!」
「ちょっと待って~!!」
弦太朗の後ろを狙っていた彩と千聖だったが、1人だけ負けた千聖はここぞとばかりにそれっぽい言葉を並べて麻弥とイヴを納得させて彩をそのままタクシーの中へと押し込んで走っていく姿を見送ると弦太朗がバイクで千聖の前に現われる。
「なんだ。千聖が残ったのか」
「そうなってしまったわね。それじゃ弦太朗、私達も行きましょうか・・・?」
「おう。ヘルメットの被り方は・・・」
「バラエティ番組にも出たことがあるから知ってるわよ。それにバイクもドラマで後ろの乗るシーンもあったから分かるから大丈夫よ」
その言葉通りに千聖は弦太朗からヘルメットを慣れた手つきで被ってからその後ろに跨ると弦太朗の背中に身体を押し付ける。
その行動に驚く弦太朗だったがなるべく表情に出さないように必死になっていた。
「千聖、それじゃあ行くぞ?」
「安全運転で頼むわね?」
「あぁ・・・」
千聖の言葉を受けて弦太朗はバイクを病院へ向けて走らせるが、その間に千聖は走り出す時よりも強めに身体を押し付けだす。
弦太朗は顔を赤くするが押し付けている側はそれ以上に顔を赤くしていた。
しかし、その2人の顔はヘルメットに隠れて誰からも見られることはなく、バイクは病院の近くに差し掛かったその時に事件が起きる。
「今、スゲェ音しなかったか?」
「病院の方よ!!」
千聖の言葉で弦太朗は車の脇を縫って病院へとバイクを走らせる。
病院の入り口に着いた2人の視線の先には彩たちと、乗っていたであろうタクシーが炎を上げて燃え上っていた。
それを見た千聖と弦太朗はバイクから降りる声を挙げる。
「みんな!!」
「無事か!?」
「千聖さん!!如月さん!!はい!!大丈夫です!!」
「タクシーの運転手さんは先に逃げちゃったけどね~」
「・・・っ!?皆さん下がってください!!」
軽口を叩いていた日菜を他所にイヴが炎を向こう側に何かがいるの感じ取って声を挙げる。
日菜は彩と麻弥の手を引いて千聖の所まで下がり始め、イヴも炎の向こう側を警戒しながら弦太朗と場所を入れ替わるように下がっていく。
「・・・誰だ?」
「・・・・・・」
声をかけるも言葉が返ってくることはなく、炎の向こうの人影が動き出し―――
「っ!?マジかよ!!」
「嘘!?」
「あなたが今回の犯人ね・・・?」
弦太朗達の目に飛び込んできたのは人の影は突如として人外の物へと変わる光景だった。
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