投稿です。
あの・・・この彩ちゃん・・・
ましろちゃんクラスの感受性になってません・・・?
「今日がライブ当日か・・・。まぁ、バガミール達を渡してあるから大丈夫か・・・」
フードロイドを全て千聖達に渡した事を思い出しながら、何気なく呟いて弦太朗は通学路を歩いていた。
何かがあれば連絡が入るし、逃げるだけならなんとかなると楽観していた弦太朗。
しかし、そんな彼の背後からは黒いオーラを纏った少女が1人迫って来ていた。
「如月さん・・・」
「よぉ!!紗夜・・・?どうしたんだ・・・?」
彼の後ろに迫っていたのは笑みを浮かべた紗夜だったが、その笑みにはハッキリとどす黒い怒りが浮かんでいたのを感じ取った弦太朗は身構えてしまう。
そんな彼や周囲にいる生徒達のことを気にすることなく紗夜は弦太朗に歩み寄っていくと声を荒げる。
「どうして昨晩!!日菜がポテトのあれと一緒にいたんですか!?」
「は・・・?」
紗夜の言葉は周囲にいた生徒達の視線を一瞬だけ集めるが、いつもの事と理解して何事もなかったかのように生徒達は学校へと向かいだす。
一方で弦太朗は何かしてしまったのかと思っていたが、紗夜の口から出てきた言葉に彼の口からは思わず声が漏れてしまう。
しかし、紗夜は止まらない。
「何でですか・・・!!」
「いや、狙われてるから渡したんだけど・・・」
「なんて羨ま・・・いえ、どうして日菜と楽しそうにしているんですか・・・!!それに私には全く近づいてきませんし・・・」
「紗夜・・・?」
「いえ・・・なんでもありません・・・」
「いや、なんでもない訳ねぇだろ・・・」
思わず弦太朗は紗夜へと声をかけるが、ふと我に返って紗夜は必死に取り繕って勢いで誤魔化そうとする。
「なんでもありません!!そういえば、なんであなたはここにいるんですか?」
「なんでって・・・学校だろ?」
弦太朗の追及を先ほどまでの勢いのままに誤魔化した紗夜は話題を切り替える。
余りにも強引な話題の切り替えだったが弦太朗はそれを気にしていない―――いや、全く気が付いていなかった。
「日菜達はライブの準備で学校を休んでるはずですが・・・?」
「朝からリハーサルとかあるらしいな。俺は放課後に行くんだよ」
「学校はいいから、日菜達のところに早く行ってきなさい!!」
「はぁ!?」
「私のポテトのあれを・・・ではなく、日菜達が襲われる可能性があるんですよ?だったら一緒にいるべきではないんですか?・・・決してポテトのあれを貸してくれない事に対して怒っているわけではないんですよ?・・・えぇ!!」
あの紗夜から学校をサボって日菜の元に行けと言われ、目を丸くして驚く弦太朗。
紗夜は日菜を心配しているのもあるが、それ以上に彼女は昨日の晩から日菜がポテチョッキンと一緒にいたことに妬いていたのだ。
「ほら!!早くいってきなさい!!」
「止めろ!!ぺちぺちすんな!!」
妬いているのを隠すためか弦太朗の身体をぺちぺち叩く紗夜。
全く痛みなど感じないが弦太朗は止めるようにいっても彼女はぺちぺちと叩き続けるとその光景はとある人物に目撃される。
「紗夜先輩が弦太朗くんを叩いてる・・・?」
「弦太朗が紗夜先輩といちゃいちゃしてる・・・!!そういえばこの前の件について聞かないと!!」
「沙綾ちゃん!!待って~!!」
この光景を目撃したのはりみと沙綾。
しかし、何を思ったのか沙綾は今の状況を弦太朗と紗夜がいちゃついていると勘違いをしてそのまま邪魔をするために2人の間に突っ込んでいき、りみもその後を追いかける。
「弦太朗!!こんなとこで何してるの?」
「おっ?沙綾にりみか。おはよう」
「弦太朗くん、おはよう・・・。それでどうしてそんなことになってるの・・・?」
「なんか紗夜が学校よりも日菜のところに行けって・・・」
「えぇ・・・?弦太朗くん・・・流石にそれは・・・」
「紗夜先輩?本当なんですか?」
「勿論です!!今この瞬間にも日菜達が襲われる可能性がありますから・・・決してポテトが私に懐かないことは全く関係ありませんから!!」
「「・・・・・・」」
欲望が駄々洩れの紗夜に残念なものを見るような視線が刺さる。
しかし、本人がそれに気が付いていないがとりあえず学校へ向かって歩き出すと、4人はそこで本来ここにいないはずの人間を視界にとらえていた。
「あれ・・・?彩だよな?」
「おかしいですね・・・。今日は学校を休んで朝からリハーサルをすると日菜から聞いてましたが・・・」
「でも、なんか様子が・・・?」
「お~い!!彩先輩!!」
「・・・あっ・・・」
本来なら学校ではなくライブの会場にいるはずの、彩が制服を着て虚ろな目をして学校へと歩いてた。
流石におかしいと思った沙綾が思い切って彼女の名前を呼ぶと小さく声を漏らして沙綾達の方を向く。
それを見て弦太朗は彼女へと駆け寄って肩を掴んで話しかける。
「彩!?お前、ライブじゃねぇのか!?」
「ライブ・・・あっ・・・」
「・・・如月さん。とりあえず丸山さんを頼みます」
「流石にこのままライブ会場まではな・・・」
「仕方ないか・・・。弦太朗、ちゃんと彩先輩送るんだよ?」
「わぁってるよ・・・」
「本当は私達も手伝ったりしたいけど、私達も紗夜先輩達も今日はライブがあるから・・・」
彩の事を弦太朗に押し付ける形になってしまったことに3人は申し訳なさそうにするものの、弦太朗は事情を知ってるからかそんな3人に笑顔で答える。
「任せろって!!彩!!行くぞ!!」
「ちょっと・・・」
彩は逃げるような素振りを見せるが弦太朗は有無を言わさずに彼女の手を掴んで学校から離れていくのだった。
――――――
昨日までの出来事が辛くて逃げ出そうとしてた。
そんな私は通学中の如月くん達に見つかってしまい、そのまま如月くんに腕を掴まれてからどれだけ歩いたんだろう・・・
正直、今のままじゃライブで歌う事なんて出来そうにない。
そんな気持ちで一杯だった私に如月くんから当然の疑問が飛んでくる。
「今日、朝から仕事だったのにどうして・・・」
「憧れてた人があんなことしてたのがショックで・・・こんな気持ちじゃ歌えないよ・・・」
私は素直に自分の気持ちを言葉に出すと、それを聞いて如月くんは考え込むような表情をしていた。
この間も友希那ちゃんも今の私みたいな事があったのは聞いたけど、友希那ちゃんは自分でそれを乗り越えて克服したらしいけど、今の私にはそれは出来そうにない。
辛さを乗り越えるための1歩を踏み出す勇気がでない。
前にも辛いことはあったけど、それを分かってくれて支えてくれた千聖ちゃん達はこの場所にはいない。
―――いや、正しく言うなら私が千聖ちゃん達から逃げてるのかな・・・?
そんなことを考えても如月くんはそんな私には気が付いておらず、今も必死に考えこんでいた。
そんな中で不意に私達の耳には聞き覚えのあるフレーズが飛び込んできた。
「この曲・・・」
「確か、彩たちの曲だったか・・・?とりあえず行ってみっか・・・?」
如月くんはそう言うと私の返事も聞かずに腕を引いてその音がする方へと歩いていくと―――
「ここって・・・昨日のとこだよな・・・?」
「・・・っ!!」
「あれって彩の真似か・・・?」
私達が辿り着いたのは昨日、こころちゃん達によって連れてこられた幼稚園。
そこで、昨日私に話しかけてきた女の子が私の真似をしているのかパスパレの歌を歌っていた。
私が聞いてもとても拙い印象を受ける歌。
しかし、その顔はとても楽しそうな笑みが浮かんでいた。
私も昔はあんな風にアイドルに憧れて真似してたな・・・
昔の事を思い出してしまった私は過去の自分と目の前の女の子、そして今の自分を比べてしまい余りの辛さに表情が歪む。
きっとアイドルに憧れてた昔の私がアイドルになった今の私を見たらきっと後悔するだろうな・・・
そんな考えが頭を過った途端に私に耳に入ってくる音が消え、表情だけではなく私の視界も歪んで行き一瞬だけ視界が暗転する。
「あれ・・・?如月くん・・・?」
そして視界が戻ると如月くんが・・・いや、如月くんだけじゃなくて、さっきの目の前にいた女の子も含めて周囲から人が完全に消えていた。
周りを見渡しても周囲からは人の気配すら感じられず、不安を感じた私は泣きそうになっていた。
「なにしてるの・・・?」
全く気配を感じなかったのにも拘らず、突然私の後ろから幼い女の子の声が聞こえた。
そして私は声が聞こえた後ろを向くと信じられないものが視界に飛び込んでくる。
「小さい時の私・・・?」
そこにいたのは小さい時の私・・・
流石に自分の目が信じられず、目を擦るが紛れも無く小さい私がいた。
「なんで・・・」
訳が分からなくなっていた私。
あぁ・・・きっと夢の中なんだろう・・・。
そんな事を考えている私にはお構いなしに目の前の小さい私の目はしっかりと私を捉えていた。
「わたし!!おおきくなったらアイドルになりたい!!アイドルになってみんなでたのしくおどったりおうたうたいたいの!!」
「っ・・・!!」
小さい私は私にハッキリとそういったのだ。
アイドルにはなれたけど、楽しく踊ったり歌ったりなんて今の私には出来ない。
夢の中のはずなのに私自身の言葉が自分の心を曇らせていく。
アイドルになっても・・・ううん。アイドルにならなくても周りには辛いことや悲しいことが沢山ある―――
私はそう声を張り上げたくなったが、声が出ない。
そして、また視界が暗転すると場所はさっきの場所から変わっていた。
「・・・私の部屋・・・?でも・・・」
視界に飛び込んできたのは私の部屋。
でも、その部屋は今の部屋じゃなくて小学生くらいの頃のものだった。
「私は・・・アイドルになって夢を与えられるアイドルになりたい・・・」
戸惑う私の背後でまた私の声がする。
振り返るとそこには小学生くらいの私が私を真っすぐ見詰めていた。
―――夢は与えるのはいい事ばかりじゃない。
でも、私は声が出せなかった。
そして私は目の前の光景から逃げるために目を閉じた。
視界は塞がったが、私の真正面から、あの言葉が入ってきた。
「どんな人でも、努力すれば夢は叶う。だからみんな、『自分なんか』なんて思わないで、夢をみてほしい」
それは私が勇気をもらって、本当にアイドルを目指す切っ掛けになったあゆみさんの言葉。
でも、その声はあゆみさんの物ではない。
その声の主が気になった私はまた目を空けると、場所がライブのステージの上に変わっていて、声の主は目の前にいた。
「わた・・・し・・・?」
声の正体は先日鏡で見た自分自身がそこにいて、私は声を絞り出し、それを聞いた私自身は小さく笑みを浮かべると私に手を差し伸べながら語りかけてきた。
「パスパレが大好き。大切。みんなのことが大好き。この気持ちがあれば、きっと何度だって立ち上がれる」
その言葉は以前バラバラになりそうだった私達がまた同じ道をあゆみ始めた時に感じた気持ちそのものだった。
「私はあゆみさんみたいなアイドルになるのを夢だった・・・」
「それで私はアイドルになった・・・」
「そんな私に憧れてアイドルを夢見てくれる人たちがいる・・・」
「そうやって夢は繋がっていく・・・」
「・・・先が見えなくたって、しっかりと前に進んでいける・・・・・・私の背中をみんなが押してくれるから・・・」
夢の中で私同士の会話と共に私自身の手を取ると胸の中が熱くなり、再び視界が暗転していった。
「―――あや!!―――おい!!彩!!」
目を閉じて真っ暗な視界。
そんな状態の私を呼ぶ声が聞こえて目を開けると目の前には如月くんの顔が至近距離で写っていた。
「・・・あれ?如月くん・・・?」
「彩!!お前急にボーっとし始めたと思ったら急に目を閉じて泣き出すしどうしたんだよ!?」
「えっ?」
如月くんの言っている意味が分からず、ふと目に手を当てると確かに涙の跡が残っていた。
「ねぇ・・・如月くん?私がこうなってからどのくらいたったの?」
「はぁ?1分も経ってねぇぞ・・・?」
「・・・そっか!!」
やっぱり夢だったんだろうけど、ハッキリとその夢の内容は思い出せる。
それにさっきまでの暗い気持ちは全く無く、それどころか胸に火が点いたみたいに熱く、気持ちも高鳴っていた。
「如月くんライブに行こ!!」
「どうしたんだよ!?」
急に変わった私の様子に戸惑っている如月くんを他所に、今度は私がその腕を掴んで千聖ちゃん達が待っているライブの会場へ向かって走り出していた。
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