この話の裏ではますきと弦太朗はそれぞれ鴨川向かってるんやろなぁ・・・
マスキングの言葉から逃げるようにdubを飛び出して自宅へと戻ってきた。
誰もいない室内で私はソファに顔を埋めていたが、そんな中でスマホからはMomからのビデオレターが届いた通知が響く。
その通知を聞いた私は顔を伏せたままMomからのビデオを聞いていた。
『Hey!ちゆ。日本はもう雪降ってる?ママはこの間のコンサートも大成功!!最後はまたスタンディングオベーションで何度もカーテンコールを受けたわ!!誕生日はどこで過ごすの?プレゼントを送ったわ!!他に欲しい物があったらリクエストして!!じゃあね!!』
「何も分かってない・・・」
それでビデオが終わると私はスマホを掴んでそのままスタジオのあるフロアに繋がる階段を下りるとそこに置いてある楽器を見つめていた。
「MomのDadも・・・・どんな楽器でもくれるし、どんな演奏だって褒めるけど・・・」
過去に演奏をしていた時、コンクールでの私の演奏に審査員が苦い表情を浮かべているその後ろではMomだけが褒めてくれていた。
でもそれは幼かった自分でもハッキリと理解できるほどに惨めな思いを味わったのとは対照的にMomのコンサートはいつも満員で、観客も最後はスタンディングオベーションで賞賛されていた。
どんなコンテストでも皆が私を私としてではなくMomの子供としてしか見ていない。
そしていつも私の演奏を聞くと皆が期待外れとでもいいたそうな視線を向けてくる。
―――だから私は心に決めたはずだった。
「可愛がるだけの誉め言葉なんていらない・・・。自分で奏でることが出来ないなら最強のメンバーを集めようって・・・。演奏以外の全てで認めさせてやるんだ!!って・・・なのにどうして・・・!!」
だから私は自身が思う最強のメンバーを集めてRASを作った。
最初は間違いなく順調だった。
周囲からも認められ、バンドリでも最近まではライバルと思っていたRoseliaすら圧倒してランキングもTOPを独走していたのに、それが今はどうだ?
1週間前には10位程度だったRoseliaが今ではRASを追い越しただけではなく票数もドンドン離され、ポピパも今のペースで票数が増えれば私達を追い越しかねない。
そんな中で私はTOPを取り戻すために必死に考えた。
メンバーのスケジュールを管理して他のライブハウスに殴り込み他のバンドを辞退させてでもRoseliaに勝とうと思った。
でも、それを伝えた大半のメンバーは私に否定的で、マスキングは怒って帰ってしまい、レイヤもロックも否定的な表情を浮かべて、ただ1人だけ私を肯定してくれたパレオには酷いことを言ってしまった。
どうしていいか分からない私は階段を戻って力なくソファに座り込むと呆然とバンドの事を考えていた。
RAISE A SUILEN―――
タエ・ハナゾノがいた頃に”表舞台に立ち続ける”という意思を現したはずなのに、その私がアンコールを無視して真っ先に舞台から降りた。
「あっ・・・」
そこで私は気づいてしまった。
他の誰でもなく、私自身がバンドを・・・RASをぶっ壊したと言う事実を・・・
今までで感じたことがない惨めさに私は唇を震わせて無意識にスマホを握りしめてしまうと、そこからは先ほどのMomからのビデオレターが再生されてしまった。
『――――他に欲しい物があったらリクエストして!!じゃあね!!』
「リクエストしても・・・・・・私の欲しいものはもうどこにもない!!」
その言葉に私は握っていたスマホを怒りを込めて投げた。
スマホは窓ガラスを突き破って外に投げ出され、スマホからは割れる音が響く。
その割れた音と一緒に私の全てが壊れてしまったような錯覚を覚えた私はクローゼットの中にあるベッドスペースに閉じこもり―――
無意識にポケットに入れていたスイッチの様なものを取り出して握りしめていた。
――――――――――――
「・・・」
チュチュのマンションを前にレイヤがただ一人で屋上を見上げてこの後そうするか考えていた。
「よし・・・」
しばらく考えて考えを纏めた彼女はそのまま中へと入って最上階の部屋に向かうためにエレベーターへと乗り込んでそのまま部屋へと入ってチュチュを探す。
「チュチュ。いるんでしょ・・・」
内側から割られたガラスが目を引く室内にはチュチュの姿は見当たらないが、レイヤは真っすぐにベットスペースになっているクローゼットへと歩み寄ると、中にいるであろうチュチュへと話しかける。
「ますき達がパレオを探しに行ったよ。チュチュも行こう」
「・・・」
「パレオを見つけても、私達の心は離れたままだよ」
レイヤはクローゼットに話しかけるが答えは返ってこない。
でも、その中には確かに人の気配を感じた彼女はそのまま中のチュチュへと語りかける。
「ずっと考えてたんだ。ますきとロックにはバンドをやりたいって強い思いがあって、パレオはいつもメンバーを気遣ってくれたけど、私は誘われるままにRASに入って・・・ただ歌うことしかしてこなかった・・・」
「・・・」
「でも、それだけじゃダメなんだって・・・。バンドのフロントは勤まらないってそう思った」
ここまで語っても中のチュチュからは一向に返事がないが、間違いなくそこにいるはずの彼女にレイヤは語り続ける。
「香澄ちゃんや湊さん達みたいなバンドを引っ張る役目は全部チュチュに任せてた・・・だから、もう辞めようと思って」
「・・・っ!?」
レイヤから出た「辞める」という言葉にチュチュの呼吸が詰まって身体が震えがかすかにベッドスペースに伝わったのをレイヤは確かに感じ取った。
「それにますき達と一緒に、バンドに全く関係ない弦太朗も友達のためって言ってあんなボロボロになった身体でパレオを探しに行ってくれてる!!
・・・だから私も今の大人ぶった関係も、言われた事だけやってるボーカリストも終わり。これからはRASのために必要なんだったら喧嘩だってしようと思う」
「は・・・?」
レイヤの言葉に中からチュチュの声が漏れだした。
彼女もdubで傷だらけで痛々しい姿になっていた弦太朗の姿を見ていた。
その時は全く気にも留めていなかったが、そんな彼が今自身の事を顧みずにレイヤ達のために行動をしているという事実に困惑の声が漏れてしまった。
「だからチュチュ。RASの一員として言うよ。このままだったらRASは終わる。チュチュはそれでいいの!?」
レイヤは普段からは考えられない感情剥き出しの言葉をチュチュにぶつけ、彼女からの答えを待った。
きっと彼女もこのまま終わりたくないはず・・・
そう思っていたが―――
「・・・・・・・・・ってるのよ・・・」
「えっ・・・?」
「もう終わってるのよ!!」
「チュチュ・・・!!」
そんなチュチュからの答えはレイヤの答えとは全く異なるものだった。
その答えに我慢できなかったレイヤはそのまま彼女をベットスペースの扉を強引にこじ開けて、チュチュを見ると彼女は虚ろな表情で淡々と話し始めた。
「表舞台に立ち続ける・・・そう言ったのに私が一番最初に舞台から降りた・・・そんなミスをした私は・・・RASはもう終わってるのよ・・・
だから・・・私はRASから降りる・・・」
「チュチュ・・・!!」
チュチュの言葉に我慢の限界を向かえてしまったレイヤはベッドスペースからチュチュを引きずり出してその肩を掴んで立ち上がらせると思いのたけをぶちまけた。
「たった1回の失態がどうしたって言うの!!それでRASから降りる・・・?散々私達を焚きつけた挙句に真っ先に舞台から降りるなんて・・・
私は・・・私は絶対にそんなの許さない!!」
「なら・・・なら・・・どうすればいいのよ・・・」
「チュチュの言いなりになるRASは終わらせる!!それでパレオを見つけて・・・!!新しいRASに生まれ変わればいい!!」
「でも・・・だけど・・・」
レイヤの言葉にチュチュはその場に力なく座り込んで譫言のように否定的な言葉を繰り返し始めた。
そんな彼女に視線を合わせる様に座りこんだレイヤは再び彼女に声をかける。
「私はRASを・・・今の居場所を守りたい・・・だから、チュチュ・・・もう一度聞くよ。本当にこのままRASを終わらせていいの?」
「でも・・・私、パレオに・・・「あんただけいても、しょうがない」って言った・・・」
「チュチュ・・・!!」
「だって・・・」
「私は嫌だ!!このまま終わりたくない・・・!!チュチュは・・・チュチュ自身はどうしたいの・・・?」
でも・・・だって・・・と繰り返すチュチュを力任せに立たせるが、再びそのまま座りこもうとする彼女をレイヤはクローゼットへと身体を押し付けて強引に彼女を立たせて彼女に最後の質問をすると、チュチュからは呟くような小さな声で答えが返ってきた。
「・・・・・・・・・・・・い・・・」
「・・・」
「パレオに会いたい・・・。これからも一緒にいたい・・・」
「なら行くよ!!」
彼女の言葉を聞いてチュチュの腕を取って、レイヤは部屋を飛び出してエレベーターへと乗り込む。
そのエレベーターの中でチュチュが何かを握っていることに気が付いたレイヤだったが、それを特に気にすることなく待っているとエレベーターが1階について扉が開き始めるとわずかな隙間からレイヤは抜け出るとそのまま外へと走り出す。
そしてエントランスと出たところには彼女達が気になってしまったポピパの5人が駆け出してくる2人に視線を向けて、たえがレイヤへ向けて声を挙げていた。
「レイ・・・!!」
「ゴメン!!後で・・・!!」
たえの言葉を半ば無視するかのようにレイヤはチュチュの腕を引いてその横を抜けていく。
「・・・っ!?」
「香澄ちゃん・・・?」
「香澄、どうかしたの・・・?」
が、そのすれ違いざまに何かを感じた香澄が震える。
それに気が付いたりみ達が香澄に理由を聞くと、彼女はゆっくりとチュチュへ――――
正確にはチュチュの手に握られていたスイッチを指差していた。
「香澄ちゃん、チュチュちゃんがどうしたの・・・?」
「チュチュちゃん・・・スイッチ持ってた・・・・」
「はぁ!?何言ってんだ!?」
「私には黒いのがちょっとだけ見えたけど・・・そうなの?」
「・・・レイ!!」
「おたえ!!待て!!」
香澄の言葉に驚く有咲だったが、沙綾も香澄まで正確には分かってなかったが黒い何かを握っているのが見えていた。
その言葉を聞いてたえは有咲の静止を無視してそのままレイヤ達の後を追いかけてしまう。
「でも、なんでレイヤちゃんは分かんなかったの・・・?」
「多分、レイヤはスイッチ見たことねぇんだよ!!それになんか急いでたっぽいから弦太朗から話を聞いててもその事が抜けてんだろ・・・!!」
りみの当然の疑問に有咲は考えられる理由を予想するが、その横で沙綾はどうするべきかと慌てだしていた。
「でも、どうするの!?それにこの間ロック襲ったのって・・・!?」
「落ち着け!!とりあえず沙綾は如月とマスキング達!!りみは奥沢さん達に連絡入れとくぞ!!香澄!!ギター預かっとくからおたえ達を追いかけてこい!!」
「うん・・・!!」
有咲はそのまま指示を出すと沙綾達はすぐにみんなに連絡を回し始め、香澄も有咲にギターを預けてたえを追いかける。
走り出した香澄はたえと合流することが出来たが、レイヤ達を見失ってしまう。
レイヤ達の目的地が全く分からなかった彼女達は仕方なく有咲達の元へと戻っていくのだった。
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