さーて・・・みんな大好きな先輩・・・
後輩の面倒見てもろて・・・
「ここだな・・・」
花咲川近辺にある地蔵通り商店街―――
最近の事件が舞台になっているこの街に見慣れない男がやってくる。
商店街の入口に立ったその男は被っていたソフト帽を被り直すとその中へと入っていく。
――――男の正体は、弦太朗に事件の解決を依頼した先輩・左翔太朗。
何故、彼がこの街にやってくることになったのか、それは昨日の夕方まで遡る。
~~~小ネタ56:左のS/商店街のフルコース
――――――
「ふっ・・・」
今日も相棒と共にハードボイルドに事件を解決し、報告書を書き上げた俺は依頼を達成した充実感を感じながら愛してやまないこの街の象徴を――
パコッ―――
「いてっ!!」
しかし、そんなハードボイルドな俺には似合わない音と共に、頭に痛みを感じると俺は振り返っていた。
「何すんだ!!亜希子!!」
「何、いつも通りイグちゃんを捕まえてきただけで何カッコつけてるのよ!!」
「あの~・・・ちょっと・・」
何か聞こえた気がしたが、俺は亜希子に詰め寄っていた。
「だからっていきなり叩くことはねぇだろ!!」
「ほらほら!!まだ仕事はあるんだから!!」
「全部ペット探しじゃねぇか!!」
「仕事の選り好みなんていい御身分じゃない。ほら!!所長命令よ!!」
「っせぇな!!」
「あの~・・・お取込み中で、申し訳―――」
さっきからなんなんだよ!!
ちょくちょく亜希子との会話に割り込もうとしやがって・・・!!フィリップか?
そう思った俺は奇しくも亜希子と同じタイミングでその声が聞こえた方向へと顔を向けると、声を揃えて同じ言葉を投げていた。
「「ちょっと待ってろ(て )!!」
「えっ!?・・・はい」
「「あっ・・・」」
しかし、俺たちの視線の先にいたのはフィリップではなく、黒い長髪に楽器を背負った1人のレディー。
でも、問題はねぇ・・・俺たちはハードボイルドに対応してみる。
「依頼人ね!!はいはい!!こっち座って・・・!!」
「えっ!?ちょっと・・・!!」
「はい、まず名前は?」
「えっと・・・和奏レイです・・・」
「それで今日はどんな依頼で?レディ・・?」
ふっ・・・決まったな・・・
俺は依頼人を不安を解消させようと目の前のレディに対して紳士的な態度を保ちながら、今回の依頼内容の聞くために彼女の前のソファーへと座るが、どこか彼女は気まずそうな表情を浮かべて口を開いた。
「えっと・・・依頼とかじゃなくて・・・。それに私、高校生です・・・」
「はぁ!?」
「ぶふぉ!?・・・それじゃあ、レイちゃんはどうしてここに?」
亜希子の奴が俺を見て噴き出しながら、目の前の彼女―――レイにここに来た目的を尋ねると、彼女は背負っていた楽器ケースの中から何やら1枚の封筒を取り出して、俺たちへと差し出してくる。
「・・・これは?」
「えっと・・・弦た・・・いえ、如月くんに頼まれたんです。「風都に行くなら、ついでに”鳴海探偵事務所”に届けてほしい」って・・・報告書?だって言ってましたけど・・・」
「・・・アイツが報告書だぁ?いでっ」
「あんた!!仕事を任せておいて、状況を聞いてないんかい!!」
「アイツに任せときゃ、大丈夫だっ・・・いでっ!!亜希子ー!!」
「何言ってるんじゃわれぇ!!・・・えっとレイちゃんだっけ?とりあえず預かっても?」
「えぇ・・・」
亜希子は居心地の悪そうな表情を浮かべているレイから封筒を受け取ると、亜希子がそれを確認している報告書とやらを覗き込む。
「って・・・なんじゃこりゃー!!」
あったのは事件ごとに形式も文の書き方もバラバラなものの、紛れも無く報告書。
殆どが手書きでしかも、この字は女の字で書いている人物は全部違っていることに俺は1つの結論にたどり着いた。
「あの野郎ー!!事件の解決を頼んだが、女を落とせなんて言ってねぇぞ!!」
「うわっ。モテない男の嫉妬だ・・・」
「あはは・・・とりあえず、私はこれで・・・」
――――――
「ふぅ・・・落ち着くために、喫茶店でも入るか・・・」
こんなことがあった翌日、翔太朗は愛車に跨って事件の中心になっているこの街に乗り込んだ。
しかし、ハードボイルドを自称している彼は何時までも熱いままでは居られない。
一旦落ち着こうと彼は目に留まった喫茶店"羽沢珈琲店"の扉を開くが、その中は異様な空気に包まれていた。
「どうなってんだこりゃ・・・」
「店のパンが・・・雑草以下・・・?アハハ・・・」
「うちのコロッケが・・・死霊のはらわた・・・」
「アタシの賄いチャーハンが・・・残飯・・・」
「あっ・・・いらっしゃいませ・・・。ご注文は・・・」
「あぁ、お勧めの珈琲をBLACKで・・・」
「かしこまりました・・・珈琲・・・お願いします」
翔太朗が入った喫茶店では少女達が譫言を呟いており、そこの店員であるつくしとつぐみも何故か辛そうな表情を浮かべていた。
注文をした彼はさりげなく店内を観察してから、カウンターに腰掛けて目の前でつぐみが珈琲を入れる姿を眺めていた。
彼の目の前で入れられる珈琲。
気落ちして仕事に集中できていないにもかかわらず、その手際は照井竜の入れるよりも洗練された正しくプロの仕事―――
「お待たせしました・・・珈琲です」
「どうも・・・」
そんな観察を続けた翔太朗の前に珈琲が差し出されると、彼を味わうようにそれを口に含む。
「・・・っ!?美味い・・・」
「あっ・・・ありがとうございます・・・」
彼が口に入れた珈琲は明らかに照井以上の1品だが、残念なのは彼女の気持ちが一部がこれに入っていない。
それを感じた彼はハードボイルドに努めていた。
「・・・でも、お嬢ちゃんが落ち込んで入れてたせいか。なんかが足んねぇな・・・」
「えっ?」
「美味い珈琲の礼だ。良かったら・・・この、ハードボイルドたん―――アダッ!?・・・っ!?」
つぐみに声をかけていた彼は後頭部に慣れ親しんだ感触を感じたと思った途端、顔の横には見慣れた緑色が彼の視界に入ってくると同時に振り返りながら、その持ち主の名前を叫ぶ。
「ってぇな!!亜希・・・って誰だ?あんたら?」
「それはこちらのセリフです。つぐみちゃ・・・店員をナンパしようとしてるあなたこそ、何様ですか?」
しかし、そこにいたのは亜希子ではなく、2人の少女の内の1人である金髪が見慣れたスリッパを持っていたことに彼は化けの皮―――ハードボイルドが崩れ、警戒し始めていた。
「ナンパじゃねぇ・・・それにそのスリッパ!!何で亜希子以外のやつが・・・」
「あの!!亜希子って・・・鳴海亜希子さんですか?」
「あぁ・・・そうだが・・・」
「実は大阪にいた頃にお世話になって・・・こっちに引っ越す前にこれを・・・貰ったんです・・・。それであなたも知り合いなんですか・・・?」
「あいつは今、うちの事務所の所長だ・・・。それともう結婚して鳴海は旧姓だけどな」
「そうだったんですね・・・!!」
スリッパを持っていた少女の連れと翔太朗の間に共通の知人がいたことによって若干だが警戒を緩めるが、以前としてスリッパへの警戒を止めることはなかった。
「それで・・・そっちのお転婆娘は誰なんだ?」
「お転婆ですって・・・?アイドルに向かって・・・」
「アイドルがそんな・・・。いや、スリッパのせいでお転婆になっちまったのか?」
「ムッキー!!」
「あの・・・!!千聖先輩落ち着いて・・・!!それで・・・その亜希子さんの知り合いが何でここに?」
千聖は目の前の男の態度に怒りを覚えてスリッパを構えるが、りみがそれを抑えながらここに来た目的を尋ねると、翔太朗は一瞬考えるような素振りをしてからそれに答える。
「実はある人物を探しててな・・・」
「ある・・・人物・・・?それってどんな・・・」
「高校生の男子だ・・・。いい奴なんだが―――」
彼が探している人物の特徴を話そうとすると店の扉が開き、そこから入ってきたのはギャル風の女子が誰かを連れてやってきた。
「お~い!!早くー!!」
「おい!!ちょっと待てってリサ!!」
現れたのはリサと彼がこの街に来た目的の人物である弦太朗。
翔太朗は弦太朗の姿を見た途端、完全にハードボイルドの化けの皮が完全に剥がれ落ちて弦太朗に詰め寄っていた。
「弦太朗ぉー!!この野郎~!!」
「ちょっ!?翔太朗先輩!?何でここに居るんすか!?」
「お前こそ、なにしてんだぁ!!」
ハーフボイルドを見せつけた翔太朗に少女達は呆然としていたが、なんとか弦太朗が宥めるとそのまま彼は翔太朗の事を紹介し始めた。
「この人は、左翔太朗先輩!!探偵やってんだ!!」
「どうも、ハードボイルド探偵の左翔太朗です」
「ハードボイルド?どう見ても半熟のハーフボイルドじゃない・・・」
「・・・てめぇ!!このお転婆アイドルが・・・」
「なんですって・・・!!」
「千聖も気持ちは分かるけど落ち着きなよ~!!それよりもつぐみ達の方でしょ!!沙綾達がこんなになってるってことはただ事じゃないんでしょ?」
「あぁ~!!翔太朗先輩!!」
しかし、紹介が終わっても初対面の印象が最悪だった2人はいがみ合っていた。
そんな2人を抑えながらリサはつぐみの方へと話を振ると、彼女は今回の出来事を話し始めた。
「実は昨日・・・変な人が来て、どんどん飲食店に乗り込んで料理勝負を挑みはじめて・・・」
「「変な人だぁ?」」
「はい・・・」
「それはどんな奴・・・後、弦太朗はそろそろ離せ」
「うっす・・・」
弦太朗は今になって抑えていた翔太朗を開放すると、彼は着ていたスーツを整えながらつぐみの話に耳を傾けていた。
「えっと・・・その人は顔を隠してたらしいんですけど。見てた人が言うには変なタトゥーが見えたらしくて・・・」
「変なタトゥーだぁ?」
「それでもしかして負けたから沙綾ちゃん達は・・・」
「千聖さんの言う通りです・・・」
千聖の言葉につぐみは肩を落としたのを見た翔太朗は予想をそのまま口にしていた。
「それで、次はこの店が・・・ってことか?」
「はい・・・。それでお父さんが色々考えてたんですけど・・・。倒れちゃって・・・」
「なるほどな・・・。美味い珈琲の礼もあるし、乗り掛かった舟だ。手伝ってやるぜ」
「そうだったのね・・・。この人と同じ考えなのは癪だけど、私も゛っ゛!?」
「千聖!?それにリサもどうしちまったんだ?」
千聖がつぐみの為に手伝おうと言おうとしたところでアイドルらしからぬ声が挙がる。
それに驚いた弦太朗は千聖へと視線を向けたが、話を無言で聞きながら千聖をを後ろから羽交い絞めにしていたリサによって彼女の肩が曲がってはいけない方向へと曲がり始めていた。
「許せない・・・!!」
「リサちゃん・・・離して・・・」
「おいリサ・・・!!」
弦太朗達がリサを止めようと声を掛けるが、料理をすることが好きなリサにその言葉は届かず、リサは無意識のうちに力が籠っていくが誰もそれを止めることが出来なかった。
「料理って言うのはいつも人を幸せにするものだよ・・・それを使ってこんなことをするなんて・・・」
「分かったから離し・・・」
「アタシは絶対に許さない!!」
ガコン―――
「あ゛っ゛!!」
そしてリサの怒りが千聖の肩から鳴ってはいけない音と共に爆発した。
「・・・つぐみ、その勝負アタシが出るね?」
「えっ・・・でも・・・、リサ先輩・・・」
「可愛い後輩たちをこんな目に会わせたのもそうだし、次はつぐみ達ってのもでしょ?でも、それ以上にアタシの好きな料理でこんなことをしたのが許せない・・・!!」
「おっと・・・どうやら、その言ってた相手ってのが来たみたいだぜ?」
「ホントに顔隠してんな・・・」
翔太朗が入口を指差すと、そこにはつぐみが言った通りの顔を隠した人物がいた。
「店の看板を掛けて勝負だ・・・」
「その勝負、アタシが受ける・・・!!」
その人物を見たリサは羽交い絞めにしていた千聖を放り投げるとその人物の目の前まで歩み寄ってメンチを切り始めると、相手は顔を隠している状態でもはっきりわかるような不快感をあらわにしていた。
「小娘が生意気な・・・。そっちの条件を全て飲んでやる・・・」
「ふーん。ここじゃ店の迷惑になるから、今から1時間後に食材と調理道具揃えてCiRCLEのカフェテリアで勝負ってことでどう?流石にこっちも「慣れない調理道具のせいで負けた」なんて言われたくないしねぇ・・・」
相手は完全にリサを舐めて挑発するが、リサも同じように挑発で返すと、あからさまに不機嫌な態度を取っていた。
「構わない・・・それで助っ人は何人用意するんだ?」
「正直いなくてもいいけど・・・じゃあ、折角だからつぐみに珈琲でも入れてもらおうかな?」
「えっ・・・!?」
突如として飛んできた流れ弾に驚きを隠せないつぐみだったが、相手はそれを聞いて今回の勝負内容を勝手に決めつけていた。
「ということは・・・勝負の料理は珈琲に合う料理か・・・」
「はっ?何勘違いしてるの?」
「何・・・?」
しかし、そんな相手の考えをリサは真っ先に否定すると、完全に舐めた態度で相手に言い放った。
「料理はあんたの得意なものでいいよ?その代わりこっちはそれを真っ向から打ち負かしてあげるから・・・」
「ふんっ・・・。だったらなら1時間後に互いの得意な料理で勝負だ・・・」
「オッケー・・・。負けたらあんたのその顔拝んでやるからね・・・」
互いに勝負に合意すると相手はそのまま店の外に消えるのを見送った彼らだったが、相手が消えた途端つぐみが取り乱し始めていた。
「えっとリサ先輩!?さっきのはどういう!?」
「どういうってそういう意味だよ?」
「リサの得意料理って言ったら・・・クッキーか?」
「おいおい、お菓子で勝てんのか?」
「リサ先輩!!お菓子だったら私も・・・!!」
リサの得意な料理と聞いてお菓子が真っ先に思い浮かんだ一同に、翔太朗は怪訝そうな表情を浮かべると、同じくお菓子作りが得意なつくしが声を挙げるとリサは笑みを浮かべてそれに答え始める。
「今回はお菓子じゃないけど・・・まぁ、作るものは決まったよ。弦太朗はちょっと荷物持ち手伝って?」
「それはいいけどよ・・・」
「他のみんなは先に行って待ってて!!つぐみは珈琲だけヨロシク~!!」
「とりあえず・・・このお転婆アイドルをなんとかしねぇとな・・・。こりゃ肩の関節が外れただけだけど救急車呼ぶか・・・」
「「そうですね・・・」」
そう言ってリサは弦太朗の腕を引いて店を飛び出してしまい、残された面々は店の中に悲惨な光景へと視線を向けると、リサによって肩を外されてしまった千聖のために救急車を呼んでからCiRCLEへと向かうと20分程度で目的地までたどり着くが明らかにその場所の様子はおかしかった。
「ここか・・・?」
「はい・・・でも、なんで誰もいないんだろ・・・?」
「普段なら誰かいるはずなんだけど・・・」
「なんか不吉ですね・・・」
普段ならどこかしらのガールズバンドが練習に精を出し、カフェテリアにも人がいるはずにも関わらず、今この場所には相手の姿しかない。
「どうやらお相手さんは随分と余裕みたいだな・・・」
「弦太朗くん達、大丈夫かな・・・」
「さぁな・・・でも、今回の勝負のカギになるのは珈琲の方だろうな・・・」
「えっ?」
つぐみから出た不安の言葉に翔太朗が落ち着いた様子で答えると、彼女は驚いた表情を浮かべて固まってしまった。
しかし、翔太朗はそんな彼女に言葉をかける。
「ギャルの姉ちゃんがあそこまで大見得切ったってことはなんか勝算があったんだろうよ。その上で珈琲を店員のお嬢ちゃんに任せたってことは重要なのはそっちってことだ」
「わたしが・・・?」
「それとなんの慰めにもなんねぇかも知れねぇけど、不安な気持ちを抱えて集中力が欠けた状態で入れた珈琲があんだけ美味かったんだ。集中して出来ればもっといいもんになるさ」
「でも、私じゃリサ先輩の邪魔に・・・」
「つぐみちゃん・・・!!大丈夫だよ!!」
「そうですよ!!つぐみ先輩なら大丈夫ですよ!!」
「互いに支え合っていくのが人生って言うゲームだ。何かあってもギャルの姉ちゃんや弦太朗がなんとかしてくれるさ」
「・・・はい!!」
翔太朗は大人の余裕を浮かべてつぐみを励ますと、彼女の表情は先ほどと比べてだいぶ明るいものになる。
そんな中で食材や道具を抱えた弦太朗を引き連れてリサがCiRCLEに姿を現した。
「お待たせ~」
「リサ・・・行ってこい!!」
「おっけ~。つぐみも珈琲よろしくね?」
「はい!!」
気合いが入る彼女達を他所に、この場に第三者が両者の間に立つが、、その人物にリサ以外の一同は目を丸くして驚いていた。
「これより、闇キッチンルールによる料理勝負を始めます!!」
「「「「まりなさん!?」」」」
「闇キッチン?なんだそりゃ?」
「テーマは”自由”。負けた方は料理人としての地位と名誉を剥奪されます」
「よし・・・」
リサは自身のエプロンをつけて袖を捲り、完全に
「始め!!」
それを振り下ろして勝負の開始を告げた。
リサはその言葉を聞くと真剣な表情をしながら弦太朗が持っていた荷物を漁り始め、その反対では相手は机の上に自身が用意した食材を並べ始めるが、それと同時にどんどんとつくしの目の色が変わっていく。
「あれって・・・クレープ!?でも、嘘・・・そんな・・・」
「つくしちゃん?どうかしたの・・・?」
「りみ先輩・・・相手の机に並べてる食材ですけど、どれも最高級の果物ですし、それにあのバターも牛乳もチョコだって全部が高級品ですよ」
「そんなもん分かるのか?」
「はい!!あのバターは国産で10gで300円くらいですし、牛乳なんてあの量で1000円以上しますよ!?あんなのでクレープなんて作ったらどうなっちゃうんだろ・・・!!」
「マジかよ!?そんなもん用意してんのかよ!?ずるいだろ!?」
「弦太朗。食材を用意するって言ったのはこっちの方だからなんもずるくねぇ・・・それに、こっちの目はそんなの気にしてる様子すらねぇぞ?」
最高級の食材を見て弦太朗達は驚いていたが、リサの表情は何一つ変わることなく机の上にまな板やボウルなどの器具を並べていく姿を瞥して相手はドンドンと調理の工程へと入っていく。
「相手がクレープの生地を混ぜ始めた・・・!!」
「おい!!リサの奴、道具並べただけで何も動いてねぇぞ!?」
つくしが相手の動きに、弦太朗は全く動いてないリサに驚きの声を挙げる中で、リサは相手の動きを見ておもむろに口を開いた。
「その動き・・・。あんた、ちょっと前まで駅前の移動販売でクレープ焼いてた女の人だよね?」
「へぇ・・・よく分かったね・・・」
「「「「「なっ!?」」」」」
リサはクレープの生地を混ぜるそのアクションだけで顔を隠していた相手の正体を見破ったことに外野の全員が驚きの声を挙げていたが、言い当てられた相手はそれに多少の驚きを見せるとその隠していた顔を晒すが、未だに余裕の態度を見せていた。
「それだけで勝ったつもり?正体見破っても、料理で勝てるわけじゃないのよ?今回は生意気なあんたを全力で叩きつぶすために最高の素材と道具も準備したから」
「それは楽しみだね~。それじゃ、こっちも行こうかな・・・」
そう呟くと彼女は用意した食材を手に持って調理を始め、そして時は過ぎ――――
「完成よ!!」
「こっちもつぐみの珈琲と一緒に料理も出来たよ~」
互いに料理を完成させると、クローシュを被せた料理を審査員であるまりなの元へと持っていく。
「私からよ!!こっちの料理はフルーツをふんだんに使ったクレープよ!!」
相手はクローシュを外して自身が作った料理を披露すると、弦太朗達からは驚いた表情を浮かべていた。
「すっげぇ・・・」
「なんだありゃ・・・」
「「おいしそ~!!」」
「では・・・頂きます・・・」
相手が出したのはつくしの予想通りした通りのクレープだったが、普通のとは違ってそのクレープは圧倒的な高級感と存在感を放つそれを見てまりなは驚くが、すぐに表情を戻してその手にフォークとナイフを持って食べ始めた。
「すごい・・・この圧倒的なフルーツの量なのに、それぞれが存在感を失っていない。使っているクリームも口の中で溶けるような感覚がたまらないわ!!」
「当然でしょ?全てにおいて最高の素材を使ったんだから・・・」
「ふーん」
「ムカつくわね・・・」
自信満々に答える相手だがリサは全く動じた様子もないことに苛立ちを隠そうともせずにギスギスした空気が流れるが、一通り食べ終えたまりなは次はリサの作った料理に視線を向ける。
「そんじゃアタシの番だねー」
「ふん。どうせ勝てないんだからさっさとしてよ」
「それで、料理は・・・?」
完全に勝利を確信している相手を他所に、期待と不安の入り混じった視線がリサに突き刺さるが、そんなものを物ともせずにリサは自身の料理を覆っていたクローシュを取り払った。
「アタシの料理は・・・
珈琲とサンドイッチのセットだよ」
「「「「「はぁ!?」」」」」
「あはははっ!!よくもそんなお粗末なもので勝負なんて挑もうとしたわね!!」
「とりあえず、文句は食べてから聞くよ。ほらまりなさん、右から照り焼きチキン、卵サンド、BLT、それといちごのフルーツサンドだよ」
「えぇ・・・頂きます・・・」
リサが作った料理は喫茶店だったらどこにでもありそうなただのサンドイッチ。
先ほどのクレープの高級感には遠く及ばないそれを見た相手は彼女を馬鹿にしたような笑い声を挙げ、審査員のまりなですら目の前の料理に疑問を感じずにはいられなかったが審査をする上で食べない訳にもいかずまりなはサンドイッチを手に取って口に運ぶが一口食べるとその手が止まる。
「あははは!!ほら見なさい!!手が止まったわ!!あんたの料理なんて食べるまでもないのよ!!」
「ふーん・・・言いたいのはそれだけ?」
相手の言葉が響くが未だにリサは余裕の表情を浮かべていたが弦太朗達もリサの気が狂ったようにしか見えない。
そう思っていた時、まりなは再起動すると一度珈琲を口にしてから今度は別の種類のサンドイッチへと手を伸ばて口に運ぶとまた手が止まる。
それをサンドイッチの種類だけ繰り返し、全種類と食べてからまりなは珈琲を飲む。
「さっきのクレープよりも断然おいしい・・・!!」
「なんですって・・・!!じゃあ何で試食の時に手を止めたのよ!!」
「さっきのクレープとは違って高級な素材なんて全く使ってないけれど、それぞれの食材が互いを高め合ってる・・・。リサちゃん!!この食材は・・・」
まりなは味の評価をするが、リサが使った食材について聞くと彼女はハッキリと答えた。
「肉も野菜もパンも全部、商店街で買った食材ですよ?」
「それでこんなに・・・」
「あんな安物で!!あり得ない!!」
あっけからんとした表情で答えるリサに相手はこの結果に全く納得していないといった表情を浮かべたが、リサはそんな相手に向かってハッキリと言い放った。
「確かにそっちの食材に比べたら安物だけどさ。そっちの料理ってさ高い食材を詰め込んでるだけじゃないの?」
「何を言って!!」
「・・・そうね。リサちゃんの料理は例えるなら互いを支え合うバンド。でも、これを食べた後だったらハッキリわかるわ。あなたのはそれぞれが自分勝手に主張し合ってるだけ・・・豚の餌ー!!」
「ってことは・・・この勝負」
翔太朗は今までの言葉を聞いて結果を察したが改めて、審査員の口から今回の結果を聞き出す
「文句なし!!リサちゃんの勝ちよ!!」
「「「やったー!!」」」
「それじゃ・・・」
審査員のまりなは勝者の名前を口にするとその場を離れて行き、リサを応援していた後輩たちは喜び合っていた。
しかし、そんな空気は即座にぶち壊されることになる。
「認めない・・・!!認めない!!認めない!!認めない!!認めない!!」
「何言ってんだ?勝負はもう着いただろ?」
「私はこんな勝負絶対に認めない!!」
「やれやれ、聞き分けのない女だ・・・」
「煩い!!煩い!!煩い!!こうなったら全部・・・ぶっ壊してやる・・・!!」
「えっ!?いきなり何してるの!?」
「それに何やあのタトゥー?」
「おいおい!!変なタトゥーってコネクタのことかよ!?」
「それに・・・USBのメモリ・・・?なんで?」
「ガイアメモリまで・・・!!」
―――チキン!!
―――エッグ!!
「何この声!?鶏肉に卵!?」
呆れる弦太朗と翔太朗の2人だったが、突如として相手は自身の服の首元を開くと、そこからは翔太朗にとって見慣れてしまったものが露出する。
確かにあれは知らない人からしたら変なタトゥーと奇妙な形のUSBメモリにしか見えない。
不思議そうに思っていた彼女達だったが、突如としてメモリからウィスパーが響かせてからそれをおもむろにコネクタに突き刺すと、突如として目の前には地球の記憶を持った怪人―――ドーパントが姿を現した。
「何あれ・・・如月くんの戦ってるのとは違う・・・!!」
「弦太朗・・・!!」
「風都で見つけたこれで・・・お前らをぶっ壊してやる!!」
彼女達は不安そうな表情を浮かべるがここで弦太朗と共に翔太朗が彼女達の前に立つ。
「任せろ・・・」
「お嬢ちゃん達は下がってな・・・」
「ちょっと!?」
「行くぜ後輩。あいつにお熱いのかましてやろうぜ?」
「うっす・・・!!」
弦太朗はいつも通りドライバーを取り出し、ファイヤースイッチをドライバーに装填する横で翔太朗も何かを取り出すといきなり話を始める。
「フィリップ!!風都の外でドーパントだ・・・!!っておい!!まだ検索してんのかよ!!・・・あぁ、お前の検索中のガールズバンドの奴も一緒だ!!・・・使うメモリはヒートだ!!」
「何で急に独り言・・・?」
傍から見たらいきなり独り言を話出してるようにしか見えないが、そんなことを気にすることもなく翔太朗は会話を終えて懐からメモリを取り出した。
「あれってさっきのと一緒の・・・」
「「変身!!」」
そうして弦太朗と翔太朗は同じ言葉を口にするとその姿を変えて―――
「戻ったぜ」
花咲川で弦太朗の様子を見に行った翔太朗は自身の職場である探偵事務所へと戻ってきていた。
「あっ!!翔太朗君!!フィリップ君から聞いたよ~風都の外にドーパントが出たんだって?」
「あぁ、風都に来た時に持ち出したらしいけど、メモリブレイクしたし大丈夫だ」
「ほー。それで、任せてた仕事の方は?」
「・・・あのまま任せて大丈夫だろ」
「そっか」
「そういや、向こうでお前の知り合いだって女の子に会ったぜ」
「えっ?誰々!?」
「それは報告書書き終わってからな」
そう言いながら翔太朗はデスクに座り、いつも通りのローマ字で今日の報告書を作り始めるのだった。
誤字があったら報告お願いします。
感想評価は気分次第でお願いします。
以下ネタ説明
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先輩、後輩に頼んだ仕事を完全の放置するのはよくないよ・・・
※オマケ時空は基本的に本編に関係ないので、本編では翔太朗とあった記憶はない模様