今回はがっつり紗夜さん視点です・・・
そしてリサ姉の案とは・・・
多分みんな分かってるよね?
先日の事件を起こしてから私―――氷川紗夜は部屋に引きこもっている。
昨日から登校日だったが部屋を出ることはなかった。
そして、薄暗い部屋の中で私が狂い始めてしまった時のことを思い出していた。
それは、1月近く前の雨の日―――
Roseliaの練習帰りにある考え事をしながら私は歩いていた。
それは学校に来ることになっている男子生徒の事だ。
どんな人か分からないし、学校にどんな影響があるか考えると不安になっていた。
そんな考え事をしながら歩いていたためかいつもとは違う道に入ってしまった。
そこで私は見知らぬ"白い服"の女性とぶつかってしまい、その女性の荷物を辺り一面に広がってしまった。
その荷物は見たことのないUSBやメダルなど私には理解できないものだったが、ぶつかってしまった私はその荷物を拾っては女性に手渡していた。
そして、全て拾い集めたのか女性は礼だと言って、懐から2つの黒いスイッチを私に手渡す。
スイッチの意味が分からなかったが女性は「妹と一緒に使うといい」という言葉を残して気がつけば目の前から消えていた。
それにしても、なんであの女性は妹がいることを知っていたのだろうか・・・。
妹の事はおろか、私の事は何一つ話してはいなかった。
その女性に不信感を抱いたが、受け取ったスイッチを捨てようという考えにはならず、私の身体は勝手にスイッチを押していた。
押したと同時に私の身体は人外のそれに変わる。
体中から力が溢れてくる感覚に酔いしれ、私は新しいおもちゃで遊ぶ子供のようにスイッチの力を一通り試してからスイッチを切って元の身体に戻る。
スイッチの力に魅せられた私は1つの結論に至る。
この力は私だけの物―――
日菜には絶対に渡さない―――
そう誓って家に帰ると誰にも見られない様にスイッチの1つを部屋の小物入れに隠す。
そして次の日、学校に来た男子を見て怒りを覚えた。
集会で舞台の上で挨拶をしているのは絵にかいたような不良。
怒りが浮かび私はポケットに入れていたスイッチに手を掛けたが、なんとか怒りを堪えてスイッチから手を離した。
その後、怪物騒ぎがあったが私は手に持っていた理由が見当がついていた。
この学校の誰かが私と同じものを持っているのだ。
これが他の人に知られるとまずいと思った私は、目の前の彼に全ての責任を押し付けようとしたが失敗した。
その後も彼を中心に戸山さんや弦巻さん達と一緒に楽しそうにしている彼を見ると黒い感情がこみ上げてスイッチに手が伸びるが、風紀を守る立場にいる私がそれを乱すことが出来ずに思いとどまっていた。
しかし、それは容易く崩れた。
彼が日菜と電話で楽しそうに話しているのを聞いて、彼に手を挙げたがその後に待っていたのは”停学”という処分。
そして同じ日にあったライブでは日菜がRoseliaのギターとして舞台に上がった。
この2つの出来事から私は1つの結論に至った。
彼と日菜のせいで私の居場所を奪われた―――
その後は日菜を含めた多くの人を傷つけて、そして最後はRoseliaのメンバーすら―――
しかし、最後は彼―――如月さんによって私の凶行は止められた。
2つのスイッチを砕かれて気を失った私は自室のベッドの上で意識を取り戻した。
そこにいたのは今井さんと白金さん。
その時に私の使っていたスイッチの事を聞いていたが私はスイッチを失った喪失感から何も話すことができなかった。
意識を取り戻した翌日、私は外を出歩いていた。
目的などない。強いて言えば部屋に来るであろうRoseliaの人たちから逃げたかったのだろう。
外を出歩いて辿り着いたのはスイッチを手に入れた路地。
勿論だが、そこにスイッチを渡してくれた白い服の女性は見当たらず、連日その女性を探し回ったが見つけることが出来ない。
喪失感を感じながら街を歩くと、私は日菜を襲った現場に辿り着いていた。
現場には薄くなってはいるが血の跡が残っていた。
それを見た私に襲い掛かったのはとてつもない罪悪感。
フラフラとした足取りでなんとか自宅へと戻るとそのままトイレへと駆け込み胃の中の物をすべて吐き出す。
全てを吐き出してからそのまま自室へと戻って着替えるために衣装棚を開く。
開いた棚の中にはスイッチを使って襲った人たちから回収した凶器が無造作に押し込まれていた。
私はこんな目の前にある凶器よりも恐ろしいものを使って人を襲った挙句、再びそれを手に入れるために探し回っている自分がいるという事実に恐怖を覚えた。
私は部屋のカーテンを閉めて荷物をドアの前に乱雑に積み上げて部屋に閉じこもる。
多くの人を傷つけた罪悪感と再びスイッチを求める飢餓感に襲われる中、気がつけば何日も過ぎて登校日になっていたが私は部屋を出ることはなかった。
どれほどの時間がたったのだろう―――
気がつけばカーテンの隙間から夕日が差し込み始めていた。
呆然と室内に閉じこもっていた私の耳に懐かしさを感じる声が届く。
『完全に閉じこもっていますが・・・どうしますか・・・?』
この声は白金さん―――
同じ学校だから様子を見に来たのだろうか?
恐怖心に襲われる中、なんとか立ち上がってドアの前まで行こうとしたが白金さんの後に聞こえてきた声によってその動きは止まった。
『如月。ドアをぶち破って入りなさい』
その声の主は湊さん―――
声を聴いた途端、湊さんから言われたあの言葉が私の頭に思い浮かび心を抉る。
『紗夜。私は今のあなたとは頂点を目指せないわ・・・』
その言葉を思い出すと力なくその場にへたり込むと呼吸が乱れる。
湊さんの言葉によって私は過呼吸になってその場を動けずにいた。
その後も部屋の外から今井さんや宇田川さん、それに弦巻さん達の歌声が聞こえるがそれを気にする余裕は私には無い。
弦巻さんの歌声が止むと部屋は静寂に包まれる。
しかしその静寂も束の間、次に響いてきたのは湊さんの歌声。
今の湊さんの歌声もとても素晴らしい物なのだろう。
しかし、今の私にとってそれはそれは猛毒だった。
「ぅぁぁぁあああぁああ・・・」
湊さんの歌声に耳を塞ぎ、声にならないようなか細い声を挙げてその場に倒れる。
彼女の歌が素晴らしい物なのは良く知っている。
しかし、その声が耳に入ると頭の中では先日の言葉を思い出して私の心を抉る。
どのくらい時間がたったのだろう―――
いつの間にか湊さんの歌が止んでいた。
そして、部屋の外からは揚げたてのポテトの匂い。
最近ろくに食べ物を口にしていなかった私は匂いにつられてドアへと力なく這って行く。
しかし、それも外から聞こえた言葉によって止まってしまった。
『ヒナ!?何やってるの!?』
日菜が部屋の前にいる―――。
その事だけで私が動きを止めるには十分だった。
今まで何度も扉越しに声を掛けてきていた日菜だが、会話はおろか、あの事件の後から一度も顔を見てはいない。
それから少しすると玄関の開く音が聞こえる。
どうやら湊さん達は帰ったのだろう。
しかし、そう思った途端ドアからノックする音が響く。
湊さん?それとも日菜?
その正体が誰か分からない私は激しく動揺する。
しかし正体はそのどちらでもなかった。
「・・・紗夜?聞こえる?」
「・・・今井さん」
その正体は今井さん。
私の声が聞こえているかは分からない。
でも、彼女はドア越しの私に話しかける。
「紗夜。ヒナは少しの間だけど麻弥の家に泊まることになったから。ヒナの話を聞くとまだ話しにくいんだと思ってさ」
「・・・」
私は今井さんの言葉に答えない。
いや、なんて言葉を返せばいいか分からなかった。
言葉を返さない私だったが、今井さんはそのまま話を続ける。
「それで明日なんだけどさ・・・。早い時間になるけどアタシと燐子と弦太朗の3人で迎えに行くからね。最初は5人で来るつもりだったんだけどさ、友希那はポンコツだし、あこは家の方向が違うから3人でってことになったんだ。それに人数も少ない方が紗夜も気が楽でしょ?」
3人で迎えに―――
確かに湊さんに比べたら如月さんのほうが幾分かマシかもしれない。
でも、あの不良とした見た目を前にして私は前のようにならないか不安が襲う。
「こんなことしたくは無いから言うんだけど。明日は多少無理しても学校に連れて行くからね。いつまでも閉じこもっても紗夜のためにはならないと思うからさ。それじゃ~。あっ、キッチンに紗夜のポテトあるから早く食べてね~☆」
そう言うと部屋の前から今井さんの声が消え、少し経つと窓の外から今井さんの声が聞こえてきた。
私は震えながら部屋を出るが、家の中には誰もいない。
とりあえずシャワーを浴びてから、キッチンへと向かうと、そこは量は少ないが今井さんが言っていたポテトがあった。
私はそれを手にとり口に運ぶ。
手で持っているとサクサクしているはずなのに口に入れると途端に水気が増して妙にしょっぱい。
料理上手な今井さんでもこんなミスがあるんですね・・・。
こうして私はポテトを食べ終えると部屋に戻ってベッドへと入る。
入った途端に私は意識は遠退き、気がつけばカーテンの隙間からは朝日が差し込んでいた。
「今日は白金さん達は迎えに来るんでした・・・」
そう呟いてベッドから出ようとするが、ある考えが私の頭に浮かびあがる。
このまま外に出てもスイッチを探し始めてしまうのではないか―――?
そう思った途端、恐怖に身体が震えだす。
震えてるうちに部屋のドアがノックされる。
「氷川さん・・・?いますか?」
外から聞こえてきたのは白金さんの声。
先日の言葉通りに迎えに来たようだが、私はまだ制服に袖を通しておらず何も準備が出来ていない。
「紗夜~?起きてる~?入るよ~ってドアが開かない!!」
「まさか・・・中で倒れてるんじゃ・・・!!」
「弦太朗!!ドア壊して!!」
「おう!!」
「ぁ・・・」
私が声を出そうとしたが、最近声を出してなかったせいか上手く声が出せない。
部屋の外から聞こえてきたのはチェーンソーの駆動音。
「まっ・・・」
しかし、私の声は外には届かず無常にも私の部屋のドアはズタズタに切り裂かれた。
ドアの向こうには先日私と闘った時の姿をした如月さん。
その足にはチェンソー。
なんで足にチェーンソーなんでしょうか・・・。
そして、ドアだったものの端から顔を出すように今井さんと白金さんがこちらの様子を伺っていた。
「氷川さん・・・!!」
「紗夜!!何もなかったんだね!!ってまだ制服に着替えてなかったんだ」
「えぇ・・・」
私はなんとか声をふり絞って2人に答えるとどこか安心したような顔を浮かべていた。
1人は全く表情が見えないが何か安心したような様子なのは理解することは出来た。
「うん。じゃあ紗夜は燐子と一緒に別の部屋で着替えてきて。燐子よろしくね」
「氷川さん・・・」
私は2人に言われるがまま別の部屋で身支度を済ませて、カバンを取りに行くために自室へと戻るとそこには今井さんと先ほどと同じ姿のままの如月さんが掃除をしていたが、私の存在に気が付いて掃除中の今井さんから声がかかる。
「あっ紗夜。準備出来たんだ。はい、これカバンね。今日使う教科書も弦太朗に授業を聞いてちゃんといれてあるけど一応確認しておいてね。あと、これが紗夜のお弁当で・・・」
今井さんは私にカバンを渡すと矢継ぎ早に話しかけてくるが、授業で使う教科書もですが何でお弁当まで用意してくれているんですか・・・。
それに部屋もドアだったもの以外は全て綺麗に片付けが終わっていることに先ほどとは違う、恐怖を今井さんに覚えたが彼女は気にする様子はない。
「あの・・・そろそろ学校に行かないと遅刻してしまうんじゃ・・・」
「それもそうだね~じゃあ、ドアだったものは後で何とかするとして・・・。そろそろ学校行こっか。弦太朗もいつまで変身してるの?」
「おう。じゃあ行くか」
そう言って如月さんはベルトに手を掛けると彼を中心に白い煙が吹いて彼が姿を―――
「って誰ですか・・・?」
そこにあったのは特徴的な髪型をした不良の姿ではなく、髪をおろして青いブレザーを身に纏っている男の人の姿だった。
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