バンドリ! コズミックパーティー(仮   作:ツナ缶マン

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次回Roselia2章最終回


哀・夜・更・改-13 We're "Roselia"!!

私は病院のベッドの上で朝を迎えて寝起きの気だるい身体を起こす。

向かいのベッドにいるはずの今井さんへと視線を向けるとそこにあったのは―――

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・。あぁ・・・」

 

「っ・・・!!」

 

寝ているのに痛みに魘されている今井さん。

彼女自身には何の非もないにもかかわらず、私が欲していた力が原因で彼女は今も痛みに魘されている。

 

そんな今井さんを見ることに限界を感じた私はそばに置いてあった自分の制服に着替えると、彼女から逃げるように病院から逃げ出して1人で街を歩く。

 

 

 

 

 

”スイッチ”が欲しい―――

また”スイッチ”に手を出してはいけない―――

”力”が欲しい―――

罪を重ねてはいけない―――

 

相反する2つが頭の中に浮かび上がっては消えていき、私の思考をどんどんぐちゃぐちゃにしていく。

どうするべきか決める事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

あぁ・・・・とりあえず約束の場所へ行かないと―――。

スイッチをどうするかは決まらなかったが、約束は守らないと・・・。

時間にはだいぶ早いが先に行ってから来るまでに決めればいい。

 

そう思って約束の場所に着いても私の考えは纏まらなかったが約束の時間まではまだ余裕はある・・・。

しかし、私の考えが纏まる前に目の前に無数の虫が集まりだすと、先日の怪物が現れた。

 

 

 

 

 

「氷川さん。早いわね」

 

「えぇ・・・」

 

目の前に現れた彼女は昨日の様に淡々と私へ話しかけてくる。

一方で私の方はこの間のような飢えるような間隔は薄れていた。

 

少しだけ冷静になった私は彼女の事を気になってしまい質問してしまった。

 

「そう言えば、あなたはどこでスイッチを・・・?」

 

「白い服の人に貰ったのよ。それで今は仕事でこれを配ってるの・・・」

 

仕事・・・?

彼女はバンドを組んでたはずだったけどどうなったのかしら・・・。

 

「仕事・・・。バンドはどうしたの ?あれだけ仲間と言っていたのに・・・」

 

「バンド?・・・あぁ、辞めたわ。これがあれば仲間なんてどうだっていいもの」

 

「・・・!!そう・・・」

 

以前の彼女からは考えられなかった。

私がバンドを抜けた時のの彼女は仲間と大切にしていたのに、今はスイッチによってそれを捨てたことに驚きを隠せなかった。

 

「そんなことはどうだっていいじゃない・・・」

 

彼女はそう言うと自分が使っているスイッチとは別のスイッチを取り出して私に差し出してくる。

差し出されたスイッチは以前の私が使っていたものと同じように禍々しい形へと形を変える。

 

「ほら、あなたが欲しがっていた物よ?」

 

私は無言のままスイッチを受け取る。

受け取った私を見て目の前の彼女からは仲間が増えたことを喜ぶような感覚が伝わってくる。

 

「さぁ。これ使ってもっと暴れましょう?」

 

 

私はスイッチに手を掛けるがそれと同時に怪我をした今井さんと日菜の姿を思い出し、突如として指が震えだす。

 

再びスイッチを手にした―――。

しかし、受け取った私の手が震えてスイッチを押せずにいた。

どのくらい時間がたったのは分からないが、目の前の彼女はスイッチを押すことを勧めてくる。

 

 

 

 

「何やってるの?早く押しましょう?」

 

「はぁはぁ・・・!!」

 

息が乱れる。

呼吸のたびに指の震えも大きくなる。

力を求める本能と人を傷つけたくない理性が激しくぶつかり合う。

 

「早く・・・!!」

 

もたもたしている私に彼女も次第に機嫌が悪くなる。

 

私はスイッチのボタンを押そうとしたその時―――

 

 

「うぉら!!」

 

「がぁ!!」

 

目の前の彼女が黒い何かによって弾き飛ばされる。

 

「紗夜!!無事か?」

 

「如月さん・・・。どうして・・・!!」

 

そこに現れたのはいつも通りの学ラン姿の如月さん。

彼が彼女を”生身”で蹴り飛ばしたのだ。

 

「紗夜の事を教えてくれる”ダチ”がいてな」

 

彼は私のポケットを指を指すとそこから丸い何かが飛び出してくる。

これを使って私の場所を―――

 

そんなことを考えてると今、最も聞きたくなかった声の1つが私の耳に飛び込んでくる。

 

「紗夜」

 

「・・・みなと・・・さん・・・・・・なんで・・・!!」

 

如月さんに遅れて湊さんもこの場所に現れたことによって、私はスイッチを取り落として震えあがる。

再び拒絶の言葉を言いに来たのだろうか―――。

しかし、彼女から帰ってきたのは信じられない言葉だった。

 

 

 

 

 

「紗夜・・・。あなたが来ないから迎えに来たわ・・・」

 

「は・・・?どういう・・・」

 

今、なんて言った?

”迎えに来た”?私を・・・?

言葉の意味が分からない。どうしてこんな私を迎えに来たのだろうか・・・。

 

「リサから手紙を受け取ってないの?・・・全く、リサは私がいないとダメね・・・」

 

手紙・・・?

私は今井さんから受け取っていた手紙を開く。

 

そこには湊さんの文字でハッキリと書かれていた。

 

”氷川紗夜が戻ってくるの待っている”と―――

 

その手紙を読む様子に目の前にいる如月さんも胸の中から皴の入ってしまっている紙を取り出すと私へと突き出してくる。

 

 

「友希那もやってたのかよ・・・。紗夜、これも受け取れ」

 

「えぇ・・・」

 

突き出された紙を開く。

それを見て私は口を手で塞いでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに書かれていたのは日菜の文字。

 

”おねーちゃん!!早くポテト食べにいこーね!!"

 

「日菜・・・!!」

 

「如月・・・。あなたが遅れた理由って・・・」

 

「あぁ・・・。これ取りに行ってたんだ」

 

「それにリサやあこ、燐子だって一緒よ」

 

「あぁ!!それに千聖や花音のクラスのダチも、香澄達だって同じだ」

 

あの子に拒絶されていたと思っていたのに、書かれているのは予想とは正反対の言葉。

それと2人の口から出た言葉に思わず泣きだしてしまった。

 

「ふざけんなー!!」

 

「邪魔すんじゃねぇ!!ハエ野郎!!」

 

蹴り飛ばされた彼女は起き上がると、蹴った如月さんへと殴り掛かるが、如月さんは再び蹴り飛ばすとそのまま”生身”で闘い始める。

怪物によって何度も地面に叩きつけれられいるにも関わず、何度も立ち上がっては怪物相手に生身の拳で殴り、蹴り飛ばす。

 

でも、如月さんは何で・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で変身しないの・・・?」

 

「紗夜。分からないの?如月はあなたに見せてるのよ・・・」

 

「見せる?・・・いったい何を・・・?」

 

力があるのに変身して戦わない如月さんの理由も湊さんの言っている言葉の意味も分からない。

そんな私に湊さんはゆっくりと歩み寄りながらその答えを口にする。

 

 

「如月はあなたに見せてるのよ。力に頼らなくても悪意に対して立ち向かっていけるということを・・・。それにさっきのあなたも如月と同じことをやっていたじゃない・・・」

 

 

 

―――さっきの私が如月さんと同じ?

ますます湊さんの言葉の意味が分からなくなっていた。

目の前では何度も如月さんが地面を転がりそのたびに傷も増えていくがそれに構う様子もなく立ち上がる。

 

「紗夜。あなたは欲しがっていたスイッチを手に持ったけど押さなかった。

それは、自分の押したくないという気持ちで自分の中にある悪意に立ち向かったのよ。

今の如月と同じように・・・」

 

「・・・!!」

 

 

私は傷ついた日菜や今井さんの姿が思い浮かび、自分が同じように誰かを傷つけてしまうことに恐怖していた。

湊さんの言う”押したくないという気持ち”がそれだったのかもしれない。

そんなことを考えていると湊さんは私の前に立ち、その手で落としたスイッチをその手で拾い上げて私に向けて差し出していた。

 

「紗夜。Roseliaに戻ってくるか、スイッチを押すか・・・。後はあなたが決めなさい・・・」

 

「湊さん・・・」

 

湊さんからスイッチを受け取る。

 

「紗夜!!」

 

「紗夜さん!!」

 

工事現場の入口から今井さん達の声が聞こえるが、私はスイッチを持った手を持ち上げた。

 

 

 

――――――

 

 

やってきたリサたちは視界に飛びこんできたのは、スイッチを持った紗夜が腕を振り上げている姿。

その光景にリサたちはその足を止めてしまう。

 

「紗夜!!」

 

「紗夜さん!!」

 

「・・・っ!!」

 

全員の視線が紗夜へと集まる中、紗夜は手に持ったスイッチを―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムスカへ向けて投げつけた。

 

「は?」

 

ムスカはその光景に唖然として行動を止めてしまう。

 

「おらっ!!」

 

弦太朗は油断してしているムスカを蹴り飛ばすと同時に紗夜の元へと駆け寄っていく。

 

「紗夜さ~ん!!」

 

「氷川さん・・・!!」

 

「白金さん・・・。宇田川さん・・・」

 

「紗夜~!!心配したんだからね~!!」

 

「ちょっと今井さん!?」

 

それに釣られるように遅れてきたあこたちも紗夜の元へと駆け寄る。

あこたちに遅れてリサは先ほどまでの痛みを忘れたかのように紗夜へと飛びつく。

 

「みなさん・・・私は・・・」

 

「紗夜さん!!明日から練習頑張ろうね!!」

 

「えっ・・・ですが・・・。私は・・・」

 

「紗夜!!何言ってんの?Roseliaのギターは紗夜だけだよ!!」

 

「今井さんの言う通りです・・・」

 

この言葉に紗夜はその場に崩れ落ちると同時に泣き出す。

 

「私は・・・。またみんなとバンドしてもいいんですか・・・?」

 

「当然よ。リサも言ったじゃないRoseliaのギターは紗夜だけだって」

 

「紗夜」

 

「如月さん・・・」

 

崩れ落ちている紗夜に弦太朗は手を差し伸べると紗夜はその手を取って立ち上がる。

そしてその手でそのまま2人は拳を打ち付け―――友情のシルシ を行う。

 

Roseliaのメンバーの表情が緩んでいく中、この光景に納得がいかないムスカが声を荒げる。

 

 

 

 

 

 

 

「あんた達!!馬鹿じゃないの!?」

 

「えぇ。あなたの言う通り私達は馬鹿よ」

 

「はぁ?」

 

ムスカの言葉に友希那が肯定する。

その言葉の意味が分からないムスカに友希那は言葉を続ける。

 

「自分の事ばっかりで周りに迷惑かける、仲間のために後先考えず動く、訳の分からないことをいいだす、自分が好きなものを隠してるつもりで全く隠せてない。私達はそんなことばっかりよ」

 

「ちょっと・・・友希那がそんなこと言うの・・・?」

 

「今井さん。友希那さんが話してるんですから・・・」

 

友希那の言葉にツッコミを入れようとするリサを燐子が止める。

そんなことも知らずに友希那は話を続ける。

 

 

 

「だけどスイッチを使って悪意をばら撒き、人を貶めているあなたとは違って決して愚かではないわ」

 

「愚か?私が・・・?ならスイッチ使ったってことならこいつも私と同類じゃない!!」

 

「・・・っ!!」

 

その言葉を聞いたムスカは自身のスイッチを切ると紗夜を指差して叫ぶ。

 

「紗夜はスイッチを使った・・・。でも、紗夜は自身の罪を悔いている。それに比べて、罪の意識も無く悪意をばら撒き続けているあなたとは違うわ!!」

 

この友希那の言葉を聞いた彼女の怒りは頂点を迎え、手に持っていたスイッチの形が先ほど紗夜が持っていたものと同じものに変わる。

そして、そのスイッチを押して彼女は完全に人間を捨てて友希那へと叫ぶ。

 

「人に対して偉そうに!!」

 

「人の身体と心を捨てた怪物のあなたはもう”人”ではないわ」

 

「さっきからぐちぐちと!!あんたはいったい何なのよ!!」

 

「知らないなら教えてあげるわ・・・」

 

目の前にいる怪物の問いに対して置くする様子もなく友希那は視線を向けてその答えをハッキリと答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は・・・いえ、私達が”Roselia"よ。覚えておきなさい」




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