遊戯王ZEXAL ―BRAVE HEROES― 作:神崎はやて
遊矢→遊輝の修正、なかなか進まなくてすみません……。順次修正は進めますので今暫しお待ち下さい。
では本編どうぞ。
○遊輝
LP:3850
手札:2
○グールズ?
LP:4000
手札:4
「我のターン」
強力なエクシーズモンスターを前にして、何もできずターンを渡すしかなかった遊輝は、カードをドローした男へ警戒の眼差しを向けた。〝ヴェルズ・オピオン〟の攻撃力は2550。場には2000という高い守備力をもつ〝フォレストマン〟がいるとはいえ、次の男のターンで少しでも展開されればそれだけで勝負がついてしまいかねない。危険な状態に変わりはない。
「……我は〝ヴェルズ・オピオン〟で〝フォレストマン〟を攻撃」
どうやら今の男の手札に、これ以上の展開を可能にするカードは存在しなかったようだ。ちっ、と舌打ちして、男は魔竜に攻撃を命じた。漆黒の冷気が〝フォレストマン〟を凍りつかせ、粉々に砕く。守備表示であったおかげでダメージこそ受けなかったものの、これで遊輝の場のモンスターは全滅。状況は依然として芳しくない。
「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」
男の場に実体化する2枚の伏せカード。状況から見て、〝ヴェルズ・オピオン〟を守る--或いは、補助するカードであろうことは間違いない。じわじわと自分が不利になっていくことを自覚しながら、遊輝はカードを引いた。
(どうする……!?)
手札は3枚。1枚は、先ほどの〝フォレストマン〟の効果で手札に加えた〝融合〟。だがこれは、〝オピオン〟の効果でレベル5以上の特殊召喚を封じられた今となっては無用の長物だ。後は、魔法カードと罠カードが一枚ずつ。内、魔法カードの方は今の遊輝の場の状況では全く役に立たないときている。反撃するには心許なさすぎる。
(そういえば……なんであのモンスターの効果を発動しなかったんだろう?)
戦略を練る傍ら、魔竜を観察していた遊輝はふと違和感に気付いた。〝ヴェルズ・オピオン〟は、2つの能力を持つ強力なモンスターエクシーズである。1つは、レベル5以上のモンスターの特殊召喚を封じる効果。そしてもう1つは、デッキから侵略の、と名の付く魔法・罠カードを手札に加える効果だ。オーバーレイユニットを使うとはいえ、単純に使用できる手が増えるこの効果を使わない手はない。少なくとも〝侵略の汎発感染〟を加えていれば、魔法・罠カードから〝オピオン〟を守ることができる。能力の使用にオーバーレイユニット以上のコストが必要となるのであればそれを惜しんだとも考えられるが、先ほどの能力発動時にはそんなものはなかった。
(もしかして……)
はっとして、遊輝は無残に黒く染まった竜を見上げた。能力を〝発動しなかった〟のではなく、〝できなかった〟のだとすれば――!
「……やってみるか。僕はカードを2枚伏せてターンエンド!」
「フン。何を企んでるのか知らんが、融合を封じられた貴様にもはや打つ手はあるまい。我のターン、ドロー……ほう」
男が引いたのは、速攻魔法〝サイクロン〟。フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊できる優秀な汎用魔法だ。これで伏せカードのいずれかを吹き飛ばし、安全に攻撃を通せば男の勝利となるが――。
(だが、問題はどちらを破壊するかだな……)
片方、或いは両方が、このターンの男の攻撃を凌ぐためのカードであることは間違いない。だが、もし仮にいずれかが破壊対象を攪乱するためのダミーであった場合、当たりを打ち抜くことができなければこのターンで勝利できる確率は下がってしまう。
「……速攻魔法〝サイクロン〟を発動。フィールド上の魔法・罠カードを1枚選び破壊する。私が破壊するのは……」
両者の間に緊張が走る。僅かながらの逡巡の後、ややあって男が出した結論は――。
「……その、左のカードだ!」
男が選択した直後、実体化した〝サイクロン〟のカードから発生した竜巻が遊輝の場の伏せカードを襲う。烈風に煽られ、巻き上げられる伏せカード。裏と表、相反する面を交互に晒しながら、〝融合〟の魔法カードが粉々に粉砕され破壊された。
「……チッ、外したか。ならば我は、〝ヴェルズ・サンダーバード〟を召喚する。そしてバトルだ! 〝ヴェルズ・オピオン〟でダイレクトアタック!」
「遊輝君!」
黒い冷気が吐きだされる。全てを凍てつかせるようなブレスが迫り、後ろで見ている小夜子が悲鳴を上げた。
「罠発動! 〝ピンポイント・ガード〟!」
攻撃が遊輝に炸裂する直前、罠カードが間に割り込んだ。大きな岩石でできた手が描かれた罠カード、〝ピンポイント・ガード〟。レベル4以下のモンスターを表側守備表示で墓地から特殊召喚するカードだ。
「僕は〝エアーマン〟を特殊召喚! 特殊召喚に成功したので、デッキから〝E・HERO プリズマー〟を手札に加える」
「……巻き戻しか。まあいい。では〝オピオン〟で〝エアーマン〟を攻撃!」
〝エアーマン〟の守備力はたった300。〝ヴェルズ・サンダーバード〟で攻撃し、〝エアーマン〟を破壊してから〝ヴェルズ・オピオン〟で攻撃していれば大ダメージを与えられたのだが、〝オピオン〟の攻撃宣言時に〝エアーマン〟が召喚されたことで、巻き戻しと呼ばれる処理が発生した。巻き戻しが起こった場合、巻き戻し前に攻撃宣言をしていたモンスターから先に攻撃宣言をしない限り、そのモンスターはこのターン攻撃を行えない。男が遊輝にダメージを与えるには、〝オピオン〟から先に攻撃するしかない。それをよく解っていたのであろう男は、舌打ちしつつも再び魔竜へ攻撃を指示した。
冷気のブレスが風のHEROに襲いかかるが、地面からせり出してきた、人の手を模した巨大な岩が攻撃を阻む。
「何……!?」
「〝ピンポイント・ガード〟の効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、破壊されない!」
「ちっ……しぶといやつめ。我はこれでターンエンドだ」
なんとかこのターンは凌ぎ切ったが、状況は悪くなる一方だ。モンスターを残すことができたのがせめてもの救いと言える。冷や汗を拭って、遊輝はドローした。
「僕は、〝E・HERO プリズマー〟を攻撃表示で召喚。効果でエクストラデッキの〝ネオス・ナイト〟を公開し、デッキから素材となる〝E・HERO ネオス〟を墓地へ送ることでこのターン、〝プリズマー〟は〝ネオス〟として扱う。リフレクトチェンジ!」
遊輝の18番、〝プリズマー〟が〝E・HERO ネオス〟へ変身していく。その様に男は獲物を見つけた猛獣のように舌なめずりをし、後ろで見ていた小夜子と駿は驚いたように〝ネオス〟に変身した〝プリズマー〟の背中を見た。
「遊輝君、どうして……!? あんなに〝ネオス〟を晒すのを嫌がってたのに……」
小夜子の声に、遊輝は僅かに表情を歪めた。
大会デッキに〝ネオス〟を組み込むのは、遊輝としても苦渋の選択だった。この世界の人々は、強いカードやレアカードに貪欲だ。デュエルが生活の一部として当たり前になっている、この世界ならではの特色であると言えよう。それは、グールズやデュエルギャングなどという存在によっても十分に証明することができるだろう。レアカードを持っていることはそれだけでステータスになるし、強いカードは破格の値段で取引されていたりもする。だからこそ、遊輝は〝ネオス〟のことを極力知られないようにこれまで生きてきたのだ。
けれど、本当にそれでいいのか。そう思わせられたのは、鶴屋ショップ大会で戦ったあの少女、宮田ゆまの言葉だった。この先もずっと他人の目に怯えたまま、〝ネオス〟の存在を隠したまま生きていくのか。それで本当に――自分の目指したあの赤い服のデュエリストに、HEROになれるのだろうか。
(だから、僕は――)
だから、遊輝は決意した。これからはもう、恐れない。このカードを守り切れるくらいに強くなって、誰にも負けないデュエリストになると――。
「僕は、レベル4の〝エアーマン〟と〝プリズマー〟でオーバーレイ! 2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚! 現れろ、〝EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ〟!」
「ほう、No.に、伝説の〝ネオス〟までもお目見えとは……。これで貴様を狩る楽しみが増えたわ!」
「いいや、僕はこのターンで貴方を倒す!」
「フン、笑わせるな。貴様のモンスターの攻撃力は〝オピオン〟に劣る2500。しかも〝オピオン〟の効果で、レベル5以上のモンスターの特殊召喚は封じられている。この状況をどう覆すつもりだ?」
確かに、男の言うとおりだった。〝エクストリーム・エッジ〟の効果で相手モンスターの攻撃力を下げ、相手ライフを削りきる、遊輝の必勝パターンとも言える戦法。だが、〝エクストリーム・エッジ〟でたとえ〝オピオン〟を倒すことができたとしても、男のライフを削りきるには僅かに足りない。
そう、本来なら。
「切り札はこれだ! 僕は手札から魔法カード、〝オーバーレイ・キャプチャー〟を発動!」
「何っ!?」
男としても予想外の手であったのか、男が初めて驚愕する。
「このカードは、相手と自分の場にモンスターエクシーズが存在する時、相手モンスターエクシーズのオーバーレイユニットを1つ取り除き、このカードを自身のモンスターエクシーズのオーバーレイユニットにできる。僕は〝ヴェルズ・オピオン〟のオーバーレイユニットを取り除き、このカードを〝エクストリーム・エッジ〟のオーバーレイユニットにする!」
「くっ……」
〝オピオン〟の周りを周回していた、禍々しい紫に輝くオーバーレイユニットが墓地へと吸い込まれていく。苦々しい顔をする男に対し、遊輝は悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた。
「その様子だと、やっぱり〝オピオン〟のレベル5以上のモンスターの特殊召喚を封じる効果は、素材がないと発動しない効果だったみたいだね。でもこれでやっと、高レベルモンスターを召喚できる!」
「おのれ……!」
表情を険しくする男に対し、漸く思い通りの動きができる遊輝は、いくよ、と叫んで意気揚々と手を振り上げた。
「僕は、〝エクストリーム・エッジ〟の効果発動! オーバーレイユニットを1つ使い、墓地のE・HERO一体を特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力分、相手モンスター一体の攻撃力を下げる。……さあ、君の出番だよ。思う存分暴れろ! 〝E・HERO ネオス〟を特殊召喚!」
〝エクストリーム・エッジ〟が大地に穿った穴から、雄々しく声を上げて〝ネオス〟が飛び出した。心なしか、前よりも覇気も増しているように見える。心置きなく戦える、そんな喜びが遊輝には感じられた。
「そして! 〝ネオス〟の攻撃力、2500を相手モンスターから奪う! 〝エナジー・ドレイン〟ッ!」
〝ネオス〟から放たれたオーラが、〝オピオン〟に直撃した。堕ちた氷結界の龍は、弱弱しく頭を垂れた。
○ヴェルズ・オピオン
ATK:2550→50
「攻撃力、50だと……!?」
「更に魔法カード、〝ネオス・フォース〟を〝ネオス〟に装備。攻撃力を800ポイントアップ。〝エクストリーム・エッジ〟で攻撃! ディメンジョン・ディバイドッ!」
『一刀……両断っ!!』
〝エクストリーム・エッジ〟の刃が、攻撃力を大きく削がれた〝オピオン〟を切り裂いた。
○グールズ?
LP:4000→1550
「ぐううぅぅっ……!?」
「これで決める。〝E・HERO ネオス〟! 〝ヴェルズ・サンダーバード〟を攻撃! ラス・オブ・ネオスフォースッ!!」
空高く跳躍する、白銀の光を纏いしHERO。すべての枷から解き放たれた〝ネオス〟は、オーラのたぎる手刀を高く振り上げた。
そして――振り下ろす。〝ヴェルズ・サンダーバード〟に思い切り叩きつけられた手刀は、男の残りライフを丸々削り取った。
「ぐ……あああああああぁぁぁぁっ!」
○グールズ?
LP:1550→0
男のライフが0になると同時に、辺りに充満していた靄が男の身体へ収束していった。それはやがて男の身体を丸々覆い隠し、風とともに何処かへと消え去っていった。
「待て!……あ」
駿のカードを返して貰わねばと遊輝が声を上げると、男が立っていた場所に何やら光るものを見つけて遊輝は駆け寄った。
落ちていたのは1枚のカードと、紅く輝くハートの欠片。
「あ、それ僕のカード……!」
いつの間にか物陰から出てきていたらしい駿の声が背後から聞こえたので、遊輝は振り返ってカードを手渡した。取り戻したカードを大切そうに胸に抱いている駿を見て満足げに頷いた後、遊輝は残ったハートの欠片を己のハートの器へはめ込んだ。どうやら形は持っていたものとは違ったようで、金色の枠の中へ問題なく収まった。
「これで2つだね。遊輝君ならきっとすぐに集まるよ」
「うん、ありがとう」
まずは一勝。アクシデントもあったが、出だしとしては上々だろう。少しだけ埋まったハートマークを見つめ、遊輝の顔にも思わず笑みが零れる。
その笑みを、カードから目を離した駿が複雑な表情で見つめていた。
☆★☆★☆★☆
所変わって、ハートランドシティ郊外の廃工場。風に吹かれて去って行った闇は、そこへと集まっていた。無残に割れた窓から工場の中へ入った闇は、片付けられぬまま手付かずで残されていた、何に使うのかも解らない機材の上に腰を下ろした男の手の中に吸い込まれていく。頭から脛まで、すっぽりと全身を黒のローブで覆った男は、闇が己の身体に染み込んでいく様をじっと見つめていた。
「あーあ、やられちまって。だっせーの」
そんな男へ、話しかける声があった。悪戯好きな少年のような声が響くと同時に闇を全て取り込んだ男は、立ち上がり振り返る。声の主もまた男同様、全身にローブを纏っていて、フードから僅かに覗いている口元は言葉とは裏腹に、状況を面白がっているかのような悪戯っぽい笑みに歪んでいる。
「でもいいの? カードはともかく、ハートピースまであげちゃってさァ」
「No.を持っているというなら、奴とはもう一度戦わねばなるまい。勝ち上がってきてもらった方がむしろ好都合だ」
「ふぅん……」
「我のことはいい。そんなことより、アイラはどこへ行った」
「ああ、ねーちゃん? まだお仕事中だぜ。ま、その内帰ってくるんじゃねぇの?」
それを聞いた男は「そうか」と言うだけに留め、腕にはめていたデュエルディスクから1枚のカードを抜き取った。黒い縁取り、モンスターエクシーズのカードに描かれた竜の絵が、怪しい輝きを放つ。
「〝
「へぇ、アンタのお眼鏡にかなうような闇を持つ奴が、この町にいたのかよ。どんな奴なんだ?」
「いずれ貴様にも紹介しよう。それまで、しっかりと力を蓄えておけ」
「きしし、了解」
不気味な笑いに、男は再び手元のカードへ視線を落とす。カードはもう光を失っていたが、カードから伝わってくる力と存在感は少しも色褪せていない。それはまるで、探し求めていた宿敵を漸く見つけ、来るべき闘いに向け闘争心を燃やしているかのようだった。
「エッジ……」
それは、溢れ出る感情を精一杯押し殺したような声だった。
どうも、神崎です。
というわけで、ヴェルズ使いのグールズ(?)との戦いでした。黒幕らしい人達も出てきて、いよいよストーリーが進めていけるなと内心わくわくしてますw
次回からは、以前のようにTFのキャラをちょくちょく出しつつ、本作オリジナルのキャラも登場させていく予定です。お楽しみに。
アークファイブも始まりましたね。まさかいきなりペンデュラムカードが奪われるとは……。カードアニメにはつきものな展開ですが、いきなりピンチですね。遊矢君にはぜひとも華麗に勝っていただきたいところ。
早くシンクロやエクシーズが出てくれないかなと思いながらアニメを見ている神崎なのでした。
では、次回まで。神崎でした。