遊戯王ZEXAL ―BRAVE HEROES―   作:神崎はやて

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ナンバーズ 20 カイザーの力

○亮太

LP:5500

 

○プロ

LP:3600

 

 

 

「俺のターン。俺は魔法カード、〝サイバー・リペア・プラント〟を発動。〝サイバー・リペア・プラント〟は、墓地に〝サイバー・ドラゴン〟が存在する時のみ発動し、2つの効果から発動プレイヤーはそのいずれかを選択することができる。俺はデッキから光属性、機械族モンスターを手札に加える効果を選択し、その効果で〝サイバー・ドラゴン・ドライ〟を手札に加える」

 

 サーチカードにより、手札を整えた亮太。ここからがカイザーの本領発揮だ。

 現在のところ、ライフの上では有利を貫いている亮太は、迷うことなくディスクの墓地スロットへ手を伸ばす。遊輝には解った。その行動は、1ターン前から計算されていたことなのだと。たとえドローカードが何であろうと関係ない。布石は既に、前のターンで準備されていた。

 

「俺は、墓地の〝サイバー・ドラゴン・コア〟の効果発動」

 

「〝黄泉ガエル〟と同じ、墓地からのモンスター効果……!」

 

「そうだ。このカードは墓地に存在し、自分フィールド上にのみモンスターが存在しない時、ゲームから除外することでデッキからサイバー・ドラゴンと名の付くモンスター1体を特殊召喚できる。俺は新たな〝サイバー・ドラゴン・コア〟を特殊召喚!」

 

 外部装甲もなく、おそらくは素体に近い状態なのであろう黒い機械龍がカイザーのフィールド上に出現した。攻撃力は400と、サイバーモンスターにしては珍しい弱小モンスター。守備力ですら1500程度でしかない。それにゆまは不思議そうに小首を傾げた。

 

「……あれれ? どうして〝サイバー・ドラゴン〟じゃないんです?」

 

 単純な攻撃力だけを見るなら、確かに〝サイバー・ドラゴン〟を召喚する方が理には適っている。いかにサイバーデッキを支える強力なサポートカードであるとはいえ、わざわざこの場面で呼び出す意義はないのではないかとゆまは考えたのだろう。

 その隣で、亮太の意図に気づいた遊輝は呟いた。

 

「それはたぶん……カイザーは、このターンで決めに行くつもりだからじゃないかな」

 

「え……?」

 

「この瞬間、〝サイバー・ドラゴン・コア〟の特殊召喚にチェーンし速攻魔法、〝地獄の暴走召喚〟を発動! 自分フィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された時、互いに自分のフィールド上のモンスターを1体選択し、デッキ、手札、墓地から同名カードを可能な限り特殊召喚する!」

 

 ゆまが訊き返そうとしたその時、亮太の場に1枚の魔法カードが具現化する。その効果にプロは怪訝そうな顔で、不気味な墓のイラストが描かれたカードを睨んだ。

 

「低レベルの雑魚を並べて一体何を…………いや、違う!」

 

「そう。〝サイバー・ドラゴン・コア〟は、フィールドと墓地では〝サイバー・ドラゴン〟として扱われるモンスターだ。つまりその効果対象は……〝サイバー・ドラゴン〟ッ!」

 

 デッキにある残りの〝サイバー・ドラゴン〟2体、そして既に墓地にて眠っていた1体が、眩いほどの光沢を放つ姿を現し咆哮を上げる。一気にフィールドに自身の主力モンスターを並べた亮太は少しも驕ることなく、真っ直ぐに相対するプロのフィールドを見やった。

 

「さあ、貴方も自分フィールドのモンスターを選択して特殊召喚するんだ」

 

「く……俺のフィールドには〝邪帝ガイウス〟しか残っていない。俺はデッキと手札から2体の〝邪帝ガイウス〟を特殊召喚する」

 

 フィールドに並び立つ、互いのエースモンスター。個々の攻撃力こそプロの方が僅かに上回ってはいるものの、それも今だけだ。サイバーデッキは、300ポイント程度の差など易々と踏み越える。

 しかも、この行動の意味はそれだけではなかった。

 

「さすがカイザー、上手いわね……」

 

「何のこと、ツァンちゃん?」

 

「あのプロが使っている帝デッキは、アドバンス召喚に成功した時にこそ真価を発揮するモンスターを主力として構成されています。そしてそれは、〝邪帝ガイウス〟も例外ではない」

 

「……そっか。〝地獄の暴走召喚〟でわざとフィールドに引き摺り出すことで、後続の〝邪帝ガイウス〟の無力化を狙ったんですね!」

 

 そのとおり、とツァンは頷いた。帝デッキは、1体という手頃な数のリリースでアドバンス召喚することができ、またそのどれもが扱い易く、且つ強力な効果を備えている。だが、それが使えるのはあくまでもアドバンス召喚に成功した場合のみだ。こうして特殊召喚されてしまえば効果は発動しない。自分のフィールドを展開するだけでなく、相手の後続のカードもまとめて処理してしまった。

 無駄がない。これがあのカイザーのデュエルかと遊輝は戦慄しつつ、胸の高鳴りを抑えられず、自分でも気づかぬ内に拳を握りしめていた。自分も彼の前にデュエリストとして立ちたくて仕方がない。逸る思いを抑え込みつつ再びフィールドへ目を向けると、ちょうどカイザーが次の動きへ移ったところだった。

 

「そして俺はこのターン、まだ通常召喚を行っていない。〝サイバー・ドラゴン・ドライ〟を攻撃表示で召喚! 〝サイバー・ドラゴン・ドライ〟の効果発動。このカードが召喚に成功した時、自分フィールド上に存在する全ての〝サイバー・ドラゴン〟のレベルを5に変更する。この効果を使用したターン、俺は機械族モンスターしか特殊召喚できなくなるが……俺のデッキのモンスターはその殆どが機械族。何の問題もない」

 

「ちぃっ……!」

 

 元々レベル5のモンスターである〝サイバー・ドラゴン〟に変化はないが、〝サイバー・ドラゴン・コア〟と〝サイバー・ドラゴン・ドライ〟の2体は共にレベルが5に上昇した。これでカイザーの場に、レベル5のモンスターが5体。

 

「来るのか……!?」

 

「俺は、レベル5となっている〝サイバー・ドラゴン・コア〟と〝サイバー・ドラゴン〟でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 光纏いて降臨せよ……機光竜! 〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟ッ!!」

 

 2体の〝サイバー・ドラゴン〟、そして〝サイバー・ドラゴン・ドライ〟を従え、モンスターエクシーズとなった機械龍が新たに手に入れた翼を雄々しく広げ、光の中から降臨した。攻撃力は、元の〝サイバー・ドラゴン〟と同じ2100ポイント。だが、もはやプロも侮ることなど一切しない。サイバーデッキ専用のモンスターエクシーズが、たった2100程度の攻撃力で収まるはずがないのだから。

 

「〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟の効果発動。自分フィールド上の〝サイバー・ドラゴン〟を1体ゲームから除外することで、ターン終了時まで攻撃力を倍にする」

 

「! やはりっ……!」

 

 

○サイバー・ドラゴン・ノヴァ

ATK:2100→4200

 

 

「攻撃力、4200だと……!?」

 

「除外された〝サイバー・ドラゴン・ドライ〟の効果により、自分フィールド上の機械族モンスター1体はこのターン、カード効果で破壊されない」

 

 一度はバラバラになり、〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟に吸収され力を与えた〝サイバー・ドラゴン・ドライ〟のエネルギーが〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟を覆う。全く無駄のないコンボ。だが、これでもまだ足りないことはその場の誰もが解っていた。プロのフィールドには3体の〝邪帝ガイウス〟がおり、〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟で攻撃しても2体残るばかりか、ライフも削り切れはしない。

 だからこそ、誰もが待った。カイザーの次なる一手を。

 

 そして――その期待に応えるように、亮太は手札の魔法カードを徐に高く掲げた。

 

「俺は魔法カード、〝パワー・ボンド〟を発動!」

 

「その、カードはッ……!」

 

「そう! このカードは機械族専用の融合カード! このカードの効果で融合召喚されたモンスターは、攻撃力が倍になる!」

 

 亮太のフィールドにいた2体の〝サイバー・ドラゴン〟が、光の中で1つになっていく。やがて黒い機械龍の隣に、白き双頭の機械龍が降り立った。

 

「融合召喚、〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟! 〝パワー・ボンド〟の効果により、攻撃力は2倍になる!」

 

 

○サイバー・ツイン・ドラゴン

ATK:2800→5600

 

 

「攻撃力……5600……!?」

 

 2体の機械龍が並び立つ。互いに攻撃力は4000を超えており、2体の攻撃が通ればプロのライフはひとたまりもない。が、プロはそれでも動じなかった。その理由は彼の手札にある。彼の手札には、〝クリボー〟のカードが2枚あったのだ。手札から墓地へ捨てることで、戦闘ダメージを0にする効果を持つ低レベルモンスターだ。戦闘破壊は免れないため残念ながら場にモンスターは残らないが、これで少なくとも〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟と〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟の攻撃によって発生するダメージを凌ぐことはできる。場にモンスターが残っていてもライフを根こそぎ削り取られる危険性のあるサイバーデッキを使う亮太と戦うのだと決まった時、密かにデッキに投入したカードの内の1枚であったが、どうやらその選択は間違ってはいなかったらしい、とプロは安堵していた。更に、亮太が使用した融合魔法〝パワー・ボンド〟は絶大な破壊力をモンスターに与える代わりに、エンドフェイズ時に融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受けてしまうデメリットがある。このターンを凌げば亮太は〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟の元々の攻撃力、2800ポイントのダメージを受ける。その後は何らかの手段で帝をアドバンス召喚し、その効果により〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟を排除することさえできれば、まだまだプロにも逆転の可能性はある。

 

(さあ……攻撃するならさっさとして来い……!)

 

 身構えるプロの前で、亮太が、皇帝(カイザー)が動く。手を大きく振り翳し、2体の機光竜へ攻撃を命じた。

 

「バトル! 〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟で、1体目の〝邪帝ガイウス〟を攻撃! 〝エヴォリューション・ツイン・バースト〟!」

 

「手札から〝クリボー〟の効果発動! 手札のこのカードを捨てることで、俺への戦闘ダメージを0にする!」

 

 〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟の攻撃の余波がプロまで届く直前に、全身が焦げ茶色の毛で包まれた小柄な悪魔、〝クリボー〟が現れる。甲高い鳴き声を上げて消滅し、プレイヤーへのダメージを掻き消した。

 

「〝クリボー〟……。かのデュエルキングが、信頼を置いていたカードの1枚か」

 

「そうだ。成績優秀なようで何よりだよカイザー」

 

「ふ……面白い。〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟は、1度のバトルフェイズで2回攻撃できる。2体目の〝邪帝ガイウス〟へ攻撃! 〝エヴォリューション・ツイン・バースト〟、第二打ァ!」

 

「まだまだ! 〝クリボー〟!」

 

 2体の邪帝がレーザー光線に焼かれ粉々に爆散する中、男へのダメージは〝クリボー〟が身代わりとなる。プロは未だに無傷のままだ。

 

「〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟で攻撃!」

 

「それは受ける……ぐっ」

 

 

○プロ

LP:3600→1800

 

 

 手札に〝クリボー〟はもうない。やむを得ず、プロは大人しくダメージを受けた。ここまで目立ったダメージを受けていなかったプロのライフがついに大きく動いたとあって、ギャラリーの間からもカイザーの健闘を讃える歓声が上がる。

 

「惜しかったな。大した攻撃だったが、それでも俺のライフを削りきるには至らなかった」

 

「もとより、プロ相手にそう簡単に勝利をもぎ取れるとは思っていません。……エンドフェイズ、俺は本来、〝パワー・ボンド〟により〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟の元々の攻撃力と同じ、2800のダメージを受ける。だがここで、罠カード〝ダメージワクチンΩMAX〟を発動。これにより俺のライフは、受けたダメージ分回復する。そして、〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟の攻撃力もこのエンドフェイズ時に元に戻る。ターンエンドだ」

 

 

○亮二

LP:5200→2400→5200

 

○サイバー・ドラゴン・ノヴァ

ATK:4200→2100

 

 

「ダメージを帳消しにした……!」

 

「しかもカイザーの場には、攻撃力5600の〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟。帝相手でどこまで残るか解らないけど、これなら……!」

 

 汎用性の高い帝モンスターの中でも、特にとびぬけて優秀な効果を持つ〝邪帝ガイウス〟は既に全て墓地へ送られている。他にはデッキの一番上へ相手モンスターを戻し、除去とドロー操作の両方を一度に行える〝風帝ライザー〟が恐ろしくはあるが、それで排除できるモンスターは1体まで。もう1体は残すことが可能だ。今の攻防で手札も消費してしまったプロは、若干苦い顔をしながらカードを引く。

 すると、ドローカードを見たプロの表情が途端に変わっていった。

 

「はは……ははははははっ! 〝邪帝ガイウス〟を排除したのは確かに見事だった。……が、帝モンスターは〝ガイウス〟だけではない! 俺のデッキには、まだまだ強力な効果を持つ帝たちが眠っているんだよ! 俺は手札から速攻魔法、〝帝王の烈旋〟を発動!」

 

「そのカードは、相手モンスター1体をアドバンス召喚のリリースに使えるようにする魔法カード……!」

 

「そうだ。これでお前のモンスターは俺の帝の糧となる! 俺は永続魔法〝進撃の帝王〟を発動し、そしてお前の場の〝サイバー・ツイン・ドラゴン〟をリリースして……現れろ、〝風帝ライザー〟!」

 

 風を操る〝帝〟、〝風帝ライザー〟。帝モンスターの中では邪帝に並び厄介とされる帝が降臨した。

 

「〝風帝ライザー〟の効果発動。相手の場のカード1枚を相手のデッキの一番上へ戻す。デッキに戻れ、〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟!」

 

 〝風帝ライザー〟の放つ烈風にあおられ、たまらず〝サイバー・ドラゴン・ノヴァ〟がエクストラデッキへと戻っていく。これでカイザーの場に、壁となるモンスターはいなくなった。

 

「形勢逆転だな。お前の場にもうモンスターはいない。〝風帝ライザー〟でダイレクトアタック!」

 

「ぐぅっ……!?」

 

 

○加賀美亮二

LP:5200→2800

 

 

 ごっそりと削られる亮太のライフ。それを見て、ギャラリーの中からは落胆の声が上がった。やはりこれがプロとアマの違いかと、誰もが劣勢に追い込まれた亮太の敗北を予感したのだろう。それは、その中に混じって観戦していたツァンとゆまも同様だった。

 

「あぅ……やられちゃいました」

 

「残念だけど厳しいわね……。さすがのカイザーもプロには勝てなかったか」

 

 まるで自分のことのように悲しむゆまと、プロの手腕に舌を巻きながらも肩を落とすツァン。反応はそれぞれだが、いずれもカイザーが敗北する未来を疑おうともしていないだろう。

 遊輝もまた、苦しい状況に目を伏せようとして――。

 

(……え?)

 

 偶然か否か、直前にちら、と遊輝の方へと視線を向けた亮太と目が合った。と同時に、遊輝の視線は彼の目に釘付けになった。強い意志を秘めた、活力の光に満ちた瞳。どんなことがあっても勝利を掴んで見せるという執念と――そんな野心を抱きながらも対戦相手に敬意を払い、全力で、最高のデュエルをしようという信念。その全てが籠った眼差しに、遊輝は気圧された。

 

「〝進撃の帝王〟により、アドバンス召喚されたモンスターは効果の対象にならず、効果で破壊されることはない。……プロ相手によくやったと誉めてやろう、アカデミーのカイザー。だが、もうお終いだな。お前の手札はたった1枚。壁となるモンスターも残ってはいない。この状況で、俺に勝つ手段があるとでも言うのか?」

 

「……我がサイバー流のリスペクトデュエルは、相手をリスペクトし、最高のデュエルの末に勝利を掴み取るという信念だ」

 

 プロの挑発に、亮太は目を伏せて語り始めた。静かに、しかし確かな意思を込めて、亮太は己の信念を言葉として紡ぐ。

 

「先代のサイバー流継承者は初代の掲げたその理想の意味を考え、実践し……様々に昇華させていった。そしてそれは俺も同じ。パーフェクトという、ただ一点の頂を目指してここまで努力してきたつもりだ。そしてこれからも、俺は絶対に諦めずに前へ進む。……さあ。見せてやろう、俺なりの答え(パーフェクト)を!」

 

 目を閉じ、一息にカードを引く。これだけの逆境にあって、それでもカイザーは諦めていないのか――。ギャラリーが固唾を呑んで見守る中、ドローカードを確認したカイザーは迷うことなく、既にその手に握っていたカードををディスクへ押し込んだ。

 

「〝サイバー・リペア・プラント〟発動。……説明は不要だな。デッキから光属性機械族モンスター1体を手札に加える」

 

「はっ、それがどうした! どんなカードが来ようと、下級サイバー如き、俺の〝風帝ライザー〟の敵では……」

 

 カイザーの意思に答え、彼のデッキから1枚のカードが排出された。そのカードを華麗に受け止め、カイザーは徐に顔を上げる。

 

「召喚、〝サイバー・ドラゴン・コア〟! 効果で〝サイバネティック・フュージョン・サポート〟を手札に加える! そして……〝パワー・ボンド〟発動!」

 

「馬鹿な、お前の手札は魔法カード1枚しか……っ!」

 

 言いかけ、プロの表情が変わっていく。

 そうだ。〝サイバー・ドラゴン・コア〟の効果で加えたあのカードがあれば――!

 

「速攻魔法! 〝サイバネティック・フュージョン・サポート〟! ライフを半分払い、機械族融合モンスターの融合素材を墓地のモンスターで代用できる。俺は墓地の〝サイバー・ドラゴン〟3体を除外!」

 

 

○亮太

LP:2800→1400

 

 

 3体の機械龍が1つになる。〝パワー・ボンド〟の力を得て、かつてないほどの力を手に入れた巨竜が、帝王の眼前に降臨する。

 

「さあ、今こそ現れろ……我が最強の僕! 〝サイバー・エンド・ドラゴン〟ッ!」

 

 

○サイバー・エンド・ドラゴン

ATK:4000→8000

 

 

「あ……」

 

 遊輝は、声も出せなかった。僅かに絞り出すのが精一杯で、フィールドに旋風を巻き起こした三つ首の巨竜を見上げることしかできない。それほどの、威圧感だった。

 

「攻撃力、8000だと……!?」

 

 これほどの攻撃力があれば、もはや耐性など無意味。モンスターよりも先に、プレイヤーのライフポイントが燃え尽きるのみだ。

 

(これが、カイザー……加賀美 亮太のデュエル……!) 

 

「バトルだ。〝サイバー・エンド・ドラゴン〟で〝風帝ライザー〟を攻撃!」

 

 〝サイバー・エンド・ドラゴン〟の3つ口が開く。大きな咢に巨大なエネルギーが集中していき――。

 

「……〝エターナル・エヴォリューション・バースト〟ッ!」

 

 主の命に従い、解き放たれた。8000もの数値を秘めた暴力的な一撃。その差5600のダメージが、プロに残されたライフを一瞬で消滅させた。

 

 

「ぐ……おおおおぉぉぉぉっ!」

 

 

○プロ

LP:1800→0

 

 

 光の奔流に飲み込まれ、大きく吹き飛ばされるプロ。ライフポイントが0を刻み、AR空間が解除されると同時にギャラリーからも歓声が上がった。

 デュエルディスクをD-パッドへ戻すと、亮太は仰向けに倒れたプロの元へと徐に歩いていく。

 

「く……これが、お前の……カイザーと呼ばれし男のデュエルかっ」

 

「ありがとうございました」

 

「いや、こちらこそ。ナイスデュエルだったぜ。最後の一手のために、〝コア〟の効果で〝サイバー・リペア・プラント〟を確保していたんだろ?

 

「……バレていましたか」

 

「全く、大した奴だ。……プロでそこそこの活躍をして、天狗になっていたのは俺の方だったようだ。まだまだだな」

 

「こちらこそ、いろいろと勉強になりました。また機会があれば、ぜひお手合わせを」

 

 デュエルを終えた2人は、ARヴィジョンが解かれると同時に歩み寄り、互いの健闘を讃え合う。

 

「……なんかいいね、ああいうの」

 

「……はい」

 

 デュエル中は皆孤独だ。対戦相手と煽りの応酬をすることもある。それでも、デュエルが終われば1人の人間として対戦相手に最大限の敬意を払う。当前のことだが、この世に数多いるデュエリストの中にそれを実践できる者が、果たしてどれほど存在するのだろうか。

 デュエルの腕だけではない。カイザーは、その名に恥じぬ気高き魂を確かにその身に宿していた。

 

「さて」

 

 プロと別れたカイザーは、遊輝の方を振り返った。その目から迷いが消え、希望と活力に満ちているのを見てふっとほほ笑む。

 

「どうやら、吹っ切れたようだな」

 

「はい!」

 

 言葉にもはや迷いはない。このまま亮太とのデュエルに発展してもおかしくないほどに、遊輝の目は輝きを取り戻していた。

 だが、亮太は微笑みつつも目を伏せて首を振る。

 

「……いや、やめておこう。君と戦うのは俺も楽しみにしているんだ。だが、やはりそれはこんな場所で行われるべきじゃない」

 

「え……?」

 

「決勝まで勝ち進んで来い、田神遊輝。そこで存分に戦おうじゃないか」

 

 それは、挑戦状だった。あの帝王から、遊輝へ向けて叩きつけられた挑戦状。最高の舞台で、最高のデュエルを。それは遊輝も望んでいたことで、遊輝は笑みを浮かべて力強く頷いた。

 

「……解りました。僕もすぐにピースを揃えてみせます!」

 

「その意気だ。……では、決勝でな」

 

 遊輝の肩をポンと叩き、亮太は公園の出口へ向かって歩いていく。去っていく後ろ姿も、なかなかどうして様になっている。これはファンクラブができるはずだと、遊輝は妙なところで納得した。

 

「かっこいいなぁ……」

 

「ま、アンタには無理ね」

 

「ツァンちゃん、失礼ですよぉ。大丈夫ですよ遊輝君! 遊輝君は充分可愛いですからっ!」

 

「あ、はは……それはそれで、複雑なんですけど……」

 

 男としてはぜひともかっこいいという評価をもらいたいところではあるのだが、自信満々に言いきって見せたゆまの様子に口を挟むのが憚られ、苦笑するにとどめる。褒めてくれているであろうことは伝わるので、将来性はあるのだろうと強引に納得することにした。

 

「さて、と。デュエルは終わったけどお昼にはまだ余裕あるか。ゆま、これからどうする?」

 

「私は……一旦、戻ろうと思います。実は慌てていてお財布を忘れてきてしまって……」

 

「ええー……。もう、そそっかしいなぁ」

 

「えへへ……」

 

「いや、褒めてないって……。え、えーと。まあじゃあそういうことだから、僕達は行くね。アンタも精々頑張んなさいよー」

 

「またお会いしましょう、遊輝君!」

 

 慌ただしく去っていく2人に手を振っていると、次第に賑やかな声が遠ざかっていく。2人を見送ってほっと一息ついたところで、傍らに姿を現したエッジが口を開いた。

 

『……そろそろいいか?』

 

「……エッジ?」

 

『言いたいことがある。……様子がおかしかったようだから、一応これまでは黙っていたのだがな。だが、もうその心配もなかろう』

 

「へぇ、君でも僕を心配してくれることがあるんだ?」

 

『……単刀直入に言う。この大会、我は貴様が何を求めて戦っているのかは知らん。興味もない。が、我にとってみればこの大会はNo.を回収するまたとない機会。いいか、No.を持つと思われるデュエリストを優先的に狙え。それ以外はどうでもいい』

 

 冗談交じりに返す遊輝を無視して、エッジはそう言い切った。そんな彼の物言いに、遊輝は眉を顰める。確かに彼にしてみれば、強大な力を持つ秘宝が敵の手に渡るかどうかというところであり、急かしたくなる気持ちも解る。もし遊輝が彼の立場なら、大会という最高の好機にたったの1枚しかNo.を回収することができていない現状を見れば焦りもするだろう。

 だが。

 

「悪いけど、僕だって君と一緒にいるのはただ君を手伝うためじゃない。……いや、違う。さっきまでは確かにそうだった。けど、カイザーのデュエルを見て解ったんだ。僕がするべきは、ただ惰性で君を手伝うことじゃないって。No.は皆の平穏を奪っていく。なら、その危険から皆を守ることこそが僕の役目なんだ、って」

 

『……何が言いたい』

 

「僕は君の言いなりにはならないってことさ。僕は僕の意思でデュエルする。No.を求めるんじゃない。No.で苦しんでる人を助けるためにデュエルする。カイザーのデュエルを見て、そう決めたんだ」

 

 No.は集める。が、それはあくまでも遊輝の第一目標ではない。No.に日常が侵されるならば、そのNo.から人々を助ける。それこそが力を得た己の役目なのだと、遊輝は悟った。

 決意を込めた遊輝の視線を正面から受けたエッジは、眉を寄せて睨みつける。正面から睨み合う2人。沈黙が両者の間を支配する中、それを破ったのは遊輝でもエッジでもなく、第三者の声だった。

 

 

 

 

 

 

「……おい。今、No.っつったか?」

 

 

 




はい、というわけでカイザーの小説内初デュエルでした。

今回はサイバー流らしさを強調したかったので、インフィニティさんには自重していただきました。サイバーは脳筋さが楽しいデッキなのでパワー・ボンド連発も書いていて爽快でしたね。

クリボーが入っていたり、永続魔法のサポートカードが入っているにも関わらず黄泉ガエルが入っていたりと、プロの帝デッキの方が意味不明な構築になってしまっていますね。全てサイバー流の馬鹿火力のせいなんだ(

では、次回も宜しくお願い致します。
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