遊戯王ZEXAL ―BRAVE HEROES― 作:神崎はやて
その人は、いつも輝いていた。
いや、その人だけではない。その人が操る数々のHEROと呼ばれるカード達。デュエルで彼らが活躍する度に、周りはいつも輝きに満ちていた。そんな彼に、幼く父を亡くしていた遊輝が憧れぬはずもなかった。男に憧れ、男が操るエースカード、ネオスに憧れ――男が街を去った頃、遊輝はHERO使いとなる決意をした。
そんな遊輝が、小学生になった頃だった。当時のI2社の特別企画で、ジュニアクラスのデュエリストを招いたデュエル大会が開かれることになった。それが、ペガサスカップ。優勝賞品は、優勝者の希望するカードのレプリカ。たった1枚だけだが、夢にまで見たカードを手にすることが出来るチャンスを与えられるのだ。
田神 遊輝。彼こそが、その初代チャンピオンであった。
☆★☆★☆★☆
「〝E・HERO ネオス〟を召喚っ!」
白い肌の逞しい肉体を持つ宇宙から来たHEROが、遊輝の場に舞い降りた。攻撃力、2500。歴代のデュエルの猛者達がエースとしたモンスター達の1体である。
〝ネオス〟という1体を前にして、不良の男は驚きに言葉も発せずにいた。いや、彼だけではない。彼の取り巻きの不良達や、遊輝の背からその勇姿を見ていた駿もまた、〝ネオス〟の召喚に呆気にとられている。
「〝ネオス〟……だと!? まさか、そんな馬鹿な……!」
漸く声を発することの出来た不良でさえ、ようやっとそんな言葉を吐くのが精一杯。かの伝説のデュエリスト、伝説のヒーロー使いと謳われるデュエリストのエースカードというのだから当然の反応なのだが、周囲のあまりの反響に遊輝は頬を掻きながら苦笑した。
「あはは、残念ながらレプリカなんだけどね。でも……力は本物さ! 〝E・HERO ネオス〟で、〝バンディッド・デーモン〟を攻撃! 〝ラス・オブ・ネオス〟ッ!」
遊輝の声に応え、高く跳躍する〝ネオス〟。腕に付いた鋭いエッジを煌めかせて、強烈な手刀が〝バンディッド・デーモン〟を大上段から切り裂く。
「やった!」
煙に包まれる〝バンディッド・デーモン〟の姿を見て、駿が歓喜の声を上げた。
〝バンディッド・デーモン〟の攻撃力は、〝ネオス〟よりも劣る2400。普通なら、今の戦闘で〝バンディッド・デーモン〟は破壊されているはずだ。
――しかし煙の晴れた後、そこには傷1つない〝バンディッド・デーモン〟、その異形の身体が変わらず佇んでいた。
「ど、どうしてっ!?」
「馬鹿が、〝バンディッド・デーモン〟の効果だ! こいつはな、ENo.と名のつくカード以外とのバトルでは破壊されないんだぜ!」
「そんな……!」
遊輝はEXNo.など持っていない。遊輝はカードを1枚伏せるが、そのカードが真価を発揮するのは、残念ながら今ではない。
〝バンディッド・デーモン〟はまだ、オーバーレイユニットを1つ残している。〝バンディッド・デーモン〟のモンスター効果は、1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ使うことで相手モンスター1体のコントロールを奪う。エンドフェイズにそのモンスターは破壊され、〝バンディッド・デーモン〟のコントローラ――この場合は、不良のライフに1000ポイントのダメージを与えるが、男のライフはまだ1100。次のターンで〝ネオス〟を奪われ、〝バンディッド・デーモン〟と共にダイレクトアタックを受ければその時点で遊輝の負けだ。仮に防ぎきったとしても、男のライフは僅か100ながらも残り、場には実質的に戦闘で破壊できない〝バンディッド・デーモン〟が残る。一方で遊輝の場は、〝ネオス〟が奪われたことによりモンスターはなく、場には発動にまだもう1ターンかかる〝フューチャー・フュージョン〟と、伏せカードが残るのみ。手札も0だ。
絶望的な状況になることを予想して歯噛みしつつ、遊輝はターンエンドを告げた。
「俺のターン! ドローッ!」
それを、男も理解しているのだろう。不良の男の顔に浮かぶ笑み。駿自身の勇気やプレイングの問題もあるのだろうが、伊達に彼からカードを奪い続けていた男ではない。遊輝は無意識に身構えた。
「俺は、〝バンディッド・デーモン〟の効果発動! オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体のコントロールを得る! 対象は勿論〝ネオス〟だ!」
(来たかっ!)
「ね、〝ネオス〟がっ……」
駿の上ずった声が聞こえてくるのと同時、〝バンディッド・デーモン〟が妖しく舌なめずりし、〝ネオス〟へ向けて手を伸ばす。半透明な手の触手が〝ネオス〟を絡め取り、抵抗虚しく〝ネオス〟は男のフィールドへと移る。駿の声にならない悲鳴が背後から聞こえ、遊輝は眉を顰めた。
「ははははぁ、見たかぁ! 伝説の英雄も、俺様にかかればこんなもんだ!」
「〝バンディッド・デーモン〟の力だけに頼っている癖に……!」
「負け惜しみ言うんじゃねえよ。勝ちゃいいんだろ、勝ちゃあ!」
せめて口だけでも強がって見せようと遊輝は不敵にも笑いながらそう言うが、状況がそれで進展するわけもない。〝ネオス〟を奪われ、遊輝のフィールドにモンスターはいない。この攻撃を凌げなければ遊輝の負けだ。
「バトルだ、〝バンディッド・デーモン〟でダイレクトアタック!」
妖しい悪魔が遊輝に迫る。血塗られしダガーを構えた手の奥にある悪魔の顔が、勝利を確信して醜く歪んだ。
ダガーは遊輝の腹部に突き刺さり、残された命を大きく削る。
「ぐ、がぁっ……!」
○遊矢
LP:3400→1000
「遊輝君っ!」
〝バンディッド・デーモン〟が遊輝にダメージを与えた瞬間、駿の悲鳴が響き渡る。〝バンディッド・デーモン〟の攻撃力は2400。直接攻撃(ダイレクトアタック)により、その数値そのままが遊輝のライフから削られた。
しかし、これで終わりではない。男の場には、まだ攻撃を宣言していないモンスターがいるのだから。
「これで終わりにしてやるぜ……行け、〝ネオス〟! 主をその手で葬り去れ!」
必死に抵抗しながらも、しかしデュエルの強制力には勝てず手刀を構える〝ネオス〟。攻撃力は2500。このダイレクトアタックが決まれば、ライフポイントたったの1000の遊輝では到底耐え切れない。不良の男は、勝利を確信した。
しかし――その時、結果の見えていたその戦闘に割り込む影があった。
「な、何だ!?」
〝ネオス〟の手刀は止まらない。振りかぶった腕はそのままの勢いで、眼前の敵に降り下ろされた。悪魔のような鎧を身に纏った人型のモンスターが、〝ネオス〟の〝ラス・オブ・ネオス〟を受け止める。
「ふぅー、危なかったぁ……」
「な、何だそれはっ!」
「僕は墓地から、〝ネクロ・ガードナー〟の効果を発動したのさ」
遊輝が取り出したカード、〝ネクロ・ガードナー〟。悪魔のような姿をしているが歴とした戦士族のモンスターで、墓地にあるこのカードをゲームから除外することで、一度だけ相手モンスターの攻撃を無効にできる効果を持つ。
「そうか、あの時……〝未来融合〟で、〝ネオス〟と一緒に墓地へ送った闇属性モンスターは……!」
「そういうことっ」
〝ネオス〟は組み合いになった〝ネクロ・ガードナー〟へ向け頷いた。まるで己の意にそぐわぬ攻撃を、身を挺して止めてくれた彼に感謝の意を述べるかのように。
それに対しまるで「気にするな」と言うかのように頷き返した〝ネクロ・ガードナー〟は、押し込まれた〝ネオス〟の手刀に破れ、命を散らせた。
「ちぃっ、小賢しい真似を……。俺は手札を3枚伏せ、魔法カード非常食を発動。場の魔法・罠カードを墓地へ送り、1枚につき1000ポイントのライフを回復する。ターンエンドだっ!」
男がターンの終了を宣言すると同時に、破壊という形で〝ネオス〟は漸く〝バンディッド・デーモン〟の呪縛から解き放たれた。
せめてもの恨みと言わんばかりに、その爆発の余波が男を襲い、ライフを奪い去る。
○不良
LP:4100→3100
「どうだ! お前の場に既にモンスターはない。手札も0。この状況で、どう逆転するつもりかな?」
「くぅ……僕の、ターンッ!」
続く遊輝のターン。カードをドローした遊輝の表情が強張った。
相棒である〝ネオス〟を失い、男の言うとおり彼の場にモンスターはない。男の場に伏せカードはなく、遊輝の行動を阻む要素は何1つないが、男の場には戦闘で破壊できない〝バンディッド・デーモン〟。あれがある限り遊輝は男に決定打を与えることも出来ず、破壊できたとしても彼のライフは非常食の効果で3100ポイントも残っている。
タイミングが指定されておらず、どんなタイミングでもチェーン出来る罠、フリーチェーンのカードにチェーンして発動するのが普通だが、男が何も考えていないだけなのか、それとも念には念を入れようとしたのかは解らない。1つだけ確かなことは、ライフを回復したタイミングがあまりに悪かったということだ。
遊輝の場に残された伏せカードは〝リビングデッドの呼び声〟。もしあのタイミングで男がライフを回復していなければ、エンドフェイズに〝バンディッド・デーモン〟の効果によるダメージで、男のライフは100になっていた。そこへ〝ネオス〟を復活させれば、たとえ〝バンディッド・デーモン〟そのものは破壊できなくても、攻撃による超過ダメージで遊輝にも十分勝機があったのだ。
それが、奪われた。どんなカードを出そうと、このターンで勝つことは出来ない。たとえ〝ネオス〟を召喚して凌ごうとも、男がその数ターンを生き延びさせてくれる保証はどこにもないのだ。
「ぎゃはははっ、万策尽きたようだな。……どうだ、降参(サレンダー)しねえか。サレンダーして、大人しくデッキを渡せ。そうすれば、あいつのカードだけは返してやってもいいぜ?」
「……え」
策に詰まっていた遊輝は、不良の言葉にどきりとした。デッキの上に手を置くことは、サレンダーといって、降参するという意味を持つ。今サレンダーすれば、駿のデッキは戻ってくる。このデッキさえ差し出せば――。
(いや、でも……)
〝ネオス〟を始め、このデッキには遊輝の思いと可能性が詰まっている。易々と渡せる程安い代償ではない。
負ければ、駿のカードも取り戻せない。けれど、サレンダーをすれば彼のカードだけでも守ることが出来る。不良が本当にその約束を守る保証などどこにもなかったが、それでも僅かでも可能性が残されているのなら致し方ないという思いもあって、遊輝の手がデッキの上へ伸びかけた――その時。
――お前は、本当にそれでいいのか?
「っ!?」
また、あの声――廃工場で感じた、あの声が頭に響いた。
――勝ちたいのだろう? なら、力を求めればよい。お前の望む力は……お前の、デッキケースの中にある
「ケースの、中……?」
声に導かれるままに、遊輝はデッキケースを開いた。途端、ケースの中に満ちていた光が解き放たれて遊矢の手元を眩く照らす。
遊輝は、光の源――エクストラデッキに眠っていた、1枚のカードを取り出した。
「これって、さっきの……!」
それは、先程廃工場で拾った、絵柄が白紙で、テキストが意味不明の文字で描かれたカード。それが今、眩い程の光を放っていたのだ。
――さあ、力を……我という名の力を手にしろ。さすればお前の道は、必ずや開かれる……。
「どうした、さっさとサレンダーしやがれ!」
不良の急かす言葉に、遊輝は真っ直ぐに不良を見つめ返す。
ただし、もうサレンダーなどという意思はない。ただ、目の前の相手を倒すために――その力を振るう!
「僕は、場に伏せた罠カード、〝リビングデッドの呼び声〟を発動!」
「ほう、まだデュエルを続ける気力があったか……」
その勇気に感心したのか、それとも蛮勇だと呆れたか、肩を竦める不良の男。
勝利を確信している男。だがそれは彼だけに言えることではない。声に導かれるままにカードを操る遊輝こそが、ここからの展開を――真の勝利者が、誰であるかを知っている。
「〝リビングデッドの呼び声〟の効果により、墓地のモンスターを1体復活出来る。狙いは〝ネオス〟か? 確かに〝ネオス〟なら攻撃力は〝バンディッド・デーモン〟より上だ。けどな、このデッキにゃたった100の差なんざ一瞬で逆転できる装備魔法が山ほど眠っている! お前の抵抗なんざ無意味なんだよ!」
「ゆ、遊輝君……」
不良の言葉に、駿は遊輝の負けを確信して顔色を青くする。やはりダメだったと、早くも駿の心に諦めの気持ちが去来する中、遊輝はいつになく冷静だった。
「……僕が復活させるのは、〝ネオス〟じゃない」
「何っ!? じゃあ何を……」
「僕が復活させるのは、このモンスターだ! 墓地から現れよ、〝E・HERO エアーマン〟ッ!」
表になった〝リビングデッドの呼び声〟のカードヴィジョンが妖しく発光し、地面に開いた魔法陣の穴から〝エアーマン〟が勢い良く躍り出る。
「はっ……ははははっ! 驚かせやがる! たった攻撃力1800のモンスターを召喚して何になる!」
「〝エアーマン〟には召喚と同時に発動する効果が2つある! 1つは、〝エアーマン〟以外の自分フィールド上のHEROの数だけフィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊できる効果。そしてもう1つは、自分のデッキからHEROと名のつくモンスターを1枚手札に加える効果だ! 僕は後者を選択し、〝E・HERO バブルマン〟を手札に加えるっ!」
〝エアーマン〟が風を巻き起こし、それがデッキから1枚のカードを巻き上げ遊輝の手に収まる。
旋風が、また新たな風を呼ぶ。こうして、絆は紡がれていく。
「〝バブルマン〟の効果。手札がこのカードだけの時、このカードは特殊召喚出来る」
「そんな雑魚、何体並べようが!……待てよ、レベル4のモンスターが2体?」
墓地にある〝ネオス〟の存在ばかりに気を取られていた男は、直前まで気付かなかった。〝エアーマン〟と〝バブルマン〟は、どちらもレベル4のモンスター。レベルが揃うということがこの世界で何を意味するのか、全く気づいていなかったのだ。
「僕は、レベル4の〝エアーマン〟と〝バブルマン〟をオーバーレイッ!」
〝エアーマン〟と〝バブルマン〟が、それぞれ藍と空色の星となって、地面に空いた穴へ吸い込まれていく。エクシーズの超新星が爆発を起こし、新たな可能性を持つ英雄を爆誕させる。
「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚っ!」
手にしたばかりの力――白紙のモンスターエクシーズを、遊輝は天高く掲げた。瞬間、白紙のカードの絵柄が浮かび上がり、幾何学的な意味不明な文字はこの世界の文字に置き換わる。
今ここに、カードは真の力を得た。
「現れろ、EXNo.30! 〝E・HERO エクストリーム・エッジ〟ッ!」
現れた巨大な剣のようなオブジェが、次第に変形して1人の戦士を象っていく。藍色と白の2色で統一された鎧の騎士は、同じ色の大剣ひと振りを手に、雄叫びを上げた。
攻撃力は――2500。ネオスと同格の、新たな英雄(ヒーロー)。
○EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ
ATK:2500
DEF:2100
「ば、馬鹿な……No.だとっ!?」
狼狽えたのは、対戦相手の男だけではない。召喚した遊輝自身も、自らに与えられた力にただ驚嘆する。レベル4同士のエクシーズ召喚は、確かに遊輝のデッキに組み込まれていたギミックの1つではあった。しかしエクストラデッキに入っているのは、この前パックを買って偶然当たり、昼間の遊馬とのデュエルでも使用した〝ジェムナイト・パール〟のみ。声に従い、無意識の内にカードを捌いたのは自分だが、まさかそれがNo.召喚の布石となっていようとは夢にも思わなかった。否、そもそもあの白紙のカードがNo.であったなど、思いもしていなかったのだ。
とはいえ、これで奴を倒す方程式は完成した。絵柄が浮かび、テキストが読めることになって、当然カードの効果も既に遊輝の理解出来るところだ。このカードなら、十分に逆転できる。
――否、このターンで決められる!
「〝エクストリーム・エッジ〟の効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使うことで、自分の墓地のE・HERO1体を特殊召喚できる! 僕の前に甦れ、〝E・HERO ネオス〟ッ!」
「何だとっ!?」
〝エクストリーム・エッジ〟が高く掲げた大剣にオーバーレイユニットが1つ宿り、その切っ先から放たれた光が冥界への道をこじ開ける。地面に開いた穴から〝E・HERO ネオス〟が雄々しく飛び上がり、遊輝の場に再臨した。
「だ、だがっ。たとえ〝バンディッド・デーモン〟を倒されても、俺のライフはまだ残るぜ!」
「いや、このターンで終わりだっ! 〝エクストリーム・エッジ〟の効果。このカードの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力分、相手モンスター1体の攻撃力を下げる! 〝エナジー・ドレイン〟ッ!」
〝ネオス〟の身体から空色のオーラが立ち上り、〝エクストリーム・エッジ〟の大剣に集約する。〝エクストリーム・エッジ〟がそれを振り下ろすと、切っ先からオーラが放出されて〝バンディッド・デーモン〟に直撃した。
力を吸い上げられた〝バンディッド・デーモン〟は、堪らず片膝を付く。
○EXNo.24 バンディッド・デーモン
ATK:2400→0
「ば、馬鹿な……」
「行くよ……バトル! 〝エクストリーム・エッジ〟で、〝バンディッド・デーモン〟を攻撃!」
呆然と立ち尽くす男に遊輝は容赦なく攻撃を宣言した。大剣を片手で悠々と掲げた〝エクストリーム・エッジ〟が高く跳躍し、〝バンディッド・デーモン〟に飛びかかる。攻撃力は、〝ネオス〟と並ぶ2500。しかも、〝エクストリーム・エッジ〟はNo.。〝バンディッド・デーモン〟を戦闘で破壊できる、唯一の存在だ。
「〝ディメンション・ディバイド〟ッ!」
大剣に真っ二つに切り裂かれた〝バンディッド・デーモン〟が、苦悶の断末魔と共に爆散する。攻撃力の差、2500もの数値が不良のライフポイントから引かれる。残りライフに3100もの余裕を残していた不良の男。それが今、ごっそりと削られた。
○不良
LP:3100→600
山賊の名を冠した不気味な悪魔がついに打ち倒され、男の場からモンスターが消え失せた。
憎たらしい、不気味な笑みを浮かべていた悪魔が塵となって消え失せるのを前に、遊輝の場には、ダメージ計算が終わるのを今か今かと待ち受けているモンスターが1体。
「ひっ……」
腕を組み、遊輝の指示を待つ〝ネオス〟の眼光に射抜かれ、不良の男が怯む。〝バンディッド・デーモン〟を信じきっていたのか、男の場に伏せカードはない。今〝ネオス〟の攻撃を防ぐ手段があるとすれば、遊輝が先程使用した〝ネクロ・ガードナー〟のような墓地効果か、手札からのモンスター効果くらいのものだろうが、あの反応を見るとそのいずれもないのだろう。
うろたえる男の表情からは、余裕が完全に消え失せていた。
「〝E・HERO ネオス〟のダイレクトアタック! 怒りの……〝ラス・オブ・ネオス〟ッ!」
「ぎゃあああぁぁぁぁーーーーっ!」
〝ネオス〟の手刀が、モンスターではなく、ダイレクトに男へ襲い掛かる。
攻撃力2500の〝ネオス〟の攻撃力を一身に受け、男のライフポイントが0を刻んだ。
○不良
LP:600→0
WIN、という文字と共にホロウインドウに遊輝の顔写真が表示され、カードのARヴィジョンを映し出していたAR空間が解除される。
どこか電子的であった景色が、元の廃工場へ塗り替えられていった。
「ぐ、ぅぅ……」
〝ラス・オブ・ネオス〟で吹き飛ばされ呻き声を上げる男の身体から、EX24の数字の刻印が消え失せる。
「遊輝君!」
事が終わったと見た駿が、遊輝の下へ駆け寄ってくる。それを笑顔で迎える遊輝の手には、あのカードが握られていた。
〝EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ〟。このカードを手にしたことで、己の運命が大きく動こうとしていることを――彼はまだ、知る由もなかった。
はい、そんなわけで第1回のデュエルが終了。遊輝のEXNo.の登場であります。
じっと堪え、活路を開く。主人公のカードってそんな感じですけど、たまには突破力のあるカードがエースだっていいですよね。
というわけで、今回のオリカはこれ!
○EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ
・属性:光
・種族:戦士
・種:モンスター(エクシーズ・効果)
・召喚条件:レベル4のモンスター×2
・ATK:2500
・DEF:2100
・効果:このカードは、「EXNo.」と名の付くモンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されない。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことで、自分の墓地に存在するHEROと名のつくモンスター1体を選択して発動する。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力分、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力をダウンする。
以上です。
こんな感じで、これからは出てきたオリカは後書きで紹介する形をとろうと思いますので宜しくお願い致します。
さて、これでストックは全て使い切った。ここからが本当の亀以下定期更新となります。全ては他の作品の進み具合次第ですが、気長に待って頂けたら幸いであります。
では、次回まで暫しの別れを。神崎でした。