遊戯王ZEXAL ―BRAVE HEROES―   作:神崎はやて

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ナンバーズ 6 意地

○遊輝

LP:4000

 

○手島

LP:4000

 

「俺様のターンだっ!」

 

 未だ凶悪な闇を纏った手で、手島はカードをドローした。ネオスを除外され、劣勢の遊輝そこへ更に、手島の猛攻が襲いかかる。

 

「俺様は手札から魔法カード、〝戦士の生還〟を発動。その効果により、墓地の〝終末の騎士〟を手札に加える。そして召喚!」

 

 再び降臨する、終末を告げる闇の騎士。それを見て訝しむ遊輝だが、すぐにその意味に気がついた。

 

「〝終末の騎士〟……そうか、さっき使ったオーバーレイユニットは……!」

 

「そういうことだ。〝終末の騎士〟の効果発動。このカードが召喚に成功した時、デッキから闇属性モンスターを墓地へ送る。対象は〝ネクロ・ガードナー〟だ!」

 

 遊輝も使っているモンスター、〝ネクロ・ガードナー〟。墓地のこのカードを除外することで、一度だけ相手モンスターの攻撃を無効にすることが出来るモンスターだ。これで手島はEXNo.自身の破壊耐性に加え、攻撃への防御も獲得したことになる。

 

「ははっ、これで俺様の場は完璧だぜ。どうだ、これで解っただろ。俺様は強い! お前よりも、誰よりもな!」

 

「どうして……どうして、そんなに強さにこだわるんだ?」

 

「周りが俺様に強さを求めるからだ。いいか、デュエルはステータスだ! デュエルで強けりゃ、威張り散らしたところで誰も文句を言うこたぁねえ! 誰も逆らえねえんだよ!」

 

 彼の様子が堪らなくなった遊輝は、思わず問いかける。手島は確かに強い。No.を手にする前のあの一度きりの手合わせで、遊輝は彼の強さを確かに感じ取っていたのだ。そしてそれは、No.を手に入れてからも変わらない。〝終末の騎士〟を利用したカード捌きも、No.の使い方も見事だ。

 けれど遊輝は、No.を手に入れる前とは明らかに違う彼の弱さを、朧げながら感じ取っていた。

 だから。

 

「違う!」

 

「何だと……テメェッ! これでもまだ俺様が弱いってのか!?」

 

「そうじゃない!……君は間違ってる。確かにデュエルが強いことは一種のステータスなのかもしれない。けど! だからって、友達を傷つけていいはずがないだろ!?」

 

 遊輝の言葉に、手島が僅かに反応を示した。

 ふと見渡せば、倒れ伏すデュエリスト達。皆、手島のデュエルを慕い、歩み寄ってきてくれた仲間たちだ。

 彼らを傷つけたのは誰だ。そう、自分自身が、デュエルで――。

 

「手島君っ!」

 

「……うるせぇっ! うるせぇうるせぇうるせぇっ! 俺は強いんだ……そうだ、強ければ皆が俺を認めるてくれんだ……誰だってなっ! いくぜ、俺は〝アビス・イレイザー〟で、〝E・HERO プリズマー〟を攻撃っ!」

 

 遊輝の呼び掛けを振り払うように喚き散らした手島は、〝アビス・イレイザー〟へ攻撃を指示する。主の命を黙して待っていたEXNo.は、待ちかねたとばかりに大剣を振り回すと、〝プリズマー〟へ向けて振り下ろす。

 前のターンで効果を無効にされた〝アビス・イレイザー〟の攻撃力は、2600に戻っている。が、1700の〝プリズマー〟を粉砕するのにはそれでも十分過ぎた。斬られるのではなく、大剣にまるで押しつぶされるようにして、断末魔の声を最後に〝プリズマー〟は消滅した。

 

遊輝

LP:4000→3100

 

「ぐっ……!」

 

「更に〝アビス・イレイザー〟の効果発動! オーバーレイユニットを1つ使い、破壊したモンスターの攻撃力の半分を攻撃力に加えるぜ!」

 

EXNo.34 アビス・イレイザー

ATK:2600→3450

 

「攻撃力、3450……!」

 

 再び3000の大台を超えたNo.の攻撃力に、傍でずっとデュエルの行方を見守っていた小夜子が戦慄する。遊輝もそれは同じだったが、すぐに我に返るとデュエルディスクのボタンを押した。

 

「罠発動、〝ヒーロー・シグナル〟!」

 

 〝プリズマー〟が破壊された場所から立ち上っていた黒煙から光が天空へと駆け上り、空高い場所に〝H〟のマークを投影する。

 

「自分フィールド上のモンスターが戦闘で破壊された時、デッキからレベル4以下のE・HERO1体を特殊召喚出来る! 〝E・HERO エアーマン〟を特殊召喚!」

 

 光と共に降臨したのは、頼れる風のE・HERO。巻き起こす旋風は敵の罠を破り、追い風は新たな仲間を呼び覚ます。

 

「〝エアーマン〟の効果発動。このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分のデッキからHERO1体を選択して手札に加える。E・HERO バブルマンを手札に加える」

 

「ちぃっ……〝終末の騎士〟の攻撃力じゃ、〝エアーマン〟は倒せねぇ……。だが、どんなカードが来ようと無駄だっ! 俺様はこれでターンを終了するぜ!」

 

 手島のエンド宣言と同時に、遊輝は考える。

 このターンで何か策を講じることが出来なければ、次のターンで〝アビス・イレイザー〟の攻撃を受け、確実に遊輝は負ける。たかが3100ポイントのライフだ。手島が新たなモンスターを召喚すれば、一斉攻撃で勝負がついてしまう。

 しかし今、遊輝の場にあるのは〝スカイ・スクレイパー〟と、〝エアーマン〟が1体のみ。〝スカイ・スクレイパー〟の効果で、相手モンスターより攻撃力の低いE・HEROは攻撃力を1000ポイント上昇させることが出来るが、それでも2800止まりだ。〝アビス・イレイザー〟の3450には到底届かない。手札は先程〝エアーマン〟の効果で手札に加えた〝バブルマン〟以外にはなく、エースモンスターのネオスもゲームから除外されてしまった、圧倒的不利なこの状況で遊輝に勝つ見込みがあるとすれば、次のドローしかない。

 

「……お願い、僕のデッキ! 僕のターン、ドローッ!」

 

 祈りを込めて、一息にカードを引く。恐る恐るそれを確認した遊輝の目が、はっと見開かれた。

 

(よし、これならいけるっ!)

 

「手札から魔法カード、〝増援〟を発動! デッキから戦士族モンスター1体を選択して手札に加える! デッキから、〝E・HERO スパークマン〟を手札へ加え、そのまま召喚!」

 

 〝増援〟は、レベル4以下の戦士族モンスターをデッキから手札に加える魔法カード。E・HEROはその殆どが戦士族で構成されるカード群であり、〝増援〟のカードとは相性がいい。

 そして、その効果によって手札に加わった〝スパークマン〟は、直ぐ様場に現れた。攻撃力は1600。レベル4以下のモンスターとしては標準的な能力だが、効果を持っていない通常モンスターのE・HEROの中では主力級の能力値である。

 だが、このカードを選んだ遊輝の意図はそこにはない。

 

「更に僕は、手札から〝E・HERO バブルマン〟を特殊召喚! 〝バブルマン〟は手札がこのカードだけの時、特殊召喚することが出来る!」

 

「はっ、雑魚を幾ら並べたところで怖かねえよっ!」

 

「そして、〝バブルマン〟と〝スパークマン〟でオーバーレイ! 2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚っ!」

 

 〝バブルマン〟と〝スパークマン〟が、それぞれ青と黄の光となって天高く舞い上がり、ARの穴に吸い込まれて膨大な光の爆発を起こす。

 2つの命が衛星となって、全く新しい存在を生み出した。

 

「現れろ、〝EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ〟ッ!」

 

 〝アビス・イレイザー〟とは正反対の、まるで伝承に登場する聖剣を模したかのように神聖なる剣のオブジェが2つのオーバーレイユニットを付き従えて現れ、徐々に変形して人の形を成していく。

 〝EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ〟。遊輝が手にした、新たな切り札。

 

○EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ

ATK:2500

 

「な、なんだとぉっ!? お前もNo.使いだったのか!?」

 

「う、そ……!?」

 

 No.の登場に驚愕しているのは、対戦相手の手島だけではなかった。本来遊輝の味方であるはずの小夜子ですら、〝エクストリーム・エッジ〟の出現に言葉をなくしている。

 それも当然のことか。危険だと、様々な噂が飛び交っていた存在を、遊輝が手にしていたなどと聞いて、ショックを受けぬはずがなかった。否、そもそもNo.の存在自体都市伝説程度にしか認識していなかったのだから、遊輝という実に身近な存在が既にそれに関わっていたということの方が大きいのかもしれない。

 

「〝エクストリーム・エッジ〟の効果発動! 1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ使うことで、墓地のE・HERO1体を特殊召喚し、その攻撃力分、相手モンスター1体の攻撃力をダウンする。僕は墓地から、〝E・HERO プリズマー〟を攻撃表示で特殊召喚し、〝アビス・イレイザー〟の攻撃力を1700ポイントダウン。〝エナジー・ドレイン〟ッ!」

 

 〝エクストリーム・エッジ〟の刃の切っ先が地面へ突き立てられ、開いた墓地へ続く魔法陣の穴から飛び出した〝プリズマー〟から流れ出たオーラが〝アビス・イレイザー〟を覆い、力を奪う。

 

○EXNo.34 アビス・イレイザー

ATK:3450→1750

 

「攻撃力がっ!?」

 

「バトル。〝エクストリーム・エッジ〟で、〝アビス・イレイザー〟を攻撃! 〝ディメンション・ディバイド〟ッ!」

 

 突き立てていた大剣を大きく上段に掲げ、HEROの騎士は跳んだ。

 〝エクストリーム・エッジ〟は、EXNo.。この攻撃が通れば〝アビス・イレイザー〟を破壊でき、一気にダメージを奪うことが出来るが――。

 

「墓地の〝ネクロ・ガードナー〟の効果を発動! 攻撃を無効にするぜ!」

 

「くっ……」

 

 影にように現れた闇の戦士が、〝エクストリーム・エッジ〟の攻撃を受け止めた。これでNo.をもってNo.を破壊するという最大のチャンスは失われてしまったが、それでも遊輝は攻撃を止めない。

 今の〝アビス・イレイザー〟は、攻撃力1750。破壊は出来ずとも、ダメージは通る。

 

「〝プリズマー〟で、〝アビス・イレイザー〟を攻撃! 〝リフレクション・フィスト〟!」

 

 大きく跳躍し、拳を突き出す〝プリズマー〟。攻撃力は1700。〝アビス・イレイザー〟の攻撃力に僅かに届かないが、今遊輝の場には〝スカイ・スクレイパー〟がある。

 〝プリズマー〟が攻撃したダメージステップ時、攻撃力が1000ポイント上昇。攻撃力2700となった〝プリズマー〟の拳が、〝アビス・イレイザー〟の腹に食い込む。自身の効果により破壊は免れた〝アビス・イレイザー〟だったが、それでも痛みは感じているのか、苦悶の声を上げながら腹を押さえた。

 そしてその余波は、ダメージとなって手島にも襲いかかる。

 

○手島

LP:6500→5550

 

「更に〝エアーマン〟で〝終末の騎士〟を攻撃! 〝トルネード・クラッシュ〟!」

 

 跳躍し退く〝プリズマー〟の背後で、腕を組み空中で滞空する〝エアーマン〟の姿が手島の目に映る。〝エアーマン〟は背のプロペラユニットを回転させ、真っ直ぐに〝終末の騎士〟へ突っ込んだ。

 突進を真正面から受け止めた〝終末の騎士〟は、堪らず消滅する。

 

○手島

LP:5550→5150

 

「……ターンエンド」

 

「ちいぃっ……だが、ターンが終了したことで〝アビス・イレイザー〟の攻撃力は元に戻るぜ!」

 

○EXNo.34 アビス・イレイザー

ATK:1750→3450

 

 力を取り戻し、嬉々として雄叫びを上げる〝アビス・イレイザー〟。狂気的なまでの攻撃力を前に気圧されそうになるのを抑え、遊輝は正面から手島を見据えた。

 〝アビス・イレイザー〟のオーバーレイユニットは、前のターンで使い果たした。もう、効果は使えないものと見ていいだろう。だが、それでも攻撃力は3450。かの伝説のモンスター、青眼の白龍ですら超えることの出来ない能力的壁だ。

 

「俺様のターン、ドロー! 手札から、〝切り込み隊長〟を召喚し、効果発動! 手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚する。俺は〝ダーク・グレファー〟を召喚!」

 

 精悍な〝切り込み隊長〟の呼び掛けに応えしは、闇に堕ちた戦士。〝終末の騎士〟と似た効果を持っているが、手島の狙いは――。

 

「俺は更に永続魔法カード、〝連合軍〟を発動。このカードがある限り、全ての戦士族モンスターの攻撃力は、場の戦士族、または魔法使い族1体につき200ポイントアップする!」

 

○切り込み隊長

ATK:1200→1800

 

○ダーク・グレファー

ATK:1700→2300

 

○EXNo.34 アビス・イレイザー

ATK:3450→4050

 

「攻撃力が、4000を超えた……!?」

 

「行け、俺様の子分共! 一斉攻撃だぁっ!」

 

 〝連合軍〟の効果で強化されたモンスター達が、一斉に遊輝のモンスターに迫る。

 〝切り込み隊長〟は、〝プリズマー〟へ。〝ダーク・グレファー〟は〝エアーマン〟へ。そして、〝アビス・イレイザー〟は〝エクストリーム・エッジ〟へ。各々が定めた敵をその剣に沈めると、手島の場へと戻っていく。

 

○遊輝

LP:3100→950

 

「うあああああぁぁぁぁっ!」

 

「遊輝君っ!」

 

 3つの爆発が遊輝を吹き飛ばし、広場の石畳へ叩きつける。ソリッドヴィジョンではない、本物の痛みが身体に走り、遊輝は悶絶した。

 

「ぐ、ぅ……!」

 

「ターンエンド。どうだ! これでも減らず口をぬかす余裕があるのかっ!?」

 

 激昂する手島の姿を、痛みに呻きながら遊輝は真っ直ぐに見つめた。

 どうして彼が、ああなってしまったのか解らない。――否、彼が変わったというより、抑圧されていた感情が爆発したように遊輝には思えた。

 

「……デュエルが強いだけが、全てじゃない」

 

「まだ言うか!?」

 

「何度でも言うよ! デュエルが強くなくったって、絆が本物なら絶対に見捨てない! それが友達ってものでしょ!?」

 

「っ!?」

 

 遊輝の言葉に、今度こそはっきりと手島の表情が動く。

 

「彼らは皆、君の友達だったはずじゃないか!」

 

「う、うるせぇっ! 大体テメェ、今の状況解ってんのか!? お前の場には、〝スカイ・スクレイパー〟が1枚だけ。しかも手札は0! 俺の場には攻撃力4050の〝アビス・イレイザー〟! こんな状況で、よくもそんな口を……!」

 

「僕はまだ諦めない! このドローで……君に勝ってみせる!」

 

 叫び、遊輝はデッキトップに指をかける。

 確かに、状況は彼の言うとおり圧倒的に不利。普通なら、もう勝ち目はないと投げ出すところかもしれない。けれど、今は――このデュエルだけは、諦めたくなかった。ここで諦めれば、彼にこの思いが伝わることはないだろうから。

 

「……ドローッ!」

 

 再度祈りを込めてカードを引いた遊輝。そしてそれをそのまま、デュエルディスクの魔法・罠スロットへ挿入する。

 

 「僕は魔法カード、〝ホープ・オブ・フィフス〟を発動。墓地のE・HEROと名のつくモンスター5枚をデッキに戻し、その後2枚ドローする!」

 

 デッキへ戻したのは、〝フォレストマン〟、〝プリズマー〟、〝エアーマン〟、〝エクストリーム・エッジ〟、〝スパークマン〟の5枚。エクストラデッキへ戻った〝エクストリーム・エッジ〟を除いた4枚をメインデッキへ戻し、デュエルディスクがそれをオートシャッフルする。

 運命のラストドロー。緊張と共に抜き放った2枚を、恐る恐る確認した遊輝は、はっと目を見開いた。

 

「こ、これは……」

 

 ドローカードの中の1枚を見た遊輝の脳裏に、先程のカードショップでのやり取りが過(よ)ぎる。それは、本来はもう1つのデッキのエースをHEROに組み込むべくして投入された1枚。それが今、この局面で己が手に舞い込んだことに運命的なものすら感じながら、遊輝はそれを場に召喚した。

 

「いくよ。これこそが僕のデッキの新しい仲間! 〝レスキューラビット〟を、攻撃表示で召喚っ!」

 

○レスキューラビット

ATK:300

 

 ポン、というコミカルな音と共に現れたのは、工事用のヘルメットを被った兎。攻撃力はたったの300で、手島の戦士達を相手取るには圧倒的に役不足。

 

「か、可愛い……!」

 

「な……て、テメェッ! 俺を馬鹿にしてんのかっ!?」

 

 この緊張感走る局面で、攻撃力たったの300のモンスターを、あろうことか攻撃表示で召喚した遊輝に、思わず本音が漏れてしまった小夜子とは対照的に、手島は声を張り上げた。しかし遊輝は、そんな彼の怒鳴り声にも笑顔を浮かべると、首を横へ振る。

 

「馬鹿になんてしてないさ。このカードは僕の希望の1枚! 〝レスキューラビット〟の効果。場のこのカードをゲームから除外することで、デッキから通常モンスターの同名カードを2枚選択して特殊召喚する。僕はデッキから、〝E・HERO クレイマン〟を2体、攻撃表示で特殊召喚するっ!」

 

 〝レスキューラビット〟が空中で可愛らしくくるりと一回転すると、光の穴が空中に開き、中から硬い土のE・HEROが姿を現す。

 守備力は2000だが、攻撃力はたったの800。けれど、これで条件は整った。

 

「僕は、レベル4の〝クレイマン〟2体でオーバーレイ! 2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚っ!」

 

 2人の〝クレイマン〟が空中で茶の光となって混じり合い、爆発と同時にモンスターエクシーズと化す。

 そう――遊輝が信頼する、仲間の姿に。

 

「現れろ、〝EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ〟ッ!」

 

○EXNo.30 E・HERO エクストリーム・エッジ

ATK:2500

 

「そんな効果が……だが、攻撃力はたった2500しかねえじゃねえか。それでどうやって倒すってんだ?」

 

「更に手札から魔法カード、〝異次元からの埋葬〟を発動。ゲームから除外された〝ネオス〟を墓地へ戻す。そして〝エクストリーム・エッジ〟の効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、墓地のE・HERO1体を特殊召喚することが出来る!」

 

 オーバーレイユニットを切り裂いた〝エクストリーム・エッジ〟の真横に、冥府への扉が開く。幽閉されていた魂の脈動を体現するかのように、穴の中では光がうねっていた。

 

「……まさかっ!?」

 

「そのまさかさ。再び舞い戻れ、〝ネオス〟ッ!」

 

 穴の中から、颯爽と現れる白銀のHERO。鋭い眼光が真っ直ぐに、EXNo.の後ろの手島を射抜く。

 

「ちっ……けど、攻撃力じゃまだこっちのが上だ!」

 

「それでもいくさ! 〝エクストリーム・エッジ〟の効果発動! 復活させたHEROの攻撃力分相手モンスター1体の攻撃力をダウンする!」

 

 〝ネオス〟の攻撃力、2500が手島のモンスターの攻撃力から引かれる。

 〝アビス・イレイザー〟を対象にとれば、攻撃力は1550。遊輝のHEROでも難なく倒せる攻撃力だ。遊輝は迷いなく、効果を〝アビス・イレイザー〟に使用した。

 

○EXNo.34 アビス・イレイザー

ATK:4050→1550

 

「バトル、〝ネオス〟で〝切り込み隊長〟を攻撃! 〝ラス・オブ・ネオス〟ッ!」

 

○手島

LP:5150→4450

 

 勇んで跳んだ〝ネオス〟の手刀が、〝切り込み隊長〟を防御の剣と鎧ごと真っ向から叩き伏せる。ライフの変動は僅かだが、士気と逆転への言ってを手繰り寄せた遊輝に、手島の表情は固い。

 

「戦士族が1体減ったことで、〝連合軍〟の効果により場のモンスターの攻撃力は200ポイントダウンする」

 

○EXNo.34 アビス・イレイザー

ATK:1550→1350

 

○ダーク・グレファー

ATK:2300→2100

 

「更に〝エクストリーム・エッジ〟で〝アビス・イレイザー〟を攻撃! 〝ディメンション・ディバイド〟ッ!」

 

「な、なんだとぉっ!?」

 

 真っ向からのNo.の攻撃。唯一戦闘破壊無効の恩恵を受けられないNo.という敵の一太刀に、ついに〝アビス・イレイザー〟が沈んだ。攻撃力の差、1150が手島のライフから引かれる。 

 

○手島

LP:4450→3300

 

「ターンエンド」

 

「く……俺様のターン、ドロー」

 

 場を逆転することに成功した遊輝とは対照的に、苦渋の表情でカードをドローした手島は、ドローカードを見て更に表情を険しくする。

 

(ちぃっ……モンスターカードじゃねぇ、だと……!?)

 

 彼が今ドローしたカードは二重召喚(デュアルサモン)。モンスターの通常召喚が1ターンに2度行えるようになるカードだ。本来ならばエクシーズ召喚の大きな助けになるはずのカードだが、手札にモンスターのないこの状況では使い道はない。

 意気消沈した手島は、残った〝ダーク・グレファー〟を守備表示に変更してそのままターンエンドを宣言した。

 

「僕のターン、ドロー」

 

 ドローしたカードを見、遊輝は肩を落とす手島へ優しく笑いかける。

 

「てめぇっ! 何がおかしいっ!?」

 

「だって、こんなに楽しいデュエルしてるんだよ? 笑わずにはいられないって」

 

「俺様とのデュエルが楽しい、だと……!?」

 

 呆然とする手島に、そうさ、と遊輝は頷いた。

 

「このドローで、全ての命運が決まる。そう思うと、ついわくわくしちゃう。手島君だってそうでしょ? 少なくとも昨日の大会でデュエルしてる時の君は凄く活き活きしてて、楽しそうだった」

 

「俺様、は……」

 

「だから、また君とはデュエルしたい。今度はこんな形じゃなくて、もっと、もっと楽しいデュエルを!」

 

 本当に楽しそうにデュエルをする少年だと、手島は思った。自分も昔は、こうしてただ楽しくデュエルをしていたのではなかったか。彼の言う――友と、一緒に。

 先程も、攻撃力4050のNo.とそれが従える戦士達を一瞬にして葬ってみせたのだ。手島の表情に、もはや闇はなかった。ただ、この少年のデュエルを最後まで見逃すまいと、目を開く。

 

「〝エクストリーム・エッジ〟の効果発動! 墓地から〝クレイマン〟を攻撃表示で特殊召喚。そして、〝エクストリーム・エッジ〟で〝ダーク・グレファー〟を攻撃!」

 

 〝エクストリーム・エッジ〟の斬撃が、堕ちた戦士を両断する。これで、手島の場にモンスターはいなくなった。

 

「……終わった、か」

 

「バトル! 〝ネオス〟と〝クレイマン〟で、手島君にダイレクトアタック!」

 

 敗北を悟り、両腕を下げた手島に、〝クレイマン〟の全身を使った突進と〝ネオス〟の手刀が襲いかかる。

 2回の攻撃を受け、ライフ0で吹き飛ばされる手島。しかしその表情は、憑き物が降りたかのように、どこか晴れやかだった。

 

「いてて……」

 

「手島君っ!」

 

 こめかみを押さえながら起き上がる手島の名を叫び、駆け寄ろうとする遊輝。しかしその瞬間、遊輝の脳裏に謎の声が響き渡る。

 

 

――貴様のNo.、回収させてもらおう。

 

 

「この声、あの時の……!」

 

 初めて〝エクストリーム・エッジ〟を手にし、召喚した時の耳に入ってきた声に非常によく似ていた。訝しむ遊輝の前で、手島のデュエルディスクの墓地(セメタリー)スロットから1枚のカードが飛び出してきて、遊輝のデッキケースの中に溶け込んだ。

 慌ててケースの蓋を開け、中身を確認するが――。

 

「これはっ……!」

 

 〝EXNo.34 アビス・イレイザー〟。そう黄金の字体で書かれたカードが、デッキケースの中で淡い光を発している。遊輝がそれを手に取ると、まるで主を認めたとばかりに光は静かに収まっていった。

 

「No.……。……そうだ、手島君!」

 

 〝アビス・イレイザー〟をデッキへしまい、遊輝は再度手島へ駆け寄った。その時には既に彼はよろけながらも立ち上がるところで、遊輝は彼を気遣いつつも話しかける。

 

「ははっ、俺の負けだ。……けど、不思議と悔しくねぇ。何だろうな、なんか気分いいぜ」

 

「手島君……よかった、解ってくれたんだ」

 

「ああ。アンタの言うとおり、これからは無駄に力入れるのは止めだ。それで……まあ、考えたんだが」

 

 手島は、ごほん、と1度咳払いをすると、1歩分距離を取る。何が始まるのかと不思議そうに彼の挙動を見つめていた遊輝の前で、不意に手島は腰を90°折った。

 

「頼む! アニキと呼ばせてくれっ!」

 

「え……ええええぇぇぇぇっ!?」

 

 唐突すぎる言葉に、さすがの遊輝も驚きに絶叫した。

 

「な、なんでそうなるのさっ!?」

 

「これから力は入れねえ。強いアンタの傍にいて研究すりゃあ、きっと強くなれるからな! いいだろ? なあ、なあ?」

 

「いや、ええと、その……」

 

 手島の熱意に気圧され、言葉に勢いがなくなっていく遊輝。ふと視界の端に見える小夜子の姿を見れば、呆れた様子でいて、しかし面白そうに微笑んでいる。どうやら彼女も助けてはくれないのだろうということを理解した遊輝は、溜め息をついた。

 

「わ……解った、解ったからっ」

 

「ホントか!? へへっ、じゃあこれから宜しく頼むぜ、アニキッ!」

 

 はっはっはっ、と高笑いする手島に背中をバシバシと叩かれながら、遊輝は「まあ、これでもいいか」と苦笑する。

 かくして、2枚目のNo.との激闘は、その幕を閉じたのだった。

 




以上、戦士 手島編でした。

彼には駿とはまた違う親友キャラになっていただこうと思っております。今後も何度も登場することになると思いますので、宜しくお願い致します。

しかし、それに反してメインヒロインはなかなか決まらないんですよねぇ……。

今候補に上がっているのは、

北見 小夜子
宮田 ゆま
ツァン・ディレ
藤原雪乃
M・A・イングリット

の4名。
どれも構想ストーリー上遊矢と絡めやすく、面白そうなキャラばかりです。

遊矢の使用デッキ上、ゆまちゃんが今のところ一番の候補なのですが……どうしましょうね。

皆様の希望・ご意見をいただけると嬉しいです。


例のごとく、デュエルについてご指摘などありましたら宜しくお願い致します。



では。
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