桜さんが通う大学…どこ?ここ?(たぶん県内ということでお願いします。)
1話にもありましたが””(二重引用符)で囲んだ部分はナレーションを意識しているので大塚明夫ボイスに脳内変換をお願いします。(唐突な無茶ぶり)
放課後の本栖高校では授業終了のチャイムが鳴り響き、生徒たちがそれぞれの部活動に励む中、ソロキャン少女の志摩リンは図書館で読書を楽しみつつ、友人である斉藤恵那と雑談を重ねていた。
「じゃあ、リンは大好きなお兄さんとキャンプに行ったのに今回も思いを打ち明けることができなかったんだねー。」
「おい、オブラートに包め。別に私は兄さんとそういう関係を臨んでいるわけでは…」
「でも、いつまでも愛しのお兄さんがキャンプに付き合ってくれるとも限らないよ。大学で彼女を作ったら、二人で旅行したっきりリンと遊ぶ時間なんてなくなっちゃうかも。」
「うっ…」
恵那は、親友の恋路の相談に乗るのが楽しくてしょうがないかのように笑みを浮かべながらリンの髪をいじくりまわす。
されるがままといった様子で恵那に髪を梳かれるリンは、思わず苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
「それにしてもあのリンがここまで入れ込むお兄さんにすごい興味がわいてきたよ。どこか都合がつくようだったらあっていみたいな。」
「なんか余計なことを言いそうだから嫌。」
「ひどいなー。私ってそんなに信用ない?」
殊更、恋愛事についてはこいつの口の重さはあまりあてにできないなと活字に目を落としながら思考に耽るリン。ゆったりと過ごす放課後の図書室であったが、静寂は思わぬ外の来訪者によって打ち破られた。
わいわいと賑やかな声とともに、本栖湖で寝過ごした少女なでしことともに二名の女子が、図書館外側にある中庭で大型のテントを広げながら組み立てようと作業を始めようとしていた。
(あいつ…ここの生徒だったのか。)
「リン、あの子たちが気になるの?」
「いやべつに。」
そっけない返事のわりに視線がちらちらと窓の外に向かうリンを見て笑みを深める恵那。
視線の先ではなでしこと、本栖高校の野外活動サークル、通称野クルの部員である大垣千明と犬山あおいの3名が日本のポールを組み立て、いざテントに差し込まんと試行錯誤していた。
「リン、あーいうの得意じゃん。手伝ってあげれば?…っとできたよ、くまヘアー!」
「おいやめろ。」
普段は大きくお団子に結わいているリンのヘアスタイルが、恵那によって非常に立派なテディベアの形に生まれ変わる。ひどくうっとうしそうにしつつ、面倒ごとはごめんだとばかりにリンは再び本に目を落とした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そのころ、某大学の一角に位置するとあるゼミ室では桜と守が向かい合って本を読みながら、コーヒーを啜っていた。
「ん。濃いめだけど、美味しいコーヒーね。あまり見ない道具だけど、随分と使い込まれているみたいね。」
「マキネッタっていって、熱源さえ確保できれば手軽にエスプレッソを飲めるので重宝するんですよ。下敷きに水を、中敷きにコーヒー粉を詰めれば火にかけて放置するだけで完成しますからね。」
煤にまみれ、鈍い光を放つマキネッタからカップに注がれた濃いコーヒーの香りが立ち込め、二人だけの室内に充満する。
「豆が持つ香りをダイレクトに感じることができて面白い味わいね。」
「フィルターで入れたものとはまた違った味わいがありますからね。他にもアウトドア用のコーヒー器具は沢山あるんですよ。」
”通常のドリッパーに加えて、野外でコーヒーを楽しむ場合にはマキネッタやパーコレーターといったアイテムを使っても面白いでしょう。これらは専用のパーツに水とコーヒー粉を入れてしまえばあとは加熱するだけで完成するという優れもの。ハンドミルと合わせて、様々な挽き具合のコーヒー粉と組み合わせれば自分好みのアウトドアコーヒーライフを満喫できるでしょう。”
「マキネッタは濃いめのコーヒーが抽出されるので、チョコと合わせてちびちび飲むのが好きなんですよ。桜先輩もおひとついかがですか。」
「いただくわ。ありがとう。」
刻々と時計の針が奏でる音と、紙がこすれる音と、時々コーヒーを啜る音が二人だけの室内には、あたたかな夕日が差し込み、微かな春の訪れを知らせるようであった。
「先日はありがとね。日が落ちても連絡がつかないから丁度家族も心配していたのよ。」
「ああ、なでしこちゃんですか。大したことはしてませんし、大事にならなくてよかったですよ。それにしても、南部町から本栖湖まで自転車で来るとは、なでしこちゃん、すごい体力の持ち主ですね。」
「私が鍛えたからね。」
「え。」
聞く話によると、過去に食い意地が張って体重が激増した当時中3のなでしこに対し、桜は原チャリで追い回しながら浜名湖を南洲もさせることでダイエットを成功させたのだという。
スパルタ経験談に乾いた笑いを返しながら、レポートの添削を依頼する度に面倒くさそうな顔をしつつも後日真っ赤な修正(激辛コメント付)を必ず手渡してくれる桜の厳しくも他人を思いやる姿勢は昔から変わらないなと思う守。
「カレー麺をおいしそうにほおばっていたし、よく食べる子はキャンプに向いていると思いますよ。なでしこちゃんは、リンのいいキャンプ仲間になってくれるといいんですけど…」
「そういえば、リンちゃんは遠い親戚でしたっけ。二人でキャンプなんてすごく仲がいいのね。」
「お互いソロキャンプがメインなんですけどね。時々、二人でキャンプをしているんです。といっても何か特別なことをするわけでもなく思い思いの時間を過ごすだけですけどね。」
僕だったら、ウッドクラフトとか。といいながらコーヒーを注いだ木製のカップを見せる守。荒くナイフの削った質感を残しつつ、木目の温かさを感じる手製のマグカップは市販のものとは一風変わった雰囲気を醸し出す。
「相変わらず器用なものね。そういえば、リンちゃんとなでしこは同い年でしたっけ」
「ええ。連絡先も好感したみたいだし、リンにはいい機会だから同年代の子とキャンプを楽しんでほしいと思うんです。今は気を使って誘ってくれてますが、こんな年の離れた親戚とキャンプをして楽しんでくれているのか一抹の不安は拭えないところですね。」
もちろん、ソロキャンプにはソロキャンプの良さがあるんですけどと補足する守。
(気を使って…ね。私と彼の会話を遮った時の表情や声色から伺うに、どちらかというと二人の時間を楽しんでいて、水を差されたくないという感じがしたけど。)
普段から気をまわしているくせに肝心なところで鈍感なのは生来のものねと思案しながらも、口にはださず桜は本に再び視線を落とした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はっくしょん!」
「あらら、大きなくしゃみ。だれかがリンの噂をしているのかもね。」
「それよりくまヘアーを早くどうにかしろ。」
「えー、似合っているのに。」
ぶつぶつと文句を言いながらもとのお団子に戻すべくいそいそとリンの髪の毛を解く恵那。
やれやれとリンが顔を上げると、中庭から無理に詰め込んだせいでポールが真っ二つに折れ、野クルメンバーの悲鳴が上がる。
「ありゃ、棒が折れちゃったみたいだね。テントってあの棒が折れたらどうするの?
?買い替え?」
「まぁ、メーカーに送って修理かな。一応チューブみたいな補修用パイプってのがあれば折れたポールの間に噛ませてガムテープでぐるぐる囲むことで応急処置ができるけど。」
「それってこういうの?」
「なんで持ってるんだよ。」
「そこの落としもの箱に入っていたから。リン、これ持って助けに行ってあげれば?」
気になっているみたいだし、と恵那がパイプをリンに差し出すも、肝心の当人は嫌そうな感情を余すことなく表情に映し出した。
(うわー、すごい嫌そうな顔。)
それじゃ、私が行くね。とパイプを握りしめ、さっそうと野クルメンバーに紛れせくせくとテントの補修作業に参加する恵那。
(おせっかい焼きめ。私はなでしこに見つかったら面倒くさそうだから気をつけなきゃ。)
くわばらくわばらと胸の中で唱えるリンを他所に、中庭では補修の甲斐あってテントが完成したようで野クルメンバー+1名の歓声が沸き上がる。
「斎藤さん、ありがとねー。でもあんな事よーしってたねー?」
千明となでしこが完成したテントに寝ころび感動に浸っている中、あおいが恵那にお礼を言いつつ疑問を投げかける。
「いやいや、私はあそこの子にやり方を聞いただけだって。」
野クルメンバーが恵那の指さす方向を見つめるとともに、リンが視線に気づいたのか顔を上げ一同の目線が交差する。
「あーっ!リンちゃんだー!!」
(斎藤、やりやがった…やっぱりあいつの口の重さは信用ならない…!)
恨み節を込めてリンが斎藤にジト目を向けると同時に、なでしこは図書館の窓に駆け寄る。
「リンちゃん!リンちゃ…へぶっ!!」
「「「あっ」」」
再開の喜びで窓の存在を忘れていたなでしこが図書室の窓に激突した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ぴろんっ
大学から帰宅し、一人暮らしの部屋に戻りいざ夕食の準備に取り組もうとした守のスマホから通知を知らせるアラームが響く。
「先輩からか。めずらしいな。」
『期待通りになりそうね』
桜の気質を反映したように、短いメッセージとともに一枚の写真が守に共有される。
画面いっぱいに移るのは、なでしこと転校先で出会った野クルメンバー、そして志摩リンと斎藤恵那といった新たな友人が写った写真。
再会を喜ぶなでしこが渋るリンに泣きつく形で撮った一枚だが、姉を経由して守の元にわたった写真に写るリンは非常に嫌そうな顔を隠しきれていなかった。
「へぇ、まさか同じ高校だとは。世はまさに狭し…だねぇ。」
スマホを閉じ、調理に戻るべく包丁を握る守。鼻歌を歌いながらまな板と向かい合う守の姿は写真に写るリンとは対照的に非常に上機嫌なものであった。
作者はコーヒーよりお茶派です。(唐突の裏切り)
導入が終わったので、実体験を少し混ぜつつ主人公たちのキャンプを気ままに書いていければなと思います。
皆さんは思い出のキャンプとかありますか?もしあればコメント等で教えていただければ幸いです。