にじさんじ妄想トーナメント戦Ver.2.0   作:リスと

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この辺のくだり本編が名作過ぎてつらい......
あと本編通りの展開、勝敗、役回りになるとは限りません。


Aブロック第2試合 魔法使いVS"英雄"

「どういうことですか、師匠!!」

 

「.........................................」

 

「どうして......どうして何も言ってくれないんですか......」

 

(クソッ!本当に戦わなければいけないのか......!)

(......待っててね、エビ先輩)

 

二人の、得物を持つ手に力が入る。先程の試合とは打って変わって重苦しい雰囲気が立ち込める。話は10分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

..................

 

............

 

......

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに始まりました!!にじさんじライバー最強トーナメント!!」

 

イブラヒムVSフレン。その戦いの始まりをエクスは控室のモニターで見ていた。このコロシアム、外から見たときはそこまで大きいようには感じなかったが、中は意外と広く、約100名いるライバー全員分の個室や医務室、食堂まで完備している。それでいてあのフィールドの広さなのだから何か魔法のようなものでも使っているのだろうか。エクスは頭の片隅でそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「衝撃の結末!!Aブロック第1試合!!勝者はイブラヒムゥゥゥ!!」

 

「なっ!?」

 

思わず声が出た。イブラヒムが今まで隠していた能力を使い逆転勝利を果たしたから?そんなことが理由ではない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

先ほどフレンがイブラヒムを斬ったときから感じていた違和感。それがこの試合の決着を持って決定的になった。

 

(おかしい......。いつもの2人と違う......。同期で傷つけあってるのにためらいがない...)

 

控え室に置かれていたトーナメント表。次の試合は自分VSアルス。嫌な予感が頭をよぎる。

そんな中控室のドアが開く。

 

「一応ノックはしたよ?」

「叶さん......」

 

そこに立っていたのは、ロトと名付けられた猫の人形を抱いてにこやかに微笑む男。エクスにとっては普段からお世話になっている先輩の一人である。

 

「どうしたんですか......?」

「次の試合まであと10分くらいあるじゃん?ちょっと話しておきたいことがあって...」

そう言いながらここ座ってもいいかな?とエクスの前に腰掛ける。

 

 

「話っていうのは......?」

 

「まず、この大会おかしいと思わない?」

 

「!!」

 

「その反応、エビくんも何か心当たりがあるみたいだね」

 

「ええ......」

 

叶の言葉を聞き、先程の試合を思い浮かべる。別段おかしいと思わなかった者もいたかもしれないが、あの二人を近くで見てきた自分からすれば明らかな違和感があった。

 

「どこから話すべきか......エビくん、どうやってこのコロシアムに来たか覚えてるかい?」

 

「?............!?思い出せない......?」

 

おかしい、ここについてからまだ一時間ほどしか経っていない。覚えていないわけがないのだ。それどころか、ここ数日の記憶すらもおぼろげだ。

 

(なんで今まで僕は疑問に思わなかったんだ......!?)

 

「ここに来るまでに会った何人かにも同じ質問をした。でも誰一人覚えてる人はいなかった。しかも......入り口はもう見に行ったかい?」

 

「いえ、何かあったんですか?」

 

「この事に気づいてるのはまだ数人みたいだけど......ぼくたちはここに閉じ込められているんだ。」

 

「な!?まさか!?」

 

「本当だよ。次の試合が終わったら確かめてみるといい。透明な結界みたいなものが張られていてね。こういうのには詳しくないから分からないけど、バトルフィールドに張られているのと同じものだと思う。しかも相当強固だね。ちょっとやそっとじゃビクともしなかったよ。」

 

それが本当だとしたら......。知らぬ間に集められ、あれよあれよという間にライバー同士で戦わされ、挙句の果てには秘密裏に閉じ込められている......。エクスは自分を楽観的な方だと自負している。そんな自分でも裏にある何かを感じざるを得ないほどこの大会は怪しい。

 

「さっきの試合もだね。あの二人の仲の良さは知ってるだろう?あの二人が、試合とはいえ本気で傷つけあうとは考えにくい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうですね......。それは自分もそう思っていました......。いつもの二人じゃないって......」

 

「......ちょっと回り道しちゃったね。本題に入ろうか。」

 

そう言うと叶は椅子から立ち上がり、俯くエクスの横に立った。

 

「僕はね、この大会の裏にはこれを仕組んだ黒幕のようなものがいると思ってる。僕らを集め、記憶を消し、ここに二重の結界を張って閉じ込め、そしてライバー同士を殺しあわせている誰かがね......」

 

「そんな......。一体誰がこんなことを......」

 

「......アルス」

 

「......え?」

 

「僕はアルスが黒幕だと思う」

 

「......何を言ってるんですか叶さん。冗談はやめてくださいよ」

 

俯いていたエクスが顔を上げ叶を見つめる。その顔は動揺で染まっていた。

 

「君の気持ちはわかるよ。でも......」

 

「ふざけないでください!!師匠がそんな事するわけ!」

 

エクスは勢いよく立ち上がり叶の胸ぐらをつかんだ。だが叶は眉一つ動かさずじっとエクスの顔を見つめている。その目はこれが決して冗談などではないことを物語っていた。その目に圧され、エクスも手を離す。

 

「っ!すいません......」

 

「いや、いいよ。でも僕も根拠も無しにこんなことを言ってるわけではないんだ」

 

「........................」

 

叶がよくいたずらをするとはいえ、こんなことを根拠もなしに言う人間ではないということをエクスはよく知っていた。しかし同時にアルスがこんなことをする人間ではないということもよく知っているのだ。

 

あの心優しいアルスがこの大会を仕組んだとはどうしても思えない。

 

「この大会にまつわる怪しいこと、不思議なこと......。アルスが絡んでいるとしたらすべて説明がつく。このコロシアムの異様な広さも、ハイレベルな結界も、ライバーの性格が明らかに変わっていることも、ぼくたちの記憶が消えていることも、ね。」

 

たしかにアルスの魔法を使えば今挙げられたすべてのことができてもおかしくはない。普段は抜けていることもある彼女だが、魔法の腕前は相当のもの。それは近くで見てきたエクスもよく知っている。

 

「でも......魔法を使える人は他にもいるじゃないですか!鷹宮さんとかニュイさんとか......!僕は師匠がやったとは思いません!!」

 

「たしかに技術上これが可能なライバーは他にも何人かいる。」

 

「だったら......!」

 

すがるような目で見つめるエクスに、叶は冷たいともいえるような声でこう言った。

 

「さっき見てしまったんだ。アルスが入り口の結界を見て、笑っているところを。僕には、あれが自分が作った結界の出来栄えを確認しているようにしか見えなかった」

 

「そんな......」

 

「エビくんも内心思っているだろう?彼女がやったと。......さっきの君の言葉、「僕は師匠がやったとは思いません」。()()()()()じゃなくて()()()()()なんだよ。君は認めたくないだけだ。」

 

「本当に......師匠が......」

 

エクスが膝から崩れ落ちる。その瞳には涙を浮かんでいた。叶はしゃがみこむとエクスの肩に手を置き、諭すように続ける

 

「このまま彼女を放っておけば多くのライバーが死ぬ。君が止めるしかないんだ、弟子である君が」

 

「でも俺には―――!」

 

「エクス・アルビオ!!」

 

顔を伏せ涙を流しながら叫んだエクスに呼応するように、叶も声を荒げる。一時もそらすことなく、ただじっとエクスの顔を、目を、強く見据えていた。

 

「......君がやるしかないんだ」

 

「っ!!...........僕は......僕は......」

 

叶はエクスを見つめていた凛々しい顔を崩すとにこやかに微笑み立ち上がった。そのまま、お邪魔したね、と部屋を後にする。その去り際、もしエクスができないなら僕がする。このまま行けば準決勝で当たるからね。もし覚悟が決まらないようなら............悪いけどわざと負けてくれ、という言葉を残して。

 

(...........試合の場で確かめるしかない。もし本当なら、僕がこの手で......)

 

気づけばもう試合開始時刻まであと1分を切っていた。エクスは足取り重く控室を後にする。決戦の場で魔法使いと対峙するまで、英雄が面を上げることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――同時刻 アルス・アルマル控室

 

コンコンとノックの音が控室に響く。第1試合、予想外の展開。あっけに取られていたアルスはその音を聞きはっと意識をこちらに戻した。

 

「ど、どなたですかぁ」

 

「試合前にわざわざごめんねぇー、神田です」

 

「神田せんぱい...?どうぞ」

 

ドアを開け、客人を招き入れる。訪問してきたのは神田笑一、常に笑みを崩さない糸目の男。今日もいつものように穏やかな顔でニコニコとしていた。

 

「何かご用ですか......?」

 

「少し言っておきたいことがあってね...。さっきの試合見たかい?」

 

「はい......見ました。」

 

返答する声は震え、その小さな手はミニスカートをキュッと掴んでいた。

 

「次の試合、相手はエビオ。随分意地悪なマッチングだと思わないか?」

 

「............」

 

「私の初戦も郡道先生とだし、さっきの試合もメイフ対決......トーナメント表を見ると他にもこんな組み合わせがちらほらある。どう考えても意図して仕組まれてる。この大会はおかしい事だらけだよ」

 

アルスの視線がどんどん下がっていく。16歳の少女にはあまりにも酷な話だ。自分のことを師匠と読んで慕ってくれる男と戦わなければならないのだから......。

 

「なあアルス!おそらくあの二人は洗脳されていたんだ!」

 

「洗脳!?そんな......」

 

「さっきの試合見ただろ!?あの二人が殺し合うなんて!洗脳でもされてなきゃありえない!」

 

神田は大げさにも思えるようなジェスチャーを加えながらそう言い放つ。話しているうちに目に見えてボルテージが上がりヒートアップしてゆく。

 

「それは、たしかに......」

 

「なぁアルス、俺が言いに来たのはエクスのことなんだ」

 

「センパイのこと...?」

 

「ああ、あいつも洗脳されてる」

 

「えっ......!?」

 

「さっき廊下ですれ違ったんだが様子が明らかにおかしかった。話しかけてみたんだが返答も要領を得なくてな。このままではあいつは誰かを殺してしまうだろう....」

 

「センパイが......」

 

「アルス、お前がここで止めるしかないんだ。エクスを人殺しにしたくは無いだろう?」

 

「っ!............わかりました。ぼくがセンパイを止めます」

 

その言葉を聞き神田もアルス!と顔を綻ばせる。

 

「よく決心してくれた......!ただ、あっちは相手がアルスだろうがお構い無しに殺しに来るだろう。だからお前もエクスを殺す気で戦わないと死ぬ。それとエクスに何を言われても返答しちゃだめだ。返答することでアルスも洗脳される可能性がある。」

 

そう言うと、試合前に悪かったと言い残し控室を後にした。気づけば試合開始時間まであと数分となり、急いで会場へと向かう。もう震えは止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

..................

 

............

 

......

 

 

 

 

 

 

「何も言ってくれないなら、力づくででも......!」

 

エクスは腰の聖剣ハエたたき改を抜き、距離を詰めようと駆け出す。

もちろんアルスがそれをみすみす見逃すわけもない。後ろへと下がりながら魔導書を開き詠唱を開始する。

 

瞬間、コロシアム内が光と轟音に包まれる。アルスが最も得意とするのは雷魔法。雷魔法とはある種シンプルな魔法だ。ただ速く、ただ強い。相手がその光と音に気づいたときには、すでに雷に体を貫かれている。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()――――――

 

土煙が晴れると同時に、エクスがその身を弾丸のようにはじき出す。魔王を倒したことは無いと自称しているものの、それに準ずる強さを持つものとは何度も戦い、そして勝利している。

なればこそ、()()なのだ。魔法適性がないにもかかわらず、アルス以上の魔法を使うものに勝ったこともある。ただ速く、ただ強いだけでは英雄の歩みは止められない。

 

(嘘でしょ!?あの速さの雷を剣で弾いた!?......だったら!)

 

アルスにとって先程の雷は基本魔法に過ぎない。言ってしまえばメラのようなものだ。あれが弾かれたからといってまだまだ手はある。高速で詠唱を済ませるとアルスの背後に小さな魔法陣が現れる。その数は十を超えているだろうか。アルスの意図していることに気づいたエクスはとっさに後ろに飛び退く。

 

が、エクスが十分な距離を取るより早く、十の魔方陣から放たれた雷の矢が英雄へ放たれた。

 

............数秒後土煙の中から現れたのは、少し血を流しているがほぼ無傷の英雄と脱ぎ捨てられた鎧だった。

 

「なんと!とっさに鎧を脱ぎ捨て盾代わりにした!?」

 

(いや,それだけじゃない)

 

実況者の発言にアルスが少し訂正を入れる。

(鎧を脱ぐことで剣を振るスピードを上げたね。その結果殆どが空中で迎撃された......)

 

「師匠、まだ何も言ってくれないんですか......!!このままでは本当にあなたを斬るしかなくなる......」

 

(確かに神田さんの言ったとおりだ......いつものエビ先輩じゃない。だったら......)

 

 

アルスはペラペラと魔導書のページをめくる。開いたのは魔導書の最後のページ。載っているのは2つの雷究極魔法。アルスが詠唱を始めると、大気は震え、結界で覆われているはずの空に黒く巨大な雷雲が形成される。その大きさは規格外のもので、下から見ても雷雲の中で雷が渦巻いているのが確認できる。

 

エクスを除く、その場にいた誰もが思わず「デカすぎんだろ・・・」とつぶやいてしまうほどの大きさに、さすがのエクスも距離を取る。ただでさえ今は鎧を纏っていない。あれをもらってしまうと下手をしたら、いや高確率で死ぬだろう。

 

「この魔法は僕の一族に伝わる奥義でね。僕から半径20m以内にいるものに雷を落とす最大の()()()()。そして今から使うのが僕が開発した最大の攻撃魔法。エビ先輩......サレンダーしたほうがいいよ」

 

「師匠、やっと口を開いてくれましたね......。でもサレンダーすると思いますか?僕は思いません」

 

「そう、か......。じゃあ手加減はしない」

 

そう言うと、アルスが詠唱を始める。大気の揺れも大地の鳴動も先程の比ではない。魔法適性がまったくないエクスにもこの辺り一帯の魔力が集まっていることがわかるほどの、威圧感。

 

アルスの眼前に巨大な魔法陣が形成されてゆく。周囲のエネルギーが魔法陣に収束される。

 

(この2つを同時に使ったら次の試合は戦えない......。でもここで確実にエビ先輩を止める......!)

 

(師匠......これ以上あなたの手を汚させるくらいなら........................もう僕も躊躇いません)

 

魔法使いVS"英雄"。決着のときは近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、アジンVSフィクサー
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