東方冒涜伝   作:空ネロ

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第四十六話 切札

清明「人を消すとは…お主、正気か?」

 

楽矢「話を聞け…消すというのは都からだ

殺すわけじゃない、消すんだ」

 

清明「ふむ、要するに見えなくする、

もしくは居ない者とするのどちらかかな?」

 

楽矢「あぁ、後者の方だ…人をどうにかして

夜のうちに消してもらいたい」

 

清明「……私に何を期待している?」

 

楽矢「今日の夜までに帝との交渉で

街から人を居なくして貰いたい」

 

清明「無茶を言うでない、流石にお主の頼みでも

それは出来ない頼みだ…」

 

楽矢「ならば、都全体に強力な結界を張ってくれ」

 

清明「お主、何をしでかすつもりかは知らんが

私が協力できることではなさそうだな」

 

楽矢「……そうか、すまなかったな…急に」

 

この次の手を打つしかないか…

こいつの協力が今一番助けになるんだが、

流石に急すぎたか…早くから実行しておけば良かった…

 

清明「待て、お主にこれをやろう」

 

そう言って清明は懐をあさり、袖から

一枚の通常よりは少し大きな札を取り出して俺に渡した

 

楽矢「見たところ…ただの札にしか見えないが…?」

 

清明「この札はまだ私ですらも使った事のない札だ

成功すれば大幅にお主の助けになるであろう」

 

楽矢「有難く貰っておこう」

 

俺の助け…か

まぁ、こいつだからとんでもない

不良品を渡す事はないとは思うがな…

1枚しかないため、試す事すらも出来ない

本当の切り札になってくれるといいんだがな

 

清明「くれぐれも、都の人間に危害が無いようにな」

 

楽矢「分かってるさ…まぁ、心掛ける」

 

俺は帰りも空間…と思ったが

作戦もある、歩いて戻るとするか

屋敷周りも少し見ておきたいしな

 

 

 

 

 

山から降りるまでに体感的だが30分近くかかった

あの陰陽師どんだけ山の奥で住んでるんだよ…

普段、大した運動の無い日々を送る

俺からしたらかなりの苦痛だ…

 

少し歩くと都の中に入っていたようだ

一度通った道を通るのは早く感じるものだ

この前の屋敷が直ぐ近くに見える

俺はポチを屋敷を中心とした周りの北東に、

クロを南西の地下に張り巡らせた

位置に意味はないが、成功を祈るばかりだ

 

蘭華「あ、楽矢さん…先日はどうも」

 

街を歩くたびこいつを見かける…

偶然だろうがこう…頻度が高いと

つい仕事の癖で尾行を疑ってしまう

 

蘭華「聞きましたよ、私を助けてくれたんですね」

 

相変わらず、表情をあまり顔に出さない奴だ

喋っている事は普通なのだがな…

 

楽矢「まぁ、それは気にするな

俺の暇潰しだからな、敢えて理由も聞かない」

 

蘭華「そうですか、そうしてくれると助かります」

 

楽矢「まぁ、あんなのに絡まれない様に

気をつける様にする事だな」

 

俺は適当に蘭華をあしらってその場を去ろうとした

こいつと話しているとこちらの心が見透かされて

いるようで何と無く話しにくい

 

蘭華「あ…少し待っててください」

 

蘭華ことナナシは足早に近くにあった

家に駆け込んで行った

なんと言うか…凶香の昔と言われても

納得出来ない自分がいるな…

ここまで大人びた子どもも珍しく感じる

そんな事を考えている間に蘭華はその家から出てきた

 

蘭華「すいません、お待たせして」

 

蘭華は両手を開き小さな赤と白のリボンを取り出した

リボン…?待てよ、この時代にリボンなんか無いぞ

 

蘭華「この前、凶香さんから教えてもらったので

早速作って見たのですが…どうですか?」

 

原因はあいつか…帰ったら色々と忠告しとかないとな

 

楽矢「良く出来ている、中々上手いぞ」

 

蘭華「そうですか…」

 

今少しだけだが蘭華の表情が緩んだぞ

笑った方が綺麗に見えるんだがな…

 

蘭華「良ければ、これ預かってもらってもいいですか?」

 

楽矢「ん?あぁ、構わないぞ」

 

蘭華「何だか嫌な予感がするのでお守り代わりに…」

 

楽矢「助かる、ありがとう」

 

蘭華「いえ、それではまた…」

 

楽矢「あぁ、また今度な」

 

さーて、家に帰ってあの馬鹿にお説教だ

今まで俺が絶対にやらない様に心掛けていた

未来のものをこの時代の人間に見せない事、教えない事

それをひたすら守ってきたのだが…

ついにやらかしたな…あの馬鹿幽霊…

残りの帰り道は特に何事もなく例の家まで着いた

だが、おかしい…中からあいつの気配を感じない

嫌な予感がよぎった俺は家に駆け込んだ

 

凶香「あ…楽矢…帰ってきちゃった…」

 

そこにいたものは朝までの凶香ではなかった

凶香は弱々しく壁に身体を預けていた

本来なら感じる妖力も薄い…

それに足がしっかりと見えている…

 

楽矢「お前…その姿…」

 

凶香「人の姿に戻ったみたい…」

 

目の前に映る凶香の姿は幽霊ではなく人間だった

足がしっかりとある…

道理は分からないが、まさしく人間だった

 

楽矢「幽霊が人になる…か」

 

凶香「私も良く分からなくてさ…」

 

俺は凶香にある程度の気力を注ぎ込んだ

ある程度とは言っても平均的な人間程度だが…

 

楽矢「どうだ?身体は動くか?」

 

凶香「浮遊する事は出来なくなったけどね…」

 

凶香は少し悔しそうに唇を尖らせた

 

楽矢「人間になって早速だが…」

 

俺は御構い無しに凶香を叱った

流石の俺でもそのルールを破られると怒りたくもなる

凶香はずっと黙っていたがどこか嬉しそうだった

 

楽矢「叱って喜ばれると意味がなくなるんだが?」

 

凶香「いや、真面目に怒る楽矢が久しぶりでさ」

 

楽矢「もういい…」

 

負けた…何と言うかこれ以上言い続けても仕方が無い

負けたのは悔しいが面倒だと告げる本能には勝てない

 

凶香「ねぇ、楽矢?」

 

楽矢「何だ?」

 

凶香「おかえり!」

 

楽矢「あぁ、ただいま」

 

こいつは事あるごとに俺に飛びついてくるのか…?

またもや背中に飛びつかれた

その挨拶一つで俺の怒りは鎮火された

不思議なものだ、怒りが湧いてこない

俺がこいつをそこまで信用している証なのだろうか

 

 




こんばんわ、空ネロです
最近は流石に長引きすぎたので
早めの投稿を心掛けて頑張っています
正直、戦闘好きでヒャッハーな回覧者の皆様は
こんな小説読んでも何も面白くないですよね…
かと言って私は戦闘模写が苦手なもので
今まで、戦闘を消して良いところは所々消しています
恐らく、異変解決とでもなれば
嫌でも戦闘模写は増えるんでしょうが
今だけはこの戦闘のない平和な世界をお楽しみ下さい

それでは今回もご回覧ありがとうございました
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