東方冒涜伝   作:空ネロ

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第五十話 乾杯

………ここは、どこだ?

どうやら身体は動くらしい、喉も大丈夫か

それにしても、地獄にでも辿り着いたのか?

せめて凶香が消える姿くらいは見送りたかった…

一面が真っ白で何も見えないな…

地獄にしては色が見た目が随分と神々しい地獄だ

 

凶香「ねぇ、楽矢?私が見える?」

 

目の前には凶香…なのか?

髪の色が白く染まっていて目が赤い…

 

楽矢「凶香…なのか…?」

 

凶香「見た目はかなり変わったけどね」

 

楽矢「そうか…ここが何処か分かるか?」

 

凶香「ここは…えーと、うーん…」

 

凶香「私が作り出した空間…とでも言えばわかる?」

 

こいつが作り出した?

そう言えばこいつの能力って詳しく聞いた事がないな

確か前に黒炎操る、みたいな能力だったはずなんだが

 

楽矢「お前の能力?…お前の能力は…」

 

凶香「楽矢に見せたのは黒炎を操ったやつでしょ?」

 

凶香「乙女に秘密は付き物なんだよ!」

 

全く分からん、今の説明だと

本当は秘密にしてました、とでも言いたいのか?

そうにしか聞き取れないんだが

 

楽矢「要するに能力が二つあるという事か?」

 

凶香「簡単に言えばそう、正確に言うと

黒炎は飽くまで穂冒凶香の能力でしょ?」

 

楽矢「……藤原蘭華としての能力って事か?」

 

凶香「正解」

 

楽矢「この際、能力の内容は何でも良い

何故隠してたのか理由を教えて貰えるか?」

 

凶香「この能力は一度きり、能力というよりかは

そうだなぁ…最後の切り札に近いかな?」

 

まぁ、そりゃあ使わないわな

最後の切り札を連呼して使ってしまうと

それは最早切り札でもなんでもなくなってしまう

 

楽矢「それで、俺はどうなった?」

 

凶香「死んじゃった」

 

楽矢「………そうか」

 

予想はついていた発言だが

こう簡単に言われてしまうとな…

 

楽矢「凶香…あの時お前はどうしてあの場にいたんだ?」

 

凶香「……気になって後をつけてたの

ずっと邪魔にならない様に隠れてたんだけど、つい」

 

何で俺はこいつに気付けなかったのか…

気付けたなら、こいつを危険にさらす事もなかった

……そうか、こいつは常人じゃあない、

妖力を主力にしていた元幽霊だった…

気付けなかったのはそのせいか…

 

楽矢「凶香、こんなところまで見送らなくていいぞ

俺は死んだんだろ?一人で三途の川くらい行ける」

 

凶香「私がここに来た理由は楽矢を

見送るためじゃない、一緒に帰るためだよ?」

 

楽矢「一緒に帰る…か、それがお前の能力か?」

 

凶香「うん、一度だけ死者を蘇らせる事が出来るんだ」

 

楽矢「一度きりか、そんなもん俺じゃなくても…」

 

凶香「楽矢だからこそ、だよ」

 

楽矢「そうか…」

 

折角の好意を無駄にするわけにはいかないか

早く帰ってこいつの話の続きを聞くとしようか

 

凶香「それじゃあ帰るとしようか!」

 

楽矢「なぁ、凶香?」

 

凶香「ん?どうしたの?」

 

楽矢「お前の事、今まで会った人間の中で

一番、俺はお前が大好きだ」

 

楽矢「その、何というかこんな俺でよければ

一生お前の傍に居てもいいか?」

 

不器用だな…俺も、

人一人に愛を伝えるのにどれだけの時間をかけるんだか

 

凶香「………馬鹿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凶香が何かを呟やいた後に真っ白な空間から一転して

最後に凶香と別れたよく月の見える草原まで

飛んで来ていた、いきなりの明るさの変化に

目がまだ慣れていないせいかかなり暗く感じる

其れよりも辺りに凶香の妖力の反応がない、

 

楽矢「凶香、早く帰るぞ?」

 

しかし、声が帰ってこない

広い草原に俺の声が響き渡った

あの馬鹿はこんな時にかくれんぼでもしてるのか?

俺とよく似てマイペースな奴だな

 

楽矢「凶香ー、遊びは終わりだ、早く帰るぞー?」

 

かなり声を大きくして呼んだつもりなんだがな…

どこに行ったんだ…飛ばされた時に別れたのか?

探すのも一苦労なんだがな…はぁ…

俺は空間操作で凶香の位置へと向かって飛んだ

………が、反応がない…

 

楽矢「凶香…?」

 

疲労のせいであまり妖力が無い…が、

俺の能力が何か誤操作を起こす筈も無い

俺はもう一度、凶香の位置へと飛んだ

………だが、何も起こらない、場所すら動いていない

俺は凶香との会話を思い返しながら

念の為、家にいる事を祈って

家へと残り少ない体力を使って走った

死者を呼び戻す能力によって作られた空間に

俺は飛ばされた、そこまでは何も無い…

何処かにヒントは無かったか…

 

俺は息を切らしながら家のドアを蹴り開けた

かなり視界が定まらないせいで上手く

目の前を見る事が出来ない…

 

楽矢「凶香!」

 

………俺の声に対する返事はなかった

静かな家に声が響いただけだった

俺は何度も凶香と叫んだ、だが現実は

いつも通りのおかえり、という言葉は聞こえなかった

俺はやっと、一つの事に気が付いた

いや、気がついて欲しくなかった…

自分は何故あの時あいつを止めなかったのだろうか…

俺は自分がやってしまった過ちに気が付いた

………もう、凶香はいない

あの時、俺は気づくべきだった…

無賠償で生命の取り引きが出来る筈が無い事に

一度完全に死んだ生物を蘇らせるには

絶対に生きている生物を代償にしなければならない

それにもっと早く気づいていれば…

 

楽矢「凶…香…」

 

俺はまた、大切なものを自分で失ってしまった…

気付けば、俺の目からは止めどなく涙が溢れていた

大切なものを失う事が辛い、それが分かっていたから

決して俺は人から好かれない様に生きた

あいつが消えることは決まっていた

俺は今、あいつが消えた事よりも自分の手で

あいつを消してしまったことが憎いんだろう…

静かな夜に一人の不老不死の泣き声が響いた

 

 

 

 

 

 

 

泣き疲れて眠ってしまっていたようだ

俺は何度も心臓を貫いた、首を切り落とした

だが、あいつのところにはもう行くことは出来なかった

日に照らされるまで気が付かなかった

家の床の真ん中に一枚の紙が置いてあった

紙はどうやら凶香からの手紙だったらしい

俺は疲れ果てた身体を起こしその手紙を拾った

 

 

 

 

 

 

 

楽矢へ、

この手紙を読んでいる、という事は

私が間違えて落としてしまったか、私が消えたかの

どちらかだと思います、後者の方である事を望みます。

普段、たくさん話す事があって話しきれないのに

こうやって紙に書くとなると、何から書けばいいか。

私はあの夜、嘘をついてしまいました

私のもう一つの能力は私の魂と引き換えに

楽矢の魂を呼び戻す、というのが本当の内容でした

頭の良い楽矢ならもう見抜いていそうですが。

あんな別れ方でごめんなさい

最後に楽矢から好きと言って貰えて

とても嬉しかったです、返事の方は勿論、喜んで。

楽矢という存在に出会えた事をとても誇らしく思います

私を受け入れてくれた人間です、

感謝しきれない程助けてもらいました

楽矢と過ごした日々は長い様で思い返すと

とても短く感じます。

三人で再開するのは結局出来ませんでしたね、

紫の作る理想郷、楽矢と見たかったです

一度、幽香の一面の花畑も見たかったです

ですが、何よりも楽矢ともっと一緒に居たかったです

たくさん怒られて、たくさん笑って、

普通の人間みたいな生き方がしてみたかったです。

楽矢への最後の贈り物となりましたが

私の能力を楽矢へ譲る事にしました

勿論、穂冒凶香の能力ですが、

きっと役に立ってくれる事を願います

楽矢から凶香、という名前が貰えてとても嬉しかったです

だから、もし私を思い出す事があるのなら

楽矢だけは藤原家の人間としてではなく

穂冒凶香として思い出してくれる事を願います

もう私は楽矢を見守る事すら出来ないけど

今を生きる藤原蘭華としての私を頼みます。

最後に、私の傍に居てくれてありがとう

長い間お世話と迷惑をかけて貰ってありがとう

 

穂冒凶香より

 

 

 

 

 

………最後までこいつらしいな…

お前から貰った能力、有難く使わせてもらおう

お前という存在が変えてくれたんだ…

お前が例を言う側じゃないだろう…

親はこいつのためにこの先を楽矢として生きていくだろう

空間から皿を取り出して俺は酒を注いだ

今日から俺はこいつの分まで世界を見ないといけないな…

 

楽矢「凶香…今までありがとう…」

 

俺は皿に入った酒を一気に飲み干した…

今日の酒は何故か何時もと違って

少ししょっぱく感じる乾杯だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんばんわー、空ネロです
今かなり眠たいせいか、文字打つ指が震えています
今回の話はどうでしたでしょうか?
別に50話ピッタリは狙ったわけではありません
まぁ、今から徹夜して課題というプランですので
今から眠るわけには行きませんがね…
今回の話は纏めるには難しい話だったので
少し文字数が多くなりましたが
内容的には区切らない方がいいと判断したためです
まぁ、皆様も課題は計画的に頑張りましょう

それでは、今回もご回覧ありがとうございました
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