東方冒涜伝   作:空ネロ

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第五十九話 宴の後に

宴が始まってからというものの

どうも鬼たちからの視線が痛い

その理由は検討ついている…が、

 

鬼子母神「もっと酒は無いのかー!」

 

「き、鬼子母神様…少し落ち着いて…」

 

まぁ、なんだ…鬼も大変だな…

それよりも、人を酒に誘って起きながら

全く誰も話しかけてこない…

といっても、楽なのは楽でいいが…

まぁ、適当な頃合いを見て帰るか

 

萃香「お、楽矢も飲んでるのかぁ?」

 

振り返るとそこには…

もうすっかりと出来上がった萃香が居た

 

楽矢「まぁ、人並みにはな…」

 

萃香「そっか…一緒に飲むか?」

 

萃香は大きな瓢箪をこちらに向けた

気持ちはありがたいが、あくまで俺は人間だ

 

楽矢「いや、いい…もうかなり飲ん…」

 

口にどでかい瓢箪をぶち込まれた

俺の喉に人が飲めばとんでもないことになりそうな

度数の酒がまるで水道の様に注ぎ込まれていく

 

「萃香、ほどほどにしておけよ!」

 

「お客さん困らせるなよ!」

 

周りからは萃香を止めたいのか止めたく無いのか

分からない笑い声が聞こえる…

そこで俺の意識が途絶えた

 

 

 

 

 

 

鬼子母神「萃香、流石にやり過ぎだ…」

 

次に目覚めた時は周りが既に明るくなっていた

とんでもない量の酒を注ぎ込まれたのにも関わらず

頭痛がしないのが不思議だ

不老不死の回復はこんなところ迄再生するのか

重たくなった身体を起こすと

 

萃香「だって母さんの客って言うからつい…」

 

鬼子母神に怒られている萃香が居た

まぁ、当然の結果だろう…

調子に乗り過ぎだ…自業自得としか言えない

…ふと、目を横にやるとポチとクロが

俺の身体を抜け出して昨日の残飯を貪っていた

いくら液体状の生物とは言え、

餌も与えなければ俺の血以外も啜るだろう

 

鬼子母神「楽矢、大丈夫か…?」

 

こちらに気づいた鬼子母神が静かに

ゆっくりと近付いて恐る恐る俺に訪ねた

 

楽矢「あぁ…少し身体が重たい程度だ」

 

鬼子母神「そうか…萃香、ちょっと来い」

 

何と言えばいいか親としての威厳というか

鬼の長としての威厳というか…

昨日の姿とは大違いだ

 

萃香「昨日は無理をさせてすいませんでした」

 

萃香は口を尖らせながら渋々と俺に謝った

見た目通りの子供っぷりというか何というか…

 

楽矢「構わないさ、俺もお前を半殺しにしたしな…」

 

萃香はあの時の光景を思い出したのか

顔を引きつらせながら笑い返した

流石に、思い出させる様なことでも無かったか

 

鬼子母神「半殺しって…萃香を倒したのか?」

 

鬼子母神が驚きの表情でこちらを見つめる

まぁ、倒した…というよりかは一方的に殴っただけだが

 

楽矢「仇取りならやめてくれよ?まだ寝起きだ」

 

鬼子母神「そうか、勝ったのか…」

 

鬼子母神は俺の肩を強く叩いて笑った

仇取り…ではなさそうだ、助かった

 

鬼子母神「人が鬼の四天王の一角を倒したのか」

 

楽矢「まぁな、喧嘩売って来たのは

萃香だ…俺じゃない」

 

鬼子母神「萃香は一応これでもこの鬼の群れの

一位、二位を争う強さなんだけどねぇ」

 

萃香「だって…」

 

鬼子母神「負けは負け、だ…素直に認めるしかない」

 

萃香「……はーい…」

 

まぁ、そりゃあ都の姫を逃がして

陰陽師とやり合う程度には強いからな…

幾ら鬼と言えどそんな人の皮を被った化け物

予想外だっただろうな

 

楽矢「気にするな、俺がおかしいだけだ…

あの強さならそこらの人間には寝ていても勝てる」

 

萃香「そう…かな?」

 

落ち込んでいた萃香の表情が

一気に明るくなった…やはり子どもだ

……子供っぽい…な…

 

楽矢「萃香、安心しろ…俺が言ってるんだ」

 

萃香は嬉しそうに首を振ると

また何処かへと消えた

……行く前に一つ用事が出来てしまったな…

 

楽矢「鬼子母神、少し話がある」

 

鬼子母神「……凶香はもう死んでるんだろう?」

 

鬼子母神は俺の言葉を遮る様にして

俺の言いたかったことを代弁した

 

楽矢「その通りだ、何時から気付いていたんだ?」

 

鬼子母神「喧嘩、と言った時からだ

お前は嘘がつくのが下手だからな」

 

楽矢「そうか………すまなかった」

 

俺は鬼子母神に深く頭を下げて謝った

謝っても償いきれないのは分かっている

だが、これしかできる事はない

 

鬼子母神「このまま言わないつもりで

旅に出ていたら殴り飛ばすところだった」

 

鬼子母神「いや、今でも殴り飛ばしたい…

お前程の奴が居ながらもどうして…」

 

鬼子母神の目からは気付くと涙が流れていた

やはり…言うべきだったな…伝えるべきだった…

俺は鬼子母神に凶香の遺書を取り出して手渡した

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼子母神「何だよ…お前の事しか書いてないじゃないか」

 

鬼子母神は構えていた拳をゆっくりと下ろした

俺も覚悟していれた顔の表情を緩めた

 

鬼子母神「やめだ、お前を殴ると凶香が悲しむ」

 

俺は帰って来た手紙を空間の中にしまった

凶香…これで良かったんだろ?

俺は帰ってくる筈のない疑問を問いかけた

 

鬼子母神「忘れるなよ?お前はこれから一人じゃない、

凶香の分の人生も生きる罪がある」

 

楽矢「あぁ…分かってるさ」

 

俺は何時になく力の入った声で返事をした

不老不死に人の分迄生きろ!と言うのもあれだな…

嫌でもこれから先生きる事になるんだ

 

 

 

 

 

 

俺は鬼の集落の入り口に立ち、一歩足を踏み出した

見送りは鬼子母神だけだ…だがそれでいい

 

鬼子母神「楽矢、少し待ってろ」

 

俺は鬼子母神に呼び止められた

大体5分くらい待っただろうか…

鬼子母神はこちらへ何かを放り投げた

 

鬼子母神「旅立ち祝いとでも言おうか…

まぁ、悪い物では無い」

 

受け取った物をよく見ると

鞘の無い布で包まれた短刀だった

何処にでも有りそうだが、

中から感じる妖力の量は桁違いに多い

 

楽矢「貰ってもいいのか?」

 

鬼子母神「あげるとは言ってないだろ、

凶香の罪を償えたら返しに来い」

 

ありきたりな台詞なこった…

まぁ、有難くいただく事にしよう

 

鬼子母神「また来いよ、穂冒楽矢!」

 

俺は後ろを向かずに片手だけを上に上げて手を振った

また来い…か、次に会う時は凶香の罪が償えた時だ

それまで寄り道はここに来る寄り道はお預けにしよう

俺は貰った短刀を握り締めて妖怪の集う

山とは真逆の方向に歩き始めた

 

 

 

 




どうも、夜分遅くにこんばんわ、空ネロです

今回の話はこの先もまだまだ続く
冒涜伝の一応は輝夜編の節目、という形の回になります
前回が短かったので今回は少し長くしてみましたが
どうだったでしょうか


まぁ、少しずつ話が動き始めているのを
感じて頂けたら執筆者としては嬉しい限りです

今回のあとがきは少し真面目な内容になりましたが
偶には真面目にやる、ということです。

皆様、今回もご回覧有難うございました
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