……さて、これで何日目なんだろうか…
鬼子母神と別れてからもう何度も朝と夜を繰り返した…
だが、これ程か!という程に俺の旅に人間はおろか
妖怪の気配すら感じない…
俺の空腹は前世で慣れたが、良い加減ポチとクロが
餌を与えないせいかいう事を聞かない…
村は何度か見つけたのだが、廃村ばかり…
しかも、白骨化した人で埋め尽くされているときた
見慣れたものだが、好ましいものではない
楽矢「はぁ…」
鬼子母神に道でも聞いておけば良かった、と
何度後悔したことだろうか…
空間で移動しようともしたが輝夜に頼るわけにも…な?
永琳から貰った薬はどう見ても栄養剤には見えない
紫は…パス、幽香もパス…となれば人が居ない
自分の人脈の狭さに驚かされる
楽矢「ポチ、クロ、休憩だ」
俺の体を食べさそうとした事もあるが
案の定、差し出しても食べなかった
新鮮な生き血と肉じゃないと好みではないらしい
ポチは何時もなら皮膚の下に隠れているのだが
空腹のあまり身体の外に出てしまっている
クロは俺の背中のコートの黒に擬態しながら
後ろを見張ってくれている
餌のリスクを控えれば優秀な駒だ
「誰かー!すいませーん!!」
休憩も終わり、また歩き始めようとすると
後ろから子供の呼び声が聞こえた
あまりに咄嗟過ぎて、つい腰を抜かした
今迄人の気配なんて感じなかったが…
俺は呼び声に疑問を抱きながら声の方向へと歩いた
「誰かー…」
声を辿って近づいていくと
どうやら段差を踏み外したらしい…
足を抱えて動けなくなっている少年がいた
服は泥まみれ、遊んでいたら足を踏み外した…
とでも言った感じだろう、仕方ないか…
楽矢「どうした、坊主」
少年はこちらを見ると安心した顔を浮かべた
「良かったぁ…」
少年は安心しきってなのか泣き始めてしまった
それよりもさっきからポチとクロが攻撃体制だ
皮膚を貫いて今にもこの子どもが肉塊になり得る程に
人の体内で暴走してやがる…
楽矢「一体どうした?こんな山奥で…」
「足が…」
少年は涙ながらに自分の足を指さした
これくらい俺からすればどうってことないような
傷に見えたが確かに切れているのは確かだ
楽矢「はぁ…坊主、家がどっちか分かるか?」
「………わかんなくなっちゃった…」
暫く辺りを見回した後に慌てふためくようにこちらを見た
…分かってはいたものの、面倒事に巻き込まれた気分だ
面倒くさいが、このまま見捨てたら
手癖の悪いペット二匹が捕食してしまいそうだ
それに、このまま見捨てたら俺のガキの頃よりも
酷い子供時代なり得るのは確かだろう…
仕方ないが、情けをかけて助けてやるとしよう
楽矢「仕方ないか…坊主、今から言う事をよく聞け」
「うん、わかった…」
やっと泣き止んだか…まぁ、年齢も年齢だ
こんな山奥で一人きりなのを物怖じしないガキの方が怖い
楽矢「目を閉じて自分の親の事だけ考えてろ
自分の住んでる村をよく思い出すんだ」
「わかった…」
少年は強く目を瞑ると下を向いた
俺は坊主の頭を手を当てて、今坊主が想像している
情景を空間能力で具現化をした
俺の頭の中にその光景さえ入ったんならば後は簡単だ
俺は坊主を背負ったままその光景へと飛んだ
「あれ、ここ僕の村だ!」
作戦成功、予想通りに坊主の村へと飛べたようだ
村の入り口付近、といったところだろう
それにしても相変わらず便利な能力なものだ
瞬間移動、具現化、何でも出来てしまう
…まぁ、妖力の消費が馬鹿みたいに激しいがな…
辺りを見回すとすっかりと夕方だ
外は夕焼けでいかにも、子どもの家に帰る時間を
表しているかのような情景だ
「おじさんありがとう!」
楽矢「おじさん…まぁ、いいか」
俺はおじさんに見えるのか…
いや、自分で言うのもあれだが見た目の年齢的には
若い方だと思うんだがな、実年齢はおいといて…
楽矢「次からはあんな山奥で遊ぶなよ…」
注意しようとした筈が気付けば目の前から
少年が消えて、村の奥へと走って行っていた
俺も、大人の長い話は苦手だったものだ
今でも得意ではないがな…
仕事柄、黙って殺してるだけで金を貰える程
甘い仕事でもなかったから仕方が無いんだがな…
自然と慣れた、という点が強いだろう
さてと、用は住んだ…また別の村でも…
「妖怪め!覚悟しろ!」
夕方のゆっくりと流れる静かな時間を崩すかの様な
声に反応してポチとクロが皮膚を破ると同時に、
後ろからまるで木が折れたかのような衝撃音が響いた
楽矢「危ないな…ポチ、クロ、助かった…」
後ろを振り返ると青い髪の少女が腰を抜かして倒れていた
横には木屑が散らばり、太い木の枝が折れている
これに対してポチとクロに関しては臨戦体制をとっている
………この状況からして大体の事は分かった
楽矢「ポチ、クロ、下がれ」
少女は座り込んでしまった身体を起こして
折れた木の枝を構えながら涙目でこちらを見た
「か、かかってこい!妖怪め!」
………奇襲の理由が分かった
どうやら、妖怪と勘違いされているようだ
いや、まぁ確かにこんな時代に髪が白い、
厚手の黒いロングコートを着た青年は怪しいな…
楽矢「理由は知らんが、取り敢えずその棒を置け…」
「そ、そしたら私を殺すんだろ…?そんな手には…」
面倒だ、言われた通りに殺してやろうか!
とも言いたいところだが、村の前で
子供を殺すわけにもいかないか…
それにしても、今日はよく訳の分からん
面倒事に巻き込まれやすいな…
楽矢「お前を殺す理由がないだろうが…
殺さないから、落ち着いて話を聞け」
俺は懐の銀刃と短刀を地面に置いた
俺も随分と甘くなったものだ、
こんなの前世で起きていたら
容赦無く叩きのめしたろうに…
武器を手放した時点で殺される世界だ
もし、前世ならば自殺行為となんら変わりないだろう
時代が変われば人も変わる、とでもいうわけか…
楽矢「取り敢えず、俺が襲われた理由は?」
「村の近くで立ち尽くしていて怪しいな…と、
それに!格好と髪の色が人とは違っていたので」
随分と筋の通った理由なもんだな…
よく、その理由でまるで自分に非はない!
と訴えることができるものだ
…というか、どう考えても俺に一切の非はない
様に思えるのは俺の考え方がおかしいからか?
それに、お前の髪の色で俺のことは言えないだろ…
楽矢「来たくて来たわけじゃない
山で迷った歩けないガキを運んで来ただけだ」
「そ、そんなこと言われても…分からなかったんです…」
さっきまで威勢の良かった少女は
膨らみきった餅の様にどんどんと縮こまっていった
まぁ、これ以上言い合う必要も無い
理由が理解されたんなら結構だ、退散させてもらおう
楽矢「まぁ、間違いくらい誰にでもある
気に病む必要はないと思うぞ」
俺が背を向けて歩き始めようとすると
……面倒だな、会話に集中しすぎたか
人里、という事をよく考えるべきだったか
楽矢「お前、名前は?」
「え?えっと…慧音といいます…」
楽矢「そうか、なら慧音…今すぐ村の中入って
絶対に人を家から出すな」
慧音「どうしたんですか?急に…」
楽矢「時間が無い、とっとと走れ!」
俺は慧音の背中を押した
慧音は転びかけながらも村の中へと入って行った
初対面なのに申し訳ない…が、そんな事を言って
悠長にしてる暇ではない
俺も短刀の鞘代わりの布を急いで剥がした
…俺が感じ取ったもの、それはかなりの大きさの妖力だ
一つ一つをバラすと、そこまで対したものでもないが
それが固まって大きな妖力になっているとなると
かなり厄介だ…簡単にまとめると
かなりの数の妖怪の群れがこの村目指して
お散歩中、とでも言えば良いんだろう
横に目をやるとポチとクロが
嬉しそうに身体を動かしている
楽矢「やっぱり今日はついてないな」
俺はつまらない独り言を呟いた
皆さん、こんばんわ、空ネロです
ここまで読んでくれている人がいるならば
お気づきでしょうが、今回は全60話の中でも
最長の話となっております
かといってもいつもより少し多い程度なのですが…
まぁ、これをやったから!といって
特に意味はありませんが、60話やって来た
現在の中でも話の長さをどれくらいにするべきなのか、
というところについて模索中です。
読みやすい長さ!という目安があれば
教えて頂けたらな…と、思う所存です
それと、もう一つ…
ふと見ていて気付いたのですが
一話と今の主人公が違いすぎて
誰だこれ状態なんですが、このまま継続するべきなのか
それとも、消して別の形で一話を作るべきか
悩んでおります。
他の方の小説を見させて頂いていると
最初から最後まで同じ主人公なのに
自分の小説は同一人物のはずなのに
某ガンダムの主人公交代のようになってしまって
自分で一話を見ると蕁麻疹が出そうな勢いです…
それでは、後書き、本文ともに長くなりましたが
今回もご回覧ありがとうございました
次回はいつも通りの分量ではないか、と思います