東方冒涜伝   作:空ネロ

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第六十二話 世界

「楽矢ー朝よ」

 

…聞き覚えのある声が俺の耳元で聞こえた

普段は静かなはずの朝が今日はやけに騒がしい

はぁ…目を開くと面倒事に巻き込まれるに違いない

逆に考えてこの声の主が世間話にわざわざ

こんな山奥に居る俺を探すはずがない…

 

楽矢「朝から人の耳元で騒ぐんじゃない…」

 

俺は気怠い身体をゆっくりと起こし

声の聞こえた方向にため息混じりに振り向いた

綺麗な金色の髪に整った顔立ち…

思い出すまでもない、紫だ

 

紫「久しぶりね」

 

急な訪問にまだ頭が完全に覚めていないせいか

はっきりと起こっていることに対して

意識が朦朧としている自分が居る

 

 

楽矢「随分と久しぶりだな、元気にしてたか?」

 

はっきりとした意識に急に馬鹿みたいに

肥大化した妖力がぶつかった

…認めたくはないがどうやら紫から出ているな

断言は出来ないが相当の苦難を乗り越えて来たのだろう

 

紫「ええ、数十年…いや、数百年ぶりかしら?」

 

楽矢「数えたことないな、何千年も旅をすれば

一日ずつ数えなくもなるさ」

 

紫「まぁ、それもそうね」

 

最初の数百年は数えていたが桁が6桁まで

上がるとなると流石の俺もお手上げだ。

寧ろ5桁までを数えていた事を自分で尊敬する程だ

 

楽矢「そんな事よりこんな山奥まで何か用か?」

 

紫「あら?私がわざわざこんな場所まで

世間話をしにきたとでも思って?」

 

楽矢「まぁ、それもそうだな」

 

…真面に言語が伝わる生物と話したのは

何年ぶりだろうか、随分と久しく感じるな…

慧音と別れてからというものの既に数百年近くは

とっくの昔に流れているだろう。

それ迄に人に会った記憶なんて

手の指だけを使って数えきれる程に少ない、

途中に何事も無さすぎたせいでほとんど記憶に無いがな。

 

紫「ねぇ、楽矢?」

 

楽矢「どうした?急に改まって」

 

紫「旅はもうやめにして一つの場所に

留まるっていう考えはないかしら?」

 

………旅をやめるか、考えた事は何度か有るが

結論はいつも結局留まる場所が俺には無い。

という理由で考えるのをやめてしまっていたな…

 

楽矢「留まる?残念だが俺には帰る場所は無いぞ…」

 

紫「それが有るのよ、私が作ったわ!」

 

紫は胸を張って褒めてくれる事を待って

いるかの様な表情を浮かべながら此方を見た。

あー、話がやっと掴めた…そう言う事か

 

楽矢「そこに住め、そう言いたいわけだな?」

 

紫「捻りが無いわね…まぁそういう事よ!」

 

…多分俺はこうして誰かに誘われる事を

心のどこかで待ち続けていたのだろう。

旅とはそういうものだ、ひょんな理由から迎える

旅の終わりなんていうのも悪くはない

 

楽矢「…乗った、と言いたいところだが…

俺に対して何か要求があるんだろう?」

 

俺の唐突な質問に対して紫は図星です、

というかの様な表情を浮かべた

…というか、顔が引きつっているのが見ると分かる。

 

紫「…私、嘘を隠し通すの下手ね」

 

楽矢「どれだけ巧妙な嘘であれど顔に

出してしまっては見抜かれるぞ?」

 

いわゆるポーカーフェイスとかいう奴だろう

それにこんな好条件の揃った話が

此方側に対してノーリスクで舞い込んでくる筈もない

 

楽矢「…で?その条件とやらは?」

 

紫「楽矢!私の式神になりなさ…「断る」

 

楽矢「話を遮るようで悪いが断る」

 

紫「しっかりと家もある、食事だって付いてくる

悪い話では無いと思うのだけれど…」

 

楽矢「誰かに縛られて生きるなんてお断りだ

それにこき使われるのもごめんだ」

 

紫「べ、別にこき使うだなんて…」

 

ここでこいつの式神になッてしまうと

今迄の旅の意味がまるっきり意味の無いものになる。

紫には悪いがその条件だけは飲み込めないな

ましてや、犬の世話じゃない…食事と住まいだけで

揺れ動くほど俺の心は安くない

 

楽矢「残念だがその条件だけは飲み込めない

手下探しなら悪いが他を当たってくれ」

 

紫は下を向いたまま何も喋らなくなった。

少し言い方が強かったかもしれないな…

だが、はっきりと言っておかないと、

こういうタイプの奴が面倒なのは承知済みだ

 

楽矢「悪い、少し言い方が強かったな」

 

紫「…別に構わないわ。思い通りに貴方が動く、

と過信していた私が悪かったもの」

 

楽矢「交渉決裂、といった感じか?」

 

紫「いいえ、あくまで式神は理想よ」

 

理想か、冗談にしては少し通らなかったな

その冗談は今度からは自分よりも年齢の低い奴にでも

話すべきだったな。…俺にしたのが間違いだ

 

紫「せめて私の作った世界に来ないかしら?」

 

随分とリスクが下がったな…

別に場所を留める事くらいは構わないか。

…それにこれ以上に紫を否定してしまうと

俺の今後の敵が一人増えてしまいそうな雰囲気だ

ここは素直にはい、と答えておくべきだろうな。

 

楽矢「構わないぞ、それくらいなら」

 

紫「本当!?本当に良いのね?」

 

紫の目がまるで子供が宝物でも見ているかのように

キラキラとしている。

見た目に反して心は純粋な奴だな…

根は良い奴なのは確かなんだが自分とは

違いすぎる性格のせいでどうも信用しきれないな

 

楽矢「あぁ、だが行く為の手段が無い………」

 

俺が発言を終わろうとしていた矢先、

急に足元の地面が消えてなくなった

いや、無くなったというよりかは穴に落ちた…

という表現の方が近いだろう

こいつの妖力が高くなった原因はこれか…

道理で山奥の俺の場所まで行けるわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「着いたわよ」

 

俺が瞬きしている間、まさに一瞬だろうな。

目を開くと山奥の森から一転して

目の前には和風作りの一軒の大きな屋敷が広がっていた

 

楽矢「せめて飛ばすなら飛ばすと言え…

急にも程があるだろう」

 

紫「返事が帰ってきたものだからつい…」

 

つい、の度合いがおかしく感じるのは俺だけだろうか?

こいつは凶香とはまた違った女の恐怖を感じる…

読めない、というよりも理解したくはないがな。

 

楽矢「ここがお前の自慢の世界とやらか?」

 

紫「そうだけれど…何か質問かしら?」

 

楽矢「いや、特に無いが…あまりにも

急な話すぎて頭の中が追いついていないだけだ」

 

紫「案内!といきたいところだけれど

残念ながらもう周りは夕方ね」

 

紫に言われて周りを見ると、早いものだ

特に人と話していると全く気付かないな

辺りは夕日に照らされて橙色に変わっていた。

 

楽矢「そのようだな」

 

紫「積もる話も有るし私の家に泊まる、

というのはいかがかしら?」

 

楽矢「元からそのつもりで話を進めてたんだろ?」

 

紫「さぁ?それはどうかしら?」

 

本当に読めない奴だな…

というか、そんなに簡単に人を泊めるというのは

人として、いや…妖怪としてどうなんだろうか…

 

楽矢「お邪魔させてもらおう」

 

紫「そう、なら入りましょうか♪」

 

紫は少しだけ笑うと屋敷の扉を開けた

笑う顔というのは何千年経とうと変わらないものだな。

また懐かしいものを見た気がする

 

楽矢「ところで…この世界に名前とかあるのか?」

 

紫「そうねぇ…無いわね」

 

楽矢「折角の作った世界なんだ、

どうせなら名付けてみたらどうだ?」

 

紫「それなら…幻想の世界…幻想の郷…

幻想郷なんてどうかしら?」

 

 

 

 

 

 




えーと、皆様新年の挨拶が遅れてしまい
申し訳有りませんでした。

あけましておめでとうございます、空ネロです。
それと、夜分遅くにこんばんわ


私の冬休みはもう終わってしまいましたが
皆様、冬休みはいかがお過ごししましたでしょうか?
私は完全に完璧な寝正月でした。
ゲームと睡眠に明け暮れるそんな冬休みでした…
休みの日は布団が離せない、そんな状況です。


話が変わりますが、ついに幻想郷突入でございます
いやー、最初からここまで見てくれている方が
居るかは分かりませんが本当に長かったです。
数パート前に後書きでこれまでの振り返りを
しているのであまり深くは追求しませんが
今年の梅雨で3年目に突入致します。
他の方の作品で三年も続いているのに
60話程度の作者さんなんて居ないんでしょうね…
まぁ、そんな事より今後とも皆様のお暇な時間を
ご頂戴出来たら幸いです。


それでは、皆さん今回もご閲覧ありがとうございました!
皆様にとって今年が良い年となる事を御祈りします。
今年も駄文作家空ネロを宜しくお願いします
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