東方冒涜伝   作:空ネロ

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第六十六話 最強

楽矢「……もう一度頼む」

 

紫「だからこの幻想郷の守り神が欲しいのよ」

 

…これに関しては俺の聞き間違いであってほしかった…

龍神…名前を聞くだけでも碌な予感がしない。

というよりも出来るなら二度と顔を合わせたく無いくらいに面倒だ。

 

紫「行ってもらえるかしら?」

 

楽矢「……一つ聞いて良いか?」

 

紫「どうしたのかしら?」

 

楽矢「その守り神とやらの代役は居ないのか?」

 

代役を立てられるなら俺の呼び出せる神でも構わんだろう。

…いや、それは流石にまずいか。

 

紫「それが…」

 

紫は深刻そうな表情を浮かべ吃った。

まぁこれだけの反応でも答えは分かる。

……面倒だが仕方ないな。偶には人助でもしておくか。

 

楽矢「……その仕事、引き受けるぞ」

 

霊華・紫「えっ!?」

 

 

俺の目の前の依頼人二人は素っ頓狂な声をあげて此方を見た。

自分から物事を押し付けておいて驚くものか?

…いや、寧ろ何か今損をした気がするのは気のせいか?

 

紫「そ、それじゃあお願いするわね」

 

霊華「悪いわね。お礼と言っちゃなんだけど今夜は…

「お母さん!見て見て!」

 

霊華の後ろに目をやると霊華を目掛けて小さな巫女が走ってきた。

多分、霊華の娘といったところだろう。

よく似た子どもなもんだ。格好まで揃えている。

手には大きな甲虫が握られている。無邪気なものだな…

 

霊華「お客さん来てるからあっちで……おお!凄い!」

 

…見た目と服装に限られない似た者親子だな。

霊華は娘の方に駆け寄りと一緒に捕まえた甲虫を

キラキラとした目で見ている。

虫一匹に何をそんなに輝けるのかが俺には生憎分からん、

ここまで似ていると姉妹に見えてくる程だ。

 

 

紫「あれは霊華の娘の霊夢よ。良く似ているでしょう?」

 

楽矢「あぁ、親子とは思えないほどにな」

 

紫「まぁ、あれでも強いのよ。

私が知る限りでは人間最強だと思うわ…」

 

紫は霊華に目線を向けながらも遠い目をした。

大体は予想がつく。他人の血生臭い事情には興味がない

あまり詮索しないでおくとしよう。

 

紫「…本題に戻るわ、結界を張るのは明日よ。

行く方法は…良ければ届けるわよ?」

 

楽矢「いや、遠慮しておく」

 

正直な話、紫に送ってもらうのも無駄な妖力を使わなくて

楽なんだろう。…が俺はあの空間が苦手だ。

禍々しさが全てを物語る空間に自分自ら飛び込むのは

好奇心が旺盛であろう俺でもさすがに気が引ける。

自分の能力も幸い俺にはある事だ。気分を損なわない方が良い

楽矢「契約が完了した後は報告しに戻った方が良いか?」

 

紫「いえ、大丈夫よ。龍神様との契約が完了したら

自然と段階が進む様にあらかじめ結界は作ってあるわ」

 

流石と言ったところか。本当に何を考えてるのか

分からん奴だ。どうも此方の考え、それどころか物事の先すらも

見据えてるようで何というか奇妙な奴だ。

 

楽矢「そう言えば藍は別の仕事か?」

 

紫「ええ、お手伝いしてくれる妖怪探しよ。

私と霊華だけでは結界の規模が大きすぎるもの」

 

てことはまだまだ此処には妖怪が居るのか…

妖怪という存在よりもこの二文字自体に対して

驚きを感じなくなってしまった自分自身の慣れに驚かされる。

前世の俺なら妖怪なんて鼻で笑っただろうに

 

霊夢「おじさん誰ー?」

 

後ろを振り向くと好奇心の塊が立っていた。

おじさんか…髪は黒くしているはずなんだがな…

 

楽矢「俺は旅人をしている楽矢だ。よろしくな」

 

霊夢「私霊夢!よろしく!」

 

霊夢が手を出してきたので握手を交わすと

さっきの甲虫へと戻っていった。

いつの時代でも子供は無邪気なものだな。

俺にはあんな時代が無かったせいか時々、

あの無邪気さが羨ましく思える時もある。

 

楽矢「………フフッ」

 

紫「貴方が笑うなんて珍しいわね」

 

楽矢「いや、思い出し笑いだ。

お前も初めて会った時はあの位小さかったのにな…」

 

紫「生物は成長するものでしょう?」

 

楽矢「確か…勝てるわけありません、だったか?」

 

紫「よく覚えてるわね、私ですら忘れてたわよ

初めて会った時の事なんて…」

 

紫は発言だけを見れば平然としたものだが

顔を見ると発言とは真反対に赤く染まっている。

…こう見ると成長したのは案外見た目だけなのかもしれない

 

楽矢「俺もよくあんな小さい餓鬼に酒を呑む約束なんか

取り付けたもんだ。まぁ現に約束は叶ったわけだが…」

 

今思い出してみるとその場の雰囲気と勢いだけだな。

普通に考えるとかなり危ない橋だった。

酒の勢いとは時に恐ろしい約束を取り付けるものだ。

 

紫「確かにそうね…そう言えば、貴方の小さい頃は

どんな子供だったのかしら?」

 

楽矢「………さぁな、長い事生きてるせいで思い出せないな」

 

紫「…時々貴方が人間か妖怪なのか分からなくなるわ」

 

それに関しては自分ですらも分からないな。

俺は種族の全てにおいて中途半端なのだろう

 

霊華「…そろそろ日も暮れるけれど楽矢さんは

どこで夜を過ごすつもりかしら?」

 

霊華は此方へと歩きながら俺に尋ねた。

前世だと仕事の関係上夜に眠る、という習慣が

あまり無かったせいか夜は睡眠があまり必要ない。

いや、寝てしまうと命が無かったような毎日だ。

見張りをしている部下を差し置いて自分は布団の中、

なんて人を動かす役には相応しくないからな。

 

楽矢「どこでも過ごせるぞ。野宿には手慣れている」

 

霊華「そう、良ければ泊まっていっても構わないわよ?」

 

楽矢「いや、遠慮させてもらう。俺なら外で大丈夫だ」

 

霊華「別に一人増えようが二人増えようが変わらないわ。

それに、色々と旅の話も聞かせてほしいのよ」

 

楽矢「…そこまで言うならお邪魔させてもらおう。」

 

紫「それじゃあ今日は宴会かしら?」

 

霊華「あら、紫は別に招待していないのだけれど?」

 

紫「一人増えようが二人増えようが構わないのでしょう?」

 

霊華「はぁ…しょうがないわね…」

 

紫「流石、優しさまでもが人間最強ね!」

 

泊まるとは言ったものの今夜は中々眠れなさそうだ…

本来なら明日の為に英気を養っておきたいところなんだが、

今日に関してはどうも俺の希望も届きそうに無い。

…それにしてもこう軽々と初対面の俺を家に招く

この巫女には警戒心が無いのだろうか。

手を出すつもりも無いが色々と危ない巫女なものだ

 

霊華「楽矢さん?どうしたの深く考え込んで」

 

楽矢「いや、何でもない。後楽矢、呼び捨てで良いぞ」

 

霊華「そうなの?殿方は敬われる方が好きだって…」

 

楽矢「生憎だが俺はその殿方とやらに一致しなくてな、

敬われたりだのされるのは苦手なんだ」

 

霊華「分かったわ。それじゃあ、夕飯の準備してくるわね

霊夢ー!手伝いなさい!」

 

霊華は虫捕りに夢中になっていた霊夢を呼ぶと

本殿の中へと足を進め、その後ろを霊夢が追いかけた。

何というか、人間最強とは到底思えない…

俺から見ると元気で若々しい子供を持つ一人の親にしか見えない。

 

楽矢「人類最強とは信じ難いな」

 

紫「ふふ、そう見えるかしら、戦ってみれば分かるわよ?」

 

楽矢「戦闘はごめんだ、遠慮させてもらおう」

 

紫「貴方も本気を出せば強いのは確実なのだけれどね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊華「出来たわよー!」

 

俺と紫が適当に世間話をしていると、

辺りに神社の外まで聞こえる程の大きな声が響いた。

中からは和食特有の香ばしい香りが辺りに広がり

朝昼と何も食べていない俺の食欲をかき立てた。

 

紫「さて、私達も入りましょうか」

 

楽矢「そうだな」

 

俺たちが中へ入ろうとすると、わざわざ呼びに来てくれた

霊夢と鉢合わせた。霊夢は腹の音を玄関に響かせると

「行こ!」と俺と紫の手を引いて中へと引っ張っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです。夜分遅くにこんばんは、空ネロです。
約二ヶ月近く投稿期間を空けてしまい申し訳ございませんでした。
最近は執筆をしようとすると睡魔に負けてしまったりと
中々ハーメルン自体を覗ける時間があまり無かったので
久々に集中して執筆すると案外難しく、投稿までの期間が
どんどんと延びていきました。

今年の夏も昨年通りに投稿強化週間の様な形で
1日一話ずつ投稿していけたらな、と考えております。
これからも是非暇な時間に覗いていただけたら嬉しい所存です。
それでは今回もご閲覧、ありがとうございました。

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