東方冒涜伝   作:空ネロ

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今回の話は文の書き方をいつもの台本形式を無くして
書いています。別に間違えた、とかそういう事ではなく
皆様にどちらの方が伝わりやすいか、
簡単に言えば実験の様な回でございます。

それでは本編へどうぞ。


第六十七話 灯火

………目が覚めてしまったようだ。

周りを見回すと酔い潰れた大人が二人、

その横で静かに霊夢が眠っていた。

外から安眠を妨げない程度の満月が三人の顔を照らしている、

部屋の奥には質素で模様の無い布団が4人分敷いてあった。

 

…しょうがない、風邪を引かれても困るしな…

俺は霊夢、霊華、紫の順で布団へと運んだ

霊夢は案の定軽く、紫と霊華もあれだけ馬鹿みたいに酒を

食らっておきながら予想している程重たくはなかった。

ただ、息する度に酒の強い匂いがするのは勘弁して欲しいがな…

 

昨日の夜は俺は酒を飲まずに途中で切り上げたので

こいつらが何時まで飲んでかは分からない。

霊夢に酒を与えてなければ良いんだがな…

まぁ眠っているということは早く切り上げたんだろう…

俺は3人を起こさないように静かに玄関まで向かった

靴に履き替え、神社の外を目指して歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

暫く歩いていると開けた草むらに出た。

俺は草むらの真ん中に腰を下ろし小さくため息をついた。

 

「ポチ、クロ…出てきて良いぞ」

 

ポチとクロは俺の手首を突き破り躙り寄る様に外へと顔を出した。

こいつらに感情があるかは知らないが、ペットとして見ると

偶には外の空気を吸わせた方がいいだろう。

最初の頃はこいつらを外に出すのに痛みを感じていたが

最近になると痛みに慣れたお陰で苦痛では無くなった。

 

「あまり遠くへ行くなよ、後生き物も殺すな」

 

二匹が久しぶりの外の空気を楽しんでいるのかは

俺には分からないが、二匹とも俺の言葉に頷いた様に見えた。

これで久しぶりの本当の意味での一人になれたわけだ

 

俺は空間を開き、中から二枚の皿とコートを取り出した。

外の空気は昼間の暑さとは打って変わり少し肌寒くなっている

俺はコートを羽織ると、神社からくすねてきた

まだ未開封の酒を開け二枚の皿に注いだ。

酒を注いだ皿は満月の光が反射して鏡のようにも見えた。

 

やはり満月の夜は嫌いだ、まだあの日の凶香の最後の笑顔が

脳裏にこびり付いて何千年経とうと離れようとしない。

幾ら忘れようとしてもやはり忘れられないのだろう。

自分の中で平気なフリはできても奥底では消えることは無かった。

自分の皿に注いだ酒を飲み干すと日本酒の濃厚さが

嗅覚と味覚を刺激した。やはり酒は苦手だ…

 

山に篭っている間の俺の生活は荒れたものだった。

ひたすら寝て、襲ってきた妖怪を叩きのめし、

その残骸をポチとクロが屠る。

血を抜き取って要らなくなった死体は土に埋める。

何をするにも気力が無い、そんな状態だった

紫が来た時も正直幻想郷の話自体を断ろうかとも思った。

それ程までに俺にとって最愛の凶香を失ったダメージは大きかった。

 

月が綺麗な夜にはまるで意識をも壊すかのように

あの日の笑顔と手紙の文が俺の精神を蝕んだ。

その度に近くの木々に頭を打ち付け痛みで誤魔化した。

当然頭からは血が流れた。気力すらも無くなり

黒から白へと変わった髪色すら赤く染めるほどに血は流れ出た。

だがどれだけ痛みで誤魔化そうとどれだけ血が流れようと

次の日には血は止まり、痛みは愚か切り傷すらも無くなっていた。

不老不死じゃなければ死ねたのだろうか、そんな安直な考えが

いつも俺の頭の中で生まれては消えを繰り返していた。

 

あの日の安易な不老不死という決断。

一見人間の永久の理想にも見え、助けられる場面も多かったが

俺にとっては間違った判断だったのかもしれない。

このまま行くと自分はどうなってしまうのか、なんて

人を辞めている俺には到底遅すぎる考えが毎日の様に脳内を巡った。

今更必要無い、なんて言うつもりも無いが、

あの決断に戻る事が出来るなら絶対に俺は求めないだろう

そこまでして生き永らえてまで俺は何を求めているのだろうか。

 

二杯目、三杯目と飲んだ酒の量が徐々に増えていった。

丁度五杯目を注ごうとしたところで凶香の手の付けていない

皿に注がれた酒が満月に照らされて、俺の顔を映した。

そこには、死んだ魚の様に濁った目をした俺が

表情1つ変えずにただ此方を見つめて佇んでいた。

 

辺りを見ると少しずつ明るくなってきている。

どうやら夜が明けるまでそんなに時間は残されていないようだ。

ポチとクロが俺の様子を伺うようにして近づいて来た、

…俺の一人きりの晩餐も終わりが近いらしい

俺は凶香の皿に入った酒を飲み干し、空間にしまった。

 

自分が使っていた皿に残っていた酒を飲み切ろうとすると

まだ残った月の光に照らされてまた俺の顔が写り込み

俺には死んだ魚の目が多少はマシな目に変わって見えた。

どうやらまた凶香に助けられたようだ…

 

「あぁ、安心しろ…まだ消えはしないさ」

 

誰に対して言ったわけでも無い俺の独り言は静かな草むらに

響きはしなかったが草むらに優しい風が吹いた。

その風は何かを動かす程強い風では無かった、

例えるなら人間と吐息くらい弱く、優しい風だった。

 

「…先はまだまだ長いな」

 

俺は草むらに背を向けると一歩ずつ帰路へと歩いた。

俺は右手を出し、小さな黒い炎を掌に灯した

その炎はまるで人肌程の暖かさをした炎とは呼べないくらい

小さく、弱い炎。

 

「行ってきます、凶香」

 

俺の誰に向けたわけでもない独り言をかき消すかのように

後ろから強い風が吹いた。…手荒い見送り方だな。

掌を見ると小さな炎は跡形も無く消え去っていた

俺は強く右手を握りしめ、また歩き始めた。

気付けば月は沈み、辺りは朝焼けの光で照らされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!おじさんどこ行ってたのー?」

 

神社に戻ると早起きな霊夢が俺を出迎えた。

子供は早起きとはよく聞くがあまりにも早すぎないか…

 

「早く目が覚めたから散歩にな」

 

「ふーん、お母さんと紫おば…お姉ちゃんはまだ寝てるよ」

 

「そうか、眠たくないのか?」

 

「うん、ねぇねぇおじさん。遊ぼ!」

 

「はぁ…」

 

何というか、子供は思考回路が単純と言うか…

遊ぶ、食べる、眠る以外の行動以外に脳にプログラム

されていないのか疑う程にどストレートな生き物だ。

…まぁ、偶には良いか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後俺は霊夢が疲れるまで遊びに付き合わされ

そのはしゃぐ声で二人も目を覚まして起きてきた。

霊華は遊び相手をさせられてフラフラになった俺を見て

申し訳そうにしていたが紫はこっちを見てニヤニヤと笑っていた。

朝飯を食べている時も霊夢の遊びに付き合わされ

まさか俺まで怒られる事になるとは思いもしなかったがな…

 

 

 

「それじゃ、こっちの事は任せたぞ」

 

「ええ、頼んだわよ」

 

「おじさーん!また遊んでねー!」

 

「ったく…霊夢ったら…それじゃあ任せるわね」

 

俺は結界作りには関与しないため、単独行動となる。

だから一人で先に出発、というわけだ。

面倒ごとは早く済ますに限るからな…

俺は3人に見送られながら玄関の戸を閉めた。

 

「さて、仕事開始だ」

 

行く前に一呼吸置いて、軽く意気込んだ…

俺は自分の空間に丁寧にゆっくりと入り込んでいった。

 

 

 

 

 

 

……あの草むらが後に無縁塚、と呼ばれる事は

この時の俺はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 




夜分遅くにこんばんわ、空ネロです。
何とか日を空けずに投稿することができました。
これからもこのペースで3日以内には投稿していけたらな…
と自分の中では目標を立てています。

今回の話は久しぶり…いや、ただ期間が空いてるだけでした。
そんなシリアス回となっていましたがいかがでしたでしょうか?
本編もそろそろ大きな節目に差し掛かろうとしていますが、
私自身も今回の形式で今後も続けるのかこれから先も
台本形式で続けていくのかでかなり悩んでいます。

書く側としてはどちらでも労力は変わらないのですが、
読む側としてはどちらの方が読み易いのかが
私自身あまり投稿以外でこのサイトに触れないので分かりません。
ですので出来るならばどちらが読みやすいか、
そのコメントを残していって頂けると大変参考になります。

今後も今回の様な実験回を重ねて最終的には
駄文に毛が生えた程度を目標にこれからも成長していきます。
それでは今回もご閲覧ありがとうございました。
次回も良ければ見て行って頂けると光栄です
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