夜の暗がりから、徐々に空が白んでくる時間。
小洒落た外見のカフェ『Cafe Bat Night』の裏手に、赤いバイクが停まる。
バイクから降りた赤いライダースジャケットの青年は、そのまま裏口から店へと入り、静かに一言。
「ただいまー……」
仮面ライダーアクセルロストこと、今泉 疾風の住処がここになる。
「やあ、帰ったかい。おかえりさんだね」
「今日はマンティスオルフェノクが相手だったよ、ヨルさん」
「オルフェノクが相手か。お疲れさん」
疾風を出迎えたのは、整えられた髭のダンディな男性。
彼はこの店のマスターである『原口
珈琲にはこだわりがあり、店で出している珈琲豆のブレンドは彼オリジナルな上に、焙煎も自分で行っている程。
夜明け早々だがこの時間に起きている彼は、開店前に店で出すパンを焼く準備をしていたのだろう。
発酵したパン生地を整形して、後は焼くだけといったところ。
「しかしそれなら、カイザの坂本くんがいれば良かったかもね」
「あの人カイザギアに適合してるけど、それでも
「ああ、それもそうだね。彼、当たり前に変身してるから忘れてたよ」
「あの人、気付かない内に死んでそうで怖いわ……」
「だね……」
ここにはいない人間の事を話題に出しながら、勝手にお通夜の様な空気になる2人。
とはいえパンを作る手は止まらず、オーブンにパン生地が入り、火も点される。
「さて、と。私はまだ作業してるから、疾風くんは少し寝てきなよ」
「そうさせてもらうよ。ありがとう、ヨルさん。おやすみ」
「はい、おやすみー」
言いながら階段を登り、2階の住居部分へと消えていく疾風。
それを見送った後、徐に一丁の
そう、彼もまた転生者であり、そして仮面ライダーではないが類似した力を持つ者。
「……私ももう少し、手伝うかな」
「おぉっす!今日も元気かマスター!疾風ぇ!いつものモーニングセットを頼むぜ!」
「私は元気だよ、黒霧くん。疾風くんは昨日は遅くて、まだ寝てるけどね。モーニングはすぐに用意するから、待っててよ」
「おお!頼んだぜ!あ、それとウチの連中のために、サンドイッチも持ち帰りで5人分頼むわ!」
「はーい、食べてる間に作るからね」
疾風がまだ寝ている朝8時。
店にやって来たのは、小洒落たカフェにはあまり似合わない様な上下ジャージの騒々しい男。
しかし慣れた動きでカウンター席に座ると、まさに常連といった様子で
彼の名前は『黒霧 衛』であり、そして『仮面ライダー黒影・真』でもある。
「そっちの様子はどうだい?『シャドウ・トルーパーズ』の子達は元気かな?」
「おお!どいつもみんな元気よ!俺が量産型戦極ドライバーとマツボックリロックシードしか作れないから不便かけるけど、昨日も連携して町で銀行強盗してたレイダーを倒したぜ!」
「流石だね」
衛の作ったチーム『シャドウ・トルーパーズ』は、リーダーである黒影・真の衛を除いて全員が『黒影トルーパー』の集まりだ。
衛だけが転生者であり、それ以外は非転生者だが、町を守るために衛から量産型戦極ドライバーとマツボックリロックシードを渡されて戦っている、言うなればヒーローではなく
「そういえば、最近やたらとレイダーたちと戦う事が多いな!」
「もしかしたら、プログライズキーやレイドライザーを作る能力の転生者が売ってるのかもね?それこそ、ミュージアムがガイアメモリを売ってたみたいにさ」
「ありそうだな……!」
と、2人がそんな話をしながら食事をしたり、作業をしていると、入口のベルがカランコロンと音を立てる。
反応して振り向けば、まだ年若い青年が入って来ていた。
青年の背には、竹刀袋が背負われている。
「おはようです、マスター。それに衛さんも」
「やあ、おはよう聖くん」
「お、聖か!隣来い!隣!」
青年が衛の隣に座り、カウンターに竹刀袋を立てかけると、ゴトリ、という中が竹刀とは思えない程の重い音がする。
「道場と大学はどうだ!順調か!」
「どっちも好調ですよ。あ、マスター。モーニングセットお願いします」
「はいはい。すぐに準備するから、待っててね」
新しく淹れられる珈琲と、トーストの良い香りが店内に漂い、鼻腔を刺激する。
穏やかな雰囲気の店内だが、続く会話の内容は些か物騒なもの。
「そういえば、昨日俺の大学でヤミーが出たんですよ。バイソンヤミーだったかな?」
「おや、それは大変だったね?」
「バイソンヤミーってーと……あー、ガメルか!大丈夫だったか!」
「ええ、変身しようとしたら、先に坂本さんとジオウの始堂さんがいて、既に倒してたんですよ。坂本さんはいつも通り来てから帰るまで、ずっとカイザのままでしたけど」
「坂本くんはいつもそうだよね。私も素顔は見たことないかな」
「俺もないな!まあ、プライバシーってもんもあるし、詮索もよくねえだろ!」
仮面ライダーやその関係者が集まるためか、自然と話題は出没した怪人のものとなる。
正確には、怪人だけではなく仮面ライダー自身のことも話題に上る事があるが。
「あ、でも坂本さん、たぶん剣が使い慣れてるみたいですよ。カイザの銃って、剣にもなるじゃないですか。ずっとそっちの方で使ってましたし」
「手に馴染む武器って、人によって違うしね。もしかしたら、聖くんみたいに、剣術道場に通っているのかもよ?」
「かもしれないですね」
素顔が謎のライダー、坂本の話題を一頻り続けていると、その内にモーニングを食べていた2人も食べ終わる。
その頃にはようやく起きた疾風も、寝起きの珈琲を片手に会話に混ざり始めていた。
女という字が3つで姦しいだが、4人も男が揃えば中々の賑わいになる。
「早くアクセルドライバー欲しいんだよなー。ロストドライバーでも悪くないけど、専用化されてる方がやっぱり良いし」
「私も、できればビルドドライバーとエンジンフルボトルが欲しいね。エボルドライバーはちょっと怖いし、使える気もしないからいいけど」
「ああ、ロストじゃない方のバットフルボトルでしたっけ?それでもナイトローグにはなれるんですね」
「まあ、DX版だとピン配列一緒だったからじゃないかな?」
「「「あー……」」」
そんな言葉からふと思い出される、それぞれの前世の記憶。
とは言っても、正確には前世の玩具の記憶だが。
そこから派生して、衛が今使っている装備についても話題が広がる。
「……俺が今使ってるのはゲネシスドライバーとマツボックリエナジーロックシードだけど、これってジンバーマツボックリとかできるのか!?」
「設定上は存在したはずですよ?でも、たぶん意味はないと思いますけど」
「ああ、ゲネシスドライバー使用のライダーと、ジンバーアームズは大体同じくらいの強さらしいな。専用に調整してある奴は別格らしいけど」
「なんだ!そうだったのか!」
「強いて言うなら、ゲネシスドライバーが壊れた時の保険になるくらいだろうね」
「なるほどな!……っと、悪い。電話だ」
そこまで話したところで、衛のスマホの電話が鳴る。
連絡先を見ると、チームの一員からのものだった。
「おう、どうした!……あん?またレイダーが出没した?今度は何のだ?は?別種のレイダーが3体同時に!?」
「おっと、なんか大変そうだな」
「みたいですね」
「分かった!俺もすぐに行く!」
電話の内容は、仮面ライダーゼロワンにおける中盤の敵役である、レイダーが3体も町で暴れているというもの。
使用するプログライズキーによって異なる形態。異なる能力を発揮する彼らは、決して弱い相手ではない。
町で暴れるのは、放置しては被害が拡大してしまう一方になる。
自警団を組織している衛が駆けつけるのは、当然の事だった。
「よし、俺たちも一緒に行こうか」
「マスターはここで待っていてください。お店もありますし」
「分かった。危なくなったらすぐに連絡しなさい。ナイトローグだから君たちより心もとないが、壁にはなるだろう」
「はは、そうならないようにするさ」
言いながら、夜臣を除いた3人が店の外へ出る。
それを見送る夜臣は、彼らが帰って来た時のために準備を始めた。
「これが噂の仮面ライダーかぁ?大した事ないなぁ」
「まあ、俺たちが買ったこのレイドライザー?やプログライズキー?ってのは、仮面ライダーにも勝てるって話だったし、当然じゃネ?」
「デショ!デショ!」
「ク、くそがぁ……!」
連絡があった現場では、3体のレイダーたちが1人の黒影トルーパーを嬲っている所だった。
黒影トルーパーは量産型のライダーであり、スペック上は下から数えた方が早い。
集団戦でアドバンテージを稼ぐのが基本であり、シャドウ・トルーパーズでもそうなのだが、彼は衛に連絡した後、被害を見過ごせずに1人で飛び出してしまったのだ。
その結果が、怪人たちの足元で倒れ、踏み付けられるという現状。
だが、彼には絶望はなかった。
「……よう、お前ら!俺のチームメンバーを、可愛がってくれてたみたいだな!」
頼れるリーダーが来てくれると、分かっていたから。
「なんだぁ?お前は?」
レイダーの1人、黒影トルーパーを踏み付けている『ダイナマイティングライオンレイダー』が後ろからかけられた声の主を確認するために、振り向く。
そこには浮遊するバイク、『ダンデライナー』に跨った上下ジャージ姿の男がいた。
彼はダンデライナーから降りると、真っすぐにレイダーたちの元まで歩いて来て――――
「そいつのリーダーだよ!」
「なっ!?グァッ!?」
――――生身のまま、ヤクザキックでダイナマイティングライオンレイダーを黒影トルーパーからどかした。
それは、自分たちが怪人に変身しているという驕り。
生身の人間には何もできないという侮りが、容易に起こした状況だった。
「り、リーダー!」
「よく頑張ったな!後は俺たちに任せろ!」
「は、はい!」
黒影トルーパーを助け起こすと、自分が乗ってきたダンデライナーに乗せてこの場を離脱させる。
それを見た、両手のブレードが特徴の『バイティングシャークレイダー』が、逃がした彼を嘲った。
「おいおい、あんな雑魚でもいないと大変じゃネ?3対1だヨ?分かってる?おっさん!」
「別に3対1でもお前ら程度なら問題はねえが……今日はちげえぞ!」
「そういうなら空飛んで先に1人で行かないでくれるか!?」
「え?ちょっ!?フグァ!?」
「さ、サメが轢かれたァァァ!!??」
バイティングシャークレイダーの嘲りを撥ね飛ばす様に、と言うよりも文字通り撥ね飛ばして現れた、真紅のバイク。
躊躇いのない人身事故を目の前で目撃させられた『アメイジングヘラクレスレイダー』が、思わず叫んで慄かされてしまう。
「追いつくの大変なんですよ!」
「おう、ワリーな!」
その直後に到着した1台のバイク。
それぞれのバイクから降りて来た2人共が既に腰にベルトを装着しており、聖の竹刀袋からは紫色の剣が抜かれている。
「なんにしろ、これで3対3だな!」
[ゲネシスドライバー!][マツボックリエナジー!]
衛が腰にゲネシスドライバーを装着。
「あの事故した両手に刃物は俺がやりますよ」
[ジャアクドラゴン!かつて、世界を包み込んだ暗闇を生んだのはたった1体の神獣だった……!]
聖が剣を構えながら
「じゃあ、あの筋肉自慢は俺がもらうか」
[アクセル!]
疾風がアクセルメモリのスイッチを押す。
そして全員がベルトにアイテムをセットし、それぞれのベルトを操作する。
「「「変身!!」」」
[ロックオン!リキッド!マツボックリエナジーアームズ!]
[ジャアクリード!闇黒剣月闇!Get go under conquer than get keen!ジャアクドラゴン!月闇翻訳!光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無情に暗黒竜を支配する!]
[アクセル!]
「町の敵は、叩きのめす!」
「運命は俺が斬り拓く!」
「さあ、ブッチ切るぜ!」
仮面ライダー黒影・真VSダイナマイティングライオンレイダー、仮面ライダーカリバーVSバイティングシャークレイダー、仮面ライダーアクセルロストVSアメイジングヘラクレスレイダー。
ここに開戦。