仮面ライダー リンカーシティ・ライダーズ   作:逸環

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Break Down

「フンッ!ンギギギギギッッ!!」

「リーダー!頑張って!」

 

衛がプログライズキーを手に、手の力で無理矢理こじ開けようとしている。

ここはBat Nightの店内なのだが、なぜこうなったのか。

話は数分前に遡る。

 

 

 

 

「そういえば皆、ゴリライズに興味ありません?」

 

レイダーたちとの戦闘が終わり、店に戻ってからの聖のこの一言が全ての原因だった。

ゴリライズとは、仮面ライダーゼロワンの作中で、本来ならば認証式展開のプログライズキーを、腕力で無理矢理開けるという、ザ・力技の通称である。

強固に固定されたロックを腕力だけで開くというのは、普通は無理なのだができてしまう人類もいるということ。

と、なれば男たちにとって気になるのは、それを自分ができるのか?ということである。

当たり前だが、できてしまっては逆に問題なのだが、そんなことは戦闘後で軽くハイになっている連中の頭にはなかった。

 

「言い出しっぺの俺からやってみますね」

「よ!男を見せろよ!」

「ゴーリラーイズ!」

 

ガヤが煩くなる中、プログライズキーに手をかけて必死に力を込める。

 

「ンググググ……ッ」

 

が、開かない。

日常的に重りを付けた木刀で素振りをしている聖でも、ゴリライズはできなかった。

なお、夜臣は「私はほら、歳だからそういうのはちょっとね……」と、最近上がらなくなってきた肩をさすりながら遠い目をして棄権した。

 

「よし、次は俺だな!」

 

と、衛が挑戦したところで冒頭に戻るわけだが、それなりに鍛えているはずの衛でも開ける事は困難だった。

そもそも人力では開けられないからこそのロック機構なのであって、普通は開くはずがない。

原作(仮面ライダーゼロワン)で開けられた人物がいたのは、例外中の例外なのだ。

なお、無理矢理開く事で変身するベルトも存在するため、正規ルートではないが開けれてしまえば仮面ライダーとして変身するのには使えてしまうのも事実。

 

「あー……こりゃ無理だわ!ほら、疾風!」

「はいはい」

 

しばらく粘るも、流石に無理だったので最後に疾風へとプログライズキーが渡る。

ツマミに手をかけ、力を加え「よっと」バキンッ!

 

「「「「……は?」」」」

「開いたわ」

 

そこには、確実に大事な何かが壊れた音と共に、展開状態となったプログライズキーがあった。

ちなみに、使用したのはダイナマイティングライオンプログライズキーなのだが、最早ロック機構が完全に壊れてしまった様子であり、閉じても再度ロックされることはなくパッカパカになってしまっている。

 

「え!?嘘だろ!?どうやった!?」

「普通に「よっと」って」

「ゴリライズできちゃったんですか!?」

「できちゃった」

「完全にロック壊れちゃってるぜ!?」

「やっちゃった」

 

普段そこまで鍛えている様には見えない疾風の、意外な怪力に戸惑う面々。

しかし考えてみれば、当たり前の結果かもしれない。

なぜなら、疾風は重さ30kgのエンジンブレードを、変身前の状態で振り回せる力の持ち主。

その膂力をもってすれば、ゴリライズもできてしまったのは分かる。

とは言え、ロック機構の破壊とまでなると、中々あり得ない結果ではあるが。

 

「……で、これどうします?」

「……ひとまず、リンカー・コーポレーションの技術開発部に持っていくか!ゴリライズの結果の見本として!前に出たレイダーからウチが回収したプログライズキーも、そこへ持ってったしな!」

「それたぶん、どっちかと言うと俺が色々検査される流れになる奴じゃねえか」

「健康診断がてら、一度受けとけ!」

「いいよ。俺の母ちゃんが研究者だから、検査は受けるならそっちで受けるから。まあ、リンカー・コーポレーションの技術開発部なら、俺も伝手あるし行って来るよ」

 

等とワイワイ話しながら、自然と残ったアメイジングヘラクレスプログライズキーと、真っ二つになっているバイティグシャークプログライズキーも疾風の手に渡る。

もちろん、これはゴリライズするためではない。

この後大学で授業がある聖と、仕事の現場があるシャドウ・トルーパーズ組は時間がないため、Bat Nightの住み込みバイトであり時間に比較的余裕のある疾風が届けに行くためだ。

 

「じゃあ、みんなこれお弁当ね。気を付けてきなよ」

 

夜臣が作っておいたサンドイッチを全員に渡し、店を出るのを見送る。

午前中には怪人(レイダー)たちと戦い、午後にはそれぞれの日常を勤しむ。

いつか皆が戦いのない日常に辿り着ける事を願いながら、夜臣はミルを回した。

 

 

 

 

店を出て、バイクに乗ること15分程の距離にある高層ビル。

そこがこのリンカーシティの中心となる、リンカー・コーポレーションのビルだ。

受付にて目当ての人物の名前を告げ、内線で確認後に部屋の場所を案内される。

案内された部屋へ入り、中々に座り心地の良いソファに座りながら待つ事10分程度。

ノックもなしに扉が開き、不機嫌そうな青年が入ってくる。

 

「……受付に呼ばれて来たが、届け物ってなんだ?アクセルロスト」

「レイダー共から回収した、プログライズキーとレイドライザーだ。喚人(かんと)、お前なら調べられるし、何かに使えるだろ?」

「ああ、そうだな」

 

喚人と呼ばれた彼の胸には、『第3開発部主任・井沼(いぬま) 喚人(かんと)』と書かれた社員証が。

そしてその腰には、シアン色の拳銃型デバイス(ネオディエンドライバー)がホルスターに収まっている。

一見すれば、彼もまた仮面ライダーの1人だ。

 

「それで、見返りは?」

「上手くいけばお前も仮面ライダーに変身できる(・・・・・・・・・・・・・・・)

「良いだろう」

 

しかし、彼は仮面ライダーには変身できない。

その理由は、極めてシンプルだった。

 

「にしても、お前も大変だな。ネオディエンドライバーはあるのに、ディエンドのカードがないなんて」

「ああ、おかげで仮面ライダーじゃなくて、ただの仮面ライダーを召喚できる人だ」

「普通は仮面ライダーを召喚できる人にもなれないんだぞ……」

 

2つ必要な変身アイテムの内の1つしか持ち合わせていない。

それが彼の変身できない理由。

彼が持っているライダーカードは、ディケイドと平成二期の仮面ライダーたちの物。

ディエンドのカードがなければ、ネオディエンドライバーでは変身できない。

 

そしてだからこそ、彼はここで開発者をしている。

必要なアイテムが揃ってい(仮面ライダーになれ)ないのなら、それ以外に変身できるアイテムを用意する(自力で仮面ライダーになる)ために。

 

「そういえば、これウチのマスターが持たせてくれた弁当。食べてくれ」

「ん?サンドイッチか。良いのか?」

「ああ、俺は大丈夫だ」

「じゃあ、ありがたく。……サンドイッチの礼じゃないが、一つ情報があるぞ」

「情報?」

 

サンドイッチを一切れ食べた井沼が、指を1本立てる。

 

「第1開発部の連中が、警察と組んで新しい量産型仮面ライダーを作ろうとしている。今のところはG3を作るつもりらしい」

「G3を!?」

 

それは、転生者たちの手に寄らずに生み出され、運用される仮面ライダーが誕生する未来の話だった。

仮面ライダーG3とは、原典(仮面ライダーアギト)において製作され、警察で運用された量産型ライダー。

決して強力とは言えないが、様々な武装や発展機によって支えられ、人々のために戦い続けてきた仮面ライダーだ。

 

「実は第1開発部は最近成績が悪くてな。営業的には、警察という大口の相手と契約したいってのはあるらしいんだが……」

「そもそもなんで警察が仮面ライダーを作ろうってんだ?」

「言ってしまえば、原因はお前たち仮面ライダー自身だ。怪人が事件を起こし、仮面ライダーが解決する。しかし仮面ライダーたちは所詮は一個人でしかない。警察からすれば、民間の自警団が法に反して武装して自衛行動をしてることになるわけだ。なら、それを黙って見ているわけにはいかないだろう」

「かと言って、俺たちも怪人を見過ごすわけには……」

「だから怪人に対抗するための、警察の仮面ライダーってことらしい」

「なるほどなぁ……」

「いずれ警察の仮面ライダーと激突する日が来るかもしれないが、その時は上手く逃げる事だな」

「そうするよ……」

 

モグモグとサンドイッチを食べながら、本来社外秘であろう情報を口にしていく井沼。

特に口止めする様子もないのは、井沼は否定するだろうがそれはお互いの信頼感のなせる部分なのだろう。

 

「そういえば、昨日始堂の映画館に行ったんだが、その時に奴から大学で怪人(ヤミー)が出たと聞いたんだがな」

「ああ、聖も言ってたな」

「その時に一緒に聞いたんだが、仮面ライダーたちを襲撃する何者かがいるらしい。被害者たちは、全員「一瞬の事で何も分からず倒された。敵の姿も見えなかった」と言っていたそうだ。……気を付けろよ」

「……問題だらけじゃねえか、この町……!分かった、気をつけるよ。少なくとも、単独行動はできねえな」

「ああ、最低でも2人以上での行動を心がけておけ」

 

それきり、井沼はもう話すことはないとばかりに、黙ってサンドイッチを食べ勧める。

今泉はそれを認めると、「じゃあ、また来るわ」と一言告げてから部屋を出て行く。

ビルを出て、ふと周囲を見渡せば、そこはいつもと変わらない町の景色。

 

「……でも、いるんだろうなぁ」

 

そこにはきっと、人々を襲う驚異が紛れ込んでいるのだろう。

 

 

 

1人、部屋に残された井沼は食べ終わったサンドイッチの包みを片付け、持ち込まれていたプログライズキーを調べようと手に取る。

しかし、そこでふと手が止まった。

 

「……なんで真っ二つになっているのと、ロック機構が完全にぶっ壊れてるプログライズキーもあるんだ…………?」

 

それは仮面ライダーたちのせい。

 

 

 

 

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