ドドォンッ!! ドォンッ!! ドゴォンッッ!
作戦が開始されてから約10分が経過した中、強烈な90mm榴弾砲の出す砲撃音に耐えながら、僕は次の標的を探す為に壁上から単眼鏡を使いトロスト区遠方を見ていた。
すると、先程エレン・イェーガー訓練兵が強烈な稲妻を発生させながら、巨人化をしたのを目撃した大岩付近に14m級が二体近寄っているのが見えた。
それに対して、早急に、
「......第三門ッ!3-5-7-0-0に砲撃開始!
第二、第一は3-5-7-0-1に第三門砲撃後2秒後に連続砲撃ッ!!
第四門は砲身の熱を水と氷で冷ましておけ!!」
と、簡易的な木製の机の上の地図上に、もう何重にも記された丸印の巨人マークに向けて砲撃命令を下す。
すると、彼らイスパニア兵は急いで砲弾の再装填及び角度の微調整を行い、
ドォォォォォンッッ!!
と、命令通りに発射してくれる。
ヒュゥゥゥ......
と、弾頭が大きな風切り音を翻しながら飛んでいくのを聞き、僕は単眼鏡で標的の巨人二体を見つめる。
そして......
「...命中を確認。」
グチッッ!!
......ジュッ
と、微かに遠方から聞こえた肉を砕き切る音と、同時に溶かされる音を聞いて僕は興味を失ったかの如く、次のターゲットを探そうとする。
その時であった。
ヒュゥゥゥ......
と、遠方から信号弾が放たれた。
「......あれは......。」
よく見てみれば、赤の信号弾......明らかに、これは作戦に大きな支障が生まれたとの報告だ。
よく見てみれば、大岩付近にいるはずの巨人化したエレン・イェーガーが見当たらない。
どこか建物の死角になるように倒れている、という事だ。
「マズイな......。」
私とて、そこまで身勝手な身分ではない。
トロスト区に勝手に王城内での仕事と立場を放棄してでもぽっと出てきたと思えば、今度はその街の奪還作戦を失敗に終わらせて帰ってきたとなれば、私の地位は危ぶまれる。
故に、この作戦は絶対に成功させねばならなかった。
少々増援に連れてきた私兵部隊の数が少なかったかと、悔やまれるが、そんなことを考えている場合ではない。
早急に現地へ行き情報を得て、何としてでもエレンを機能させねばならない。
壁の穴を、塞ぐために。
「......ッ、しのごの言っている場合ではないッ!
歩兵連隊ッ!
立体機動装置を駐屯兵団貯蔵庫から人数分x2の数を奪ってこい!私の名を通せばいけるはずだ!」
と、後方で待機中のマルティニー・ヘンリー小銃を背に抱えながら佇んでいる歩兵部隊20名にそう命令すると、
『了解...ヴェッテ卿。』
と、一言おいてから、部隊長である彼は部下を引き連れてすぐに内門の側にある武器庫に向かっていった。
「......立体機動装置は使えない、それはわかってる。」
そう、我々の歩兵部隊は 表向き 巨人に対してはなんの効力もない単なる近衛兵 私兵部隊に過ぎない。
ガスのふかせ具合が分からないためガス缶は不要、ブレードの収納器具などは持っての他不要と、まっったく使いこなせない事は明白だった。
だが、変人...いや、僕の性格が多少他の役人と違い飛んでいるのと、私兵部隊の基礎能力の高さから今回の試験兵器を交えた砲兵部隊の投下や歩兵部隊の作戦への随伴が可能だっただけだ。
本来なら、後方で大人しく見てる王側近のウチの一人に過ぎなかった。
そんな僕らが、いくら基礎体力があると言っても流石に目前で浮いてみせたとなれば王城内でも僕らに対する評価は揺らぎかねない。
どうにか浮いて巨人を倒したなどという人間離れした汚名を付けられないためにも、僕らはそれを 誤魔化す 必要があったのだ。
ドォンッ! ドォンッッ!!
『...ヴェッテ卿、只今戻りました。』
「おぉ、フェルナー。早かったな?」
と、隣で壁上の最も左側に位置する場所にある砲兵部隊が指揮官 紹介していなかったがゼシウスによる委任司令で僕に頼らずともできる弾道計算範囲内で巨人を砲撃しているのを眺めながら、
僕は戻ってきた20名の歩兵部隊の所持している立体機動装置を見つめる。
『保管庫の憲兵が邪魔をしたので、少々気絶させておいた程度です。』
と、中々に恐ろしい事を言いながら僕の分もフェルナー指揮官が持ってきてくれたようだったので、それを二つほど持ち上げて、
『いいか、諸君。
我々は今からエレン・イェーガーの元へと急行するが、立体機動装置ナシでは浮いているように見られてしまう。
故に、諸君らはこのアンカーの部分だけを...。』
ガギンッッ!!
と、嫌な金属音を発生させながら無理矢理アンカー射出機構とトリガーだけを引きちぎり、
ガチャッ!ギリリリ......シュルルル......
と、アンカー部分のカバーをむりやり取り外し、巻尺の金属部品とバネを片方のアンカー部分の部品から頂戴し、バネと主要な金属部品を霧によって溶かし、融合させる事によって強度を与え、耐えれるエネルギー量を増やした。
そしてむりやり剥がしたカバーをこれまた溶かし、形を即席で変えてからまた冷ましてそれをアンカー部分に装着し、自分の十字架状の帯剣の肢の部分に紐で括り付け、ガスなしでの立体機動装置を実現する。
『内部の巻尺の機構を私のしたように改造し、各々の帯剣に装着せよ。早速準備に取り掛かれ!!』
と、各々に装備を促す。
そう、我々は立体機動装置の訓練は受けていないが、アンカー射出機構程度なら扱えないことも...ないだろう。祖国では何度か目にした特殊用途でのピストル型のアンカー射出装置が小型であったため、多少重宝していたからだ。
そしてその間に合わせの物ではあるがアンカーと脚力を持ってして跳躍を繰り返して...いると思わせる。
もちろん、ガスという原動力がなければアンカーを射出する際には巻き尺の部分の動力だけであり、機動力はだいぶ削がれるだろう。
さらには帯剣に付けているトリガーが射出の為の原動力を得るために押し込む際に異常な程硬くなり、常任では押し込む事もできまい。
立体機動装置無しで空を駆け回るなんて、霧の能力を使用しなければ不可能なのだ。
そして今の我々には霧を隠せる能力などない、故にアンカーだけでも、言い訳の材料になってもらうのだ。
ここまでする理由は、ただ一つ...。
エレン・イェーガーだ。
そう思案しているうちに彼らは手際良く僕がしたみたいに異常な腕力で一体化しているアンカー射出機構を引きちぎり取っていく。
ガチッ!
ガチャンッ! ギギギッッ...。
聞くに耐えない金属音を本当に耐え忍びながら、全員が装着した事をこの目で確認し.....、
『...よく聞け。参謀との計画立案において、歩兵部隊及び砲兵部隊の最高指揮官はもちろん、この私兵部隊の所有者である私となっている。
つまりッ!勝手な行動も
さぁ貴様ら、あのデクの棒の様子を見にいくぞ。エレン・イェーガーをなッ!!』
バスンッッ!
威勢良く言ってから僕はアンカーを適当な壁下の建物に刺しながら、トロスト区の方へと壁上から飛び降りると、
後ろからもアンカーを射出しながら僕に追随するイスパニア兵がチラリと横目で捉えられた。
周りには駐屯兵の姿もなく邪魔は入らなかった。
ただ、遠方の壁上から何か叫んでいる駐屯兵司令部が見えただけだったが、無視する。
このままでは当初の計画通りには事は進まないだろう。多少の変更は良しとしなければならない。
ピクシスもその事は理解してくれるはずだ。
ビュゥゥゥッッ!!
と、すごい風切り音を出しながら、強力な脚力によって生み出された前方方向への推進力は、すぐにアンカーを刺した建物を越えてしまう程であった。
「あ...やっぱガス無しでも、怪しまれるかな?」
と、若干冷や汗を流しながら、なるべく一眼につかないように急いでエレン・イェーガーの元まで向かうのであった。
【駐屯兵団 トロスト区奪還作戦 司令部】
「し、司令ッ!あれを見てください!!」
見れば、作戦続行不能を表す赤い信号弾が空に向けて放たれているではないか。
それを見た兵士達は見て取れて動揺し、
「まさか...失敗なのか?」
「犬死だッッ!」
などと口々に叫び出す。
「な、何か作戦に大きな支障がきたされている模様です、司令ッ!」
と、ワシに告げられる。
それを鑑みた後ろの優秀な女参謀が一人、
「...全部隊に作戦の中止と撤退命令を出しましょうか、司令。」
と、進言するが、ワシにはそんな言葉はもう口から二度と出せんじゃろう。
なぜならば、先程ここで死ねと皆に告げてもうたのじゃしのう...。
故に...、
「ならぬ。」
と、重い一言を置く。
「し、しかし...。」
もう一人の腕利きの参謀の方も、私に再考を願うが、
「ならぬ...。ワシが任命した精鋭班には、現場での全権が委託されておる。
それ故に、簡単に負けを認められてしまっては困るのじゃ...。
障害があるならば全力を持ってそれに臨み、作戦を何としても成功させねばならん。」
と、ワシはワシの出来る事を最後まで尽くそうとする。
ピクシス司令の言葉で参謀達はひとまず、事の様子を見守るべきと考え、彼の意向に従った。
が、その次の瞬間だった。
「し、司令ッ!!」
「今度はなんじゃ。また撤退の事ならば首を刎ねるぞ。」
と、たいそう不機嫌に先程の話を蒸し返されそうになり返事をするが、観測手から上がった声の内容はまた違った物だった。
「ご、護国卿と歩兵連隊一部隊がッ!
砲撃部隊を残して、壁の下へと飛び降りましたッ!!」
「なんじゃと......!?」
隠せぬ動揺とともに、観測手の単眼鏡を奪い取り自らの目で自分のいる壁上中央から壁上左奥を見れば、
本当に護国卿とその部下達が問題のあるというエレン・イェーガー達の元へと向かおうとしておるではないか。
「ピクシス司令......指揮官は護国卿と言えども、あれは自殺行為ですッ!
今すぐにでも止めにいかせなければ、こんな無謀な事を計画して護国卿まで死なせたとなれば我々はその責任を負えません!!」
と、女参謀 アンカ・ライベルガーによって流石に背負いきれない責任を振り払う事を求められる。
が、
「...ふむ、良いじゃろ。」
と、適当にあしらった。
その返答に、明らかに不安が募った様子で普段気のないアンカ参謀が、
「し、司令ッ!」
と、声を荒げるが、
「......あやつらの装備を見てみるが良いのう。」
と、単眼鏡を持たせ、彼女に実際に壁上から彼らの姿を視認させる。
「ほれ、あそこじゃ。」
と、指を刺しながら...。
「え......!?」
すると、彼女は驚いた顔で司令の方を振り返る。
「見えたじゃろう?恐らくあやつらは立体機動装置の
腰の帯剣にトリガーを縛りつけ、ベルトに間に合わせの改造したアンカー射出機構を装着する事で...
ガスという原動力無しで飛んでみせてるのう。
...見事じゃ。」
という、明らかにその人体構造上あり得ない跳躍をする彼らには後ろの兵士達も驚愕の顔をしている。
「なっ......。」
「ガス無しで飛ぶなど不可能だ!一体護国卿は何を...!?」
と、口々にまた声を上げるが、
「......足。」
と、アンカが再び口を開く。
「あっ、足です!!
あのお方は脚力だけで、その推進力を得ている...!」
と、その真実に至った彼女は信じられないと言った顔で彼ら王城内で籠っていた、単なる王側近の私兵部隊を見つめる。
「ふむ...どうやら単なる
と、ピクシスは彼らに期待の目を込めながら、作戦の続行を言い渡したのであった...。
マルティニ・ヘンリー小銃は英国の使用した黒色火薬を使用する小銃ですね。南ア戦争などでも使用された記録が残っています。
ちなみに象も獲れたそうです。