司馬懿サイド
私と李儒さんは地下にあるとされている牢に向かっていた。もちろん、見つかるとまずいので、慎重に隠れつつ進んでいた
「そういえば、李儒さんよく私ってわかったな」
私は李儒さんの緊張をほぐすためにも、会話を振ってみる。こういう場に馴れていないのだろう。少し震えていた
「ふふ、覚えていますとも。私、記憶力だけは自慢できるんです。それでなくとも、あなたと東さんは印象的でしたから。うちの軍の方々がたった一人に制圧されてしまうなんて、嫌でも忘れませんよ?」
はははぁ、そりゃそうだよな。後にも先にもあんなことしたのは、あいつだけだろうな
「それに、あなたにも驚きましたよ?あなたはあなたで、うちの文官相手に軍人将棋で勝っちゃうんですもの。最後は賈詡さんと引き分けてしまうなんて、今でも信じられませんよ」
李儒さんはクスリと笑いそう言った。そう言えば、そんなこともあったな。勉強をしつつ、軍人将棋で成果を試す。その時、あらかた文官は倒したが、詠だけは勝てなかったな。
これが終わればまた対局するか
「!!見えてきました。あちらです」
そういって李儒さんが指差したのは、扉の前にいる二人の兵士。恐らくあの先に月か劉協がいるのだろう
「零士、こっちは位置に着いた。そっちはどうだ?」
私たちはいったん身を隠し、零士と連絡を取ることにした。程なくして、零士からの通信が入る
『僕ももう少しで着く。着いたら連絡するよ』
さて、なら少し休憩だな。こういう時は、同時に攻めた方がいい。一方を攻めたら、一方が危うくなるなんて、バカみたいな話だしな
「先ほども思ったのですが、そのからくりは遠くの人とも会話ができるのですね」
李儒さんが興味深げに通信機を見て言ってきた。私は通信機をちらつかせ、説明することにした
「ああ。通信機って言ってな。詳しい原理はわからないが、これを繋げておくと、耳に当ててる方から向こうの声が聞こえて、口に当ててる方はこっちの音を拾って向こうに届けるんだ」
確か零士は、魔力を使った念話とやらの代わりといっていたか?未来の道具は今でもよくわからん
「なんと便利なのでしょう!すごいですね!」
はは。確か悠里もこんな反応だったな。多分、昔は私もこんな感じだったんだろう
ピピピッ
「通信か…位置に着いたのか?」
通信が入り、応答すると、零士が反応をくれた
『ああ。いつでも行けるよ』
「了解。李儒さん、これから突入する。李儒さんは私が見張りを倒したら来てくれ」
「わかりました」
私は李儒さんが物陰に隠れるのを確認してから零士に話しかける
「零士、スリーカウントだ」
私はナイフを抜き、体制を低くする。さて、ここからが本番だ
『了解。じゃあ行くぞ。3…2…1…ゴゥ!』
私は一気に走り抜け、敵に肉薄する。そして私は気づかれる前に一人の兵士の…
「ゴアッ…」
喉笛を切り裂いた
「ヒィ!なんだきさっ、あぐっ!」
私は間髪入れずもう一人を蹴り倒す。そして倒れたところ、私は相手の頭を掴み喉を切り裂く。ほどなくしてもう一人の兵士も絶命した
「ふぅ、クリア」
『こっちもクリアだ。見つかる前にこいつらの死体を隠そう』
「了解。李儒さん、もういいぞ。少し手伝ってくれ」
「はい…司馬懿さん、お強いのですね」
「まぁな。こいつらの死体を隠す。見つかると厄介だからな。手を貸してくれ」
私たちは二つの屍を物陰に隠した。李儒さんはあまり馴れていないのだろう。少し気分を悪そうにしていた
「悪かったな。大丈夫か?」
私は李儒さんに謝っておいた。彼女の顔は依然として青いが、微笑んでくれた
「は、はい。すいません」
「いや、気にするな。それより…」
「ええ。この先ですね」
私たちは扉を開く。そこからさらに階段になっていた。かなり暗く、湿っている。気持ち悪い空間だ
私たちは慎重に降りていき、やがて渡り廊下のようなとこに出る。少し進むと兵士がさらに二人いた。私は李儒さんを下がらせ、静かに間合いを詰める。
なんだこいつら?無能か?こんな真横にいて気づかないとか、兵士失格だろう
私はナイフの鞘を奥に投げる。その音に反応した兵士が一斉にそっちに振り向き、私は兵士の背後を取る。そして
ゴキッ
そのまま兵士の首の骨を折る。その音に気付いたもう一人の兵士が慌ててこちらに向き直す。
「貴様!どこから入った!」
「うるさい、死ね」
私は有無を言わさず、ナイフを振るう。刃は首を切り裂き、頭を飛ばす。
「李儒さん、もういいぞ。…ああ、そうだ。ここに来るとき、あまり下は見ない方がいい。気持ちのいいものではない」
「う、わかりました。すみません…」
しまったな。気を使ったつもりだったけど、殺し方には気をつけないとな。さて、カギは…あった。首を折った方に入っていた。
私と李儒さんは牢の中を確認していく。ほとんどが空だったが、一か所だけ、人影が見えた。まずいな。倒れている
「李儒さん!」
李儒さんは急いでカギを開ける。中には桃色の髪の女の子がいた。月じゃない…ってことは、この子が
「劉協様!ご無事ですか、劉協様!」
やはりこの子が劉協か。暗くて見えにくいが、かなり衰弱しているようだ。とりあえず、零士に報告だな
「うぅーん…李儒?咲夜?」
名を呼ばれ、ドキリとする。どうしてこいつは、真名を知っている?
「!お気づきになられましたか?劉協様!」
「待て、お前、なんで私の真名を…」
私は目を凝らしよく見てみる。桃色の髪、幼いながらも、どこか大人びた顔立ち…
「まさか…桜か…?」
†††††
東零士サイド
詠ちゃんの案内で、僕は別館にあると言われている収容所へ向かう。その道中で、張譲がいない事を知らされた。
「ってなると、袁紹をたきつけたのは張譲か」
「恐らくね。あいつは十常侍を束ねていた親玉的存在。あいつの事を舐めていたわ」
張譲か…今回の件が無事に終わったら、一度調べないといけないかもな
ピピピッ
『零士、こっちは位置に着いた。そっちはどうだ?』
通信機が鳴り、応答すると、咲夜が報告をくれた。どうやら先に着いたらしい
「詠ちゃん、後どれくらいで着く?」
「もう少しよ。咲夜の方はもう着いたの?」
「らしいね……僕ももう少しで着く。着いたら連絡するよ」
そういって僕は通信を切る。僕は詠ちゃんと目を合わせ、頷く
「少し急ぎましょうか」
「そうしよう」
僕たちはさらに動く速度あげる。見つかるとまずいと思い、慎重に行動していたが、少し急ぐことにした
ほどなくして、収容所と思しき場所を補足する。僕は咲夜に連絡をする
『位置に着いたのか?』
「ああ。いつでも行けるよ」
見張りは三人。余裕だな。厳重って聞いてたから、十人はいると思っていたよ
『零士、スリーカウントだ』
僕は詠ちゃんに合図を送り下がらせる。武器はいらないな。素手で十分だろう
「了解。じゃあ行くぞ。3…2…1…ゴゥ!」
僕は敵に一気に詰め寄る。相手が反応するより先に一人目の首をへし折った
ゴギィッ
鈍い音が広がり、そいつは地に伏せた
「な、なんだこいッ、グハッ!」
二人目の見張りには思いっきり蹴り飛ばし、後ろの壁に叩きつけた。
「なんなんだこいつ!」
三人目は僕に向かって斧を振り上げる。愚かだな。増援を呼べばもっとマシな戦況に出来ただろうに。………まぁ、そんなことさせませんけど
「よっ」
僕は敵の斧を避け、そのまま裏拳を入れる。衝撃に耐えれなかった敵はそのまま地に伏せ、僕はそいつの頭蓋を思いっきり踏み砕いた。
グシャッ
嫌な音が響き、辺りは静かになった
『ふぅ、クリア』
「こっちもクリアだ。見つかる前にこいつらの死体を隠そう」
『了解』
通信を切り、さっそく死体を片づけ始める。あ、詠ちゃんも呼ばないと
「さて、詠ちゃん、もういいぞ」
「あんたって、相変わらず化け物じみた力なのね」
詠ちゃんは少しため息交じりに言った。これくらいなら、武将クラスなら誰でもできると思うけどね
「はは。素手の方が、音をたてずに殺せるからね」
その後、僕は三人の死体を茂みに隠した。この時、詠ちゃんが顔を引きつっていたのを見逃さなかった。まぁ、慣れてない人が見たら嫌なものだよね
「さてと。じゃあ、突入しようか」
「ええ。お願いするわ」
収容所は、思っていたより広かった。しかし、広い割には誰もいない。看守も、囚人も、誰も。少し歩くと、一か所だけ見張りが四人いる場所があった。
「恐らくあそこね」
僕と詠ちゃんは物陰に隠れながら様子を伺っていた
「みたいだね。さて、どう攻めるか」
地形は一本道。見張りは両脇に二人ずつ。素手でやってもいいが、面倒だな。この子の前で使うのは気が引けるが、仕方ない。銃を使うか
僕は魔術を使いサイレンサー付きの拳銃を出現させる。昔から愛用しているM92Fをベースにした拳銃だ
「ちょ、あんたいつそれ出したのよ」
「ん?説明は後だ。とりあえず、あいつらを倒す。そこにいるんだ」
僕は敵四人を捉え、引金を引く
パシュンパシュンパシュンパシュン
四人の頭を瞬時に撃ち抜いた。兜を被っていたので、弾かれると思い、撃つ瞬間に弾丸に魔力を込めて威力を底上げした。結果見事に貫通。四人は瞬く間に屍に成り果てる。て言うか、どっちにしろ銃使うんなら、最初の突入の時に使えば良かった。いらない労力をつかっちゃったなぁ、まったく
「あんた、その武器いったい…」
はは。今の時代の子からしたら、物珍しいよね。確か咲夜の時もそうだったな
「説明は後でするさ。今は要救助者の確保が先だ」
「そ、それもそうね。カギを探しましょう」
僕らは死体からカギを手に入れる。それから看守がいた扉のカギを開ける。中には女の子が倒れていた
「月!」
女の子は月ちゃんだった。詠ちゃんは月ちゃんを抱きしめ泣いている。
「んぅ、詠…ちゃん?」
「月!大丈夫?どこも怪我はない?」
「平気だよ…詠ちゃん…詠ちゃんこそ…大丈夫?」
「よかった!よかったよぉ月~」
かなり衰弱しているようだが、怪我らしい怪我ないようだ。とりあえずは安心だな
「月ちゃん、久しぶりだね。覚えているかな?」
月ちゃんはぼんやりとした眼差しで僕を見て、やがて口を開いた
「………東さん?…どうして此処に?」
「君を助けに来た。咲夜も一緒だよ」
「咲夜さんも?…ありがとうございます。あ、詠ちゃん、劉協様が」
「大丈夫よ月!きっと咲夜が助けてくれるわ」
そうだな。そろそろ向こうも助け終わったころだろう。連絡しないとな
ピピピッ
そう思っていた矢先、通信が入る。どうやら成功したようだな
『零士、人質の確保に成功した。こっちは劉協だ。かなり衰弱しているが、意識もある。無事のようだ。そっちは』
「こっちも今しがた月ちゃんを確保したよ。こっちもかなり衰弱していたが無事だ。いったん合流しよう。城の厨房でどうだい?」
『了解。……零士』
「どうかしたかい?」
『劉協は桜だった。覚えているか?』
桜、桜…ああ、一度うちに食べに来た子にそんな子がいたな。確か文醜、顔良と一緒に来た子だ。なるほど。どこぞの貴族の令嬢だとは思っていたが、まさか帝の子とは
「そうか。とりあえず合流しよう。話はそれからだ」
これは、上手く事が運ぶかもしれないな