真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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今回で連合編はラストです


反董卓連合編終幕

 

 

 

 

 

「あー!やっと帰って来た!咲夜姉さん今までどこにいたんですか?」

店に着いたのは夕方だった。道中、月と詠が車の便利さに驚き、つい出来心で車で遊びながら帰って来たのが失敗だった。扉を開けると、悠里の怒声で迎えられてしまった。すっかり忘れていた。こいつには黙って出て来たんだったな

「まったくもう!心配したんですよ!」

「わ、悪かった悠里。ちょっといろいろあってな。月、詠、入ってきてくれ」

そう言うと、恋の犬猫を抱えた月と詠が入ってくる。少し緊張しているようだった

「こ、こんにちは」

「お邪魔します…」

「………姉さん、誰ですか、この小さい可愛い子達。それにこの犬猫達」

月と詠が入るのを確認すると、悠里がまっすぐ彼女たちを見つめて聞いてきた

 

「今日から家族になった月と詠だ。月、詠、こいつは張郃って言って、この店の従業員第一号だ」

「あ、はじめまして張郃さん。月といいます。よろしくお願いします」

「僕は詠よ。よろしくね張郃」

私は彼女たちの名を教える。ちなみに月と詠には、董卓、賈詡の名を捨ててもらった。それについては、抵抗なく受け入れてくれた

「か…」

「か?」

悠里はプルプルと震えていた。あー、これは…

 

「可愛いー!!なんですかこの可愛い生き物!?連れ帰っていいですか!?」

「へぅ~、詠ちゃ~ん」

予想通り、悠里は勢いよく月に抱きついた。失念していた。こいつは極度の可愛いもの好きだったな

「悠里、この犬猫は連れ帰っていいが、月はダメだ。この子は私のだ」

そう言って私は月を奪いとった。あ、月いい匂いだ。なんか安らぐ

「ちょ!いつからあんたのになったのよ。月は僕のよ!」

「はわあわへぅ~」

いつの間にか、月の奪い合いになってしまった。

やがて落ち着きを取り戻し、悠里が口を開いた

「えっと、ごめんね月ちゃん。あたしの事は悠里でいいよ。もちろん、詠ちゃんもね!」

「あ、ありがとうございます。悠里さん」

「改めてよろしく、悠里」

よかった。こっちはなんとか、仲良くやっていけそうだな。問題は…

「この犬猫、どうしようなぁ」

犬猫合わせて約十匹。うちは飲食店を経営しているので、さすがに置いておくのは衛生上よろしくない気がするのだが……てか恋のやつ、どんだけ拾ってくるんだよ

「あ、でしたらうちで引き取りましょうか?うちの子ども達の遊び相手になってくれると思いますし」

私の呟きに、悠里が反応してくれる。それはとても魅力的な提案だが…

 

「いいのか?」

私はそう聞く。悠里はそんなこと気にするそぶりもなく…

 

「もちろんですよ!」

 

満面の笑みでそう言ってくれた。とりあえず、食費のこともあるし、零士にも許可を取らないとな

「そうだな、考えさせてもらうよ。零士が帰ったら、また相談しよう」

その後私は、月と詠にここでの生活の説明をした。仕事の内容や機材の使用法、部屋割りなど、おおよそ思いつく事は全て説明したつもりだ。説明が終わった後、月と詠は風呂に入ってもらい、その間に私は夕食を作っておいた。零士ほどじゃないが、私もだいぶあいつの国の料理を作れるようになった。今回は挽肉入り具だくさんオムレツを披露してやった。我ながら上手く作れたと思う。風呂から上がった後、食ってもらい、二人から絶賛された

「ふんふふん、ふんふふん、ふんふんふーん♪あれ?月ちゃんも詠ちゃんも寝ちゃってる」

食事が終わり、風呂から上がると、二人は机に突っ伏して眠り込んでいた。長旅だったし、いろいろあったからな。力尽きてしまったんだろう

「悠里、部屋へ連れて行こう。手伝ってくれ」

「了解でーす!」

そしてそれぞれ寝台に寝かせてあげる。この時何故か、犬猫もそれぞれついて来た。慣れない土地だからか、知ってる人間の近くに居たいのだろうか

「さてさて、あたしもそろそろ帰りますね。また明日来ます!」

 

月と詠を寝台に寝かし、部屋を出ると、悠里が伸びをしてそう言った

「あぁ、今日はいろいろありがとうな。それと、すまなかったな。置いてったりして」

「あはは、いいですよ。事情があったんですよね?だから気にしてないです。あ!でも次は連れてってくださいよ!」

 

私の謝罪に対し、悠里はそれを吹き飛ばすかのように笑って答えてくれた。それに、深く詮索もしない。いろいろと、気遣わせてしまったようだ

「はは、そうだな。次があれば、頼むとするよ」

「絶対ですよ!それでは!」

ホント、あの子には敵わないな。いつかちゃんと事情も話さないとな

†††††

 

翌朝

「ただいまー」

零士が帰ってきたのは正午前だった。しかも、捕まったはずの恋を連れて

「恋!無事だったか」

「恋さん!」

「恋!あんた大丈夫?どこも怪我ない?」

月と詠は恋に飛びつき、泣きじゃくっていた。捕まったって聞いていたからな。相当心配だったんだろう

「…月…詠…よかった」

恋も恋で心配だったみたいだ。微妙に目に涙を溜めていた

「ワンワン!」

「…セキトも」

セキトが恋に飛び付くと、他の犬猫もそれぞれ恋に飛び付いた。おいおい大丈夫かあれ。食われてないか?

「あ!東おじさん、おかえりなさーい」

 

店の裏手からやって来た悠里が零士に挨拶をした

「ただいま悠里ちゃん。しばらく留守にして悪かったね」

「いやぁ大丈夫ですよ。姉さんにも言いましたが、気にしてな…い……」

ん?悠里が固まったぞ。どうしたんだ?

「……おじさん、後ろの、触角がみょんみょん動いてる女の子、誰ですか?」

悠里は恋を指指して尋ねる。当の恋も、犬猫に舐められながら、悠里をじっと見つめていた

「………恋」

「恋ちゃーーん!!」

速かった。恋が名を答えるや否や、悠里は超速で恋に抱きついた

「なんですかこの子!?なんでこんなに小動物的なんですか!」

またか。こいつもこいつで、大概女好きだな

「違いますよ姉さん!あたしは可愛いものが好きなんです!」

心を読むなよ

 

その後、月と詠と恋は三人で談笑していた。その横で、私と零士と悠里は犬猫の件を話し合っていた。結果、セキト以外の犬猫は悠里の孤児院で預かる事になった。なお、その子達の食費等はこちらで出す事になった。預かってもらうんだ、それくらい当然だな。恋も預ける事を了承してくれたが、セキトだけは側にいて欲しかったようだ。セキト一匹くらいならと、零士も許可し、セキトはこのままうちの番犬になった

†††††

 

それから数日が経った

月、詠、恋はうちで接客業に携わる事にした。月と詠は不慣れながらも一生懸命励み、客からの評判も良い。しかし恋は、接客が出来ず、時折客の料理に手を出したりしていた。だが、そんな恋の食べる姿を見て、癒されたという声が上がり、今ではうちの看板娘のような存在となり、客から愛されている。零士曰くマスコットだとか。ちなみに接客からは降ろした。恋には店の用心棒か、買い出しに付き合わせるかになった。最強の飛将軍が用心棒とは、なかなか贅沢だな

さらに街にも変化があった。今回の戦の功績で、許昌は正式に曹操さんの管轄になった。なんでも曹操さん、許昌が欲しいと、かなり無理を言ったらしい。

 

 

 

そんなある日

「邪魔するぞ。久しぶりだな。ずいぶん従業員が増えたようだな」

「久しぶりだな、夏侯淵さん。こっちもいろいろあってな」

 

夏侯淵さんがやって来た。夏侯淵さんは月と詠が忙しなく働いている姿を見ていたが、別段何と突っ込むことはなかった

「ふふ、そうか。今日はもう一人お連れした。良いかな?」

「もちろんだ。誰を連れて来たんだ?」

「久しぶりね、司馬懿!」

夏侯淵さんの後ろから、金髪の少女が現れた。あぁ、そんな気はしてたけどさ…

「げ、曹操さん…」

「久しぶりに会ったのに、ずいぶんな挨拶じゃない。こっちは貴女に会うために、無理して許昌を得たのに」

 

やって来たのは、夏侯淵さんの上司にして、覇道を突き進む少女、曹操さんだった

「そうですか。それはお疲れ様です。でも私はあんたのとこには行かないぞ」

 

私は何年か前に曹操さんと会って以来、何かと勧誘されている。ただ、私自信、彼女の野望に興味はないし、ここで働いていくと決めているので断っている。それに、曹操さんと言えば女好きだしな

「あら?私が諦め悪いのは知ってるでしょ。これから何度でも来るわよ。覚悟なさい!そうねぇ、まず手始めに、私の事は真名で呼びなさい!」

「ふむ、では私のことも秋蘭と呼んでくれて構わない」

あぁ、今後はこの人の相手もしないといけないんだな。正直、この手の人物は苦手だ。なんというか、いろんな意味でガチすぎる

「はぁ、不幸だ…ってやつか?」

しかし悪い事ばかりではない。曹操…華琳の勢力が来た事によって、許昌はさらに安定し、そして着実に発展していった。そして、思わぬ再会も果たした

「ねね!ここなんか?」

「はいなのです。ここに霞の友人という者がいたのです」

ん?外が騒がしいな

「どーっん!久しぶり咲夜ー!会いに来たでー!」

勢いよく扉を開け現れたのは張遼こと霞だった。あまりに突然の事で、店に居た従業員は皆固まってしまった

「し、霞さん…?」

「ゆ、月!?詠!?それに恋も!?あ、あんたらなんで…」

「霞ー!」

詠を皮切りに、月と恋も霞に飛び付く

「れ、恋殿?恋殿ー!!」

さらにそこに陳宮も加わった。もう何が何だかわからない状況だったが、皆が皆、お互いの存在を確かめるかのように抱きしめ合い、そして涙を流していた

「そっか、そないなことになってたんか」

やがて落ち着きを取り戻し、お互いの状況の説明した。霞は曹操軍と対峙し、かなり不利な状況に陥り、それを見かねた陳宮が救出に向かうも、力及ばずそのまま捕まったということだそうだ。陳宮はあの時、恋は大丈夫と判断し、霞の救出に向かったが、まさか恋まで捕まるとは思っていなかったようで、かなり後悔したとの事だ

「うちからも礼を言わせてくれ。三人を助けてくれて、ホンマおおきに。この恩は必ず返す!」

「ねねからも礼を言うのです!あと、ねねの事も今後は真名で呼んでくれて構わないのです!」

「張譲はこっちでも探しとくわ。あのクソ野郎、見つけたらタダじゃおかへん!」

 

霞とねねの瞳には、張譲に対しての敵意が写っているようだった

「あぁ、頼むよ」

「あ!これからはこの店で飯食うさかい、よろしゅうな!」

霞は先ほどの怖い顔から一転して、笑顔になった。はは、華琳といい霞といい、新しい家族を迎えた『晋』はずいぶん賑やかになりそうだな

あれ?

誰か忘れているような………

まぁいっか

 

 

 

 




これにて連合編は終了。次回は日常編になります。ちなみに、華雄さんの登場はもう少し先になります(笑)

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