真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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今回は猪々子視点で送る、猪々子が『晋』に居た頃のお話


日常編其三
猪々子の生活


あたいが『晋』に来て二ヶ月近くが経とうとしていた。今でこそ慣れてきたけど、最初は驚きの連続だったなー

「え?風呂って毎日入ってんの?」

「あぁ。うちは特殊な技術(魔術)によって、風呂を沸かすのはそれほど手間じゃないからな。毎日の汚れと疲れを落とす為にっていう、零士のこだわりだ」

あたいが初めて『晋』で一夜を過ごす時、咲夜が気ぃきかせて風呂に入ろうと言ってくれた。なんでも、ここの風呂はいろいろ変わってるらしい

「へー……お!結構広いな!」

「あぁ。三人くらいなら余裕で入れるぞ。これも零士のこだわりだ。足を伸ばして入りたいんだとさ」

一般家庭にしては十分過ぎる程広い。詰めて入れば大人五人くらいは入るだろう

「ふーん…なぁなぁ咲夜、これはなんだ?」

あたいはこのよくわからない、先端に無数の小さな穴が開いた物を指差す

「それはシャワーだ。そこをひねってみろ」

ん?これか?

「よっ、うわ!な、なんだ?」

あたいが何かをひねると、先端から水が勢いよく出てきた。すげー冷たい…

「ははは。月も詠も、似たような反応してたなぁ。それな、そこをひねると水が出たりお湯が出たりするんだ」

「そういうのは先に言ってくれよ。びっくりしたぜ」

「悪い悪い。あ、ちなみに出しっ放しにはしないでくれよ。動力が枯れちまうからな」

「ックシュ」←零士さん(動力)

 

 

 

†††††

風呂から上がると、今度は詠が飲み物を持ってきてくれた

「詠、これなんだ?」

「牛乳よ。風呂上がりに飲むと最高なのよね」

「え?牛の乳?飲めんの?」

「僕も最初は信じられなかったわ。でも特殊な技術(魔術)で加工したから、飲めるようになってるのよ。栄養価も高いみたいだし、害はないわ」

 

そう言って詠は勢いよく牛乳を飲み始めた

「へー、いただきまーす。んくんく」

おぉ!なんだこれ!美味い!濃厚な味わいのはずなのに、なんだか飲みやすい。すげぇ!牛乳美味ぇ!

「ぷはーっ!もう一杯!」

「あんまり飲むと、お腹壊すわよ」

「ところで、なんでこんなに冷えてんだ?」

「あぁ、それはこれ、冷蔵庫のおかげよ」

あたいは詠の案内で、厨房に向かう。その奥に冷蔵庫と呼ばれる大きな箱があった。中を開けると…

「うお!なんだこれ?冷てぇ!」

 

箱から冷気がきた。すげぇ!なんだこれ!

「これは主に食材を保存するためのものね。これならどんなに暑くても、食材がすぐ痛むなんてことはないわ」

「おー、涼しー」

「あ、あんまり開けっ放しにしないで。動力が枯れちゃうから」

「はっくしゅん!」

「…零士、風邪?」

「んー?いや、そんな事は…まぁ最近冷えてきたからね」

「………恋が、暖めてあげる」

 

†††††

飯も美味かったなぁ。さすがは飯屋!羨ましいぜ

「あ、猪々子さん。おはようございます。昨晩は眠れましたか?」

「おはよう、月!おかげで爆睡だったぜ!」

「ふふふ。いま、朝食を用意しますね」

月が朝食を用意してくれてる間、あたいはその姿をずっと眺めてた。すると、咲夜が入ってきた

「ん?起きてたか猪々子」

「おはよう!咲夜はどこにいたんだ?」

「あぁ。私は早朝訓練だ。営業中は暇がないからな。力の維持のために毎朝やってるんだ。明日はお前も一緒にやるか?」

「頼むぜ!……って言いたいとこだけど、起きれるかな?」

「ふん。やる気があるなら、叩き起こしてやるさ」

「朝食ができました。咲夜さんもご一緒にどうぞ」

「ありがとう。いただくよ」

「いただきまーす!…美味ぇ!」

出された料理は米に焼き魚、卵に吸い物。特にこの吸い物、食った事ねーけどなんだかホッとする

「なぁ!この吸い物、なんていうんだ?」

「それはお味噌汁です。味噌という、東さんが特殊な技術(魔術)を用いて作った調味料があるんですけど、それをだし汁と一緒に溶いで作ったものなんです」

「へぇ、お味噌汁かぁ。美味いなぁ」

「月、また腕が上がったな」

「えへへ、ありがとうございます」

「あー、あたいこれ好きだなー」

「東さんも好きですよね、お味噌汁」

「そうだな。味噌の開発には、全力でやってた節があったからな」

「そういえば東さん、今日は調子悪そうでしたね」

「あーイタタタ」

「??どうかしたんですか東おじさん?」

「あぁいや、昨晩、恋ちゃんと寝たんだけどさ…」

「え!?やっちゃったんですか?」

「女の子がやっちゃったとか言わない。そうじゃなくて、最近冷えてきたでしょ?それを恋ちゃんに言ったら暖めてくれるって言うから、恋ちゃんが抱き枕になってくれるかと思ったんだ。なのにまさか僕が抱き枕になるとは。しかも思いっきり抱きしめられるなんて…骨が折れるかと思った…」

「なんですかそれ?なんて羨ましい!今晩、恋ちゃんと寝ていいですか!?」

 

 

†††††

 

訓練はしんどかったなぁ。何回死にかけたっけなー

「うっへー、地下にこんなバカデカイ空間があるんだ」

 

あたいは零士の案内で、恋と一緒に地下にある訓練場にやってきた。中は石造りのだだっ広い空間だった

「ここは特別訓練場でね。雨の日や、特定の武器の訓練をする時とかに使う場所なんだ。特殊な技術(魔術)で作ったから、どんなに暴れても上には響かない。思う存分やってくれ。武器はその辺にあるものを使ってくれて構わない」

 

そう言って零士は武器の入った一室を開けてくれた。中には槍や剣や弓もあれば、見たこともないようなヘンテコな武器もあった

「かー、いっぱいあんなー。見たことねぇもんもあるし……お!ちょうど良さげな大剣が、これにするわ」

 

あたいは斬山刀に似た形状の大剣を掴む。うん、いいくらいの重さだ!

「さて、それじゃあ恋ちゃん、後はよろしく頼むね。お腹が空いたら言ってね」

「…わかった」

 

そう言って零士は部屋から出て行った

「よーし恋!さっそくやるぜ!」

「…こい」

 

さぁ、張り切って強くなるぞ!

数時間後

「モウ…ムリ…」

「ふぁぁ……お腹、へった」

 

飛将軍の名は伊達じゃなかった…

 

 

 

†††††

正直訓練は、毎日の風呂と美味い飯がなかったら続かなかっただろうな

「おかわり!」

「…おかわり」

「二人ともよく食べるねー」

「ていうか食い過ぎだろ」

「だって美味いもん。なぁ恋?」

「ん、零士のご飯は、大陸一」

「嬉しいなぁ。まだあるから、ゆっくり食べるんだよ」

「…東、この量を毎日だと、近々赤字になるわ」

「え?」

†††††

 

唯一残念だったのは、あまり外を出歩けなかった事だな。曹操の領地だから仕方ねぇけど、あたいも『晋』の仕事手伝いたかったなぁ

「さすがに世話になりっぱなしだし、何か手伝いてぇんだけど、何かあるか?」

 

とある日、あたいは咲夜に聞いてみる。咲夜はうーん…と唸っていた

「…って言っても、あまり店内に出るのはまずいし………あぁなら、家の方の掃除を頼めるか?意外と手間なんだよ。結構広いし」

「そんなんでいいなら毎日やるぜ!」

 

あたいがそう言うと、咲夜は少し驚いた表情を見せ、その後に静かに微笑んでいた

「へぇ、言ったな?なら毎日してもらおうか。早朝訓練に、飛将軍との特訓、それに加え家の掃除か。途中で投げ出すなよ」

「??任せろ!」

この時のあたいは知らなかったんだよなぁ。まさかこの家の掃除がこんなにも大変なんて…って言うか広過ぎんだよ!おかしいだろ!どこぞの貴族の所有物件かと思っちまったよ!

「猪々子、大丈夫か?」

「心配してるんなら、そのニヤニヤ顏はおかしいと思う…」

咲夜は笑いを堪え切れていなかった

 

†††††

 

 

いろいろあったけど、この二ヶ月は本当に楽しかった。出来ることなら、ずっとここで暮らせたらとも思った。でも、明日はいよいよ出発しなきゃいけない。斗詩と麗羽様が劉備の所にいるってのがわかった。でも、その情報をくれた人物が、劉備を攻めるらしいから、助けに行かなきゃいけない。『晋』のみんなも、本当に大好きで、本当に大切なやつらだけど、斗詩と麗羽様も同じくらい大好きで大切なんだ。それに、斗詩はきっと待ってくれている。だから、行かなきゃいけない

「ほんと急よね」

「仕方ないよ。状況が状況なんだから」

「なんだ詠、寂しいのか?」

「ば、馬鹿言わないでちょうだいよ!僕は別に…」

「でも詠ちゃん。寂しくない、って言えないよね」

「うぅ…」

 

月の言葉に、詠は顔を赤くしてそっぽを向いていた

「詠は相変わらずだな」

「とかいう咲夜姉さんも、寂しいくせに」

「…」

「ちょ!図星だからって、ナイフ振り回さないで下さいよ!」

 

咲夜はナイフを抜いて悠里を無言で追いかけ回していた

「はは!ほんと、いいよなここ。なんつーか、すげぇ安まるよ!」

 

この皆がいる光景も、今日でおしまいかぁ…そう思うと、少し、いやかなり寂しい

「……そうだ。記念にみんなで写真撮っとこうか」

「しゃしん?」

 

零士が提案するが、あたいはよくわからなかった。しゃしんってなんだ?

「うん。…よっと」

「え?」

零士の手から、なにかよくわからない物が出てきた。え?え?どうなってんだ?

「い、今のどうやって…」

「はは、まぁ細かい事は気にしない。写真と言うのはね…」

零士があたいに写真?ってのを向けると、そのからくりから音が出た

「はい。これが写真」

「す、すっげぇ!あたいがいる!」

手渡された一枚の絵には、あたいが写っていた。すげぇ精巧に描かれてる。本物みてぇ

「このからくりはカメラって言ってね。これを使うと、その場の風景を鮮明に写し出す事ができるんだ。ここの品書きにある絵も全部写真だよ」

「へー、なんかよくわかんねーけど、すげぇな」

 

つまりは、凄い絵、ってことだな!

「まぁ、そんな反応だよな。よし、じゃあみんな集まって撮ろうぜ」

「あたし咲夜姉さんの隣!恋ちゃんもあたしの隣ね!」

「…セキトも」

「私は詠ちゃんの隣だね!」

「わかったわかった。だから引っ張らないで」

「僕はセットしなきゃいけないから、端っこにいくね。猪々子ちゃんは真ん中だね」

左から零士、詠、月、あたい、咲夜、悠里、恋(セキト抱っこ)という順番に並んだ

「みんな笑ってねー。よし!十秒後だよ」

 

零士がかめらに細工し、こちらに小走りでやってきた。どうやらあのかめらを見なきゃいけないらしい

「な、なんか緊張すんな」

「ふふ、笑顔ですよ」

「気をつけないと、ずっと残るぜ」

「経験者は語る、ってやつですね」

「だ、大丈夫かな?」

「…セキト、あっち見て」

「わぅ?」

「3、2、1…」

パシャッ

†††††

「文ちゃん?あれ、起きてたの?」

ガチャリと扉を開けて斗詩が入ってくる。あの後あたいは曹操軍を退かせ、無事に入蜀を果たした。あの時、夏侯惇とも戦ったが、倒す事は出来なくても、十分渡り合える事は出来た。特訓の成果はあったようだ

「よー斗詩!最近早起きが染み付いちまってな。さっきも早朝訓練終えたとこだぜ!」

「文ちゃんが早起きなんて…ん?何見てるの文ちゃん?」

斗詩はあたいが持ってた写真を指差す。あたいそれをもう一度見て、そして斗詩に見せてやった

「これは写真って言ってな?あたいの、大切な家族と一緒に写った絵なんだ」

写真には、みんなが笑顔で写っている姿があった

今は離れ離れだけど、いつか、必ずまた『晋』に帰ろう

今度は、斗詩と麗羽様も一緒に…

 

 

 




北郷軍に董卓組が居ない分、袁紹組の性能が上がりました。袁紹さんが知力強化で、呂蒙と同じかそれ以上、ついでに慢心や見下すといったこともしません。猪々子さんは星さん並に。斗詩さんは防戦なら結構な時間持ちこたえれます。と言っても、北郷軍の話はないので、あくまで裏設定程度に思いください。

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