僕と華佗、貂蝉に卑弥呼、そして華雄の五人は、邪龍がいるとされる南蛮の地に向かっていた。雪蓮ちゃんの妹、蓮華ちゃんの薬の素材を集めるために
「しかし、冬だと言うのに南蛮の地は暖かいな」
気温は約28度といったところか?湿気もあるし、冬だというのに汗をかいてしまうな
「違いないな。水分補給はしっかりしないといけないな」
「むむ!だぁりんの額に汗が!わしが拭いてあげよう」
「なら私は、零士ちゃんの汗を、ペロペロしちゃうわぁ」
「なんと!貂蝉お主、はしたないぞ!」
「あら卑弥呼、そんなんじゃ意中の人を盗られちゃうわよ」
「お前達は何をしているんだ?」
†††††
「しかし龍かぁ。悪魔や生物兵器を相手にしたことはあるけど、龍は初めてだ」
いわゆる正史世界に居た時に、仕事又は事件に巻き込まれ、そういった人外を相手に戦ってきた事はあった。だが今回は龍だ。想像した事はあっても、実際に見たことはないからな。興奮を隠せない
「珍しく浮かれているな。だが気をつけた方がいい。これから相手にする龍は、なかなか手強いらしいぞ。なんでも火を吹くとか」
まぁ、その程度ならわけないな。僕だってその気になれば火や雷を出したりできるし
「腕がなるな。私の力が、化物相手にどこまで通用するか」
しばらく歩き山の中へ入っていく。この山の頂上に例の邪龍がいるとの事だ。しかし、さっきまでの暖かさが嘘のように冷え込んできた。村の人々曰く、こういったおかしな天候も、邪龍の仕業らしい
「そろそろ頂上だ。気を引き締めよう」
「ふんぬぅ、血がたぎってくるわ」
「うっふーん、興奮して私のあそこがじゅんじゅんきちゃうわぁ」
「今日の私は、少々負ける理由がないな」
全員がやる気満々、なかなかのコンディションだ。それに、しばらく見ない間に華雄ちゃんがだいぶ強くなってる。これはなかなか楽しみだ。そして…
「ここが頂上か…なかなかの絶景だね。それに…」
頂上に出ると、一面が雲に覆われ、銀世界とかしている。そう言えば聞こえはいいが、実際は少し吹雪いており、またどういうわけか雷も鳴っている。そしてその中に、白い世界には不釣り合いなドス黒い影が一つ。あれが龍…なんて大きさだ
「ぬぅ、なんと禍々しい氣を放つ龍だ!」
「これは私も、真面目にやらなきゃマズイかも?」
「ふん!相手にとって不足なし!」
「気をつけろみんな!」
「おっと!写真写真!」
華佗たちが龍を相手に身構えているなか、僕はカメラでバシャバシャ写真を撮っていた。うん!なかなかかっこ良く撮れたな。欲を言えば僕も一緒に写りたいが、その余裕はなさそうだ
「まずは私からだ!」
「援護しよう」
僕はロケットランチャーを出現させ、華雄ちゃんの突撃を援護する。僕がロケットランチャーの引金を引くと、ロケット弾が発射され、巨大な龍に命中し、黒煙を上げる。そこに間髪入れず、華雄ちゃんが大斧で一撃いれる
「ハァァー!」
氣を纏った華雄ちゃんの一撃は、龍の皮膚を引き………裂かない?
「チッ!なんて硬さだ!」
あの一撃なら、間違いなく切り傷を与えれるはずだった。しかし龍の体には傷一つない。僕が当てたロケットの傷でさえ…
「ギャァァァァ!!」
邪龍が吼え、華雄目掛けて爪を振り下ろす
「貂蝉!」
「わかってるわよ卑弥呼!」
華雄ちゃんに龍の攻撃が当たる直前、貂蝉が華雄ちゃんを抱きとめ、卑弥呼が爪の一撃を拳で防いだ
「ぬぅぅぅーあぁぁー!!」
卑弥呼の拳と龍の爪がぶつかり合い、衝撃波が生まれる。そして両者仰け反り、卑弥呼は後ろに下がった
「すまん!助かった」
「気にしないでぇ、それより…」
「かなり硬いみたいだな」
「うむぅ、かなり重いぞ。気をつけるのだ」
「みんなで連携を取りながら戦おう。個人の力じゃ勝つのは厳しい」
久々に、全力で魔術を使おう。僕は魔力を全開にし、地に両手を着け、陣を展開させていく。その陣が展開されている地面から、ありとあらゆる近代兵器を出現させた。機銃、ロケットターレット、対空ミサイル、超電磁砲、ロケットランチャー各種などなど
「なんと!お主魔法使いか」
卑弥呼が関心したかのように叫んだ。だが、卑弥呼の予想は少し違う。地球に魔法使いはいないからな。ミッドチルダ出身だったら、話は変わっていただろうが
「僕自身は、魔術師を自称させてもらっているよ。さぁ、僕が攻撃したら、全員突っ込め」
僕は全ての平気に自分の魔力を接続させる。後は起動キーを引くだけだ
「あらあら、なかなか壮観ねぇ。これだけの兵器を一度に見れるなんて」
「わけのわからないものばかりだ」
「いつでもいける!零士頼む!」
「よし!派手にいくぞ!」
全弾発射!
僕が引金を引くと、とてつもない轟音が辺りを覆い、ありとあらゆる兵器の弾丸の雨が龍に命中。そこから黒煙があげる。そしてその中を華佗、華雄、貂蝉、卑弥呼が突っ込んでいった
「ハァァー!五斗米道ぉぉぉ!!」
「うっふーん!!」
「ぬっふーん!!」
「ハァッ!私の新たな力、とくと見よ!!」
おぉ!華雄ちゃんの後ろから氣で出来た毘沙門天みたいなのがいる。氣の毘沙門天は華雄ちゃんの攻撃に合わせて動いていた
「凄まじいな。よし、僕も出るぞ!」
僕は太刀を出現させ、龍に突撃した
†††††
しばらく激しい攻防が続いた。その中で、徐々に龍の力を理解して行く
「…ッ!」
僕は氣を纏った一撃放つ。すると龍の体を傷つけることに成功した。しかし…
「チッ、傷がすぐ塞がる!」
そう。傷を与えたとしても、即座に塞がり、再生してしまう。硬いだけじゃないだなんて、なかなかに面倒だ。こういう手合いは、ダンテの仕事なんじゃないのか?しかし、例外もあった
「ぬっっふーーーーーーん!!!」
貂蝉、卑弥呼の形容しがたい体術での攻撃が龍に当たると、その攻撃で傷ついた傷だけは塞がらなかった。いったい、なんの差があるんだ?
「ギャァァァァ」
邪龍は雄叫びを上げ、口から炎を吐こうとしていた
「!?華佗!」
まずい!あいつ華佗を狙って…クソ!間に合うか!?
「だぁりん!ぬぉぉぉ!流派漢女道究極奥義!性破天昇拳!!」
卑弥呼が氣を凝縮させ、巨大な弾を発射する。以前、凪ちゃんが放った氣弾の数倍大きいものが放たれた
「龍よ…飛ぶ斬撃を受けたことはあるか?」
同じ頃、華雄が大斧に氣を凝縮させ、それを飛ばすように大斧を振るった。すると武器の先から鋭利な氣の塊が放たれた
龍の火炎と卑弥呼の氣がぶつかり相殺。そして華雄の氣の斬撃は龍の顔面に直撃した。それに対し龍は怯み、隙が生まれた
「華佗ちゃん!大丈夫かしら?」
貂蝉はすでに華佗を保護しており、後ろに下がっていた
「すまない!俺は無事だ。それにしても…」
僕達は龍を見る。龍はあれだけの攻撃を食らっても無傷だった。正確には、既に再生された後だった
「チッ!これは予想外だな」
エクスカリバーでも出して、吹き飛ばしてしまうか?いや、そんな事したら僕の体が持たないな
「効かないわけじゃないけれど、あの回復力が脅威ねー」
「流石にこのままでは、こちらが危ないか」
「ぬぅ、たかがトカゲの分際で、我が奥義を打ち消すか…」
いよいよもって手詰まりか?流石にこれ程とは思わなかったな。もう少し真面目に準備しておけばよかった。ここは一旦退いて態勢を立て直すべきか…
「………俺に考えがある。みんな、もう一度龍の隙を作ることはできないか?」
華佗がなにやら思案顔で提案してきた
「…勝算はあるのか?」
「あぁ。恐らく上手くいくはずだ」
華佗の瞳には、確かな自信が見受けられた
「ふん。隙を作るくらい、造作もないな」
「うむ。わしはだぁりんを信じよう!」
「華佗ちゃんのその目、その希望と情熱に満ちた目、素敵よぉ~。私の体がヒクヒクしちゃうわぁ」
「よし。やってみよう。華佗、信じてるぞ」
「あぁ!みんな頼む!」
僕、華雄ちゃん、貂蝉、卑弥呼が、華佗を護るように前に立ち、武器や拳を構えた。さぁ、ラストアタックだ
「貂蝉!うぬも性破天昇拳を放つのだ!」
「わかってるわぁ」
「「流派!漢女道!究極奥義!性破!天!昇!拳!!」」
「華雄ちゃん、さっきの一撃、なかなか良かったよ。だが、まだまだ本気じゃないんだろ?」
「無論だ!見せてやろう!我が最大の一撃!」
「なら僕も合わせよう」
僕と華雄ちゃんは武器に氣を集中させていく。そして、巨大に膨れ上がった氣の塊を、僕達は放った
「くたばれーー!!」
「ハァッ!!」
轟音を巻き上げた四人の氣弾は見事に龍を捉えた。氣弾が直撃すると爆発し、衝撃波を生む。そして龍は悲鳴を上げ大きく怯んだ
「我が身、我が鍼と一つなり!一鍼同体!全力全開!輝け金鍼!!燃えろ我らの魂!!おおおおぉぉぉぉぉ!!賦相成!!!五斗米道ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
華佗は大きく怯んだ龍に突っ込み、光り輝く鍼を龍に突き刺した。そして…
「げ・ん・き・に!!なぁぁぁれぇぇぇぇぇ!!!!」
大量の氣を龍に流し込んだ………あれ?
「え?」
「は?」
「あらん?」
「華佗!!うぬはアホか?元気にしてしまってはいかんだろうが!!」
卑弥呼の言うとおりだった。せっかく与えたダメージも、これでは意味がな…
「いや、成功だ」
「な!?」
龍を見ると、龍がもがき、苦しんでいる姿があった。そして雄叫びを上げ、大きな音を立てて龍は地に伏した
「いったい、何をしたんだ?」
華雄ちゃんが聞くと、華佗は少し微笑んで話してくれた
「なに。龍の回復力と生命力を逆手にとって逆に強化したんだ。結果、強すぎる力が暴走したということだ」
限界まで高めて、破裂させたということか。凄いな
「なるほど。考えたな」
「医術にそのような使い道があるとは」
「さっすが華佗ちゃん!すぅごいわぁ!」
「わ、わしも最初から、だぁりんを信じていたんだからな!」
「あまり使いたい技じゃないがな。さぁ!材料をもらっていこう。龍の肉は村の人たちに渡せばいいだろう」
「おっと、そうだったね。なら僕も、ちょっと素材を剥ぎ取らないとな」
†††††
僕は龍の牙、爪、皮、肉、骨と剥ぎ取っていく。華佗の方は龍の股間付近で作業していた。そう言えば、一体なんの素材を集めているのだろう?……ん?これは…
「……なるほど。これが火を吹く元か」
消化器官のすぐ近くに、火の付いた内臓があった。流石に熱くて触れず、確かな証拠はないが、恐らくこれが龍の火炎の正体だろう。飲み込んだものを消化すると同時に燃やして火にしてしまうってか?凄い構造だな
「零士!こっちは終わったぞ」
華佗と三人は作業が終わったらしく、こちらに向かってきていた。仕方ない。もって帰りたかったが、流石にこれは手に余るな。諦めるか
「あぁ。こっちももう大丈夫だ。下山しようか」
気づけば、先ほどまでの異常気象が嘘のように晴れ渡っていた
しかし龍か。初めて戦ったが、一人じゃ勝てたかどうかわからないな。なかなか貴重な経験だったな。本当に来てよかった