真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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咲夜編其三

 

 

 

 

 

この二年間の旅は、私に様々な出会いをもたらした。天水の月達や、呉の蓮華達、その他にも紹介し切れないほどの英傑達と出会った。そこで様々な事を学び、力を付け、いつしか人を護れる立場に立つことが出来た。しかし、私の中で賊に対する憎しみが消えることはなかった

 

そんなある日…

「!!零士!少し行った先の村が賊に襲われている!」

「よく見えたね…っておい!咲夜!チッ!」

数里先で燃えている家屋が見えると、私は既に走り始めていた。助けなければ…あんな思いをするのはダメだ。賊は絶対に殺す

「咲夜!乗れ!」

零士はバイクに乗り、追いかけてきた。魔術か。本当に便利な技だ。だがありがたい

私が零士の後ろに飛び乗ると、零士は全速力でバイクを走らせた。そして村に近づき、状況を確認した

よかった。まだ被害は少なそうだ。村人達がよく耐えてくれている…

「行くぞ咲夜。あまり無茶するなよ」

「わかってる!」

私は賊の群れに突っ込み、村人達を助ける

「なんだきさグァッ!」

「あ、あなたは…」

「大丈夫か!助けに来たぞ!」

 

賊が振り向いた瞬間、私は賊の首を切り裂き、襲われそうになっていた村人を助けた。その様子に気づいた賊どもが私に対し殺気をむき出しにする

「この数相手に、たった一人か?笑わせるぜ!」

「は!ひん剥いてヤッちまおうぜ!」

「下衆が…」

私は村人達を守りつつ、賊を次々と切り刻んでいった。数はいたが、一人一人は大した事はないし、既に零士が過半数を潰していた

「ふむ、これで終わりか?」

零士が感情のない冷たい眼差しで賊を睨んだ

 

「ヒィッ!ば、バケモノー!!」

賊の一人が逃げ出すと、残りも次々と逃げ出していった。チッ!逃がすか!

「待て咲夜」

「あぁ?なんで止めるんだ?」

私は零士に止められてしまった。クソッ!逃げられた。逃げ足の速い…

「おい、賊を放っておけば、後々面倒になるぞ」

「あぁ。だが、その前に怪我人の手当てが先だろ?手伝うんだ」

私は村を見渡す。村人の多くが傷を負っていたが、死人はいないようだ。上々の結果だな

私は零士が魔術で出した包帯を配っていく。零士曰く、薬も出せない事はないらしいが、成分が細かいので疲れやすいらしい。だが今回は、そんな疲れる思いはしなくて済みそうだった

「な!おい君!大丈夫か!?」

赤毛の、零士と同じくらいの年齢の男がやってきた

「いてぇよぉ…血が、止まんねぁ…」

「待ってろ!今助けてやる。ハァァァッ!見えた!元気になぁぁれぇぇぇ!!」

男は突然叫び声をあげ、鍼を村人に刺した。あいつは、一体何をしているんだ?

すると突然、まばゆい光が辺りを照らした

「治療、完了!」

「え?す、すげぇ!痛みがない!血も止まった!」

村人は、先ほどまで苦しんでいたのが嘘だったかのように飛び跳ねた。あいつは一体何者だ?

「俺は華佗!五斗米道の医者だ!重傷者から見ていくから並んで待っててくれ!」

それから、華佗と名乗った男は次々に村人を治していった

「御三方!この度は助けていただき、誠に感謝します。私はこの村の村長、村を代表して、お礼をさせてください!」

 

村長が私たちにお礼言いに来た。私も零士も華佗と呼ばれた男も、そろって首を横に振った

「礼はいい。当然の事をしたまでだ!」

「彼の言うとおりです。それに、たまたま運が良かっただけです。そんなに気にしないで下さい」

「しかし…」

「いいんだよ。それより、華佗って言ったか?お前、何者だ?」

 

私は話しを逸らすつもりもかねて、華佗に話しかけた

「俺か?俺は五斗米道という宗派で、医術を学んでいる者だ。現在は修行中で、大陸を渡り歩いている。いつかこの大陸に巣食う病魔を全て取り除くのが、俺の目標だ!」

な、なんていうか、熱い男だな…それに、あの五斗米道か。結構昔から聞く医療を生業としている連中だな

「そ、そうか。私は司馬懿。私も大陸を旅している。そしてこいつが…」

「東零士。同じく大陸を渡り歩いているものだ。よろしくな」

軽い自己紹介を済ませ、零士と華佗は村長と何やら話し始めた。私は大して興味もなかったので、外で待っている事にした

村人達は怪我を負いつつも、皆が協力して村の復興に当たっていた。私は、ここの人達を守れた。その事実に確かな充足感を感じていた。それと同時に、もし、あの日私の村の人間も皆無事だったら…などとも考えてしまった。過去を悔いても、仕方ないのにな…

「はぁ…はぁ…」

私がもの思いにふけっていると、一人の女性が何やら慌てて何かを探しているようだった

「どうかしたのか?」

私は特にやる事もなかったので話しかけてみた。すると女性は涙を溜めて私にしがみついてきた

「はぁはぁ…い、いないんです!私の、子どもが…他の方の子も…」

「なに!?」

まさか、賊に連れて行かれたのか?

「おい!本当にいないのか?」

「はい…みんなで探しているんですが…どこにも…」

チッ!最悪だな

「待ってろ!私が探してやる!」

逃げ込んだ場所はだいたいわかる。あの程度なら、私一人でも…

†††††

 

 

 

「この辺りに……見つけた。あれか」

私は賊が逃げ込んだ森の中に入っていった。零士に学んだサバイバル術のおかげで、賊の足跡を辿る事も成功した。そしてしばらく進むと、洞窟を発見する。間違いない。あそこだ

「さて…人質の確保が先か、それとも…」

殲滅が先か。内部の構造を把握していない分、慎重に動かなければならない。見つかるのはマズイ。人質の命に関わってくるからな

「となると、まずは人質を見つけるか」

私は地形を記憶しつつ、洞窟内を探索し始める。なかなか入り組んではいたが、迷うほどじゃないな…おっと!

「ふぁぁ…ねみぃ。ったく!巡回なんて必要かね」

賊の一人がダラダラとこちらに向かっている。好都合だ。奴に聞くか

「布団にくるまりムグッ!」

私は賊の口を塞ぎ、喉にナイフを当て、物陰に引き込んだ。チッ、暴れやがる

「大人しくしろ。刃が食い込むぞ」

私は強めにナイフを押し当てた。賊の喉からツーッと血が流れる

「………」

すると賊は大人しくなった

「利口だな。さっそくだが、お前達が連れて行った子ども達はどこだ。必要の無い事以外は言うな。言ったら殺す」

私はナイフを押し当てたまま、賊の口を解放した。賊は数度咳き込み、そして弱々しく答えた

「この先を、少し行って、左に、牢がある…」

私は再び賊の口を塞いだ

「本当だな?」

賊は頷く。場所は割れた。救出前に退路の確保をしなければな

「おっと。御苦労だったな。もう逝っていいぞ」

「こかぁっ……」

私は賊の喉を切り裂いた。賊は少しのたうちまわり、やがて倒れ、血だまりを作った

「きったね」

さぁ、この辺一帯の消毒が終わったら、牢を覗いてみるか

私は牢屋に訪れる前に、この洞窟内の地形を全て記憶した。宝物庫、食料庫、寝室、そして大広間。出口は二つあったな。その後は賊が教えてくれた場所に進み、牢屋を視認する。ここからなら、二つ目の出口が近いな。救出後はそこに行こう

「警備は…二人か。しかも寝ている。やる気あるのか?」

私はナイフを握りしめる。静かに…静かに近寄り…さぁ、永眠のじか…

「あ、あなたは?」

私が寝ている賊の一人を殺そうとすると、牢に入っている一人の女と目が合ってしまった

な!この桃色!喋んなよ!

「おっあっぐっ!」

私が一人の首を刺し殺す頃、人質の一人が喋り出した。そしてその声で、もう一人が起きてしまった

「な、なんだ貴様!」

「チッ!死ね」

私はナイフで賊を切り刻んだ。ちくしょう、ヒヤヒヤしたな

「はぁ…おい。助けにきたぞ」

人質は、この桃色を含めて5人か

「!あ、ありがとうございます!みんな!助かるよ!」

「ほ、ほんと?」

「おうち、帰れる?」

「うん!みんなで帰ろう!」

チッ!このバカ女、声がでけぇ

「おい、もう少し静かにしろ。見つかりたいのか?」

「あぅ。ごめんなさい…」

 

桃色バカ女はシュンとした。こいつより、子ども達の方が利口だな

「はぁ…これで全員か?」

「はい。あの、本当に助かりました!」

この桃色、年は私と同じくらいか。その割りには、ずいぶん発育がいいな。私もそこそこあると、思っていたんだがな

私は警備から鍵を奪い、牢屋を開けて行く。さて、ここからが本番だな。この頭のユルそうなバカ女が騒ぐ前に脱出できれば上々だ

「みんな、シーっだよ!」

お前が一番黙れ

「あの、ところであなたは?」

もうすぐ出口、というところで、桃色が話しかけてきた。ここまでは順調だな

「あぁ?お前らの村を襲った賊を追い払ったしがない旅人だよ」

私は警戒しつつ、話に付き合ってやることにした

「ほぇー、凄いんですね。羨ましいなぁ」

バカ女は能天気に答えた。いちいち腹立つな

「なにがだ?」

「私も、みんなを守りたいんですけど、闘うとか苦手で。いつも、みんなの邪魔ばっかりしちゃうんですよね」

見ればわかる。じゃなきゃこんな所にいないだろう

「だろうな」

「あぅ、そんな正直に答えられると、さすがに傷つきます…」

「知るかよ。…お前、そうやって誰かを助けたいって思って、実際何かしたか?」

「どういう事ですか?」

「例えば、私は二年前に賊に家族を奪われた。その時に、自分の無力さを呪ったよ。以来、私は鍛錬を怠っていない。その結果、今はこうして、お前達を守れる立場にいる。お前はどうだ?」

私は、何を話しているんだろうな。なんでこんな話、こんなバカ女に…

「私は、その、痛いのとかはちょっと…」

「それで、なんの努力もしてこなかったのか?苦手だと、切り捨てて」

「…」

甘ったれるなよ

「いいかバカ女。力が無きゃ、なにも救えない。だから力を付けろ。本気で誰かを助けたいならな」

 

私は自分の声に怒気が混じっているのに気付いた。きっと、過去を思い出してしまったのだろう

「力だけじゃ…平和になりません…」

「あぁ?」

「私は、あなたとは違います。私はもっと、別の方法で、みんなを助けたい!」

バカ女の声に熱が入る

 

「綺麗事だな。結局は力に頼るぞ」

それとは対照的に、私の声は冷めている

 

「そんな事ありません!」

「なら、今のこの状況、武力以外で切り抜けられるのか?」

「それは…」

 

バカ女は黙った。こいつは、今の状況も含めて、現実を理解していない

「もっと現実を見ろ。今のままじゃ、ただの夢想家だ。理想だけじゃ人は救えない。話し合いで世界が平和になるほど、この世は甘くない。守るための力を、身につけるんだ」

「守るための、力…」

「あぁ。よし、出口が見えた。帰れるぞ」

 

私は出口を確認する。出口から光が漏れている

「あの、私にも、誰かを守れるかな?」

 

バカ女はうつむいたまま聞いてきた

「さぁな。お前の頑張り次第じゃないか?バカ女」

「もう!さっきからバカバカ言わないでくださいよ!私には劉…」

「待て!来やがったぜ」

出口に出たところで、洞窟内から複数の賊が押し寄せてきた

「さっさと行け!」

出口の外には橋か…使えるな

「あなたは!」

「いいから行け!時間を稼いでやる!」

「でも!」

「バカ女!守りたいんだろ?最初の仕事だ。その子ども達を無事に村まで連れて行け。わかったな!」

「!!…わかりました。死なないでください。助けを呼んできますから!」

あのバカ女は、子ども達を連れて橋を渡り切ったな。さてと…

ザシュ ガシャーン

私は橋を切り落とした。これで、賊共は追えないはずだ。まぁ、私も帰れなくなったがな

「ハッ!関係ないか。さぁ賊共、お前らに明日はないぞ!」

そして私は、賊の群れに突っ込んで行った

†††††

 

 

ピンク髪の女の子視点

「はぁ…はぁ…もうすぐだよ!みんな頑張ろ!」

私は洞窟を抜けた後、一目散に村を目指した。私たちが橋を渡ってしばらくすると、何かが崩れる音が聞こえたけど、あの人は大丈夫かな?………あ!

「名前、聞いてなかったな。あれ?私も名前言ったっきゃうっ!」

痛!つ、つまずいちゃった…

「劉備おねえちゃん大丈夫?」

「え、えへへー、大丈夫だよー!」

子どもに心配されちゃうなんて…うぅ。恥ずかしいなぁ…あ、村が見えてきた!

「うわぁーん!かあさまー!」

「あぁ、よかった…本当によかった…劉備ちゃん、本当にありがとうね」

「い、いえいえ!私はなにも…あ!村長ー!」

 

子ども達が親のもとへ帰るのを確認してから、私は村長のもとへ駈け出した。あの人を、あの人を助けなきゃ!

「おぉ劉備!無事じゃったか!」

「村長!今すぐみんなで洞窟に!私を助けてくれた人がまだ!」

「心配せずともよい。先ほどとんでもなく強い御仁が向かった。会わんだか?」

 

もう向かった?あの人の仲間かな?

「い、いえ。でも、それならよかったぁ…」

私はここで緊張の糸が切れ、脱力し、気を失ってしまった

守るための力、かぁ…

私でも、誰かを助けられるのかな…

んーん、助けるんだ

私一人じゃダメかもしれないけど

いろんな人と協力して

いつか、みんなが笑って暮らせる世界を………

 

 

 

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