真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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日常編其五
お悩み相談所『晋』


 

 

 

 

 

ここはお食事処『晋』。美味い飯と酒につられ、様々な客がやって来る。そんな中に、時折悩みを抱えているお客様が来ることがある。そんな人達の相談に乗ってあげるのもまた、『晋』の仕事だ

CASE1 担当:東零士

「てんちょー…沙和もうダメなのー」

今酒を飲んでうなだれているのは、凪の親友の于禁こと沙和だ。楽進、李典、于禁は魏の三羽烏と呼ばれ、そこそこに有名だ。だが、于禁は軍にいるのが想像できないほど、噂好きで、流行に敏感な、普通の女の子だった

「どうかしたかい?沙和ちゃん」

「わたしー、軍人向いてないのかなーって。凪ちゃんみたいにー、強くないし。真桜ちゃんみたいにー、何か作れる訳じゃないしー。私ってー、お邪魔みたいなのー。今日の新兵訓練も、沙和の所だけ言う事聞いてくれないの」

ずいぶん酔っているせいか、どこか元気がないな。だが、こんなお客を励ますのも、うちの仕事だ

「なら、君は何故、華琳ちゃんの所に入ったんだい?」

「それは、村の皆を、困ってる人を助けたかったからなの」

「その気持ちは、今もまだあるかい?」

「当然なの!」

 

沙和はガバッと起き上って怒鳴った。そんな姿に、零士は優しく微笑む

「なら君は、軍人に向いているんだよ。軍人はね、そうやって誰かの為に戦える人にしか務まらないんだ。その気持ちも無く軍に入った者はただの三下。君はまだ、力は無いかもしれないけど、軍人の心としては、一流なんじゃないかな」

「そう、かな?」

「あぁ。それに、こうやって愚痴をたれても、失敗を繰り返さない為に、試行錯誤しながらまた明日も頑張るんだろ?それはとても立派な事だ」

「そ、そっか。えへへー、ありがとうなの、てんちょー!」

「ふふ。なら、頑張っている沙和ちゃんに、僕から助言をしよう。明日の新兵訓練に、ここに書いてある事を試してみるんだ」

 

零士はいつのまにか用意していた手帳を沙和に手渡す。沙和は戸惑いながらもそれを受け取った

「なんなの?」

「僕が昔いた所の海兵隊という軍が実際に行っていた訓練法だ。多少は効果があるはずだよ」

 

沙和は絶対わかっていなさそうだったが、目を輝かせて喜んでいた

「ほぇー。ありがとうなの!また明日も頑張ってみるの!また来るの!」

沙和は零士に手渡された手帳を握り、元気良く帰って行った

「よう。大丈夫なのか?海兵隊の訓練法って確か…」

「大丈夫かなー」

投げっぱなしかよ

だが後日、沙和が満面の笑みでうちに成功報告にやってきた

どうやら、あの罵倒式の訓練法は、そこそこ人気を得たらしい

†††††

 

 

CASE2 担当:詠

「はぁ…」

「どうしたの稟、ため息なんかついて」

こいつは郭嘉こと稟。袁紹の一件以降にここに来た魏の軍師で、かなりのキレ者らしい。そして…

「いつになったら、華琳様は私を閨に呼んでくれるのかなって…」

こいつもまた、華琳を溺愛している一人だ

「ね、閨って…あんたその前に、あの鼻血癖をどうにかしなさいよ。きっと呼ばない原因もそれにあるわよ」

そう。こいつの困った所は、妄想が暴走し、その結果どこでだろうと鼻血を噴き出すのだ。その度に、うちに来ては血になるものを食っていく。レバニラ炒めは、ほぼこいつの為にできた料理だ

「私だって、どうにかしたいですよ!でも、華琳様を思うと…」

稟がよからぬ妄想に入ろうとするところへ、詠はハリセンを取出し、阻止した

「妄想禁止!こんな所で鼻血出されたら、たまったもんじゃないわ!」

「す、すいません…ですが!この気持ちを止められないんですよ!」

「あぁはいはい。わかったから、そんなに近づかないで。…そうよ。あんた僕とはこんなに至近距離でも会話できるのに、どうして華琳とはできないのよ」

 

詠と稟はカウンターを挟んで会話している。そこそこ近い距離だ

「それはその…恥ずかしくて…」

「今までの鼻血癖の方が、恥ずかしいと思うけど」

 

詠に同意見だ

 

「あ、それなら、華琳に慣れてしまえばいいのよ!」

「慣れる、ですか?」

「えぇ、ちょっと待ってなさい!……………あったわ!ほらこれ」

 

詠は店の奥に引っ込んだかと思うと、なにか本を持ってやって来た

「これは!なんと精巧な華琳様の絵でしょう!」

 

詠が持ってきたのはアルバムらしい

「まずはこれで慣れるのよ!これで妄想しても堪えられるようになったら、きっと閨にも呼んでもらえるわよ!」

「私にできるでしょうか?」

「できるかじゃない。やらなきゃダメなのよ!じゃなきゃあんたは、いつまで経ってもこのままよ」

「う、が、頑張ります!では、また結果報告を。この絵、ありがとうございます!」

稟は華琳の写真を大切に持ち、帰って行った。その時、顔が赤くなっていたのは言うまでもない

「お疲れ詠。お前、いつの間に華琳の写真なんて撮ったんだ?」

 

私は詠に話しかけた。あの華琳によく撮影許可がでたよな

「あぁあれ?僕、猪々子と写真撮って以来、カメラが趣味なっちゃってさ。色んな人や物、風景なんかを撮ってんのよね」

そう言って詠は、多数の写真が入っているアルバムを手渡してくれた。風景や人々の笑う姿、常連の写真や料理の写真、私たちが写った写真まであった

「へぇ。よく撮れてるじゃないか」

 

「まぁね!」

後日、華琳と稟の距離は何処と無く近くなったようで、普通に会話もできるようになったらしい

ただ

あの相談があった日以来、夜な夜な稟がレバニラ炒めを多く食すようになった。一体、ナニをしているんだ

†††††

 

 

 

CASE3 担当:悠里

「ふえぇぇぇーーん!!!」

「あー…またですか桂花ちゃん」

今泣いているのは荀彧こと桂花。華琳が許昌に移り住む前から居た猫耳軍師。うちにも割と来てくれる奴なんだが…

「もう!!聞いてよ悠里!華琳様ったらまた春蘭と閨を共にしたのよ!なんでこんなにも尽くしてる私じゃないのよ!」

酒が入るとこのように泣いたり怒ったりと、とにかく面倒臭くなってしまう

「えー。でも桂花ちゃん、この前華琳さんと閨を共にしたって喜んでましたよね」

「そんなのは二日前の事よ!こっちは毎日でだって足りないくらいなのに…」

そしてこいつもまた、華琳が好き過ぎる奴の一人だ。魏の奴はこんなんばっかりか

「うーん…どうしたものか………そうだ!ねぇ桂花ちゃん。桂花ちゃんは、華琳さんに振り向いて欲しいんですよね?」

あ、なんか嫌な予感が…

「えぇ、ぐすっ、そうよ」

「ならさ、ちょっと浮気してみない?」

「浮気…?」

 

まーた妙な事言い始めたぞ

「そそ!他の誰かとイチャついてる所を華琳さんに見せつけたら、きっと華琳さんも妬いちゃいますよ!」

「でも…私は華琳様以外を愛するなんて、できないわよ」

「別に愛する必要は無いんですよ。フリだけです」

「でも相手がいないわ」

「ふっふーん!それなら大丈夫ですよ!ここに女泣かせの店長様がいます!」

 

悠里は零士を親指で指して答えた

「え?それって僕の事?いつ女泣かせたっけ」

 

急に話を振られ、戸惑う零士に…

「はぁ?嫌よ、気持ち悪い」

桂花はズバッと切り捨てた

 

「うわぁ…傷つくなぁ…」

 

流石の零士も、ハッキリ言われると心に来るらしい。微妙にションボリしてる

「うーん…なら、咲夜姉さんでどうですか?」

そしてやっぱりこっちにも来たか…

「却下だ。後で華琳に何言われるかわかったもんじゃない」

 

あいつのことだ。そんな事したら後でネチネチ言われるに決まってる

「えー…なら、あたしで大丈夫ですか?」

 

悠里が言った。最初から自分を指名させたらいいだろうに

 

「いいの?」

「もちろんですよ!桂花ちゃん可愛いし!」

「そ、そう。なら、よろしく頼むわ。浮気かぁ、たまにはいいかもね」

案外、桂花も乗り気なんだな。後ろに怖い人がいるのに…

 

「あら、何がいいのかしら?」

「「ヒィッ!」」

後ろの怖い人に声を掛けられ、悠里と桂花は声をあげた。華琳はいじわるな目を桂花に向けてゆっくりと口を開いた

 

「桂花、あなたが誰の所有物か、一度しっかり刻み込まないといけないみたいね」

「は、はい!」

 

なんでちょっと嬉しそうなんだろう

「それと悠里、もし私の所有物に手を出したら、ただじゃおかないわよ」

「き、気をつけます!」

 

おー、怖い怖い

「利口ね。零士、何か精の付くものを」

「畏まりました」

「桂花、今夜は寝かさないわよ」

「か、華琳さまぁ…」

その後、華琳は飯を平らげ、恍惚とした表情の桂花を連れ帰って行った

「怖ぇ!華琳さんマジ怖ぇ!」

「あれはお前が悪い」

後日、桂花が再び上機嫌で入店したことは、言うまでもなかった

†††††

 

CASE4 担当:恋

「う~ん、凪ちゃん程ではありませんが、風も辛いものは好きなんですよ~」

こいつは程昱こと風。稟と同時期に入った魏の軍師で、実は一番侮れない奴なんだが…

「…零士のカレーは、絶品」

「そう言えば恋ちゃん、聞いてくださいよ~。この前野良猫と…」

「…」

「ぐぅ……」

「すぴー……」

このように、普段はグダグダだ

「ていうか起きろよ!」

†††††

CASE5 担当:咲夜

「はぁ…」

「ん?どうした華琳。ため息なんてついて」

なにか悩み事か?私でよけりゃ聞いてやるか

「あら咲夜。実は最近、気になる子がいるのよ」

「へぇ、別に珍しい事じゃないな」

女好きで有名だしな

「でもその子、なかなか私の下に来てくれなくて」

「そうなのか?華琳って結構モテるんだろ?」

秋蘭とか春蘭とか桂花とか稟とか。あげたらキリがなさそうだ

「私もそれなりに自信はあったのだけれど、その子はなかなか我が強くてね」

へぇ、そんな子がいるんだ

「ちなみにその子ってどんな子なんだ?」

「美しい黒髪が特徴ね。顔は中性的で整っているわ。なにより、戦う姿が綺麗なのよ。一瞬で魅了されたわ」

「へぇ、聞く分には、なかなかの子らしいな」

そう言えば、北郷一刀の所の関羽って奴が、美しい黒髪から美髪公なんて呼ばれていたな。もしかして、関羽の事なのか?

「ということで咲夜、今晩閨にこないかしら?」

「なんでその流れで私なんだよ!」

「何を言っているの?私はさっきから、あなたの事を話していたのよ」

「関羽じゃないのかよ!」

「関羽もいいわよねぇ。いずれ必ずモノにしたいわ。その前にまず、咲夜から頂かないと」

「なんでだよ!て言うか最近の話じゃねぇだろそれ!」

「あら、私はいつもあなたの事を考えているわ。だからある意味最近よ」

「女癖悪いにも程があるだろ!少しは節度を持て!」

華琳の悩みには乗らないのが正解らしい

†††††

 

CASE6 担当:月

「月っちー、ちょっと聞いてぇなぁ」

「どうかしたんですか霞さん?」

霞が悩み事か、珍しいこともあるな

「最近凪が冷たいんよ」

「凪さんが、ですか?」

あー…

「うん。うちとしては仲良ぉしたいんやけど、なんかこう、距離置かれてる気ぃしてさ」

「それは、前からそうなんですか?」

「いんやぁ、ちょーっと前までは膝枕とかしてくれたんやけどなぁ。最近はないなぁ」

「何か、心当たりはないのですか?」

「ないよー。あったらこんな悩まんよぉ」

「へぅ、一体何でなんでしょう?」

「ぐすん…うち、嫌われたんかなぁ…」

霞は割と真面目に悩んでいるみたいだな。涙まで流して。ただ…

「そんな事は………あの、今涙を拭いているその布は一体…」

「ん?あぁこれ?凪の下着よ?」

「…」

「あぁ!凪が恋しい!うちこれだけじゃ満足できん!」

そう言って霞は、凪の下着をクンクン嗅ぎ始めた。実は私は知っていた。最近、凪が霞の性的イタズラに悩んでいると。そしてどういう訳か、その日辺りから下着が消えていた事も

「あぁんもう!今度凪が風呂入ってるとこ覗こかな!ほいで夜とかも、こっそり凪の布団に忍び込んで…」

あ、銀髪少女が霞の肩をトントンとたたいた。霞は振り返らないが、銀髪少女は振り返るまで肩をたたき続ける

「あぁ?なんやねん!今ウチ妄想で忙しい…ねん…」

「…」

 

霞は振り返り、笑みを凍りつかせた。銀髪少女こと凪は、素敵な笑みで霞を見ている。ただ、目だけは笑っていなかったが

「にゃ、にゃはー。な、凪やん!どないしたん?こないなところで」

「いえ、ただ夕食を頂きに来ただけでしたのですが、まさかこんな所に下着泥棒が居るとは思いもしませんでした」

 

凪は手錠を取出し、それで遊ぶかのように回し始めた

「し、下着ドロやて?だ、誰やろなー、そないけったいな奴がおるなんて…」

「………霞様、ご同行、願いますよね」

 

凪のどすの利いた低い声が、霞を黙らせた

「はぃ…」

そして、凪は霞をしょっ引いて帰っていってしまった

「な、なんだったんでしょうね」

月は戸惑いながら聞いてきた。さぁ、なんだったんだろう。とりあえず言えることは…

 

「現行犯逮捕、ってやつなんじゃないか?」

よかったな凪、これで悩みも解決するといいな

 

 

 

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