真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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旅行編
旅行編其一


 

 

 

 

 

「みんなー、集まってくれるかい?」

「およ?なんですかー?」

『晋』の営業が終わり、皆が一息つく頃、零士が珍しく招集をかける。

ん?今日は給料日じゃないよな?

「どうかしたんですか?」

 

月が聞くと、零士は嬉しそうに口を開いた

「ふふ。今日はみんなに嬉しい知らせを伝えたくてね」

「嬉しい知らせ?」

「あぁ。みんなの頑張りのおかげで、『晋』の月間売り上げが過去最高を記録しました!」

そう言って零士は売り上げ表を見せてくれた。確かに、過去に類を見ないほど大きく更新しているな。どうりで忙しかったわけだ

「おぉ!この伸び方凄いですね!」

「どうりで今月忙しかったわけだわ」

「へぅ、頑張った甲斐がありました」

「…みんな、おつかれ」

「確かに凄いが、それだけか?」

これはこれで喜ばしい事だが、こいつの事だ。まだ何かあるに違いない

「さすが咲ちゃん。実はまだ報告があってね。頑張ってくれた皆に、ご褒美があるんだ」

ご褒美?

 

「ご褒美!なんですかなんですか!!」

悠里を始め、月も喜び、微妙にわかりづらいが詠や恋も喜んでいるようだった。かく言う私も、興味はあった

「ふふふ。『晋』の従業員みんなで、温泉旅行に行こう!」

†††††

「温泉旅行かぁ。何持って行きます?」

 

零士の発表の数日後、零士と臨時従業員である流琉を除いた私達『晋』の従業員は、旅行の為の準備をしていた。流琉は城の仕事で、零士は下準備だとか。ちなみにこの時、『晋』の営業はしばらく休業するらしい。ご褒美の内の一つとの事だ

「場所は確か、定軍山にある五斗米道の施設でしたよね」

「らしいな。五斗米道の連中が修行に使ってる場所だ。そこらの宿泊施設よりは充実しているらしいぞ」

今回の旅行には、華佗が情報提供してくれたとの事だ。なんでも、疲労回復などの効能がある温泉があるらしい

「それだけいい場所なら、服だけでよくない?」

「あと、食べ物」

 

詠と恋が提案した。私も二人に同意だ。まぁ、食べ物は微妙なところだが

「えー!せっかくのお泊りですよ!もっとなんか、持って行きましょうよ!」

 

悠里がぶーぶーと不満をもらした

「悠里、そんなもの必要ないだろ。荷物になるだけだ」

「姉さんノリ悪いー。つまんなーい」

悠里があからさまに不機嫌になる。こいつ忘れているな。うちには便利な奴が居ることを

「違うわよ悠里。咲夜が言いたい事はそういう事じゃないわ。でしょ咲夜?」

「あぁ」

さすがに詠は気づいているな

「え?え?どういう事ですか?」

「ふふ。持っていかなくても、その場で出してもらえばいいんですね」

「えー?………あ、そっか。東おじさんに頼めばいいのか」

「そういう事だ。あいつの魔術に好きなだけ出してもらえ」

 

あいつに作れない物はほとんどないらしいからな

「…食べ物は?」

「食べ物は…やめといた方がいいわ」

その口ぶり、魔術で作った何とも言えない料理を食った事あるな

「食べ物は買っていきましょう。定軍山までの道のりで食べれる量なら、そんなに多くならないと思いますし」

「そうするか。ならとりあえず、饅頭屋行こうぜ」

「姉さんホント饅頭好きですね」

その後私たちは、各々で好きな食い物を買っていったのだが…正直、恋の胃袋を舐めていた。かなりの大荷物になってしまったのだ。これについては、さすがの零士も苦笑いだった

†††††

 

 

「よし。みんな準備はいいか?」

『はーい』

「じゃあ行くぞ!」

今回の移動手段は大型の車、バスと呼ばれるものだ。だが、今回の車は一味違うらしく、どうやら周りからは透明に見えるとの事だ。零士が「ステルス迷彩の研究に携わってて良かったよ」なんて言っていたな。未来にはまだまだ未知の物が多い。ちなみに運転は私だ。何故かと言うと…

「ひゅー…ひゅー…」

このバスを出す為に、かなりの力を使ったらしく、出した途端ぶっ倒れやがった。もう二度と出さないとも言っていたな

「んー!快適だー!」

「全くよね。広いし楽だし、言う事なしだわ」

「あの、東さん大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫…まさかこんなにも、疲れるとは思わなかった…」

「もきゅもきゅ…零士、食べる?」

「大丈夫だよ恋ちゃん。咲ちゃん、迷わずに行けそう?」

「あぁ、問題ないぞ。もう少し休んでな」

「ありがとう」

そう言って零士は再び横になった。こいつ自身も、日頃の疲れが溜まっていたのか、すぐに寝てしまったようだ

「それにしても、流琉ちゃん残念ですよねー」

「まぁ、流石に城の仕事放っぽりだす訳にはいかないからね」

「お土産、持って帰らないといけませんね」

今回流琉は旅行に参加する事が出来なかった。なんでも、遠征があるとかないとか。いずれにしても、とても残念な事である。そう言えば、遠征先を聞いていなかったな

「意外と遠征先が定軍山だったりして!」

「ゆっくり休むのが目的の旅行で、軍と関わるとか勘弁願いたいわね」

それは私も嫌だな。たまには事件に巻き込まれず、のんびりしたい

バスを走らせること数刻、私は途中で目覚めた零士と運転を交代し定軍山を目指す。結構な獣道を走っているが、本当にこんなところに五斗米道の施設なんてあるのか?

「んん?あれか?」

もう少し行った先に開けた場所があり、そこに建物があることを視認する。へぇ、なかなか立派な所じゃないか

「到着。みんなお疲れ様。荷物を出そう」

私たちは施設の正門の前で降り、荷物を取り出し始めた。と言っても、ほとんどが衣類なのでそこまで大荷物ではないがな

「よし、こんなもんかな」

零士がパチンと指を鳴らすと、先ほどまであったバスが姿を消した

「おぉ!みんな来てくれたか!」

零士がバスを消したところで、正門が開き、華佗が現れた。両隣にはしっかりと化物二匹と華雄もいた

「お久しぶりです月様。お元気そうで何よりです」

「あっらー!東零士ちゃーん!お久しぶりねぃ!」

「はっはっは!相も変わらず良い男だな!」

「やぁ皆。今日からしばらくお世話になるよ」

「あぁ!さぁ上がってくれ!案内する」

そして私達は華佗の案内で部屋に辿り着く。女性陣は皆、大部屋で一つとなり、零士のみ個室を与えられた

「温泉はこの先にあるから好きに入ってくれ。飯の時間になったらまた呼ばせてもらう」

そう言って華佗と化け物二人は零士と共に何処かへ行ってしまった

†††††

 

 

「じゃあさっそく温泉行きましょう!」

「そうね、ゆっくり浸かりたいわ」

「ならさっさと移動するか」

「あぁ、案内するぞ」

私たちは荷物を部屋に置いていき、そそくさと温泉があるところまでやってくる。温泉の入り口は二つあり、二つそれぞれに大きく『男』、『女』と書かれていた

「なんだー、混浴じゃないのかー。せっかく東おじさんの裸見れると思ったのに」

「ゆ、悠里!?」

「へぅ、裸…」

あいつの、裸…

「おやぁ?咲夜姉さん、顔が赤いですけど、想像しちゃってるんですかぁ?」

「な!ば、バカ言ってないで、さっさと入るぞ!」

私は悠里のニヤニヤ顏に軽くデコピンし、そして女湯の方に入って行った。中は広く、清潔感がありながらどこか暖かな雰囲気だ

「あれ?姉さん、また大きくなりました?」

私たちが服を脱ぎ始めると、悠里が私の体をジッと見つめ言い放った。大きくなったとかって話ということは、恐らく胸の話なのだろう

「確かに、最近また下着がキツくなった気がするな」

「へぅ、凄く、大きいです…」

「べ、別に羨ましくなんてないわ!」

「胸の話か?あんなもの、戦闘の邪魔にしかならんと思うが」

そんなに大きいのか?確かに悠里や恋よりはあると思うが

「咲夜、入ろ」

「ん?あぁ、わかった。待たせて悪いな」

恋は既に全裸で待機していた。待ってくれているなんて、恋も意外と律儀だな

「あたし、いっちばーん!」

バシャーン!

悠里は風呂めがけて全力で飛び込み。湯気と水しぶきがあがった。風呂場で走るなよ、転ぶぞ

「あの子って、いくつだっけ?」

「確か、19歳くらいじゃなかったかな」

あれで私の一つ下か。落ち着きないにも程が有るだろ

「ん?どうしたんですか皆?入らないんですか?超気持ちいいですよ!」

「♪」

「ふむ、やはり温泉は安らぐな」

気づけば、恋と華雄もいつの間にか入っていた。私と月と詠も微笑をもらし、風呂に入った

「くぅーっ!染みるなぁ」

「咲夜、オッさん臭いわよ」

 

詠が布を頭に乗せて、苦笑いで言ってきた

「い、いいだろ!気持ちいいんだし!」

こちとら疲れてんだよ!

 

「オッさんは言い過ぎでも、咲夜さんってどこか男らしいですよね」

「そ、そうか?」

 

月の発言は、私の胸に突き刺さった。お、男らしいのか?

「口調も時々男っぽいですし」

「やることえげつないし」

「かなり強いし」

「女の子に対してドキドキしてるし」

「咲夜は、かっこいい」

 

上から月、詠、華雄、悠里、そして恋だ

「なんか、褒められているのか微妙な気分だな」

私ってそんなに男らしいのか?確かに自分が女らしいとは思ったことないが…

「咲夜姉さんはおっぱいのついたイケメンですよ!」

そう言って悠里は物凄い速さで移動し、私の背後に位置どり、そして…

バシャッ

「うーん、やはり大きくなっている」

「な!?こら悠里!お前どこ揉んで、ひゃっ!」

悠里が私の胸を背後から掴み、揉み始めた。すると前方から恋が近づき

「…やわらかい」

恋も混ざり始めた

「ゆ、月は見ちゃダメ!」

「へぅ、羨ましいなぁ」

「なに、月様もいずれは大きくなりますよ」

「お前ら!見てないで助けてくれ!」

男湯

ギャーギャー!!ワーワー!!

「ん?女湯の方はずいぶん賑やかだな!」

「おおかた、咲ちゃんがセクハラにあってるんじゃないかな」

「せく…なんだって?」

「そうだなー、あんな感じじゃないかな」

「ぶるあああぁぁぁ!!!!!!ちょっとそこのイケメン、私のギンギンビンビンになってるアソコを触りなさぁい!」

「待たんか、そこの良い男!せっかく優しくしてやろうというのに」

「ぎゃー!不幸だぁーーー!!!」

「なるほど、体をほぐしているんだな!」

「あぁうん、そんな感じかな。……ところであのツンツン頭の彼は大丈夫なのかい?」

†††††

許昌   秋蘭視点

「ん?今日はやっていないのか」

私が『晋』に赴くと、そこには『しばらく休業します』という札があった

「どこかに行っているのか?ツイていないな」

私もしばらく遠征で許昌を離れなきゃいけないから、ここで食っていこうと思っていたんだがな。仕方ない。しばらくお預けか

「それにしても、ずいぶんと急だな。せっかくなら、一言あってもよいものだが」

柄にもない事を呟いてみる。きっと寂しいのだろう。4年来の友人である咲夜と零士がいない。自分でも思っている以上に、私はあの二人の事が好きだったのだな

「あれ?秋蘭様?どうしたんですかお店の前で」

「流琉?」

私がぼぉっとしていると、流琉が駆け寄ってきた。そう言えば…

「流琉は『晋』が休みを取る事を聞いていたのか?」

「はい。なんでも、温泉旅行に行くだとか」

温泉旅行?

「流琉は行かなくて良かったのか?」

流琉は今回の遠征に付き合う事になっているが、ただの偵察だけだし、言ってくれたら外す事もできたのだが…

「あぁ、大丈夫ですよ。流石にお城の仕事を放っぽりだすわけにはいけませんし。それに…」

私は感心していた。こんなにも幼い流琉が、しっかりと責任を全うしようとしている事に。だが、こんなにも幼い子の自由を奪ってしまう事に、罪悪感もあった

「それに?」

私が流琉に対して罪悪感を抱いていると、流琉はそれを打ち払うように、満面の笑みで答えた

「皆さん、定軍山に居るみたいですし、私と秋蘭様も今から偵察で定軍山に行きますから、きっと会えますよ!」

 

 

 


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