真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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零士さん視点になります


零士さんの不幸な一日

 

 

 

 

 

何かがおかしい。僕は割れた茶碗と折れた箸を見ながらふと思った。

今日は朝から妙にツイていない。いや、もともと僕の運はそこまで良いものではないが、今日はそれが顕著だ

朝目覚め、詠ちゃんがドアを開けた際に頭をぶつけたり、

その後足の親指を思い切り強打したり、

お茶を入れる際に火傷をしたり、

朝食作りではタマネギが異様に目に染みたり、

熱々の鍋に手が触れまた火傷したり…

「いったい、なんなんだ?」

僕は訳のわからない不幸に若干戸惑いつつも、割れた茶碗と折れた箸の代わりを買いに行くのだった

†††††

 

 

外に出て、数歩歩いた先で…

バシャッ

水をかけられた…

「す、すまねぇ東さん!あっしの不注意で…大丈夫か?」

「あ、あぁ、いいですよ。気にしないでください」

「本当に悪かった!」

そしてこれを皮切りに、何かと不幸に見舞われた

「ワンワン!ガルルルルゥ!」

道ゆく犬には妙に吠えられ…

「ニャーッ!!フシャーッ!!」

猫には蹴られ、その後引っ掻かれ…

ズドーン!!

「いえーい!大成功!」

子ども達に、落とし穴に落とされ…

「君たち…これは君たちが掘ったのかい?」

「うん!荀彧先生が教えてくれたんだ!」

何を教えているんだ、あの猫耳軍師さんは…

そして目当ての茶器屋さんにたどり着いたものの…

『しばらく休業します』

「なぜだ…」

無駄足になってしまった…

 

†††††

 

 

「妙だな」

僕はこれまでの事を振り返っていた。

確かに僕はツイていないが、今日みたいに小さい不幸が立て続けに起こるなんてことは今までなかった。絶対に何かがおかしい

「ハッ!まさか魔術師の攻撃?これも張譲の仕業?おのれ張譲!」

不幸が続いたからか、何かおかしな事を呟いてしまった。もしこれが本当に張譲の仕業なら、こんな嫌がらせじみたことはしないだろう

そして、そんな事をぼーっと考えていたからだろう。走っている人とぶつかり…

ドゴーン!

氣弾をモロに食らってしまった…

うん、この氣弾知ってる。あの子のものだね

「よし!食い逃げ犯逮捕!さっそく連れ…あれ?二人い……あ、東さん!?」

「やぁ凪ちゃん…君は相変わらず、食い逃げ相手に氣弾を使うんだね…」

「も、申し訳ありません!」

僕じゃなければ大問題だったろう

†††††

凪ちゃんに散々謝られ、その後別れた後も、不幸は続いていた

「あれ?ない…」

サイフを落としてしまった。恐らくあの氣弾を食らった時だろう

「はぁ…見つかるかな…」

今日の調子じゃ、そんな気はしなかったが、流石にないと困るので探しに行く事にした

探し始めること数分、僕のサイフは思ったよりも早く見つかった。

というのも…

「わー、このお財布、中身いっぱいだよー」

「マジ!?やったじゃん!それで何か食べようよ!」

「姉さん達…」

張三姉妹に拾われていた

「き、君たち!ちょっといいかい?」

 

僕は慌てて彼女たちに声をかけた。すると彼女たちも、こちらに気付いてくれた

「東さん?お久しぶりです」

「あー、てんちょーさんだー」

「なによ東!ちー達これからこの財布で美味しいもの食べるつもりなのに!」

 

君たち、割と有名なアイドルだったよね?拾ったサイフでご飯はどうかと思うな…

「あーうん、その事なんだけどさ。それ、僕のサイフなんだ」

「東さんの?」

「へー。てんちょーさん、お金持ちー」

「それ本当?何か証拠でもあるの?」

 

地和ちゃんに指摘される。証拠か。なにか……あぁ、あれがあったな

「そのサイフの中に、君たちの知らない硬貨があるはずだよ」

「どれどれー、あ、ホントだ。なによこれ?」

 

地和ちゃんは手にしたコインを不思議そうに見ていた。馴染みのないものだろうな

「それは僕の国のお金だ。記念に入れといたんだ」

「ふーん。って事は、これ本当に東のなのね」

そう言って地和ちゃんはしぶしぶサイフを返してくれた。持ってて良かった日本円

「あ、でもー、拾ったんだからー、お礼くらいあってもいいよねー」

「それいいわね!なにか奢りなさいよ!」

 

ふむ、確かにお礼はしなくてはいけないよな

「あぁ。それくらいは構わないよ」

「すいません東さん」

「はは、いいって」

まぁ、サイフの中身が無くなるよりは、マシだろう

 

っと思っていた時期が、僕にもありました…

「なにここ?なんでこんなに高いの?」

やってきたのは、許昌でも指折りの高級飯店。確かに美味いが、値段がうちの倍している。デザート一品がどうしてこんなに高い…

「す、すいません東さん」

しっかり者の末っ子、人和ちゃんは流石に少し気にしているようだった

「あ、あぁ、いいよいいよ。気にしないで」

今月の小遣い、今日中に無くなりそうだな。まだ、今月も始まったばかりなのに…

「美味しかったねー。お姉ちゃん、大満足ー」

「サイフ拾って良かったわぁ」

「今日は本当にありがとうございます」

「あぁ、いいよ。こっちもありがとうね」

張三姉妹はご満悦のようで、すこぶる上機嫌になって帰っていった。一方の僕は、朝に比べて軽くなったサイフを見て、少し泣きそうになっていた…

†††††

 

 

「今日はダメだ!早くうちに帰ろう!」

流石にここまで不幸が続くと怖い。今日は家でおとなしく…

「あれ、店長はんやん。こないなとこで何してんの?」

「ん?」

声のする方を見ると、そこには李典こと真桜ちゃんがいた。実は真桜ちゃん、うちのブラックリストの一人で、ご飯を食べないでうちにある機材ばかり見ているので、月一入店に制約を設けた。真桜ちゃんは技術者だからな、未来の物に興味があるのだろう

「お!ちょうどよかったわ。ちょっと店長はんの力貸してくれへん?」

「なにかあったのかい?」

「実はな、うちの螺旋槍、こないだの戦闘でダメにしてもうてん。ほんで直そう思てんねんけど、どうせなら追加で何か機能増やそう思てんのさ。でも、なかなかえぇのが思いつかんくてなぁ。店長はんの知恵借りたいんよ」

正直、帰りたい。何か嫌な予感しかしないからな。だが…

「あぁ。別に構わないよ」

なんて言ってしまった…アホだろ僕、お人好しにも程がある…

「ほんまか?いやぁ助かるわぁ。ほな、早速行こかー!」

そして僕はそのまま城の工房に向かった。その道中、暴れ馬に引かれそうになった…

「なんや店長はん、今日はツイてないみたいやね。ささ、着いたでー。早速やろかー!」

工房は鉄や油の匂いで満ちていた。テーブルの上には巨大なドリルの槍、螺旋槍が置いてあり、見たところ修復は終わったようだった

「真桜ちゃんは、螺旋槍にどんな機能を追加したいんだい?」

「なんやこう、一撃必殺!みたいな感じの欲しいんよなぁ。螺旋槍はデカイで、大振りになってまうし、開幕で敵さんビビらしたいんさ」

「なるほど、一撃必殺ねぇ」

今ある技術じゃ、不可能だな。螺旋槍にとらわれないのであれば、火薬もあるし爆弾でも作れるんだが…

「ほんでな、うちとしてはコレを使いたいんよ」

そう言って真桜ちゃんは黒い球体を持ってきた

「それは?」

「これな、こうやって火ぃつけて…」

「あ、やっぱりちょっと待っ

チュドーン!

その黒い球体は火をつけると、程なくして爆発した。

そんな気はしていた。どこからどう見ても、あれは爆弾にしか見えなかったのだから…

「いやぁ、ギャグ補正なかったら即死やったね」

「むしろ何故生きている…」

そしてこれは日常茶飯事なのか。あれだけの爆発でも、兵士は見向きもしなかった…

「いやぁ、今日はホンマありがとうな。おかげでええもん、できそうやわ」

「あぁ…また…うちに食べにおいで…」

その後真桜ちゃんは、幾度となく爆発を繰り返し、ようやく答えを得たようだった。おかげでこちらはボロボロだが…

「帰ろう…」

もう夕方かぁ。なんか、あっという間だなぁ…

ズドーン!

空を眺め歩いていたら、再び落とし穴に落ちてしまった…

「…」

「いえーい!大成功やなー!」

「張遼将軍、マジかっけー!」

「どれどれ、お!零士やーん!こりゃ大物が落ちてくれたでー!」

「うっ…ぐすっ…」

「え?ちょ、なに泣いてんの零士。え?え?これウチのせい?」

今年で27だけど、久しぶりに涙が出ました…

†††††

 

 

「…ということがありました…その後もまだまだあって…ホモに囲まれたり…」

「も、もういい!もういいから!な?」

家に着いてから、今日あったことを皆に話すと、全部を語る前に止められてしまった。

まだまだあったのに…

「詠ちゃん、もしかして…」

「あーうん。やっぱそうよね」

「なんだ月に詠。この不幸に心当たりがあるのか?」

「うん。その、僕ってさ、不幸を溜め込んじゃう体質みたいで、月に一度、不幸になる日があるのよ」

「そうなのか?」

「はい。それで、それの厄介なところは、詠ちゃんが不幸になるんじゃなくて、周りを不幸にしちゃうんですよ」

「まさか…」

「どういうわけか、東がその不幸を全部受け止めたんだと思う。他の人には影響ないみたいだし」

「その不幸って、一日だけ?」

「今まではそうだったけど、それは月一に発散させてるからであって。しばらく不幸の日がなかったから、もしかしたら数日…」

「…」

 

あ、やばい、また涙が…

「だ、大丈夫ですよ!きっと、多分、おそらく…」

「いい年したオッサンが、ガチで泣くほどの不幸って…」

「あー、なんかごめんね」

「これ、華佗に言えば治るかな…」

そんな僕の願いは虚しく、不幸は一週間続きました…

 

 

 


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