真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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悠里編其三

 

 

 

咲夜視点

私が悠里を見つけたのは、街の外だった。雨空の中、一人佇む悠里と、そのそばに男が倒れていた。よく見ると、男の体には剣が刺さっていた

「あいつ、やったんだな」

悠里は成し遂げたようだ。心配していたが、どうやら無事に…

「!?」

すると突然、男がゆっくり起き上がった。男の心臓にはしっかり剣が刺さっているのに…

「クッ!ウソだろおい!?」

私は考えるより先に走り出した。見れば悠里は男が立ち上がった事に気づいていないようだ。そして男は剣を引き抜き、やがて…

キィンッ

「あぁ?」

「はぁはぁ、間に合った」

私は悠里を抱え、ナイフで剣を受け止めた。流石に危なかったな。それにこいつの攻撃、かなり重い

「おい悠里!無事か?」

「咲夜、姉さん?」

私はそのまま悠里を連れ、後ろに下がった

「なんだお前」

殺人鬼の心臓から勢いよく血が吹き出す。そしてその傷口がみるみる塞がっていった

「なるほど。確かにこいつは魔的だ。悠里、お前あんな化け物よく相手に出来たな」

「あはは…私だって…強いんですよ…」

 

悠里は力なく笑う。こいつ、傷は見当たらないがかなり消耗している

「咲夜!悠里ちゃん!」

「悠里!」

零士と大河さんが叫びながら走ってきた。大河さんは悠里を抱え、零士は敵を睨みながらこちらへきた

「無事か?」

 

零士が問いかける。手には銃を握りしめていた

「まぁな。悠里も目立った外傷はない。それよりも、今回の件は張譲が絡んでいるらしい」

「!!なるほど、太平要術か…蘇りもあながち嘘じゃないみたいだ」

 

その様子だと、李儒さんとは会えなかったみたいだな

「あぁ?ずいぶん増えたな。中には俺を殺した奴までいるじゃねぇか」

殺人鬼は首を回し、体をほぐすように動き始めた

 

「本当に生きていやがった…チッ、もう一度あの世へ送ってやる」

 

大河さんは殺気をむき出しにしていた。こんな大河さん、初めて見る…

「大河さんは悠里ちゃんを見てやってくれ。僕と咲夜で抑える」

「だが!」

「黙って見てな!」

私は突撃し、ナイフを振るっていく。デカイ獲物を持っているんだ。小回しがきかないだろ。そら、その腕貰うぜ

ガキンッ!

「な!?」

完全に腕に入ったはずだった。だが、切り落とせなかった。奴の腕、鉄みたいに硬い!

「なんだ?それで終わりか?」

「チッ!」

殺人鬼は巨大な肉切り包丁を振り下ろす。私はこれを躱し、後退した

「おい零士!ああいうのはお前の仕事だろ。なんとかしろ!」

私は零士を見て怒鳴りつける。一方の零士は既に魔術の準備をしていた

「承知!」

零士は手に力を溜め、やがて巨大な火の球が出来上がっていく

「燃えろ!」

零士はその火炎弾を殺人鬼にぶつける。すると爆発が起こり、辺りは燃えていた。だが…

「なんだそれ?妙な技使うじゃねぇか」

殺人鬼は燃えていることを気にする様子もなく、立っていた

「久々に魔術らしい魔術を使ったとは言え、火葬場並みの炎だったはずなんだけどなぁ」

零士は少し落ち込んでいる様子だった。こいつでも無理なのか?

「チッ、仕方ない。零士!50秒時間を稼げ。私がなんとかする」

「……50秒だね?やってみるよ」

そう言って零士は刀と銃を出した

「おっと、咲夜!」

零士からナイフを手渡される。だが、今まで使っていたものとは明らかに違う。不思議な力を感じる

「つ、疲れるなぁ…それは以前龍を倒した時に剥ぎ取った素材を元に作ったナイフだ。多分、龍の力が宿ってる」

「へぇ、悪くないな」

手渡されたナイフは軽く、不思議と手に馴染んでいた。さて、新しい武器も手に入ったし、私も準備に取り掛かるか

†††††

 

 

零士視点

鋼鉄のような硬さ、そして炎をものともしない肉体。いよいよもって、人間じゃなくなっているな

「フッ!」

刀による一閃を決める。しかし、切れていない。正確には擦り傷のようなものはできているが、今の一撃は真っ二つにするくらいでやったつもりだ。もっと深く切れてもらわなければ困る

「いいぜぇお前!いい感じに化け物じゃねーか!」

 

殺人鬼は歪んだ笑みを見せる。こいつから発せられる気配はどす黒いものだった

「お前には言われたくないな」

何合もの激しい打ち合いが続く。

こいつ、どんどん強くなっている…手を抜いていたのか?それとも…

「やべぇぜお前!最っ高にキマッちまってんなぁ!」

チッ!戦闘狂が…

「お前、そんなに殺して何がある?」

「あぁ?理由なんざねぇよ!ただ殺して、そして死にてぇだけだ!」

殺人鬼の容赦のない振り下ろしを、寸でのところで受け止める。受け止めた僕の刀にはヒビが入ってしまった。なんて力だ…

「っ!ならなぜ軍に入らない?」

 

僕は何とか押し返し、刀をいったん消し、新しい剣を現出させる。今度は硬度を高めた銅剣だ

「俺は元軍人よぉ。だがな、あそこはダメだ。縛られるのは性に合わん!そんなある日よぉ、気づいちまったんだ。軍人も、賊も、やってることはただの人殺しだってなぁ」

「だからと言って、罪のない人間を殺す必要がどこにある!」

「ねぇなぁ、どこにも。罪があろうがなかろうが、ただ殺してぇだけなんだからよ。所詮は大量殺人。英雄も殺人鬼も変わらねぇ。なら、好きなようにヤらせてくれや!」

「狂っている…」

快楽殺人者が…大河さんの言う通り、こいつはここで殺さなければならない。こいつは、危険だ

「東!手を貸す!」

そう言って大河さんは氣を凝縮した正拳突きを殺人鬼に決める。それを受けた殺人鬼は大きく吹き飛ばされた

「ッ!なんて硬さだ」

 

大河さんは拳を痛そうに抑えていた。それでも、拳で吹っ飛ばすなんて、さすがは曹仁だ

「お父さん!東おじさん!あたしも手伝います!」

悠里ちゃんが青い顔をしながらも、手にした鉄棍を力強く握りしめ、こちらに駆け寄ってきた

 

「悠里ちゃん!大河さんも!大丈夫なんですか?」

「平気だ!こちとらまだ現役よ!」

「あたしも、もう守られるだけの存在じゃない!」

僕もまだまだ本気じゃなかったんだけどなぁ。まぁいい。それなら…

「悠里ちゃん、これを使うといい」

僕は本日二個目の龍の素材で成る鉄棍を出現させる。一日二個が限界だな。これ以上は僕の生命力にかかわってくる

「凄いこれ。不思議と力が湧いてくる…」

悠里ちゃんは新しく手渡された鉄棍を不思議そうにまじまじと見ていた

 

「ふふ、龍素材様々だな。さぁ、咲夜が何かしてくれる前に、倒してしまおう」

「はい!」

「ククッ、ハーハッハーッ!!いいぜテメェら!まとめてかかって来い!」

なんなんだ、こいつのこの余裕は。まるで、俺は死ぬはずがねぇというような態度だ。まだなにか、カラクリが…

「行くぜ!二人とも合わせろ!」

大河さんは氣を体に纏わせ、殺人鬼に突っ込んでいく。流石、悠里ちゃんの師匠だけはあって、かなり速い

「ヘ!テメェには会いたかったぜぇ。なんたって俺を殺したんだからなぁ!」

「悪いが、もう一度死んでもらうぜ!悠里!!」

殺人鬼が大河さんに意識を集中し始めるのを狙い、悠里ちゃんは殺人鬼の後ろを取る

「ハァァァッ!」

悠里ちゃんの気合いの入った一撃が入る。それを食らった殺人鬼はよろめき、前に倒れそうになる。だが、目の前には大河さんが拳を構え待ち構えていた

「東!!」

大河さんが叫び、殺人鬼を空中に打ち上げた。僕はその隙を逃さず、接敵し…

「…フッ!!」

今度は氣でコーティングして剣の一撃を食らわせる。殺人鬼はとっさに腕でガードするも、鉄の刃は殺人鬼の腕を切り落とした

「グァァッ!!」

僕は着地し、殺人鬼を観察する。腕からは大量の血液が流れ出ていた

「さすが、東おじさんです…」

「かー!なんて硬さだ!手が痺れやがる!」

二人とも、先程の攻撃で手を麻痺していた。打撃系では、あの硬さは酷だったのだろう

「クッ!まさか切られるたぁなぁ…」

殺人鬼は切られた腕を拾い、それを…

「ふぅ…ハハ!ヤベェな俺!まさにバケモンじゃねーか!!」

「そ、そんな…腕が…」

「チッ!なんなんだあいつは!」

信じられない事に、切り落としたはずの腕が繋がってしまった

「お前は…」

「さぁ、仕切り直しと行こうぜ!」

「チッ!」

僕は武器を構え、大河さんと悠里ちゃんを守るように立つ。大河さんはまだ拳を抑え、悠里ちゃんは恐怖から動けそうになかった。これは、出し惜しみしてる場合じゃないな…

やがて殺人鬼が武器を構え、こちらに突っ込もうとすると…

「悪い、待たせたな」

咲夜が、殺人鬼に相対した

「……いけるのかい?」

 

僕が聞くと、咲夜は目を伏せ、少し笑って見せる

「あぁ、何も問題はない。しっかり視えている」

みえている?一体何が…

「いいねぇテメェのその殺気。最高に研ぎ澄まされてんじゃねぇか!」

殺人鬼は咲夜に突進し、肉切り包丁を振りかざす。咲夜はそれをしっかり見極め、紙一重のところで躱していき、そして…

「…」

殺人鬼の攻撃を躱した瞬間、軽くナイフを振り上げ、いとも簡単に片腕を切り落とした

「なに!?」

これにはさすがの殺人鬼も驚き、一旦後退する。あんなに硬かった殺人鬼の体を、水を掻き分けるかのように咲夜は切ってみせた。一体、なにをしたんだ?

「テメェ…」

 

殺人鬼は切り落とされた片腕を抑え咲夜を睨んでいる

「なにビビってやがる?お前の腕を切り落としただけじゃねぇか。ほら、もう一度くっ付けてみせろよ。待っててやるぜ」

「クッ!舐めんなぁ!!」

殺人鬼は再び腕をくっ付け、咲夜に攻撃を仕掛ける。だが今度は、その攻撃を仕掛ける前に、咲夜が殺人鬼の両腕を切り落としてみせた

「チッ!なんなんだテメェは!」

殺人鬼は両腕から血を噴き出させ吠えた。さすがの殺人鬼も、戸惑っているようだった

 

「私は昔から、目の良さには自信があってな。零士と訓練してからは、さらに良く視えるようになったよ。それでな、氣と魔術で能力向上が出来るんなら、視力の向上もできないかって試していたんだ。結果は成功。かなり良く視えるようになったぜ。なんたって、モノの脆い部分が線になって視えるようになったんだからな」

なんだと?

「それでな、その線の通りに切っていくと、いとも簡単に切れちまうんだ。どんなに硬かろうがな」

まさか、“直死の魔眼”?いや、あり得ない。あれは魔術や氣で体得できるようなものじゃない。それに、あれで切られたモノは二度と再生しない。殺人鬼は腕をくっ付けていたから、そのセオリーから外れてしまう

「私はな、私の大切な友達や家族を傷つける奴が許せないんだよ。それが化物だろうが、幽霊だろうが関係ない。もし、傷つける奴がいるんなら、神様だって殺してみせる!」

そして咲夜は走り、殺人鬼に肉薄する。殺人鬼はこれに対応するも、その攻撃は空を切り、腕を、脚を、首を切られていき、文字通りバラバラにされた

「ふぅ…」

一瞬の出来事だった。あんなに厄介だった殺人鬼が、いとも簡単に殺された

だが…

「アアアァァァァ!!!」

「!?おいおい、マジかよ!?なんでまだ生きてやがる!?」

殺人鬼は首だけになり、なおも生きていた

「クソがぁぁぁ!!テメェら、ぶっ殺してやる!!」

そしてバラバラにされた体が、徐々にくっ付こうとしていた。こいつ、まだ…

「おい零士!どうなってやがる!」

圧倒していたとは言え、これには咲夜も焦る。何か、見落としが…

「………まさか、武器!!」

張譲が持ち出したのは、殺人鬼が使ったとされる妖刀、つまりはあの肉切り包丁だ。モノには全て、魂が宿っているとされる。それがかつての殺人鬼の魂も宿っていたとして、それをもし張譲がモノに宿った魂を具現化したというのなら…

「武器だ!武器を壊せ!」

「了解!」

「姉さん!」

僕が叫ぶや否や、悠里ちゃんは既に肉切り包丁を拾い、それを持って咲夜の元に走って行った。咲夜はそれを確認すると、ナイフで傷を入れていく。すると肉切り包丁は豆腐のように切り崩されていった。そして…

「グォォアァァァ…」

殺人鬼は雄叫びをあげ、消滅していった

「今度こそ、やった…」

「はぁ…はぁ…終わったな…」

殺人鬼が消滅したのを確認すると、二人は緊張の糸が切れたのか、突然倒れてしまった

「咲夜!」

「悠里!」

僕と大河さんはそれぞれ抱きかかえ、『晋』に連れて行く事にした

 

 

 

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