真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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今回はモブ視点になります


日常編終幕
とあるゴロツキの挑戦


 

 

 

「へっへっへ、今日からこの許昌の裏は俺が占めてやるぜ!」

「さすがアニキっす!どこまでも付いて行くっす!」

「そこに痺れる、憧れるんだな」

俺様は、ちょっとしたワルってやつだ。小せぇ村にゃあ収まらねぇ程の器だったんで、村を飛び出して許昌にやって来た。今日から俺様の伝説が始まるんだ!

†††††

 

 

 

ラウンド1

「アニキー、腹減ったんだな。あそこの饅頭屋に行きたいんだな」

許昌に入って早々、一緒にこの街へとやって来たデクが文句を垂れてきた。だが確かに、こいつの言う通り腹は減ってやがる

 

「仕方ねぇなぁ。金はねぇが、んなもんワルにゃあ関係ねぇか。じゃあ行くぞテメェら!」

俺らはすぐそばにあった饅頭屋に入っていく。そこにゃあ冴えないオッさんと、べらぼうな巨乳美人がいた

「いらっしゃい、何にしますか?」

 

店内に入ると、店主と思しき冴えないオッサンが話しかけてきた

「とりあえずオススメを一人二個ずつくれ!」

「まいど!」

店主が注文を取ると、程なくしていい匂いの饅頭がきた。だが俺様は饅頭よりも、饅頭を持ってきた女の二つの超特大饅頭に釘付けだった

「あいよ!饅頭六個お待ちね!ゆっくり食べてってちょうだい!」

 

でけぇ!

「綾乃さーん、いつものー!」

「あら咲夜ちゃんいらっしゃい!ちょいと待ってな!」

巨乳美人は他の客に呼ばれさっさと行ってしまった。今入ってきた女もかなりべっぴんだな。さすが都、ヤベェぜ

「これ、美味いんだな」

デクは色気より食い気かよ

 

「アニキ!女将さん、マジいい女っすね!口説きやすか?」

さすがチビ、こいつはわかってんな!

 

「ったりめぇだろ!あの巨乳を弄びたいぜ!」

俺様は意を決し、奥さんに話しかける事にした。奥さんはさっき入ってきた女と話していた

「おい、奥さん!俺様の女になれ!」

「お?綾乃さん、ナンパされてるじゃないか」

「おやおや?私もまだまだ捨てたもんじゃないねぇ」

そう言って奥さんは豪快に笑った。そして笑顔のまま立ち上がり…

「気持ちは嬉しいがねぇ、これでも人妻なんだよ。それにねぇ、私ゃ私より強い男じゃないとなびかないのさ!わかったら饅頭食ってとっとと帰りな小僧!」

「んだとぉ?」

このアマ、こっちがせっかく声かけたってのに

「チビ、デク、こい!やっちまうぞ!」

「喧嘩だ喧嘩だ!」

「食後の運動なんだな」

俺様達三人は奥さんを囲んだ

「あむあむ…ごくん。手伝おうか?」

「はっはっは!こんなガキンチョにやられるわけないじゃないか!咲夜ちゃんは大人しく饅頭食ってな!」

 

大の男三人で囲んでるっていうのに、この女はそんな事些細な事だと言わんばかりの態度だった。すぐそこで饅頭食ってた見慣れない服着た女も、でけぇ態度だな。後でシメテやる

「舐めやがって…死ねー!」

「やれやれ」

気がついたら、俺様達は地面に寝転がり、空を見上げていた。いったい、何が起こったんだ?

「おや?気がついたかい?」

目を覚ますと、饅頭屋の店主がこちらの顔を覗きこんでいた。気がついただと?俺様は気を失ってたってのか!?

「チッ、あのアマ…」

俺様が立ち上がろうとすると、店主が近づいてきた。そして底冷えするような声で耳打ちしてきた

「俺の女房を、あんな汚い目で見るなよ。皮、剥ぐぞ」

「ヒィッ!」

「じゃ、気をつけてお帰りください。お代は結構ですので」

そう言って店主は帰って行った。な、なんなんだよアイツのあの気配!普通じゃねぇ!

†††††

 

 

 

ラウンド2

「俺たちに足りねぇのは兵隊だ!まずは仲間集めるぞ!」

「うっす!」

「わかったんだな」

そして俺様は裏路地に入っていく。そこには俺様と何ら変わりないゴロツキがうじゃうじゃいた。そして声をかえ、叩きのめして行き、服従させる事に成功する

「いい感じに増えてきたな。おっ!」

前方に女二人発見!黒髪で活発そうな子と、その母親らしき女。どっちも美人だ!

「そこの奥さん!」

俺様は声をかける。狙いはもちろん奥さんの方だ!

「およ?お母さん、ナンパされてるよ?」

「あらあら、私もまだ捨てたものではありませんね」

なんかさっきも聞いた台詞だな

「じょ、徐晃さん!」

奥さんの顔を見るや否や、先ほどかき集めたゴロツキが頭を下げ始めた

「あらあら、皆さんお集まりで」

「いえ!俺たちはこれで!悪いなあんた!俺らは帰らせてもらうぜ!」

 

そう言って、せっかく集めた兵隊は一目散に逃げて行った

「お、おい!」

なんだあいつら?全員が全員、同じ台詞言いやがって

「それで、あなたはどちら様ですか?」

「おっと、俺様はちょっとしたワルよ!お前、俺様の女になれ!」

「あらあら、困りましたわね。私には夫が…」

「へ!そんな男より俺のほうが…」

がしっ

「誰だ?俺の女に手を出そうとする、クソ野郎は」

気づけば、俺様は頭を鷲掴みにされ、持ち上げられた。そして、世界が反転した

「あらあら、大河さん。別に良かったですのに」

「何言ってやがる。女房を助けちゃいけなかったのか?」

「大河さん…」

「あつ!なんか急に気温が…でも、お母さんも元軍人であたしより強いんだから、別にあれくらい大丈夫だと思うけどなぁ。あ!あたしそろそろ『晋』に戻らなきゃ!それじゃあねお父さん、お母さん!」

それが、俺様が聞いた最後の言葉だった…

†††††

 

 

 

ラウンド3

「って!まだ死んでねぇ!」

「だ、大丈夫ですかアニキ?」

「おかしくなったんだな」

気がつけば、もう夜だった

「アニキー、腹減ったんだな」

「またかよお前は」

「いやいや、アニキは気ぃ失ってたからじゃないすか」

「だーもーわかったわかった。じゃあ飯にするか」

俺様達はしばらく歩く。もうかなり遅い時間だからだろう、どこもやっていなかった。だが、しばらく歩くと一店舗だけ明かりが点いていた。ん?なんだあれ?お食事処『晋』?しゃあねぇ、ここにするか

「邪魔すんぜぇ」

店に入ると、可愛い女の子がやってきた。中はかなり賑わっている。きっと美味いのだろう。楽しみだ。だけど…

「おや?どこかで見た顔だね」

 

饅頭屋の巨乳奥さん…

「いやいや、綾乃さんが叩きのめした奴ですよ」

饅頭屋にいた美人の客…

 

「あら、綾乃さんもですか?」

路地裏で口説こうとした女…

 

「というと、そちらも?」

やばい雰囲気の饅頭屋の店主…

 

「あぁ。俺の女房に手ぇ出そうとしたんで、頭から叩きつけたんだ」

路地裏で俺の頭を掴んで地面に叩きつけた男…

 

「今さらだけど、あれ死んでもおかしくない一撃だよね」

 

あー、やばい、帰りたい…なんで今日会った人たちが勢ぞろいなんでしょう…

「あの、お客様、どうかなさいましたか?」

目の前には小さな女の子。く、クソッ!

「お前ら動くなー!この子がどうなってもいいのかー!」

俺は少女を人質にとり、逃げようとした

「あ、あの…離してくれた方が…」

 

少女が心配しているような様子で言ってくれた。そんな言葉に、俺は少し罪悪感を抱いてしまった

「許せ嬢ちゃん…大人しくしてりゃ、無事に帰してやるから…」

この場から離脱出来たら、ちゃんと安全無事に返してあげよう。なんなら迷惑料も払ってあげよう

 

「アニキ、突然どうしたんですか?」

「やっぱりおかしくなったんだな」

「うるせぇ!テメェら!ずらかる

ヒュッ ストーン

「……え?」

俺が扉を出ようと振り返ったところ、俺の目の前を短刀が横切った…

「おい、月を離せ。そしたら命まではとらん。約束しよう。私は何もしない」

昼間饅頭屋にいた女がもう一本短刀をちらつかせて言ってきた。

何もしない?何もしないだと!?テメェらさんざん痛めつけてくれたじゃねぇか!

 

「な、何言ってやがる!これが

ヒュッ ストーン

俺が人質を見せつけようとすると、今度は短刀が俺の頬を掠めて壁に刺さった。掠った頬からはツーっと血が流れてくる…

 

「次はないぞ?」

「ヒィッ!」

女の鋭く冷たい視線に耐えきれず、俺はたまらず少女を離す。すると少女は小走りで奥に行ってしまった

「おーよしよし、怖かったねー月」

「詠ちゃん、あの人大丈夫かな?」

「………無理なんじゃない?」

俺は少女が奥で保護されたことを確認し、短刀を投げてくる女を睨みつける

 

「おい、本当に見逃してくれるんだろうな?」

「…私は何もしないさ」

 

女は短刀を置いて頷いた。どうやら本当に何もしないらしい

「よ、よし!テメェら!帰るぞ!」

俺様は店を出た。するとそこには、赤毛の女の子がいた

「あぁ?なんだテメぶへらっ!」

女の子は一瞬で視界から消え、そして俺は空を見上げていた。空を見上げて改めて気づいた。少女は俺の顎を思い切り殴り飛ばしたんだ。うん、超いてぇ…

「月をいじめたやつ、許さない」

あぁ、都怖ぇなぁ。おら、小さな村くらいの器なんだなー

凪「お疲れ様です、恋さん!」

恋「…ん」

咲夜「バカな奴だよな。気が動転して、人質取るなんて。何もしなきゃ普通に帰したのに」

零士「はは、よっぽど酷い目にあったんだろうねー」

秋蘭「いったい、何がしたかったんだろうな」

華琳「おおかた、田舎から出てきて、のし上がろうとして失敗したんじゃない?運が悪かったのよ、こいつらは。まさか自分達が、許昌の三大勢力に喧嘩売っていたなんて、知らなかったでしょうし」

これもまた『晋』の、許昌の平和な日常の一幕…

 


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