真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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咲夜さん

 

 

 

咲夜さんとお酒:零士視点

四年前

それは、なんて事ない宴会になるはずだった。ただその時のテンションが、咲夜も含め皆妙に高かっただけ。だから僕は、後先考えず、酒を飲んでみたいという咲ちゃんと蓮華ちゃんの願いを聞き、酒を渡したんだ。それが、悪夢の始まりだった…

「おぉ!なかなか良い飲みっぷりではないか!ほれ咲夜!もっと飲むと良い!」

「あら?蓮華も意外とやるじゃない!ほら、ついであげるわよ」

咲ちゃんと蓮華ちゃんは祭さんと雪蓮ちゃんに注がれた酒を静かに飲み干していく。僕はその様子を見つつ、孫堅こと炎蓮さんと飲んでいた

「へぇ、あの子たち、案外いけるクチなんだねぇ」

 

炎蓮さんは咲ちゃんと蓮華ちゃんの飲みっぷりを見て関心していた

「僕も意外です。今まで酒を飲ませる機会なんてありませんでしたからね」

 

ぶっちゃけ、この国の飲酒年齢とか分からなかったし。実際はかなり緩いらしい。飲みたきゃ子どもから飲め。自己責任と言うやつらしい

「だけど、大丈夫かい?初めてなのに、結構な量飲ませちゃってるけど」

「はは、何事も経験ですよ。一度くらい、酒に飲まれる経験もしておけば、後々考えて飲むようになるでしょう」

「その口ぶり、一度失敗してるね?」

「はは、お恥ずかしながら。それに比べ、呉の民は酒が強そうだ。あなたも含め、祭さんに雪蓮ちゃんも冥琳ちゃんも、ケロッとしてますね」

 

僕はそこまで強い方ではないが、炎蓮さんは対照的にめちゃくちゃな量を飲んでいる。これが江東の虎か

「当ったり前よ!呉の女は戦と酒が好きなのさ!もちろん、いい男も放っておかないけどねぇ」

炎蓮さんはぺロっと自身の唇を舐め、妖艶な雰囲気を纏わせて誘惑してくる。その仕草に、僕は少し熱くなってしまった

 

「ふふ、本気にしますよ?」

そう、この時まではよかったのだ。気持ちよく酔っており、蓮鏡さんとちょっといい雰囲気になって。僕だって男だ。蓮鏡さんの誘惑に乗ってみたいと思い始めていた。

だけど…

「おい零士…」

咲夜が酒の入った容器を手に、こちらにやって来たのだ。そして…

「お前、人妻に誘惑されてんじゃねー!!」

ガッシャーン!!

その容器で、頭を思いっきり殴られたのだ。その衝撃で容器は割れ、僕は頭から酒を被ってしまった

「キャハハハハ!!いいわね咲夜!私にもやらせなさいよ!」

ガッシャーン!!

間をおかず、蓮華ちゃんから容赦のない二撃目が飛んできた。なんというか、理不尽だった…

「アーハッハッハ!!なんてザマだ零士!!どうしたんだ?頭から酒を被って!」

「頭のどこから酒を飲むのよ!」

2人ともめちゃくちゃご機嫌だった。というか、絡み酒かよ…

「あちゃー、蓮華も咲夜も、あんな感じになるんだー」

「ふむ、これはなかなか興味深い。普段はお堅い蓮華様が乱れておる」

「東殿…頑張ってください」

「はっはっは!なるほどなるほど!これは面白い!!」

四人も酒が入っており、どうでもいいのか、笑って傍観者になりつつあった。

クッ、まさか咲ちゃんにこんな欠点があったなんて

「ここは、戦術的撤退を…」

がしっ

「逃がすわけないだろ?」

僕は態勢を立て直すため、いったん距離を取ろうとするが、それは叶わず咲ちゃんに捕まってしまった

「っ!?なんて力だ!」

酒のせいでリミッターが外れているのか?咲ちゃんは普段の倍の力でつかんできた

「蓮華ぁ?ちょっと見てなよ。大の大人を一瞬で地面に組伏してやるぜ!」

「やだ咲夜…あのお母様と互角に戦った男を組伏すなんて…そこに痺れる、憧れちゃうわ!!」

組伏す?合気か?だがその技は僕が教えたんだぞ?返し方くらいわかって…

「ふぅん!!」

ドシーン

「………え?」

咲夜から技をかけられ、気づけば僕は咲夜に乗られていた。

あれ?おっかしいなぁ、返す暇すらないくらい速かったんだけど…

「おぉ~、やるではないか咲夜!」

「すごいわ咲夜!一瞬過ぎて目に映らなかったわ!」

 

祭さんと雪蓮ちゃんが感服したといった目で見ていた。いや、見てないで助けて!

「咲夜すごーい!!私も乗る―!!」

「グハッ!」

せ、背中に、二人分の体重が…しかもなんて勢いで…

「さぁ、まだまだ始まったばかりだぜ…」

 

 

「アァーーーーー!!!」

はぁ…はぁ…ゆ、夢か。よかった…

「はぁ…はぁ…あれは確か四年前の呉に居た時の宴会の記憶…トラウマになりつつあるな…」

確かあの後、咲ちゃんと蓮華ちゃんに乗られてキャメルクラッチをくらい、筋肉バ○ターをくらい、無理やり飲まされ、無理やり脱がされ…

「………だめだ、それ以上思い出してはいけない…」

あの日以来、僕は咲夜に酒を飲ませることをやめた。だがそれ以降も、何かと咲夜は酒を飲んでおり、だいたい被害にあっているのは言うまでもなかった…

†††††

 

 

 

咲夜さんと華琳さん:華琳視点

「ふふ、綺麗よ咲夜」

寝台の上には、少し服を着崩し、熱っぽい目は少し潤んで、私より少し大きな体を震わせていた咲夜がいた

 

「華琳、私…初めてなんだ。だからその、優しくしてくれないか…?」

咲夜は消え入りそうな声でつぶやいた。その声音に、私の体は熱くなり、鼓動が高鳴る

 

「意外ね。いつも強気なあなたが、閨ではこんなにもしおらしくなるなんて」

「私だって女だ。不安がある。だけど華琳なら…あっ…んっ…」

「可愛いさえずりね。もっと鳴いて、聞かせてちょうだい。咲夜…」

「華琳…」

「…という夢を見たのだけれど、さっそく今夜どうかしら?」

 

お食事処『晋』にて、今日見た夢を咲夜に言ってみると、咲夜にうんざりした目で睨まれてしまった

「却下だ。て言うか、夢の中のそいつは誰だよ。お前の中の私は受けかよ」

当たり前じゃない。私が受けなんて考えられないわ

†††††

 

 

 

咲夜さんと華琳さん:咲夜視点

 

 

 

「はは、どうしたんだ華琳?いつも強気なお前らしくないな。こんなに濡らしやがって」

 

寝台の上には、だらしない顔で、下半身を濡らしながらだらしなく横たわっている華琳がいた

「さく…や…」

華琳は目で私に何かを訴えているようだ。その目に、私の体が熱くなり、鼓動が高鳴る

 

「ずっとこうされたいって望んでたんだろ?ほら、どうしてほしいかちゃんと言ってみろよ」

「さくや…私の…を……」

「あぁ?なんだって?聞こえないなぁ」

「うぅ………」

「…帰るぞ?」

「待って!!わ、私の、私の事を、めちゃくちゃに犯してください!!」

「ふふ、よく言えました。褒美だ、華琳…」

「咲夜…さま…」

「…っていう夢を見たんだけど、私が攻めでいいってんなら、考えてやってもいいぜ」

 

営業中にて、華琳が店にやって来たので、ちょうど今日見た夢の内容を華琳に話してみると、華琳にうんざりした目で睨まれてしまった

「却下よ!ていうか、夢の中のそれは誰よ。なにが咲夜様よ。あなた、そんな願望があったのね」

「それはお前、あまり人の事言えないだろ」

「君たち二人は、仕事中になんて話をしてるんだ…」

†††††

 

咲夜さんと女性客:零士視点

とある仕事での一日、僕の目の前にはちょっとした集団がいた

 

「し、司馬懿さん!これ、受け取ってください!」

「ん?おぉ、ありがとうな。嬉しいよ」

「はわぁ~…」

 

咲ちゃんは女性客の一人に髪飾りをもらっていた。咲ちゃんはそれを受け取ると、その髪飾りをもらった女性客の頭を撫でていた。その女性客は恍惚とした表情になっていた

「司馬懿さん!私もこれ、作ってきたんです!食べてください!」

 

するとそこへ、今度は別の女性客がやって来た。何か差し入れをもってきたようだ

「へぇ、ごま団子か。今食べていいか?ちょうど腹減っててな」

「はい!」

「どれどれ…もぐもぐ…うん、程よい甘さでいい感じだ!美味いよ。ありがとう」

「美味い…えへへ…」

 

咲ちゃんが差し入れのごま団子を美味しそうに食べると、その差し入れをもってきた女性客はとても嬉しそうにしていた

「司馬懿さん!今度私と、お出かけしませんか?」

 

さらにさらにそこへ、またまた別の女性客が咲ちゃんに話しかけていた。どうやらデートの誘いらしい

「気持ちは嬉しいけど、私の休みはまだ先だぞ?」

「だ、大丈夫です!私、待てますから!」

「そうか。なら今度の休日、迎えに行くよ。それまで待っててくれるか?」

「はい!どれだけでも!」

 

咲ちゃんの提案に、女性客の表情はパァっと明るくなる。とても幸せそうな笑顔だった

「ん?おい君、ほら、クリームついてたぞ?あむ…うん、甘いな」

 

咲ちゃんが厨房に戻ろうとするところで、咲ちゃんは甘味を食べていた女性客の頬についていたクリームを指ですくい、それを舐めとった

「し、司馬懿さん!そんな突然…私どうしたら…」

「はは、君は可愛い反応をするな」

「か、かわ…」

クリームを舐めとられた女性客の顔は真っ赤だったが、不思議と嫌そうではなかった

 

 

そんな様子を、従業員といつものメンツである凪ちゃん、華琳ちゃん、秋蘭ちゃんと眺めていた

「東さんも女性客に人気ですが、咲夜さんも負けず劣らずですよね」

凪ちゃんは咲ちゃんの様子を見て感心していた。

あれ、僕そんなに女性客に人気あると思わないんだけどなぁ

 

「咲夜も、着々と築いているわね」

華琳ちゃんが呟いていた。恐らくハーレム的な意味なのだろうけど、咲夜『も』ってなんだ?

 

「あの子、天然でああいう事しちゃうからなぁ」

「いやいや、東さんがそれを言いますか」

 

「咲夜さんと東さん、そっくりですからね」

 

僕の言葉に悠里ちゃんがツッコミを入れ、月ちゃんが付け足すように言った

「え?僕って普段あんな感じ?」

 

僕、あんなナンパな事してるつもりはないんだけど…

「気づいてなかったの?あんた、結構チャラいわよ」

「恐らく、咲夜に影響を与えたのは東だろうがな」

ウソでしょ?あれが僕の影響?ていうか、咲ちゃんが女性に囲まれているのを見てると…

 

「あぁ?なんだお前ら、そんなかたまって」

 

僕らがかたまっていると、咲ちゃんもやってきた

「いやぁ、姉さんチャラいなぁって」

「私が?……あぁ、さっきの子達か。割とよく来てくれる子達だし、無下にするのも悪いだろ?私としては、当然の事をしたまでだ」

あぁうん、確かにこの発想は僕と一緒だ。一緒だけど、なにもあんなクリーム取って舐めるなんてするかな…

 

「あの子たち、明らかにあなたに気があるわよ」

「だろうな。悪い気はしないな」

「うっわぁ~、なんて清々しい笑顔」

 

流石にこれは…うん、よくないはずだ。あんなナンパみたいな真似、よくないし、見ていて面白くない。こうなったのも僕の責任なんだし、僕が言わないと…

「……さく」

「司馬懿さーん!少しいいですかー?」

 

僕が咲ちゃんの名前を呼ぼうとすると、客の一人の呼び声とかぶってしまった。咲ちゃんはその客の方に向いてしまった

「おう!じゃあなお前ら。また後でな」

……なんで、こんなにも面白くないのだろう。相手は女性じゃないか。別に嫉妬する理由なんて………は?嫉妬?僕は嫉妬しているのか?おいおい、僕は今年27だぞ。なんでそんな学生みたいな…

「ん?東さん、どうしたんですか?」

悠里ちゃんの発言に、僕はハッとする。どうやら考え込んでしまったようだ

 

「い、いや、なんでもないよ?」

 

なんでもない、かぁ…まさかこの年になって、嫉妬しちゃうなんてなぁ…

「……ふふ、二人とも、やきもち妬く辺りも、ほんとそっくりですよね」

 

月ちゃんが微笑みながら何かを言っていたが、僕はそれが聞こえる程、余裕はなかった

 

 

 


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