真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

57 / 63
運命編其二

 

 

 

月視点

桜さんの号令で士気を高めた皆さんは、一丸となって兵馬俑の大群に突撃していきました

「私にできること…」

それは、後方で皆さんの突撃を支援すること。私は狙撃銃を構え、命の無い人形に狙いを定めて…

ダァン!

命中。弾丸は土で出来た人形の頭を砕きます。でも…

「………」

予想通り、人形はなおも進行を止めません。それならばと、次は腕、足と撃ち、行動を制限することにしました

「やった!これなら…」

人形は手足を失い、その場でもがいています。こうやって四肢を封じていけば、制圧することができるみたいです

「ん?あれって…」

皆さんの突撃を見ていると、視界の隅に見慣れない旗と部隊を確認しました。旗にはそれぞれ曹、徐、鄧、郭と書いてあります

「……ふふ、心強いです!」

†††††

 

 

咲夜視点

後方で月の援護射撃を受ける。月は初弾を頭に命中させたが、人形は動きを止めなかった。そして二発、三発と撃ち、手足をもいでいく。人形は動ける選択肢を失い、その場に留まった

「ヒューッ!月ちゃんかっこいいー!」

「あの子、多分僕より射撃の才能あるよ」

「さすが月様だ!」

 

みんなも月の仕事振りに感心していた

「みんな見たか!人形を殺すことはできない!だからああやって手足を奪え!」

「応!!」

 

私が叫び指示してやると、兵士全員が声に出して応えてくれた。こうした、兵士を引き連れての戦場は初めてだが、なかなか悪くないな

「さぁ、もうすぐだ!気、引き締めろ!」

もうすぐ接触するというところで、全軍が武器を構え、氣をギラつかせた。気合い十分、これなら…

「おい!俺らも混ぜろよ!曹仁隊!悠里の突撃支援に当たれ!」

「あらあら、久しぶりの戦場だからかしら、心踊るわ。徐晃隊、恋ちゃんの突撃支援を!」

「はっはっは!気合い入ってんじゃないか!久々に骨のある喧嘩になりそうだ!鄧艾隊、咲夜ちゃんの突撃支援に入んな!」

「皆さん、若いですね。これは俺も、負けられませんね。郭淮隊、華雄さんの突撃援護に行きますよ!」

 

「お、お父さんにお母さん!?それに綾乃さんと店主さんまで!なんで!?」

私達が接敵するところで、大河さん、椎名さん、綾乃さん、それに店主が兵を率いやってきた。そして四人は私達の前を先行する

「せっかくの子の晴れ姿だ!応援してやりてぇっていう親心よ!」

「咲夜ちゃんはあたしらにとっても大切な子だからね!これくらい安いってもんよ!」

「は、ははは!ありがとう!凄く心強いよ!」

やばい!いまだ絶望的な状況だってのに、全然負ける気がしない!

「さぁいくぜテメェら!しっかりついて来い!」

「正面をぶち破るよ!」

ドッカーン!!

開幕は派手に決まった。大河さん、椎名さん、綾乃さん、店主こと郭淮さんを先頭に、人形兵を大きく吹き飛ばしながら進んで行った

「す、凄い……ハ!賈詡隊、これに乗じ左翼に展開!道を作るのよ!」

「李儒隊!こちらは右翼へ!討ち漏らしてはいけません!」

「正面は引き受けよう。郭淮隊、大穴を開けてやれ!」

部隊が展開していき、あちこちで戦闘が始まり、道が開けていった

「よーし!あたし一番遠い北の祭壇に行きますね!」

「…恋はあっち。西の祭壇。あそこに行く」

「む、恋に先を越されたか。あそこに一番強い奴がいたであろうに。では、私は東を受け持とう」

「なら私は南か。何と当たるかな」

 

それぞれが目当ての祭壇のある方に分かれていく。零士はこのまま中央へ行くようだ

「みんな!この一戦、今まで以上に危険だ!だが、皆なら成し遂げると信じている!だから、これが終わったら、また皆で美味しい料理を作って、そして盛大に祝いながら食べよう!」

 

零士の言葉に、みんなが武器を担いで笑い合った。とても、戦場でみるような表情とは思えないな

「いいですねー!あたし、張り切っちゃいますよー!」

「ご飯、楽しみ」

「ふむ、悪くないな。ならさっさと終わらせよう」

「約五千人分の料理か。そっちの方が大変そうだな」

「はは!違いないな。じゃあみんな!武運を!また会おう!」

「応!!」

そして私達はそれぞれ散らばり、祭壇を目指した

†††††

 

詠視点

「行ったわね…みんな!なんとしても、これ以上進めさせないように!ここが崩れたら終わりと思いなさい!」

久々の指揮。それも前線の。サボってたせいかしら、少し緊張している。でも…

「働き始めた頃の接客に比べたら、なんてことないわね!」

僕の仕事は、いかに兵を失わせずにここを死守できるか。咲夜達が仕事を終えるまで耐えることができれば、僕達の勝ちだ

「また、詠殿と共に戦えるとは、光栄ですぞ!」

「僕もよ高順殿。この一戦、何が何でも勝つわよ!」

「私達の夢、月様に平穏な生活を。その実現の為にも、仇なすものは全て討ちます!」

「ありがとうございます。でも、今は私も戦います。そのための技術を、東さんに習いましたから」

そう言って月は狙撃銃で撃ち続ける。その姿は、お世辞でも似合ってるとは言えなかった

「月にこんな物は似合わないけど、今はそうも言ってられないか…月、そこから太平要術の書は狙えるかしら?」

「一応、射程圏内だけど…」

月は狙いを変え、二発ほど撃つ。だけどその表情は晴れやかではない

「やっぱりダメ。とても小さいし、結界が邪魔して書まで届かない」

「そっか。そんな簡単にいくわけないか」

でも、結界さえ解いてしまえば、いけるかもしれないのね

「大丈夫。あいつらなら、絶対にやり遂げる!」

いまだ状況は悪いが、僕はそう確信していた

†††††

 

 

零士視点

「ハァァ!」

ドゴーン!

僕は氣でコーティングしたハンマーをぶん回し、人形を粉砕していく。こういう手合いは、粉々に砕くに限るな

「さて、ラスボスのお出ましかな」

僕は人形を粉砕しつつ、戦場の中心にある祭壇に辿り着く。そこには一人の男が待ち構えていた。男は僕を見るなり、不敵に笑う

「貴方ですか。やはり、そんな気はしていましたよ」

「そりゃ、期待に応えられたようで何より、だ!」

ダァン!

僕はデザートイーグルを出し、張譲の眉間に向け発砲した

キィン!

だが、銃弾はいとも簡単に弾かれた

「いきなり撃ちますか?怖い事をしますね」

「別にこれで殺せると思ってなかったからな」

あれはただの威嚇射撃。当たれば儲け物だったが、そう上手くはいかないか

「まったく、厄介な存在ですよ、イレギュラーというものは。貴方さえ居なければ、今頃この世界は私の物だったでしょうに」

「イレギュラー…ね。お前は、一体誰だ?」

僕が聞くと、張譲は口元を大きく歪ませた。

 

「フフフハハハハ!面白い事を聞きますね。私は紛れもなく張譲ですよ!ただ、三人分の記憶を持ち合わせているだけの!」

「于吉、それに左慈だな?」

「ご名答。そして、持ち合わせているのは記憶だけじゃないぞ!」

「!?」

奴は途端に加速し、僕に向かってボディブローを炸裂させる。僕はこれを咄嗟にガードするも、大きく飛ばされてしまった。チッ、なんて威力だ。氣と魔力、両方でコーティングされているな

「耐えたか。これは左慈の武術、それに太平要術の書の力を加えたものだ。あまり舐めるなよ!消えろイレギュラー!」

張譲は飛び蹴りをし、ローキック、ハイキックと鋭い体術の猛攻をしかけてくる。一撃一撃がとても重く、まるで真剣の一撃をもらっているかのような気分だった

「チッ、口調が変わったと思ったら、面倒くさい!」

奴は確かに張譲なのだろう。だが、それは肉体の話ってだけだ。張譲という一つの肉体に張譲、左慈、そして恐らく于吉という人格がある。感覚としては、三人分の相手をする事になるのか

「どうしたイレギュラー!防戦一方だな」

「ハッ!今回は妙なハンデがない分、全力でいかせてもらうさ!」

僕は拳に氣を凝縮し、左慈の蹴りを見極め、張譲の胸の心臓部に拳を突きつけた。張譲は咄嗟に腕でガードするも、大きく仰け反らすことができた

「ふん、そうこなくてはな」

そういい張譲は上着を脱ぎ出した。そこには文官らしからぬ、見事に鍛え上げられた肉体があらわになった

「ふふ、私は強いですよ。ハァァ!」

「!?」

再び口調が変わったかと思えば、張譲は手に炎を溜め、それをこちらに投げつけた

バァァン

僕は咄嗟に刀を出し、炎をかき消す。だが、それで終わりではなかった

「どんどん行きますよ!」

奴は炎の弾、雷の槍、風の刃と飛ばしてくる。クソ、厄介だな。攻撃手段が多すぎて対応が面倒だ

「所詮は文官、術師と見誤ったな。項羽なんていらなかったんじゃないか?」

 

チッ!一度に全ては防ぎきれないか!?風の刃が腕や足を掠めていき、切り傷が増えていく!

「そうはいきませんよ。今までのケースでは、そうやって私自身の力を使い挑んで敗れた事もありましたからね。今回は大事を取りしっかり準備させていただきましたよ。西には項羽、南は虞美人、北は季布、そして東は龍且と待ち構えています。これを破るには、いささか兵力不足だと思いますよ」

確か西には恋ちゃん、南は咲夜、北が悠里ちゃんで、東が華雄ちゃんだったな

「クックック、兵力不足だと?あまりうちの子を舐めない方がいいぞ?たかが過去の英傑ごときに、『晋』は負けはしない!」

「そうですか。ですが…」

「!?」

ドシュッ

刹那、張譲は視界から消え、目の前に現れた。張譲は最小限の動きで、いつの間にか手にしたナイフで僕を突き刺した

「その余裕が、命取りになりますよ」

張譲の顔からもれる笑みは、邪悪そのものだった

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。