真・恋姫†無双 裏√   作:桐生キラ

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これにて運命編はラストになります


運命編終幕

 

 

 

「さぁ張譲、これで終わりだな…」

ダァン!

僕はリボルバーを、最後の結界に向けて発砲した。そして弾丸は結界にのめり込んだ

「ふ、無駄ですよ!この結界の強度はそこいらの銃弾で破壊出来るほど甘くはない!」

「いつ誰が、そこいらの銃弾を撃ったと言った?」

「なに?」

「いくぞ…解放〈リバレート〉」

パリーン!

「な!結界が!」

結界は、鮮やかな光となり、昇華されていった

「はぁはぁ…はは、綺麗だろう?」

「お前、何をした!?」

張譲は怒り狂い、僕を怒鳴りつけた。なかなかいい顔してるじゃないか。ざまぁみろ

「さっき撃ったのは僕特製の特殊な弾丸でね。あれに撃たれ、残された弾丸を、僕の魔力を消費して破裂させ、術的要因を破壊させるんだ。弾丸自体の魔力消費量も半端なければ、それを破裂させる為の魔力消費もバカみたいにいるから、ここ一番でしか使えないけどね」

僕は息を切れ切れにしながら答える。それを聞いた張譲は憎悪の表情を浮かべるが、すぐに落ち着き取り戻し、笑みを浮かべた

「ふ、ふふははは!では貴方は既に虫の息ということですね?貴方のその状態が何よりの証拠!!」

その通り。僕は力を使い過ぎ、しばらく休まなければ立てそうにもない。これが、解放〈リバレート〉の弱点。だから…

「結界など、太平要術の書があれば何度でも作れる!!貴方の尽力は無に帰るのですよ!」

張譲は太平要術の書に近づき、手に取ろうとする。そこへ…

バシュン!

一発の弾丸が、太平要術の書を貫いた

「ふふ、パーフェクトだ、月ちゃん」

†††††

 

月・詠サイド

「月!あの光!」

「うん!任せて詠ちゃん!」

空に上がる淡い光を確認した私は、スコープを覗き、太平要術の書に狙いを定めます

これは事前に東さんにお願いされていた事でした。曰く「僕が結界を壊したら、その後太平要術の書を撃ってくれるかい?僕の力じゃできそうにないからさ。大丈夫!月ちゃんならきっと出来る」との事です

これが、私のもう一つの役目。太平要術の書を破壊し、皆を、家族を守ること

私は慎重に狙いを定めますが、その手は少しだけ震えてしまいます。もし外せば、皆を危険に晒してしまう。そう思うと、緊張が抜けません

「月、大丈夫よ。月なら出来る。僕も付いててあげるから、だから大丈夫だよ」

詠ちゃんが手を握り、呟いてくれました。その言葉が、詠ちゃんの手の温かさが、先ほどまで震えていた私を落ち着かせてくれます

「うん。ありがとう詠ちゃん。私、皆を守る」

そして私は、狙撃銃の引き金を引き、発射しました

ダァン

弾丸は真っ直ぐ書目掛けて飛び、そして…

「あ、当たった…当たったよ詠ちゃん!!」

「月!!」

私は書を撃ち抜いた喜びのあまり、詠ちゃんに抱きついてしまいました

「良くやったぞ月!人形兵も動きを止めた!!」

その言葉を聞いた私達は戦場を見渡します。そこには、確かに動きを止めた、本来の人形としての姿がありました

「ふぅ、ようやく終わったか。さすが俺達の子だな!」

「えぇ、私達の自慢の子どもですね」

「あー、久々に運動したから、これは明日筋肉痛だな」

「だからってあんた!店は休ませないんだからね!」

「やっぱ凄ぇなあいつら!あたいの出る幕なんてなかったんじゃねぇか?」

「まったくだ。あいつらに勝てる者など、いないのであろうな」

「よーし!司馬懿さーん!どこですかー!?」

「零士ー!今行くわよー!!」

「これだけの規模で死傷者はほぼゼロ。奇跡だな」

「お前が最初から居てくれれば、もう少し怪我人を減らせたかもな」

「ふふ、さぁ皆さん!勝鬨をあげましょう!」

ワァァァァァァァァ!!!!

「見よ貂蝉!これぞまさに、我らが追い求めた人の姿!!」

「えぇ。皆の想いが力となり、大陸を守った。きっかけを作ったのは東零士ちゃん、それに…」

「三人目の、イレギュラーか…」

「ん?なんの話だ?」

「なぁんでもないわ華佗ちゃん!」

私と詠ちゃんは、皆が勝鬨をあげている姿をしばらく見ていました。皆さん、本当に嬉しそうです

「詠ちゃん…」

「わかってるわ。行きましょう月」

いつまでも見ていたいという気持ちもありましたが、私達は拠点を出て、真っ直ぐ奥に進みました。迎えに行かなきゃ、私達の、家族を…

†††††

零士サイド

「クソッ!クソッ!クソッ!ここまできて、ここまで追い込んでおいて…認めん…認めんぞ!」

「いいや、ここまでだ張譲。所詮お前は、その程度だったということさ」

ある程度回復した僕は、張譲に銃を突きつけながら立ち上がった

「お前は、この世界が正しいと思うのか!?定められた、死を確定された運命、それを変えようとすることの何が悪い!?」

「それが、お前の目的か」

「あぁそうだ!!これは復讐!今までの張譲は必ず死んでしまうんだ!そして、その記憶を持った私は、負の感情に満ちているんだよ!なぜ、殺されなくてはいけないのか。その答えをくれたのが、于吉と左慈だ。十年ほど前、瀕死の彼らと出会い、彼らの記憶、彼らの思いを受け取った。そして彼らの記憶から、一つの解を得た。絶対的な基準点、北郷一刀!この世界は、どこまでも北郷一刀の物。全てのシナリオは、北郷一刀が描いたものだ!そんな、独裁的な神を、お前は許せるのか?定められた死の運命に抗う事が、許されない事なのか?」

「その結果が、北郷一刀の殺害」

「その通り!私はあいつが憎い!私はあいつにとって所詮は引き立て役!それが許せない!だから私は北郷一刀を殺す!殺して、この世界を終わらせる!」

「なるほど、確かにお前の気持ち、わからんでもない。自分の運命に抗うこと自体は責めはせん」

「ならば!」

「だが、手段を間違えたな。お前のやり方は破滅しか生まん。なぜ悪に手を染めた?記憶を持っているならわかるだろう?今まで殺されてきたのは、全て因果応報、お前の悪行が原因のはずだ。逆に善行を重ねていけば、お前はまだ助かる道があったかもしれないだろ」

「無理ですよそんなもの。貴方にはわかるまい。この憎しみが、怒りが!」

歪んでいるな。張譲自身が不器用なのか、それとも左慈と于吉の影響で捻じ曲げられたのか。哀れだな

 

そんな事を考えていると、視界の隅に映る人影が写る。その子は僕を見て満面の笑みを見せる。僕もそれを見て思わずニヤッとしてしまった

「あぁ…わからないな」

僕は突き付けていた銃を降ろした。その行動が理解できないのか、張譲は戸惑っていた

「どういうつもりだ?」

「なに、僕自身は十分お前を殴ったからな。それに、僕はお前が北郷一刀を殺す手段を失ったことで十分なんだ。だから僕はお前を殺す気もない。今のお前には、北郷一刀を殺せる程の力は残っていないだろうしな。だから僕は、お前に対してこれ以上何もしない」

「だから、舐めるなと言っているだろ!!書の力が無くとも、私にはまだ于吉と左慈の能力が残されている!そして私が生きている限り、西楚の軍勢は不死だ!弱体化はしただろうが、あれは私自身の力で生み出したもの。まだ兵力は残されている!」

張譲は立ち上がり、僕に向かってくる。本当にこいつは、愚か者だな

「東さんが許しても、あたしは許しませんよ!」

「なに!グハッ!」

張譲は後ろから鉄棍の一撃を食らい、よろけた。その後ろからは、悠里ちゃんが笑顔で現れた

「人の過去を抉るような真似した罰です!」

「ふふ、やっぱり悠里ちゃんが一番乗りか」

「とーぜん!あたし、大陸最速ですから!」

 

ひまわりのような笑顔とピースサインをする悠里ちゃん。この子はとても無邪気だなぁ

「クッ…舐めた真似ガフッ!」

張譲が悠里ちゃんの方へ向くと、こんどは大斧の一撃が、張譲の背中を強打し、大きく吹き飛ばした

「ふん、お前だけは許さんさ。お前は我が主を、仲間を危険に晒したのだからな!」

華雄ちゃんが大斧を担いで、悠々と現れた

「なんだ零士、ボロボロではないか。そんなに苦戦したのか?」

「はは、もう僕も年だからね。そろそろ華雄ちゃんにも負けそうだよ」

「クソッ!なんなんだお前らは!」

「いた、お待たせ、零士。張譲、切っていい?」

「やぁ、恋ちゃん。好きにするといいよ」

恋ちゃんはゆっくりと張譲に近付き、方天画戟を振り下ろした

「ガァァァ!!」

張譲はモロに食らい、大きく血飛沫を撒き散らした

「ガハッ…ゴホッゴホッ…なぜだ…なぜ私がこんな…」

おー、凄い凄い。まだ生きてる。ここで死んだ方が良かっただろうに。だって目の前には…

「はっ!そりゃお前、私の家族や大切な友人を傷つけたからだろ」

咲夜がナイフを構えてやってきたからだ

「お前は…まさか…司馬懿!?」

「あん?お前、私を知っているのか?」

張譲は血を吐きながらも、目を見開き、信じられないものを見たかのような表情だった

「あり得ない…お前は…必ず…」

「あぁ?お前が何を言っているのかわからないが、罪は償ってもらう。お前の命でな」

「く、くそ……はぁはぁ…!?項羽!!そこで何をしている!?私を助けろ!」

張譲の視線の先には、四人の女性が立っていた。察するに、西楚の軍勢なんだろう

「悪いわね張譲。あたし達負けちゃったの」

「敗者は勝者に従うのみ」

「項羽様の言う事以外、聞く気ありませーん」

「我らは負けたのだ。受け入れろ張譲。ここらがお前の器なのだ」

張譲の顔には様々な感情が溢れ出ている。憎悪、怒り、恐怖…そういった負の感情で満ちているようだった

「これで、終わりだと言うのか?何故だ!何故私が死なねばならん!悪いのは全て北郷一刀だ!あいつさえいなければ私は…」

シュンッ!

「いいや、そんなの関係無しに、お前はやり過ぎたんだよ」

「く…そ……」

咲夜は一瞬で張譲を切り裂いた。張譲は肢体を失い、文字通りバラバラにされた

†††††

 

「む、我らも消える時が来たようだな」

「そうか。龍且よ、またいずれ、そちらで会おう」

「残念だなー。せっかくいい子と会えたのにー」

「あはは、幽霊でもいいんで遊びに来て下さいよ!歓迎します!」

「すまんな虞美人。この世での結婚はできず終いになったな」

「いえ、我が御身、常に項羽様と共に在りますので」

「そうか。呂布よ、あの世で待っているぞ。その時はまた闘おう!」

「…ん。わかった。項羽も元気で」

段々と透けて行く西楚の軍勢は、やがて完全にその姿を消した。ただ、彼らの消える間際の表情は、とても穏やかに見えた

「終わったな」

「あぁ、お疲れ様咲夜」

「お疲れ零士。お前、体は大丈夫か?」

「はは、身体中ボロボロだよ。それに、もう左眼の視力も完全に失ってしまった」

「そうか…」

咲夜は途端に暗い表情を浮かべ、俯いてしまった。まったく…仕方ないな

「咲夜」

「ん?なんだれい…」

僕は彼女が顔を上げると同時にキスをした

「な、ななな、何やってんだよ零士!?」

咲夜は耳まで真っ赤になり、あたふたとしていた

「ははは、それでいいんだよ。咲夜の暗い表情より、僕は今の表情の方が好きだな」

「な、ん、……」

咲夜はパクパクと声にならない声を出していた

「なーに二人の世界に入っちゃってんですかー?」

「ハ!ゆ、悠里…」

悠里ちゃんはジトーっと睨みながらため息を吐き、そして苦笑いと言った表情になった

「まったく、今回だけですからね。東さん、帰ったら私にも口付けしてください!」

「え?」

あ、あはは、参ったな

「…あ、月と詠、来た」

恋ちゃんの言葉に僕らは後ろを振り返る。そこには確かに、大手を振って走ってくる月ちゃんと詠ちゃんの姿があった

「みなさーん!大丈夫ですかー?」

「ゆ、月~、ちょっと待って~!」

詠ちゃんは微妙に遅れて走っているみたいだ

「はは、お食事処『晋』、一人も欠けずに全員集合だね」

「よし!月ちゃんと詠ちゃんを迎えに行きましょう!」

「我らには似合いの凱旋だな」

「……お腹、減った」

「なら、みんなで帰ろう。私たちの、家族の家に!」

 

そして僕らは、家族みんなで帰路に付いた

 

 

 




これにて最終章は終わりでございます。

ラスボス張譲の正体は、于吉と左慈の記憶や能力を受け継いだ、ある意味転生に近い存在でした。そして、彼が事を起こしたのも、簡単に言えば自分の死の運命を変えるためです。とりようによっては、悲劇の人物でもありますが、彼は手段を違えてしまい、それ故に『晋』に殺されてしまうのです。

西楚の軍勢に関しては、最初から決めていました。というのも、呂布VS項羽を書きたかったが為の展開でもあります。私なりの見解ですが、項羽は個人の武もかなり強いと思いますが、どちらかというと用兵術に優れているというイメージなんですよね。だから呂布が勝つと信じ、書かせていただきました



実は最後の展開は自分の中で何通りかあって、この展開はGOOD ENDとなっております。

BAD ENDの展開は、途中までは一緒なんですが、最後の太平要術の書を破壊する場面で、
月ちゃんがスナイパーで狙撃せず、零士さんが直接破壊しようとするとBAD√に入ります。弱った零士さんが太平要術の力に飲まれ、操られ、そして咲夜に殺されるというENDです。なので月ちゃんの狙撃能力設定は、GOOD√に入るためのかなり重要な設定だったんですよね。今回はせっかくの初SSだったので、ハッピーエンド書きたいと思いBADは回避しました。

ちなみにギャグENDというものもあって、零士さんが大人げなく近代兵器をフル活用して、戦車やら戦闘機やらでジェノサイドするという展開です。さすがに、作品の世界観を崩壊してしまうためできませんけどね(笑)


つたない表現もあったと思いますが、見てくださって本当にありがとうございます


次回はエピローグです。もう少しお付き合いしてくださると幸いです


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