『……深夜一時通報がありました、ポケモンを虐待していた容疑で△△歳のトレーナーが逮捕されました。容疑者は「やっていない」と容疑を否認しており……』
ニュースキャスターの口から、次々と残虐な手口が公表されていく。誰がどう見ても「やっている」と答えるだろう。
テレビを眺めている自身もその一人だ。
昔なら、ここまで赤裸々に暴かれることはなかった。
強いトレーナーほど、白とは言い切れなくなる。
いつからか、強いトレーナーは憧れから批判の的に変わっていた。ポケモンにバトルを押し付けていることから、目を背けて。
日付が変わって、虐待のニュースが香ばしくなってきた。コメンテーターも生き生きとしだす。
『瀕死になるギリギリまで戦わせるなんてありえません! 普通なら、もっと余裕を持って戦わせるはずです!』
そう言っていたコメンテーターはいつかの番組で、ポケモンの対戦で惨敗して、手持ちポケモンを全員瀕死に追い込んでいた。降参することはプライドが許さなかったのだろう。
『うーん。もしかしたら、そのトレーナーにも事情があったのでは……?』
もう一人は容疑者を擁護すると見せかけて、家庭環境や出生を好き放題暴露し始める。暴露した自身は職業と出身校しか明かしていないというのに。
埒が明かないと更にもう一人はインタビューのVTRを流した。
『〇〇がそんなことするはずない! あいつは誤解されやすいだけなんだ! あいつはすごいんだ! だから、逮捕することだけはやめてください!』
容疑者として逮捕されたトレーナーは意外と人望に恵まれていた。強いトレーナーに囲まれて、強くなっていったことが伺える。
ただ、そのトレーナーの周りにいた人間は全員、
それを証明するかのように、インタビューされた大人はみな『何度も忠告した』と答えた。
その誰もがポケモンバトルをしたことがあった。
ポケモン同士で戦わせる残酷さを知らずに。
勝ち負けを気にしない時期があった。
負けることが許せなくなって。
どんなポケモンでも愛しかった。
見た目と能力が全てになってしまった。
そんな子供時代を過ごした大人たちは、やがてポケモン勝負から手を引いた。ポケモンを持っていても育てない。それが彼らの選択、愛だった。
育てるということは、勝ちにこだわるということ。それはつまり……エゴである。
だから、彼らのポケモンは弱い。子供に負けるほど弱い。何度負けても戦い方を変えない。変えられない。時の止まってしまったポケモンたち。
彼らに勝負を挑むのはかつての自分。負けると分かっていても逃げないのが、唯一残されたプライドであり。
唯一残された、
強くなりたかっただけなのに。