【本編完結】心臓継承ウマ娘   作:豚ゴリラ

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44話

 『三女神とは?』

 

 太古の昔から信じられてきた存在、『三女神』。

 ウマ娘の始祖との一説もある三柱の女神たちは、それぞれ『太陽』、『王冠』、『海』などのモチーフと共に存在を伝えられてきた。

 しかし伝説の起源や祀られている神々の名前さえ殆ど知られておらず、未だ全貌の解明には至っていない。

 一種族全体に根ざした宗教でありながら、不明瞭な事柄が非常に多い。 まさに特異性の塊とも言える。

 

 トゥインクルweb、vol.■より抜粋。

 

 


 

 

 鼓膜が震える。 ごうごうと、ざわざわと、とめどなく震え続ける。

 それは、甲高く鳴り続ける時計の音によって……では、なく。

 

 騒がしいそれは、地を這う人々の合唱だった。

 空を彩る人々の歓声だった。

 芝を舐め、脚を登り、腹を叩き、心臓を伝って、鼓膜へ至る。

 ごうごうと、ざわざわと、胸の奥を震わせるほど大きい音で。

 人々は各々の言葉を飾り立てて、レースの終わりを祝福している。

 

「これが、勝利?」

 

 それを、じっと受け止めた。

 酷く血の気が失せた顔で大粒の汗を流し、肩を大きく上下させて。

 降り注ぐ紙吹雪を、焦点の合わぬ視界で茫洋と見つめる。

 

 ファインドフィートは勝者だった。

 他の十七を置き去りにした、たったの一人である。

 なのだから、勝者らしく喜びを露わにするのは彼女の特権だ。

 

 ……しかし顔を喜色に染めるでもなく、誇るでもなく。

 ただ、下唇を噛み締める。

 

「……これが、無敗、などと」

 

 乾燥して引き攣る喉。 痛んで仕方がない左足。

 全力疾走した後だから──なんて、それだけでは説明がつかないほどに拍動の狂った心臓。

 それらで揺らぐ体躯を、気合だけで押し留めた。

 

 余裕があるから、ではなく。

 矜持があるから、でもなく。

 ただ、ここで膝を突けばもう立ち上がれなくなるという予感があったから、惰弱ごと奥の歯を噛み潰す。

 そうして()()()()()()()、相応の威を持って立つ。

 

「ぁあ……」

 

 ……立った、が。

 苦しいのは身体だけではない。

 心も。 あるいは、心こそが、もっとも苦しい。 もっとも痛む。

 胸の奥がズキズキと軋んで、のたうち回りたくなる程の白熱を放ち続けて、どうしようもないのだ。

 

 熱く、冷たく。

 軋んで、軋んで、軋んで、軋んで。

 歪むそれを押さえつけたくて、手のひらで胸元に触れる。

 しかし無意味だ。気を紛らわせる事さえ不可能。

 形のないモノに触れる事なんぞ出来ないのだから、当然である。

 故にただ、不可抗力の痛みを甘んじて受け止める事しかできなかった。

 

「……ひどい、皮肉じゃあないですか。

 頑張った分だけ報われる、なんて……それは、嘘では、ないですけれど」

 

 舌の上に吐き出した言葉は、ひどく掠れきっていた。

 それを奥歯で噛み潰し、それを飲み込みもせずに吐息へ溶かす。

 

 そうして粉々に砕けたそれの行く先を、憂鬱に眺めて──本当に今更なのだと、臍を噛んだ。

 

 今までに何回も負けて、それと同じ回数を繰り返して。 果てに何をどれだけ失ったのか。 どれだけ現実の壁に打ちのめされてきたのか。

 その全容は定かではない。

 何故、今回だけ"負けた"という記憶を持ち越せたのか、その理由もまったく分からない。

 

 けれど、だから、ファインドフィートは今まで勝ち続けて来た。

 自分の敗北を否定して、自分ではない誰かの勝利をかき消して、そうまでして立ち上がって。

 ……その果てに、友の心を否定してまで掴んだのがこの栄光である。

 

「それが、走るということで。 それが、生きるということで。

 ……これが、わたしの足跡を残すための輝きで」

 

 だから。 彼女はこの祝福を受け止めなければならない。

 それ以外は決して許されない。

 でなければ、単なる裏切り者に成り果てる。

 

 故に虚飾で塗り固める。 歪み切った中身を隠す。

 姉を模倣した『ファインドフィート』の殻を作って、頭からすっぽりと被るのだ。

 それは暇疵のない、無垢で、キラキラ輝くだけの大きな虚像だった。

 

 そして、その姿をこの世界の誰かに刻み付ける。 歴史の一片になる為に。

 最初から変わらない目標で、目的だ。 その為に今回の結果が必要だったのだ。

 

 ……それが正しい、とか。 これは間違っている、とか。

 そういった逡巡はいっそ無視すべき事柄であり、その源泉たるヒトの心は『ファインドフィート』の瑕疵へと繋がりかねない。 繋がってしまった。

 だから、無視する。 黙殺する。

 そうしてファインドフィートは効率的に──夢の果てへ、一歩ずつ近付いていた。

 

 いた、けれど。

 "もしも"の可能性に、思いを巡らせてしまうのは、止められなかった。

 

「……わたしがもっと速ければ。 もっと、心が強ければ。

 わたしが、姉さんなら、もっと良い結果を残せたのでしょうか。

 こんな、回りくどい道を選ばなくても、きっと」

 

 ぎしり、と。 下唇を、より強く噛み締めた。 血の味はしない。

 

 考える。 夢想する。

 もしも、もしも。

 ファインドフィートが、最も速かったとして。

 ファインドフィートが、今より強い心を有していたとして。

 ファインドフィート達の立場が、逆だったとして。

 そんなあり得なかった可能性を口にしてみた。

 

 誰も苦しまず、誰かの苦にならず、雨の日も風の日も変わらずあり続ける。

 晴れの日には外を駆け、曇りの日には川沿いを歩き、雷雨の日には大人しく本を読む。

 当然のように誰かに愛され、誰かを愛する。

 朝にはおはようと言い、夜にはおやすみを言う。

 そして理想と現実を両立させて、涼しい顔で明日へと挑み続ける。

 そんな、あり得なかった可能性を。

 

 ……とはいえ、その行いに意味はない。 現実逃避にもならない。

 正しさを求める為ではなく、過ちを知る為ですらない。

 そんな単なる可能性の先を空想したところで、何に成る筈もない。

 それらのもしもは叶わなかったのだから──それが全てだ。

 だから、彼女は決して変われない。

 

 それに、仮に()()()へ手を伸ばす事が叶ったとして。

 本当に、今よりも良い未来に繋がるのか。

 そのあり得なかった現実の姿なんぞ、誰にだって予測できないのだ。

 

 

 それこそ彼女の『姉』だってそうだった。

 より良い未来を求めて『弟』に託したというのに──その結果は、どうか。

 答えは現在(いま)が物語る。

 

 片割れは自罰の念で苦しみ続け、罪悪感によって己を削ぎ落とし、義務感だけで呼吸を繰り返す。

 痛苦をあの手この手で正当化して、辛うじて精神の安定化を図る。

 ()()が、求めたものとは程遠い()()が、『姉』の選択の先にある答えだった。

 

 もちろん、『姉』はそんな未来なんぞ欠片も予想していない。

 ……だが、幾つかの誤算があった。

 少しばかりの偶然と奇跡があった。

 そうして生じた多くの必然によって──真意は汲み取られず、世界が回り出した。

 

 彼女はただ、己の片割れに生きて欲しかっただけ。

 幸せになって欲しかった。 前へ進んで欲しかった。

 そして、いつかの未来で、満ち足りた終わりを迎えて欲しかった。

 ただ、ただ、それだけだ。

 託した夢はあくまでも夢であって、決して、呪いなんぞではない。

 再び歩き出すまでの、暫しの支え(つえ)として抱えていてくれれば、それで良かった。 十分だ。

 

 ……更なる欲を以て望むのなら。

 『弟』の血肉としてでも未来へ連れて行ってくれれば、それ以上に喜ばしいことはないけれど。

 

 けれど、故に。

 それらは"たられば"の話なのだ。 決して届かない。 手を伸ばせもしない。

 単なる夢物語であり、死者が抱く願望である。

 今回に限ってはどちらも()()()()という一点のみで共通していた。

 

 

 だから、この話はそこでおしまい。

 続きは無くなった。

 

「……ぅ」

 

 こひゅ、と喉が引き攣る。

 掠れきった咳が零れる。

 一度、二度と喉を鳴らして、また、肩で呼吸を繰り返した。

 

 そして時間を対価に呼吸を整え、ようやく掲示板を仰ぎ見た。

 赤文字で書かれる"レコード"の一言が、酷く寒々しい。

 しかし、それが栄冠。 栄光、きれいな綺羅星。

 ファインドフィートが望んだモノだ。

 

 それでも、どうしてか。 心は鬱屈と淀むばかり。

 曇り空よりも、雨模様よりも、雷雨の相よりも尚重くに。

 

「やぁやぁ。 ワガハイに勝ったというのに随分と暗い顔をしているではないかー」

 

 ──その内心を知ってか知らずか。

 まず間違いなく知らずにだろうが、白い後ろ背めがけて声が響く。 次いで、一対の足音が鳴る。

 その声は、その足音は、親しい友のモノだ。

 慣れたそれを外耳で受け止めて──何故かすぐには答えを返せずに、一呼吸の間を作った。

 息を吸って、吐いて、吸って。

 吐いて、止めて。

 溜めて。

 

 そしてようやく、ゆっくりと振り返る。

 

「……お疲れ様です、テイオーさん」

「ね。 優勝、おめでとう」

「…………」

 

 いい試合でした──などとは、口が裂けても言えやしない。

 ぎゅっと口を噤んだまま、青白の衣を纏うトウカイテイオーへ視線を送る。

 二対の目線がぱちりと絡み合った。

 方や淡く、鬱屈に。 方や快活で、しかし鋭い。

 青と青の虹彩が互いを見つめて微かに停止する。

 

 背丈には差があるから、ファインドフィートが見下ろす形だ。

 しかし彼女は不思議と、逆に見下ろされているように感じてしまった。

 

 精神の成熟具合の差が故なのか、はたまた己へ向ける卑屈な怒りが故なのか。

 ともかく、そうして目を合わせているだけで、どうしようもなく。

 ただ、ただ、惨めな気持ちが溢れて、溺れてしまいそうだった。

 

「……あなたは、眩しいなぁ……」

 

 こんなにも良い天気で、太陽はあたたかく、勝利を飾って、誰かに祝われて。

 そうして理想の姿を演じている筈なのに、心が痛む。 軋む。 軋む。

 理想の裏にある現実との乖離がどんどん大きくなって、歪んで、背骨から千切れてしまいそうだ。

 

 ──なんて、そんな事(ほんとう)を言える筈は無いけれど。

 

 だって、その行いに正当性はない。 資格もない。

 全てを告白した未来は無かった事にしたのだから、許されないし、許さない。

 

「……なのに、ぁあ。 今になっても、縋りたい……なんて」

 

 小さく、小さく、小さく。

 小さく、擦れきった声で呟く。

 もはや風の音よりも小さい。 誰であっても聞き取れない。

 それこそファインドフィート自身の耳にさえ届かないほど。

 

 そんな、絶対に誰にも届かぬ声で漏らしたのは──後悔か、懺悔か。

 あるいは、さらに別の情なのか。

 源泉の色は彼女自身にさえ分からない。

 

「……フィート、どうしたの?」

 

 訝しげな声で問われる。

 それに対して、曖昧に首を振って答えを包み隠した。

 

 トウカイテイオーの声は、棘のないあたたかさを秘めていた。

 ……故にそれはファインドフィートを傷付けない。

 

 けれど、その優しさが苦しかった。

 傷口に甘い(くすり)を塗り込むように、深くまで浸透する。

 どろどろと、じわじわと、膿んだ内臓にまで届いてしまう。

 

 そうして罪悪感が積み重なっていく。

 空っぽだった器を底から満たしていくのだ。

 

 夢になってしまったとしても、()()天皇賞こそがファインドフィートにとっての真実だった。

 『ファインドフィート』として、ではなく。

 その中身の彼女──彼にとっての、本当だった。

 『ファインドフィート』という虚像を造り上げる為に必要な工程であれど、本当を否定した上に成り立つ現在(いま)は、どうしても。

 

「   」

 

 ……その事実に如何なる感情を抱こうと、それも"必要な事"だとして受け取めるしか出来ない。

 こうして悲しむことも、傷つくことも、傷つけることも、今を構成する何もかもが。

 

 全部全部が仕方のない、"必要な事"なのだから。

 

「どう、したの? 何か、様子が──」

 

 己を鼓舞する。 口八丁で正当化する。 潰れかけた意思を、奮い立たせる。

 立って、立って、立って。

 何物にも揺らがないほど、力強く立つ。 立たなければ。

 

 ……そうと思い込もうにも、身体は意思を汲んでくれない。

 一歩、トウカイテイオーへと歩み寄ってしまった。

 

 そして、それだけで──ぐらりと頭部がふらついて。

 視界中を光る虫が飛び交って、チカチカときらめき存在を主張する。

 キラキラ、キラキラ、キラキラと。

 

「ぁ、れ」

 

 くらり。 更に頭が揺れた。

 そして、たらり、と。

 上唇に冷たい何かが伝う。

 それは湿り気と、強い粘性を帯びていた。

 

「ぁ、フィート! 血が、血が出てるよ……っ。

 あの、係員さん! こっち! こっちに来て!」

 

 ■。 ■、■とは。 何が出ていると言ったのか。

 トウカイテイオーの口から鳴る音が、頭の中に反響した。

 その音を咀嚼して、対する唇の動きを見た。

 しかし、それが何を意味する物だったのかまでは思考が至らない。

 

 ■とは何か。 ■とは、■とは?

 オウム返しで問うように、ただ、焦点がずれたままの瞳孔を相対する少女へ向けて。

 そして、口を開いて。

 舌先を震わせて……それだけ。 言葉は発せない。

 頭が揺れて、彼女の口を強引に閉ざしてしまったからだ。

 

「────! ──。 ────!?」

 

 ──トウカイテイオーが、大きな声で叫んでいる。 すぐ傍らに駆け寄って、顔を覗き込んできた。

 ……が、遠い。 聞き取れなかった。

 発しているだろう言葉の意味はカケラも理解できない。

 

 今の彼女は、それを咀嚼するだけの機能すら失っていた。

 それは限界を超えた脳みそが縮退運転をしているからか。

 はたまた、壊れかけの身体を休ませるための本能的な防衛反応か。

 

 ファインドフィートには、その真相を追求する事さえ出来ない。

 許されたのは、徐々に解像度を失っていく視界の中で、あるがままを受け入れるのみ。

 

「……ぁ」

 

 つつー、と。

 下唇を伝い、そして顎から滴り落ちた。

 それを震える右手で掬い上げて、眼前に翳す。

 太陽の輝きを反射する赤色。 赤い水。 ザクロみたいに、ザクロよりも真っ赤な赤色。

 

 ■。 ち、血だ。

 血が、流れる。

 生命の赤。 生命の根源。 生命の燃料。 生命の残量。

 やわらかな粘膜を切り裂いて滲出するそれらを、生気の失せた顔で眺める。

 

「血……」

 

 血。 血、血である。

 痛みを伴い、体外に流れ出る物。

 ファインドフィートにはひどく身近な存在だ。

 

 そしてその感覚は鼻や鼻の下だけではなく、右の頬をも這っている。

 指先で元を辿れば、発生源は右目だった。

 つまるところ、血は涙だった。 涙は血だった。

 眠りかけの脳みそで、遅れながらに実感して──。

 

 ──力が抜ける。

 右手から、頭部から、背中や腹、ついには脚から。

 前方へ傾いていく身体を押し留める事も出来ず、重力に引きずられて自力の軛を抜け出した。

 あっという間に膝をつき、生に溢れた緑が瞳めがけて迫り来る。

 

「──! ──っ!」

 

 が、衝突には程遠い距離で別の力に受け止められた。

 目にうつるのは青と白、時々金。

 つまり、トウカイテイオーの勝負服の色彩である。

 視界いっぱいに広がるそれを見る。

 そして彼女の胸に受け止められたのだと気付くまで、三度の呼吸を必要とした。

 

「──? ──?」

 

 頭上のトウカイテイオーが言葉を叫んだ。 受け止めた頭を抱えて、必死の形相で。

 けれどもファインドフィートには、何を言っているのかまるで理解できない。

 意識は数秒毎に寸断され、連続性を失い続けて、故に理解するだけの知能を保持できなかったのだ。

 

「……ぁ……ごめん、なさい。

 今は、少しだけ、このままで……」

 

 もう、限界だった。 これ以上は立てなかった。

 

 腕の中に収まりながら、薄く、長い息を吐く。

 自分よりも小さな手。 自分よりも小さな背丈。

 けれど、自分よりも圧倒的に大きいような──庇護者のごとき、安心感。

 "まるでお母さんみたいだ"、なんて、陳腐な感想を抱くほどに。

 

 そう。 記憶の中にある母は、確かに、とても大きかった。

 姉と弟を一緒に抱きしめてしまえるほどに、とても大きかったから。

 だから、錯覚してしまった。

 もう存在しないぬくもりを求めて、幻を垣間見て。

 そしてそれに疑問を抱くだけの理性も無い故に、疑いもせずに瞼をおろした。

 

 ざぁざぁと、ごうごうと、雑多な音が内耳を揺らす。

 しかしそれらでは彼女の意識を繋ぎ止められない。

 青い瞳が、すっかりと瞼の裏に隠れてしまった。

 

「……もう、なんだか、眠くて。

 二度と、眠りたく、ないのに。 起きたくない、のに」

 

 ──けれど、しかし。

 眠気に支配された頭で、ほんの一瞬、僅かな疑問を浮かべる。

 眠りに落ちる寸前、夢と現実が入れ替わる刹那、虚飾の一切が剥げ落ちる今際。

 

 さて、その庇護者は、ぬくもりの主は、ファインドフィート達の母親は──いったい、どのような顔をしていたのだったか。

 どんな声をしていたか。 どんな香りを纏っていたか。

 そもそも、何という名前だったのか。

 

 答えは頭の中からすっぽりと抜け落ちていて。

 湧き出る問へ返すべきを、何も返せなかった。

 

 ……何も、思い出せないのだ。

 あたたかい料理の味も、頭を撫でる体温も、愛をこらえた眼差しも。

 家族との過去を構成していた一片が。 まるで、写真の中から一部分だけをくり抜いたかのように。

 

 何時かにあったはずの、母親との思い出が。

 何も、何も、何も。

 

 何もかも。

 

 


 

 

 『月刊トゥインクル、6月号』。

 

 "ファインドフィート、無敗五冠へ"。

 4月30日に行われた天皇賞(春)にて、ファインドフィート氏が見事優勝を飾り無敗五冠を達成した。

 二着はトウカイテイオー氏、三着はナイスネイチャ氏。

 

 3月に行われた大阪杯に続けての優勝であり、近年稀に見る功績を残している氏へ、各地のファンによる期待が高まっている。

 

 なお、ファインドフィート氏はレース直後に意識を失い緊急搬送された。

 原因は鼻出血、および血涙のような症状と思われる。

 URAによる発表では快復へ向かっているとの事だが、記録映像の様子を見た有識者から疑問の声が上がっている。

 

 専門家の意見によると、ヘモラクリア*1という極めて稀な症例だという指摘もある。

 直ちに選手生命へ影響を及ぼす物ではないが、視力への影響を懸念されており──。

 

*1
普通の涙と血液が混ざったものを流す症状。

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