巨人の村の娘は人間   作:UMI0123

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十人の侍

 ――鎖国国家ワノ国……その国は世界政府非加盟国ながらも長年海賊の魔の手から守ってきた猛者(つわもの)たちが住む国である。そんな猛者達によって守られるワノ国も内に秘めた憎悪と外からの悪意には叶わなかった。

 元大名家であり、大名殺しの大罪を犯した黒炭の名を持ち周りの人間から憎悪を刷り込まれたオロチ。

 そして元ロックス海賊団の見習いとして若い頃に驚異的な成長を遂げた海賊カイドウ。

 オロチは権力で……カイドウは武力で……ワノ国は黒炭家と百獣海賊団に乗っ取られてしまった。

 

 ――残る希望は自由を愛し求める侍と九人の侍だった。

 

 

 九里のバカ殿光月おでん♪

 

 ヘビににらまれ腰ぬかす♪

 

 笑たら負けよ♪あっぷっぷ♬︎

 

 おでんは週に一度都に現れ、城の前でおどけわずかな金を貰う。雨の日も風の日も雪の日も……都での奇行は九里にも伝わった。

 

「おでんがそんなことを……」

 

 ある女はその奇行の裏を読もうとし……九里の民たちは……

 

「バカ殿だー!!」

 

「あんな男になるんじゃないよ…みっともない……!!」

 

「オロチの犬になるくらいなら武士として腹を切れ!!」

 

 おでんをバカ殿と呼び、武士どもは切腹を求める。そんな日々に変化が訪れたのはおでんの帰還から5年目の時だった。

 光月から将軍位を奪い取ったオロチが九里へと訪れたのだ。

 

「ここに新しい武器工場をいくつか建てたい。協力を頼むぞおでん」

 

「!?いや将軍。船の方は……!?カイドウと……」

 

「何の話だ?」

 

 おでんがカイドウ、オロチと約束したことを無かったことのようにしたことで、おでんの怒りがフツフツと煮えたぎって来た。そこへ追い打ちをかけるように……

 

「……ああそれとヒョウ五郎だがおれの手には負えねェんで、カイドウに譲った……まァ じき殺されるだろうな!!それにすがりつくババーが撃ち殺されてた。ムハハハ侠客の妻がみっともねェ!!」

 

 花の都にてワノ国の“裏の顔”花のヒョウ五郎が捕らえられそれに反発した子分が16名死亡、ヒョウ五郎の妻も射殺された。

 自信が慕うヒョウ五郎とその妻が殺されたことにおでんは動くことを決意した。

 

「カイドウを討つぞ!!!」

 

 さて!!お立ち会い!!これよりご覧いただきますは、ワノ国中が涙した光月おでん一世一代の大騒動!!!

 彼に拾われ武士となった九人の男が揃い踏み……時は夕刻、真紅に色づく太陽は戦い勇む男達を炎の様に赤く照らし、腰に差した刀も然り、燃ゆる命を映し込む。人々は後にその強さ忠義心を尊び彼らを「赤鞘九人男」と呼んだ。

 敵はカイドウ……他に目もくれず、行く道は悲しくも過去の話。行きつく先はおでん光月おでんの公開処刑。

 後世に語り継がれる「伝説の一時間」まで、まばたきなき様お願い奉り候!!!

 

 その男たちを眺めるのは九里の市民たちと武士、そして妖しげな女だった。

 

「想定外だ……!!周到すぎやしねェか!?なぜわかった。あの無人島で酒をのんで寝てるお前の首を斬りに行く所だった!兵力戦は想定してねェ」

 

お前の城にスパイでもいるかもなウォロロロ……。新しく建ったばかりの俺の屋敷を戦場にしたくねェんで……出向いてやったまでだ……」

 

「全て嘘だったんだなカイドウ!!!」

 

 おでんはオロチ、カイドウととある約束をしていたのだ。その内容は……

 

『おれが“将軍”の座についたのは!!この国を滅ぼす為だ!!!復讐するためだ!!!昔――おれのジジイが罪を犯し切腹させられた!!お家は転落そこまではいい!!だが残された親族まで見ず知らずの“正義の味方”に追い回され!!殴られ、あるいは川へ投げ込まれ殺された!!……だからワノ国の奴らは全員復讐されて然るべきなんだ。お前らの身から出たサビだ!!!見ろ!!コイツらはカイドウへの“貢ぎ物”だ』

 

『――ッ!?させるわけないだろ!!“おでん二刀流”――(ガン)擬鬼(モドキ)”!!

 

『“雷鳴八卦”!!』

 

『……お前がカイドウか』

 

『人攫いを止めたいか、()()()と戦争しても失うものはあまりにデケェぞ』

 

 おでんは民を思いオロチ、カイドウとの戦争をすることを選ぶことをしなかった。オロチからの提案で毎週定時国に“黒炭家”への謝罪の裸踊りをすれば一回踊るたび100人の命を助けて、造ってる船が完成したら……5()年後にこの国を出航するという約束だった。

 

 

 「そうさ……ウォロロ全てウソだった。あの時おれ達は()()悪いと踏んだ。お前が帰還し、ヒョウ五郎と手を組めば……ワノ国中の侍と侠客がおれ達の敵に回る。まだ部下の少なかったおれ達には苦しい勝負になっただろう……あの時お前が何の犠牲にも動じねェ……前評判通りのイカれた男だったなら……ウォロロロ!!!」

 

 おでん達の前に居るカイドウは空想上の生き物である龍の姿をしていた。その大きさは山を包む程大きく、その鱗は鉄を遥かに超える強度を持っていることは明らかだった。

 

「――だが、お前は誰も傷つかねェ方法を選んだ……!!ニューゲートやロジャーは確かにそんな海賊だった。強ェがどこか甘い奴ら……!!!お前も同類よ!!バカは踊り続けた!!裸になって、笑われ、蔑まれながらウォロロロロ!!お前にはもう『光月』の威厳も何もねェ!!」

 

「あの日の判断はアレでよかった。――話を未来へ勧めようぜ」

 

 おでんの言葉でおでんと赤鞘九人男が圧倒的に不利な戦いに火蓋が切られた。

 

 

「おでん様に続けェ!!!」

 

「まてまてこれが“侍”!!?強すぎじゃねェか!?」

 

「怯むなこっちにゃ数がいる!!!」

 

 今までおでんとその家臣はカイドウ相手に反抗することはなかったため、百獣海賊団は彼らの実力を見誤っていたのだ。

 だが、見誤っていたのは侍たちの情報を知らない下っ端だけだったので百獣海賊団の2(だい)看板は、彼らを侮らず全力で潰そうとしていた。

 

「ムハハハ……!!お前らがカイドウ様の前に行けると思ってるのか!?お前らはここで死ぬんだよ!!」

 

「クイーン様!!おでんが包囲を抜けてカイドウ様に攻撃を仕掛けました」

 

「おうそうか………えェェェェェェェ!!?お前ら何やってんだ!!……だがしかし!無敵のカイドウ様には誰も勝てねェ。お前ら!目の前の侍に集中しろ!!」

 

「何やってんだ。しっかり仕事を全うしろクイーン」

 

 おでんは一度の攻撃で百獣海賊団の下っ端たちを軽く吹き飛ばし、百獣海賊団の包囲網を突破してカイドウへと攻撃を仕掛けた。

 

「“熱息(ボロブレス)”!!」

 

「うわ」

 

 カイドウの口から放たれた超高温の炎は覇気が無ければ塵ひとつ残さない程強力な攻撃だが、おでんの覇気は相当な物なので吹き飛ばされるだけで済んでいた。

 

 

 

「“炎皇(アンドン)”」

 

「(燃えてるだと?)下がれアシュラ!!」

 

「錦えもん今は任せるぞ」

 

“狐火流……焔裂き(ほむらさき)”!!

 

 キングの炎を拳に纏った攻撃を錦えもんは拳に纏ってある炎を斬り裂き、覇気を流しているだけの拳へと刀をぶつけた。その攻撃は覇気を纏っていて内側への攻撃を可能とするので、防御力の高いキング相手にも少なくないダメージを負わせていた。

 

「――っ!面倒な覇気だな」

 

“狐火流……火柳一閃(かりゅういっせん)”!!!

 

「一度ダメージを与えたからと言って調子に乗るなよ。喫不燃皇(きつふねんドン)!!”

 

 炎と共に斬りかかってくる錦えもん向かってキングは、息を思いっきり吸い込み吐き出した。その空気は炎を使うキングから吐き出されたものだからなのか、錦えもんが纏う炎を消し去り、空気の内側にあったキングの炎だけが残って炎を斬れるはずの錦えもんへと炎でダメージを与えたのだ。

 

「はぁはぁ……火傷か……久しぶりでござるな。だが不思議と痛みは感じない。火がダメなら拙者の剣技で勝つだけだ!!」

 

「面倒な野郎だ」

 

 

 

「はぁはぁ……斬りてェのはお前の首一つ!!“おでん二刀流”

 

「ウォロロロ熱息(ボロブレス)”!!

 

 

「カイドウ!“桃源十拳(とうげんとつか)”!!!」

 

 今度のおでんは熱息に吹き飛ばされず、獣型のカイドウの首へと斬りかかった。その刃はカイドウの硬い鱗を斬り裂き、カイドウへとダメージを与えた。

 ダメージを食らったカイドウは獣型を維持出来ずに人型に戻っていった。

 

「二度と来るなワノ国へ!!!」

 

「動くなおでん!!」

 

「助けて父上!!」

 

「モモ……」

 

 ここに居るはずの無い自身の息子が叫んでいるのに父親として反応してしまった。そこにカイドウは無防備に晒された頭へと金棒をぶつけて気絶させた。その声の主は見た目と声はモモの助のものだが、悪魔の実を使って変化した黒炭ひぐらしだった

 おでんの気絶に赤鞘九人男たちは反応してしまって敵幹部にやられてしまったのだ。

 

「“嫉妬の大槌(ギデオン)”!!」

 

「えェェェェェェェ!!!カイドウ様が吹き飛ばされた!!!?」

 

「うん。カイドウでもおでんとの死闘は体に来るよね」

 

「何故ワノ国に巨人族が居る!!聞いたことないぞ!!」

 

「うーん。あれが敵の幹部かな?ねぇ君たちのボスのカイドウやられちゃったよ?」

 

 急に現れた女が無敵と信じるカイドウを吹き飛ばしたことに驚いているクイーンとキングの前に巨人族特有の巨体からは考えられない速度で移動してきたのでさらに驚いていた。

 

「お前は誰なんだ」

 

「そうだワノ国に巨人がいるなどの報告を受けてねェぞ!」

 

「そりゃあそうだろうね。私は巨人族じゃないし、ワノ国の人間でもないもん」

 

 女がそう言うと体が縮んでいき、やがて自分たちよりも小さくなってしまった。

 

「私は“王下七武海”が一人“創造海賊団団長”のディアンヌだよ。よろしくね♪」

 

「七武海だと?何故世界政府に加盟していないワノ国に居る」

 

「私はおでんに会いに来たんだけどね。来てみたら百獣海賊団がワノ国を乗っ取ってるって聞いたから……おでんの討ち入りに乗じて百獣海賊団を潰そうと思ったわけ」

 

「この人数を潰せると思ってんのか!?舐められたもんだな」

 

 ディアンヌの言葉にクイーンはキレて、キングも口には出さないがキレていた。

 キレてはいるが感情に任せて動かないところは二人が実力者である証拠だろう。

 

「カイドウが居ない百獣海賊団なんて雑魚の集まりでしょ」

 

「ウォロロロ誰が居ないって?降三世(こうさんぜ)

 

「いくらおでんとの戦いで消耗してたからってあの程度じゃあやられないか」

 

「“引奈落(ラグならく)”!!!」

 

「“乱衝撃(クレイジーラッシュ)”!!!」

 

 吹き飛ばしたところから人獣型となったカイドウが金棒をディアンヌ目掛けて飛んで振り下ろそうとしていた。

 ディアンヌはそんなカイドウを見ても冷静さを捨てずに能力を使って地面を幾つもの拳の形に隆起させて覇気を流した。

 

「ウォロロロ()()()じゃあ足りねェぞ!!」

 

 カイドウの金棒はディアンヌの武装色の覇気が流れる土の拳たちを破壊し尽くしても勢いは止まらずディアンヌの脳天へと変わらぬ勢いで振り下ろされた。自身の武装色にある程度の自信があったディアンヌは拳を突破して来た金棒に対応出来ずにノーガードで受けて気絶してしまった。




 今回は一気に時間が流れました。ワノ国過去編は次回の伝説の一時間で終わります。
 キングとクイーンはこの時に悪魔の実の有無が分からなかったので、キングは能力が無くても撃てる技を使って、クイーンは能力が無くても撃てる技が沢山ありますがこの頃の科学力ではまだ絡繰人間にはなれてないという設定にします。

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