巨人の村の娘は人間   作:UMI0123

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ディアンヌブートキャンプ

 ――国王が戦争を好まないため決して豊かでは無かったドレスローザは大きく発展を遂げていた。

 創造海賊団がドレスローザの経済網を掌握したことによってドレスローザの経済は大きく発展した。荒れた土地はディアンヌとレオグロウによって耕され、商業はテゾーロとマーリンの手によって発展した。工業も発展を遂げた。これはリク王の方針とは違う戦争に使う道具を造る産業だが、創造海賊団は“これは防衛に使う物だ”と民衆に公にすることでリク王を黙らせたのだ。しかし条件として国内での製造を禁止されたので近海の島々へキャンドラーが出向き開拓して工場を完成させたのだ。

 農業、商業、工業の全権を握る創造海賊団はドレスローザに取って無くてはならないものとなりつつあるだ。

 そんなドレスローザの地下に造られた創造海賊団が占有する船着場にある1隻の船が入港したのだった。

 

「ふぅ……この国に帰ってくるのは何年ぶりかな?」

 

「何者だ!!」

 

「うーん?何者って……分からないのかな?あー、この二年間で増えた船員かな?分からないならマーリンでも呼んできてよ」

 

「なっ!?師団長を呼び捨てにだと?……不敬に値するぞ!」

 

「はぁ……あんまり暴れたりしたくないんだけどなぁ〜。まあ仕方ないか」

 

 そう言ってディアンヌは能力を使おうとした。しかしとある一声によって能力が使われることはなくなったのだ。

 その声の主はドレスローザの経済を握る創造海賊団の三人しかいない師団長の一人“女傑”マーリンだった。

 

「団長!!」

 

「マーリンじゃん。なんで分かったのかな?」

 

「団長がドレスローザを空けてから二年の月日が経ったんだ。私も覇気は相当極めてきた」

 

「それもそっか!」

 

「それでその子は?」

 

 マーリンが指摘したのはディアンヌの足にくっついてマーリンの視線から隠れるようにしている少女のことだった。

 自分の仕える主が二年程居なくなって、帰ってきたと思ったらどこから見ても二歳以上の子供を連れてきたのだ、配下としては何事かと思うのは仕方の無いことだろう。

 

「この子は……隠し子」

 

「隠し子か……えェェェェ!!?

 

「うそうそ。マーリンでもそんな反応するんだね」

 

「当たり前だ。……それでその子は何者なんだ」

 

 ディアンヌは日和のことを正直に話すかを迷っていた。その理由としては、創造海賊団で実力をつけていくうちにその名が広まってしまい、カイドウやオロチの耳に入ってドレスローザへと攻撃を仕掛けて来ることを案じていたのだ。

 ディアンヌとてカイドウ相手に負けるつもりは無いのだが、勝てる保証もないのだ。それにプラスして百獣海賊団の幹部は実力者揃いなのだ。ディアンヌがカイドウに勝てたとしてもディアンヌも認める赤鞘九人男相手にたった二人で勝利した幹部には今の師団長では勝てないだろう。そして彼らが居るのがワノ国という点でもドレスローザでは勝てない。ワノ国は武器の生産に関してはトップクラスなのだ。ただの武器ですら量では勝てても質では負け、海楼石を加工する技術がワノ国にはあるため能力者の多い創造海賊団では勝てないのだ。

 

「この子は……小紫と言ってワノ国の()()だよ」

 

「……そうか」

 

 ディアンヌの言葉に嘘があることはマーリンの目には明らかだったが、それ以上マーリンが追究することはなかったのだ。

 それにディアンヌが言った嘘は偽名だけであり、両親であるおでんとトキが亡くなったため日和は親が居ない孤児なのだ。

 

「こんな所で何していたんだ?」

 

「あぁ……それはね。“見てないうち船着場も大きくなったなぁ”って思ってただけ」

 

「そうか。……団長が帰って来たのだ。コロシアムで顔見せでもするか」

 

 二人の会話を聞いて船着場にて、自分が所属する創造海賊団を纏めあげるトップ相手に失礼な言葉を放った見張りの下っ端は顔を青くしていた。

 それを見たディアンヌはドレスローザを二年空けていた自分も悪いと思い真実を話すことは無かった。マーリンは見張りの方を一瞬見たが、ディアンヌの言葉を嘘と言う理由もないのでその場を後にするのだった。

 

「それもそうだね。映像電伝虫で挨拶でもしよっか」

 

 

 ――“ドレスローザ”、“コリーダコロシアム”

 

 この場所は所属する剣士や腕自慢の他国から来た戦士たちが戦い市民に魅せる“神聖な場所”だった。

 そんなのは昔の話。今では所有権を創造海賊団によって買い取られ大規模な改修が行われた。その内容としては今までの無骨な見た目を綺麗に、そして戦いだけではなくエンターテインメント・ショーを魅せる場所へと変わったのだ。

 

「なぁ今回の召集ってどういうことだろうな?」

 

「あぁ、今までも何回か師団ごとに呼び出されたことはあるが、今回は全師団への召集命令だろ?それも副団長じゃなくてマーリン様からの命令だろ」

 

「副団長からじゃなくて師団長からの全師団への召集命令ってのはどういう事態なんだ……」

 

『急に集まってもらい悪かったな。だがこれは緊急の事だから仕方ないと思ってくれ』

 

 創造海賊団の全師団から下っ端がコリーダコロシアムへと集められていた。師団長が自分の師団の下っ端を召集命令で集めることは何度かあったが師団長から全師団への召集命令など初めての事態だったため下っ端達はザワついていた。

 そこへマーリンの声が映像電伝虫から聴こえた途端ザワついていた会場から一切の音が消えて、残ったのは沈黙だけだった。

 

『まず初めに……この召集命令は私からではない』

 

 沈黙していた会場がまたざわめきに包まれた。師団長以上が発することが出来る“召集命令”を師団長でもなく副団長でもないとすると発することが出来るのは一人しか居ないだろう。

 しかしその人は長い間帰ってくることはなく古参の下っ端以外には顔すら知られてないため創造海賊団のトップはキャンドラーだと言う人も少なくなかった。そんな人が帰って来たとなるとその人のことをどのような人かと推測する人がコロシアムの大半を占めたのだった。

 

『お前らも分かっているだろうが、これは団長からの召集命令だ。この二年で新しく入ってきた者共は顔を知らないだろうからな顔見せとして召集させて貰った』

 

『私が“創造海賊団・団長”のディアンヌだよ。私が可愛いからって襲っちゃダメだぞ!私はこんな見た目してるけど()()強いからね』

 

 ディアンヌの姿を初めてみた創造海賊団の船員は動揺を隠せなかった。それはディアンヌの幼すぎる姿だ。ディアンヌは自分のことを可愛いと言ったが、可愛らしいその姿は大人と呼べる程の身長ははなく、その童顔と相まって自分は大人だと背伸びをしている幼女としか思えなかったのだ。

 

「おいおい可愛いは可愛いが……襲えるほどの歳じゃねェよな」

 

「ど、」

 

「ど?」

 

「どストライクだ!!」

 

「うわっ!?ロリコンだ」

 

 創造海賊団の眠る性癖を目覚めさせたその姿は()()瞳に鮮やかな()()の髪……そして()()を着ていた。

 

『団長……小紫が可哀想だ』

 

『いや〜、ごめんね。小紫もごめんね』

 

『大丈夫です』

 

 映像電伝虫に出ていた小紫が映像から消えるのと同時に横からその声の正体が出てきた。女性は茶色の髪をツインテールにすることで子供っぽさを見せるが、大人の女性を象徴するその豊かに育った体が全て打ち消していた。

 

『私が団長のディアンヌだよ。こんな可愛いのが団長だと認められないと思う人が居るなら真ん中の舞台に出ておいで相手してあげるから』

 

「マーリン様には勝てる気がしないがあれなら勝てるんじゃないか?」

 

「だけどよ。もし勝ってもマーリン様が出てくるんじゃないか?」

 

『私に勝てた人が居たら団長の席を譲ってあげるからマーリンを含めて副団長と師団長に命令できるよ』

 

 ディアンヌのその言葉を合図に数十人程舞台へと降り立ったのだ。それらは全てディアンヌが不在にしてた二年間に創造海賊団の船員となった者たちであり、ディアンヌの実力を知るものたちは降り立った者たちへと合掌していたのだった。

 

『それで全員かな?じゃあそっちに行くね』

 

 ディアンヌは映像電伝虫の画角から消えた数秒後に上空から小さな少女が降り立ったのだ。

 映像越しだと分からなかった覇気を持たざる者でも分かるであろう圧倒的強者の放つ威圧感だった。それを見てある者は腰を抜かし……、ある者は気絶し……、ある勇気ある者は足を震わせながらも剣を構えた……。

 

「うーん、立ってるのは数人しか居なかったか。じゃあどっからでもかかっておいでよ」

 

「行くぞ!!」

 

 圧倒的強者の前にバラバラだったはずの部下の心は団結した。その攻撃はディアンヌも驚く驚異的なチームワークだった。

 ――それが()()だった場合だが。個々の実力はチンピラに少し技術が身に付いた程度の実力しかない者のチームワークでディアンヌに勝とうなど蟻が十匹集まって象に勝とうとする程無謀だった。

 

「これは弱すぎるよ。カイドウの所の下っ端はもうちょっと強かったよ!!」

 

 ディアンヌは剣を抜いて後ろから斬りかかってくるのを無視して、正面に居る男へと寸止めで拳を振るった。拳は寸止めで止まったが拳を振るった時の風圧は男へとぶつかりコロシアムの壁へと吹き飛ばして行った。

 ディアンヌがわざと無視してるとも知らずに後ろから斬りかかった男は剣が肌にぶつかると同時に折れてしまった。男の物で折れてしまったのは剣と心だった。

 

「武器も弱いね。覇気を流して無いとはいえ私の素の肌で折れちゃうなんて……ワノ国の刀は覇気を流さなくても斬れ味は良かったのに……」

 

 そんな惨状を見た舞台に立っている数少ない船員も腰を抜かしてしまった。

 ディアンヌはそんなのには興味がなく自分の兵と武器をワノ国の物と比べてしまい落ち込んでいた。

 

「見てるんでしょマーリン。どのくらい強くなったか知りたいから私とやらない?」

 

「流石団長だな。私も団長の強さを知りたい気持ちはあるが周りへの被害が心配だからやめておこう」

 

 はぁ……思った以上に兵が弱くて落胆しちゃったよ。これって私のところが弱いのかな?……それともカイドウの所が強かったとか?でもカイドウの性格的に部下を強くするっていう方針より元々強いのを招き入れるって感じだから参考にならないな。こんなに弱いならトンタッタ族を部下にした方が圧倒的に効率がいい。でもトンタッタ族は数が人間に比べて少ないからレオちゃんの環境師団分の子しか入ってくれなかったんだよね。

 ……師団長に修行でもさせようかな……ワノ国の件が失敗した今暇なのは……私か。私が直接部下達に修行を付けるとしてどんなのがいいかな……“六式”は一通り教えるとして、覇気は才能だしな……覇気が使えるようになったら下っ端から昇進させるってのもいいかも?

 

「ここに降りてこなかった人にも言えるけど君達は弱過ぎるよ。だからさ私が修行を付けてあげるよ。その名は……“ディアンヌブートキャンプ”だよ!!」

 

 まるで黒人男性が考案したダイエット法のような名前の修行だが、その中身は考えられないほどキツいものだった。

 その内容としてはまず毎日1キロずつ重くなっていく重りをつけながらの筋トレ……そして一週間に一度行われる自分の所属する師団長からの攻撃を避ける……これを一年行うのことだった。

 

「これが無理だと言う人は辞めてもらっても構わない。けど外から来た人はドレスローザに住む場所はないから小舟一隻でどっかに行ってね」

 

(あー、辞めさせる気は無いのね)

 

 小舟で新世界の海を渡れなど死刑宣告に等しい者だ。ディアンヌブートキャンプ程度をクリア出来ない弱者に新世界の海を渡ることなど不可能だった。

 

「あ、でもこの修行で覇気に目覚めた才能あるものにはご褒美があります」

 

「ご褒美だと!?」

 

「エッチなことを想像した君!残念でした!!ご褒美は新たに創る役職への昇格だよ!!昇格したら仕事も増えるけど給与と権限が副長程じゃないけど貰えるよ」

 

 ディアンヌによって召集された下っ端達は昇格するために今まで以上に必死になっていくのだが、その才能に恵まれた物はひと握りも居ないだろう。

 しかし修行に打ち込む理由が出来た船員たちの意欲は今までやってきた仕事以上のものだった。

 

 

「そう言えば他の師団長達は何処にいるのかな?キャンドラーの姿も見えないけど」

 

「副団長は工場での監督をしている。私以外の師団長だが、テゾーロは自分の島での開発に力を入れていて、レオグロウは例の植物島で植物の研究をしている」

 

「……みんな仕事をしてるんだね」

 

 幹部たちが仕事を全うしているのに自分はワノ国での仕事を失敗して帰って来たことに凹み、現状トップである自分がわざわざ出向いてやる仕事は特にないため無能な無職という結果だけが残るのだった。

 




 ワノ国から帰国後の話でした。
 二年程船を空けていたら下っ端に顔が知られていないのも仕方ないことだと思います。
 創造海賊団の下っ端の質が低いのは師団長が実力は持つものの経済方面に力を入れているマーリンとテゾーロなので実力を高める修行はあまりしていなかったからです。
 ちなみにレオちゃんの環境師団は部下がトンタッタ族だけなので強いです。
 次回はマーリン以外の師団長の話になると思います。

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