巨人の村の娘は人間   作:UMI0123

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女王

 ――金獅子の襲来から数ヶ月が経ったある日。

 ドレスローザには暗い空気が流れていた。その原因はリク王の娘であるスカーレットが急死してしまった。

 スカーレットの死を切っ掛けにドレスローザは現王への信頼が落ちることになる。国民から人気のあった王女スカーレットの死は国民から悲しまれ、リク王への批判的意見が強まった。

 

「王でありながら娘を何故病死させたんだ!!」

 

「ディアンヌさんが王だったら……」

 

 これが国民の声だった。少し理不尽なことかもしれないが人間たちの感情はそんなものだ。

 そんな国民達の声はマーリンの手によって少し改竄された情報として国外へと広められた。

 それを聞いたとある海賊は謀略を巡らし、とある国王はリク王を助けようと動き始めた。

 

「王女が死んだねぇ……で、真相はどうなのかな?ステラ」

 

「スカーレット王女はとある者と婚姻するために病死を装ったようです。ですが王はこの婚姻を認められてるみたいなので国民へと病死が嘘という情報が漏れる可能性は無さそうです」

 

「……これなら私たちに大義はあるね」

 

「そうですね。……ただこの国で王に成れる資格を持つのはリク王家または天竜人のドフラミンゴ家だけです

 

 そう。私はこの国で王になる資格は持っていない。けど持ってないなら作ればいいよね。王になる資格を持つヴィオラに近付いて……リク・ドルド三世を隠居へ追い込めばこの国の実権は私が握れるね。

 実権を握ったらこの国で本格的に海賊の育成を始めよう。今までは新世界に入って来た海賊を潰して部下にしてたけど……それじゃあただの下っ端しか生まれないから……私が一から育てて強い子を部下にしよう。

 

「じゃあ計画通り頼んだよステラ」

 

「了解です」

 

 マーリンとテゾーロによって練られた計画はスカーレットの死を知る前から練られており、スカーレットの死は切っ掛けでしか無かった。マーリンとテゾーロの手によって練られた計画は団長のディアンヌと実行役のステラにしか知らされていなかった。

 

 

 

 

 

 ドレスローザ商業区にはこの国を発展へと導いたディアンヌとマーリンが会談していた。その内容はワノ国である程度の地盤を固めた百獣海賊団が創造海賊団のナワバリ近くの島を攻め滅ぼしていることだ。

 

「マーリン。カイドウのとこの船が私たちのナワバリ近くに来てるらしいから見てきてくれない?」

 

「構わないが、私が出向く理由は?」

 

「そりゃあ船を率いているのが幹部の二人のどちらかだった場合は師団長にしか倒せないしね」

 

「そうか。なら行ってくる」

 

 マーリンの表の顔であるリオネス商会へとディアンヌが赴くことはあまりない。それはマーリンが海賊と繋がりがあるという事実を表に出さないためだ。

 

「一つ忠告しておくけど百獣海賊団の幹部は二人とも()()じゃないから」

 

「分かっている。能力者ってことだろう?私は動物系(ゾオン)程度に負けるほどやわな鍛え方をしてはいない」

 

「……まあいいけど……油断はどんな強者でも破滅へと導く道標になるから気をつけて」

 

「……話はもうないな。行ってくる」

 

 マーリンはすぐにドレスローザの港を経ちナワバリの島へと向かった。その道中には襲ってくる海賊船もいたがマーリンの実力には遠く及ばない海賊ばかりだったので簡単に撃退していた。

 そしてナワバリの島に着いた時にマーリンが見た光景は程よく発展した町は建物は崩れ落ち、炎が燃え盛っていた。

 

「これは……カタギ相手にここまでするものか……」

 

「ムハハハハハ!!解毒剤はおれしか持ってねェぞ!!!自分らで取ってみろ!!!」

 

 町の中心から聞こえる声の方へマーリンが顔を向けると6m近くある巨漢の男が噴水に腰掛け特殊な銃を町へと撃ち放っていた。

 その男にフラフラなりながらも近付こうとする者は周りに居る百獣の構成員によって斬り殺されていた。

 

「――っ!!そこの女!!お前は可愛いから助けてやってもいい!!!こっちへ来い」

 

(それは好都合だ。態々呼んでくれるなど百獣も優しいな)

 

 巨漢の男はマーリンの他を寄せつけない程の美貌を持つマーリンに一目惚れして自分の近くへと呼んだ。その行為が自分に害なすことだとはまだ知らない。

 

(あと10m)

 

「おい!てめェ素人じゃねェな!?」

 

「チッ……私はバレるような動きをしたつもりは無いが?」

 

「素人じゃ出来ねェ足取りってもんがあるだろが。で、てめェは何処のもんだ!!」

 

 自分がただの市民じゃないことがバレたマーリンはクイーンの懐まで近付いたのを不意にしてでもクイーンから離れた。

 クイーンがどのような力を持つか分からない時点で攻撃を仕掛けるのは危ないと思っていたからだ。

 

「私はしがない商人だ」

 

「……拷問でもすれば吐くだろ」

 

 クイーンはマーリンの方へと銃を向けて撃ち放った。マーリンは銃弾程度で傷付くような体では無いので避けようとしなかったが自身の覇気が警笛をならしていたので大袈裟気味に避けた。

 それが功を奏した。クイーンが持っていた銃から放たれたのはただの銃弾ではなく特殊な病原菌をばら撒く銃弾だった。

 

「良い見聞色だ。だがそんなんで勝てるとは思ってねェよな

 

「当たり前だ。見聞色だけで勝てるなら悪魔の実など要らなくなるからな」

 

「てめェも能力者か」

 

 クイーンは徐々に変化して行った。首が不自然なほどまで伸び、体もそれに合わせるように巨体へと変化して行った。その姿は大昔に陸地を支配していた恐竜の一種であるブラキオサウルスだった。

 

「恐竜ってのはデカいもんだな」

 

「デカいだけじゃねェぞ!!」

 

 その巨体からは想像出来ないスピードでマーリンの後ろへと移動した。その速さは六式の“(ソル)”を使ったものだと分かる。

 

「速さは……そこそこだな。“嵐脚”……血染(けっせん)

 

 その脚から放たれた斬撃は普通の嵐脚では考えられない程の斬れ味を持っていたがクイーンの固い皮膚に阻まれて肉までは断ち切ることは出来なかった。

 

「固いな……私も武装色を使わざるを得ないか……」

 

 マーリンは差していた傘を閉じると武装色の覇気を流した。マーリンが持っていた、ただの日傘は武装色の覇気を流すことで強力な武器へと変化したのだ。

 

「私の覇気は見聞色だけではないぞ」

 

「口だけじゃねェといいな」

 

 傘での突きを三連撃をクイーンの体へと撃ち込んだ。その攻撃は強固なクイーンの体にも傷を付けるほどの威力を誇っていた。しかし“動物(ゾオン)系古代種”の力を持つクイーンには全くと言ってもいいほど効いてはいなかった。

 

「いい攻撃だな!……おれじゃなかったら結構効いてたぜ

 

「傷を付けたなら御の字だ」

 

 クイーンに攻撃した際に傘に着いた血を舐めとった。そうするとクイーンに変化が訪れた。クイーンの覇気が若干だが弱まったのだ。元々の覇気が相当の物なためあまり弱くなった実感は無かったが、クイーンが弱くなったのは確かな事実だった。

 

「――っ?覇気が弱くなったか?」

 

「覇気が弱くなった訳では無い」

 

「厄介な能力を持ってやがるなてめェ。……なら早々に決めておくか“ブラック”……」

 

 クイーンはその能力では有り得ない力を口の中へと溜めていた。その力が何なのかはマーリンには分からなかったが警戒に値することは確かだ。

 警戒したマーリンはこれまで使おうとしなかった能力を使うことにしたのだ。マーリンの姿は耳は長くとんがっていき、爪は鋭く伸びていた。まるで伝説上のバンパイアのような姿をしたマーリンは腕に覇気を流して防御の体制を取った。

 

「“光火(コーヒー)”」

 

「クソっ!!古代種じゃないのか(団長が言っていたことはこれか……確かに普通じゃないな)」

 

「貫かれたってのに随分余裕そうじゃねェか!」

 

 クイーンの口から放たれたのはレーザー光線だった。その威力はマーリンの覇気を撃ち破り、更には致命傷にはならなかったものの光線は体を貫通していたのだ。

 

「あと一時間だな」

 

「何が一時間か知らないがそれまで生きてられると思うなよ」

 

「それもそうだな……だが私が一人だった場合な

 

 その言葉にクイーンは目の前のマーリンだけに見聞色を集中させるのを止め周りへと気を配った。そうすると後ろから斬りかかってくる老人が居たのだ。その老人は歳を思わせないほど軽やかに動いていたため避けることは出来ずに斬られてしまったのだ。

 しかしその機敏さとは裏腹に力は衰えており、強固なクイーン相手には浅い傷しか与えられなかった。

 

「私は歳で覇気は衰えていますが……多少でもダメージが入るのなら私の攻撃は多少なりとも気になるでしょう」

 

「てめェら相手にまともに戦ってたら時間がかかっちまうな……おれ相手じゃなきゃな!!“無頼男爆弾”!!!

 

 大層な名前の攻撃だったが、それは全体重を乗せたただの頭突きだった。しかし獣型になったクイーンの巨体から放たれる頭突きは相当な威力を誇っており、マーリンの右腕であるアーサーを一撃で気絶へと追い込んだ。

 しかし一瞬の隙をマーリンが見逃すことは無かった。攻撃後の地面に着地する瞬間に自分の血をクイーンの足元へとばらまいた。

 血は踏まれると同時にクイーンの脚を絡めとった。絡め取られたことによりクイーンはバランスを崩して倒れてしまった。

 

「その図体が倒れてるのは面白いな」

 

「面倒な小細工をしやがって!“ブラック”……光火(コーヒー)”!!

 

「私は同じ攻撃を受けるほど弱くないんだ」

 

 クイーンが放つ“ブラック光火”はレーザー光線なので来ることが分かってなければ避けることが難しい。それはどんなに素早い者だとしてもだ……。

 マーリンが最初に受けた“ブラック光火”はマーリンが少し油断していたため受けてしまった攻撃だが、今では目の前の相手の脅威を認めているので一切の油断をせず見聞色の覇気を発動して事前に避けることが出来た。

 

「そしてもう夜だ。私は夜を統べる女王となる」

 

 クイーンは彼女の変化に驚いた。マーリンの体から感じられる覇気が倍とは言えないが相当上がっているのだ。覇気を極めるには相当な努力が必要だと言うのに時間が夜になっただけで覇気が上がるのだ。それはどんな人でも驚くだろう。

 

(えぇぇーーー!!?覇気が上がってやがる!!?ただでさえギリギリの戦闘だったのに倍近くまで上がったら無理だ!!!)

 

「クイーン様!!奴の能力が分かりました!“動物系(ゾオンけい)”げん……」

 

 マーリンの情報をクイーンに話そうとした百獣海賊団の構成員は血の矢によって腹に大穴を空けられて絶命した。それを見たクイーンは負けるつもりは無いが大きな傷を負うことは確かだと思った。そこでとある提案をすることにした。

 

「(『げん』まで来たら幻獣種しかねぇだろうが!!)幻獣種か……交渉しねェか」

 

「なんだ?」

 

「……百獣海賊団に入らねェか?これから先百獣海賊団は海を統べる皇帝になる筈だ。てめェ程の実力者なら即幹部入り出来るぞ」

 

 それは百獣海賊団への勧誘だった……。

 

 

 

 ――北の海(ノースブール)のとある島では自分に深く関係がある新世界の国で起こった事件を読み謀略を巡らしていた。

 

「これは本当か?」

 

「あぁ確かだ。相手は()()だったが、所詮金で成り上がった奴だ、金をやったらすぐに教えて貰えたさ。」

 

「これは……計画を少し早めるか……」

 

「それは辞めておいた方がいいだろう」

 

 一人はサングラスを掛けてピンクのコートを羽織り、中には黒色のスーツを着た男。そしてもう一人はおカッパ頭にこちらもサングラスを掛け、口元には食べかけのオムライスを付けたおかしな男だ。

 

「何故だ?」

 

「ドレスローザには“王下七武海”の創造海賊団が居るはずだ。その中でも師団長以上は実力者揃いで、我々でも勝てるかは分からない」

 

「……勝てるか分からねェか……ヴェルゴが言うならそうなんだろう。なら計画通りに頼んだぞ」

 

「ああ」

 

 ヴェルゴと呼ばれた男は彼らのナワバリであった島から出て行った。彼が向かった先は海軍を北の海で海軍を募集する場であった。海賊である彼が海軍を募集する場へと向かった理由はたった一つしかないだろう……。

 

「んねーんねードフィ、ヴェルゴは行ったか?」

 

「ああ、おれ達の計画のためだ。()()()はあるか?」

 

「べへへ……持ってきてるぞ!!」

 

()()七武海なら手を出せねェだろ」

 

 ドフィと呼ばれた男は例の物に目を通すと笑みを浮かべ、策略を巡らしていった。

 その笑みを見た部下たちはこの男の資質を改めて理解し、崇めた。それは自分たちだけでは成し遂げることの出来ないことを叶えてくれると信じて……。

 




 今回ついにドフラミンゴが出てきました。今作のドフラミンゴは原作とは違う動きをするのかも……。
 今回のタイトルの「女王」は次期女王になる可能性のあったスカーレットと百獣のクイーンとマーリンのことでした。
 次回でクイーン対マーリンが終わります。

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