六傑杯
――マーリンがクイーンに勝ったことは創造海賊団内部への大きな刺激となった。役職を持たない下っ端たちは師団長を目指すよう一層に努力した。それに伴いディアンヌは軍編成を改めた。師団長という役職は変わらないが、まとめて呼ばれるようになった。
そしてその下に位置するのは前副長クラスの実力者が選ばれた者たちその名は六傑。
しかし六傑という役職を作ったものの、それに値する実力者はマーリンの執事だったアーサーのみだった。しかし惜しい人材は数人程いるので、コリーダコロシアムにて六傑の座をかけての大会が行われようとしていた。
――そんな今大会を仕切るのは創造海賊団の金庫番。そしてエンターテインメントの神に恵まれた男。
『――レディ〜〜〜スエェ〜〜〜ンジェントルメン!!』
ステージへと上がって来た男はマイクを握りしめオーディエンスへと己の声を呼びかける。
『今宵始まるのは我々師団長……いや三英に次ぐ地位を決める。その名は六傑杯!!優勝者には六傑の席とこれを贈呈しよう!!!』
その男は団長と副団長を支える三人の英雄が一人。その男は全身をピンクのスーツで固めているのだが、それに見合わず装飾品は左手の薬指にはめている
男が右手で掲げたのは変な模様のついた果物……悪魔の実だった。
「ウオオオオオオ!!!」
「……師団長テゾーロか」
「……ただの成金か……それとも」
ステージに上がったテゾーロを見たオーディエンスの反応は人それぞれだった。
テゾーロの登場を盛り上げる財務師団の構成員達。ココ最近入ってきた新参者たちはテゾーロの実力を見極めようとしていた。しかしテゾーロは自分を見定めるような目には気付いていた。
『しかし今はただの原石でしかない君たちが戦ったところでたかが知れている。そのため超えるべき障害を用意した。』
テゾーロのその言葉と共にステージに上がったのは還暦を超えているような老人だったが、その身は筋肉で引き締まり燕尾服できっちりと決めていた。
その男は唯一六傑の席に内定している実力者であり、マーリンの執事であったアーサーだ。
『知っている者も居るだろう。彼は財務師団の副長を務めていたアーサーだ!彼はトーナメントのシードに組み込むことにした。彼を倒して優勝を掴み取った者にこの悪魔の実を贈呈しようじゃないか!!!』
「……ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
『始めようじゃないか六傑杯を!!!!』
テゾーロの一言で六傑杯は始まった。しかし創造海賊団の構成員は相当な数居るので予選を行うことになった。
その予選の内容は参加する全ての構成員を五つのグループに分けて行われるバトルロワイヤルとなった。
七武海という地位に居ながら四皇に迫る勢力となった創造海賊団の実力を知れる機会となった今大会は各国要人や海兵はもちろん、
――コリーダコロシアム来賓室。
「どういうつもりなんだ?ナワバリから全軍撤退させて幹部を決める大会を始めるなんて正気じゃねェ」
「だから君たちに一旦頼んだんでしょ?これで私たちに借りを作っておけるんだよ。君たちからしたら数日間私たちのナワバリを守るだけで貸しを作れるんだから得でしょ」
「……おれ達からしたら得になるが……お前は七武海
その女は淡々と貸し借りの話をしているが、この内容は創造海賊団内部には一切知らされていない内容だった。それはキャンドラーを含め幹部たちには反対されるような内容だったからだ。
自分たち創造海賊団は王下七武海という政府の犬なのだ。それに対して交渉相手である男は四皇の幹部。七武海の船長が四皇幹部と繋がっているということが政府にバレたら七武海の地位どころか海賊として生き残っていける可能性も低い。そんな交渉を幹部たちが許すはずないだろう。
「まあそっちは政府に黙りを決め込んでおけばなんとかなるでしょ。それに君たちと繋がりを持っておきたいからね」
「……おれ達はこれ以上干渉はしないよい。これは魚人島でオヤジがルーキーだったお前を襲ったお詫びだよい」
「その事は仕方ないと思ってたけど……まあこうして頼みを聞いてくれるんだから襲われてよかったよ」
襲われてよかったなどと常人が聞けば『お前はMなのか?』と問いかけたくなるようなとんちんかんな事を言ったディアンヌだが、本人は至って真面目だった。
ディアンヌは自分の体よりも創造海賊団の利を優先するので、自分が決して小さくない怪我をしたとしても四皇からの詫びが貰えるのなら、ディアンヌにとっては得なのだ。
「……自分の体は大切にするんだよい」
「私は目的の為なら自分の体程度なら何度でも傷付けるよ」
「……おれは帰るよい」
紫の服を羽織ったパイナップルヘアーの男はディアンヌに別れを告げて出て行った。
誰も居なくなった向かいのソファを見てディアンヌは言葉を漏らした。
「……もう家族が傷付くのは嫌だからね」
――六傑杯数日前。
「遂にディアンヌは動き始めたか。ドレスローザへ攻めてこいザイス」
「分かりました。しかし相手は四皇に迫ると言われてる創造海賊団です。自分一人では厳しいと思いますが」
とある島ではその船のトップと思われる男と幹部と思われる男が創造海賊団について話をしていた。
「だから今だ!!奴らは六傑杯とかいう下っ端共を戦わせて幹部を決める大会を行うらしいからな!!その大会後に力を残しているのは最高幹部の三人とトップに立つ二人だけだ!!それにだ、この情報はあいつらにもリークした」
「なら手を出しますね。奴らは四皇に近い力を持っているくせに政府の犬ですから相手は海賊だけですからね」
トップと思われる男は初老くらいの年齢だがその身から溢れ出す覇気とその肉体は老いを感じられない。その男は海賊らしく葉巻を吸いながら笑みを浮かべていた。
そしてザイスと呼ばれた男はまだ若かった。しかしその歳には見合わない程極まっている覇気に引き締まった肉体を持っていた。
「だが、たかが七武海だ!!あいつらも自ら出てくる筈がないからな。お前が適任だろう」
「分かりました。では行ってまいります」
ザイスは部屋から出ていった。その後ろ姿を見て初老の男は真顔へと戻っていた。それは創造海賊団の力について考えているからだ。
自身の部下の中で随一の実力を持つザイスを信用しているが、ドレスローザへ訪れた時のディアンヌは弱かったもののディアンヌからロジャーに近い物を感じていた。
それが人を引き寄せる力なのか……はたまた驚異的な実力者となる器を持っているのかは分からないが、それでも警戒する相手で間違いないのだ。
「あいつがどれだけ成長しようと最後に笑うのはこのおれだ!!ジハハハハ!!!」
――予選第一試合。
第一試合での出場者で目立つのは新入りの手長族の男だったり、裏社会でのデスマッチショーで対戦相手が居なくなったことで売れなくなった巨漢の格闘家やこの場には似合わない妖艶な雰囲気の女性などが参加していた。
そんな癖のある者たちによる第一試合が今始まろうとしていた。
『予選第一試合開始!!』
まず初めに動きだしたのは手長族の男だ。その男は正面に居る者たちをその長い腕から放たれる拳で殴り飛ばした。その男の正面に居るものだけでなく周りに居た者の殆ども拳を振るった時の衝撃で場外へと吹き飛ばされてしまった。
そして舞台上に残ったのはその手長族の男。そして手長族の男の拳によって発した衝撃に少しはよろめきながらも立ちつづけていた巨漢の男。そして衝撃の外に
「ほうおれの拳に耐えているとはなかなかやるじゃねェか!!だがおれの拳をくらったら立ってられねェだろ!!」
手長族の男は衝撃の外に居た女をただ運が良かっただけと思い巨漢の男だけに意識を向けた。
手長族の男はその長い腕からパンチを繰り出した。その拳は巨漢の男へと向かって行った。しかし男は避けようとも受けようともしなかった。ただただ額を拳に向けただけだった。
「頭の硬さに自信があるなら、その自信ごと砕いてやんよ!!!」
そして二人の拳と額はぶつかった。やはり手長族のパンチはかなりの威力を持っており、巨漢の男を場外ギリギリまで吹き飛ばした。しかしギリギリのところで巨漢の男は踏みとどまって一言、会場全体がドン引くセリフを言い放った。
「ん〜!!キモティ〜!!!」
「うわぁ〜、あの人実力はそこそこあるけど六傑の席には置きたくないなぁ」
「もし負けたら私のところにくれませんか?」
「まあテゾーロのところは側近クラスの人が居ないからね。まあマーリンもキャンドラーも欲しがらないと思うしいいよ」
特別席で試合を見ていたディアンヌも巨漢の男のセリフにはドン引きしていた。しかしテゾーロは万年人材不足なので痛みで喜ぶ変態だろうと欲しかったのだ。
「あとはあの女性ですが……」
「……やっぱりだよね」
二人は残っている者のなかで場違いな女性に注目していた。それは一部の観客達以外が思った『たまたま衝撃の外に居た』ということは二人の目には必然だと見えていた。
それは手長族の男がパンチを放つ際にその女はステージのギリギリに行く訳ではなくステージの中途半端なところで足を止めていたのだ。それは手長族のパンチの威力を完璧に理解し、その衝撃の範囲まで分かっていたのだ。そんな女がわざわざ創造海賊団の下っ端として入るだろうかという考えが二人の中にはあったのだ。
「もっと凄いのくれよォ!!」
「気持ち悪ィこと言うんじゃねェ!!」
それから手長族の男は何度もパンチを放つが巨漢の男額に流した覇気によって殆どダメージを負っているようには見えなかった。それどころか気持ちよくなっているようにしか見えなかった。
ある程度ダメージを受けてから、それ以上の攻撃を見込めないと分かると今まで使ってこなかった斧を使って手長族の男男へと斬りかかった。その際に何故かYES、YESと言っているので巨漢の男の変態度が更に増したのだ。
そして巨漢の男の猛攻に手長族の男は負けてしまったのだ。手長族の男は足を滑らせてしまってその隙を突かれて体を斬られた。切り口は浅いもののその威力は凄く、場外まで吹き飛ばされた。
ステージに残ったのは変態巨漢男と妖艶な雰囲気の女性だった。そんなステージを見て観客達は心の中で『あの姉ちゃん危ない』と叫んだ。
そんな観客の心配とは裏腹に試合は一方的だった。女性の攻撃は巨漢の男の覇気を破ってダメージを与えていた。しかし巨漢の男の攻撃は女性には一切当たらなかった。その避け方はまるで六式の一つである“
「そんな攻撃じゃあ私は倒せないわよ」
「もっと強いの打って来いよ」
「――ッ!!本当に気持ち悪いわね。“飛ぶ指銃”!!」
女性は六式の一つである指銃を飛ばした。女性の飛ばした指銃は男の額へとぶつかった。
その攻撃はそこそこの威力があったようで初めて男の額に流血が確認された。そこから女性は何度も執拗に額だけを狙って攻撃した。
やがて男の覇気も底を尽きると気絶してしまった。しかし男の顔は気絶しているというのに笑顔だった。
「――ッ!!気持ち悪い」
『勝者ステューシー!!!』
「やっぱりあの女性が勝ちましたか……それにステューシーという名は“歓楽街の女王”と同名」
「多分本物だろうね。でも何でそんな有名人が私たちの下っ端なんかに入ったんだろう……単純にツテが無かったのか……それとも他の理由があったのか……」
「多分後者だろうな」
ディアンヌとテゾーロがステューシーについて考えているとマーリンも部屋へと入ってきた。入ってきたステューシーはとあることが書いてある紙を持っていた。
「これを見て欲しいが」
「へぇ〜、彼女が入ってからマーリンのところの裏稼業がかなり他に奪われたと」
「ああ。単純に運が悪かったと思っていたが、気になって調べてみたら奴が入った時期と奪われ始めた時期が合致していた。十中八九奴は黒だろうな」
「まあ今は放置でいいかな?」
ディアンヌたちはスパイであると分かっていながら放置することに決めた。それは本選に残ったのがスパイとバレれば創造海賊団の面子は潰れたも同然だ。現状、スパイ相手に構成員は負けたという事実が出回れば勢力を拡大するのに邪魔になってしまう。それなら今は彼女を実力者として六傑の席に座らせて、六傑に値する者が育ったら処分すればいいだけだ。
創造海賊団は三師団長をまとめて三英と呼び、その下に六傑という呼び方になります。
これからの話は六傑杯についての話となっていきます。ちなみにコリーダコロシアムは原作から大幅に改造されていますので、皆さんのご想像にお任せします。
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