巨人の村の娘は人間   作:UMI0123

34 / 35
西の海
大海賊


 大海賊時代が始まってから10数年の時が経った。その時代はロジャーが生きていた時代から新世界で名を上げていた大海賊たちによって制されようとしていた。彼らは四皇呼ばれ、新世界に君臨していた。

 しかしそんな大海賊たちに挑み、新世界を暴れ回る二名の海賊がいた。

 

 ――実力者揃いの幹部たちを築き上げた信頼と実力でまとめ上げ、新世界を暴れ回る大海賊、“赤髪のシャンクス”

 

 ――自身のカリスマ性と実力で個性的で多種多様な部下たちをまとめ上げ、四皇との同盟を盾に他の四皇に奪われたナワバリを奪い返し、四皇に近い勢力まで拡げた手腕の持ち主、“創造のディアンヌ”

 

 そんな彼女が率いる創造海賊団が本拠点としているのは海賊たちが溢れる通称“海賊達の楽園”と呼ばれる海賊の島“ハチノス”。

 そんな海賊の島には未だに勢力を拡大し続ける創造海賊団に入って甘い蜜をすすろうとする海賊たちが集まっていた。しかし集まった海賊は創造海賊団に好意的な者たちだけではなかった。

 

「お、おい本気でやるつもりなのか」

 

「ここまで来たんだ……どっちにしろやらなきゃ消されるだけだ」

 

「ふむ、何をやるんだ?」

 

「なんだこのアマ」

 

「こ、こいつは!?」

 

 人気のない路地裏で創造海賊団の転覆を狙う若い海賊達がいた。彼らは周りに人の気配がないのを確認して話していたが、気付かぬうちに背後を取られていた。

 

「まあ言わなくても分かっていると思うが……ケジメを付けてもらおうか……そうだな……ここで全財産渡したら考えてやってもいい」

 

「こ、こ、これがおれたちの全財産です!!」

 

「何やってんだてめェ!!」

 

「し、知らないのか!?こいつ……この人は創造海賊団の三英が一人“女傑”マーリンだぞ!!?」

 

『創造海賊団三英 経済師団師団長 “女傑マーリン” 懸賞金9億8000万ベリー』

 

 セミロングの綺麗な黒髪に、黒を基調とした露出度の高いドレスを身に着け、赤の傘を雨も降っていないのに差す女性。

 彼女のことを知る男は無知な船長に声を荒らげた。

 

「あのインペルダウンの監獄署長マゼランと引き分けた女だぞ!!?……それに裏社会にも顔が効く!!」

 

「だいぶ物知りみたいだが……どこからの情報か聞いておきたいな……タダとは言わない。……そうだな話してくれたらこの金は返してやっても構わない」

 

「――っ!本当ですか!!?さっき創造海賊団の幹部を名乗る綺麗な女性に教えてもらいました!!」

 

「ふむ……ステューシーか……お礼は言っておこう。ありがとう」

 

 マーリンは話を聞き終えると、男たちから受け取った金を二人に向かって放り投げるとその場から去って行った。彼女の指からは血が垂れていたが、指摘出来る者はいなかった。

 

「見逃すんじゃあ」

 

「全財産を渡してくれたら考えてやると言った。そして私はお前らに金を返した。これで取引は無効になったはずだが?」

 

「そ、そんな………」

 

 路地裏から抜けたマーリンは自身の情報をチンピラに話したステューシーを探すべく見聞色の覇気を集中させた。

 案外近くに居たので直ぐに見つけることが出来て、何故マーリンの情報を流したのかを問いかけた。

 

「あら?貴女のような強い方の情報は知ってもらった方がいいでしょ?」

 

「ふむ……それもそうだな。私も一つ情報を開示でしておこう。“CP(サイファーポール)-AIGIS(イージス)(ゼロ)”諜報部員、“歓楽街の女王”ステューシーのことは調べがついている」

 

「――っ!なんの事かしら?私は裏社会を渡り歩いて来たからある程度はCPとも取引をしたことがあるけど……私自身はただのブローカーよ」

 

「まあいい。六傑に流す情報はそこまで大事じゃないからな。役に立つ限り首を切る事は無い」

 

「な、何を言っているか分からないわね」

 

 マーリンはステューシーに忠告した後に島の中央にそびえるドクロの形をした大きな岩で出来た創造海賊団拠点に向かった。

 ステューシーはマーリンによってもたらされた情報にポーカーフェイスを崩してしまい逃げるかのようにマーリンの前から去って行った。

 だが、ディアンヌやマーリンは味方にスパイが居ようと気にしていなかった。二人の考えは実力があれば誰だろうと味方に招き入れ、使えなくなったり、完全に裏切ったりしたら消すことになるだろうが、役に立つ間は特に手を出すようなことはしない。

 

「何やってんだマーリン。ケツから言って遅刻だぞ」

 

「……そこの路地に死体が転がっているから処分しておいてくれ」

 

「……ケツから言ってやるしかないか」

 

 今日は半月に一度行われる幹部会だった。しかし予定時刻から5分過ぎていたので、探しに来たデルエリに先程殺した二人の死体を任せて、中央の岩へと向かって行った。

 デルエリは独特な言い回しで死体を片付けるみたいな面倒なことはやりたくないが、上司の命令なので仕方ないからやるしかないかという意味で独り言を漏らした。

 

 

 ハチノス中央に位置するドクロの形をした大岩の中は綺麗に整えられており、そこには大きな椅子があり、まだ若いように見える女性が座っていた。彼女の隣には巨漢の男と三英の二人、そして彼女らの前に六傑が集まっていた。

 遅れて来たマーリンには批判の声と擁護の声が半々くらいだった。

 

「少し遅れた。済まないな」

 

「全然大丈夫だよ。ステューシーだってさっき来たばっかりだし」

 

「あまり甘やかすなディアンヌ。下の者に示しがつかないだろ」

 

「……私は間に合ってますから。ギリギリなのと遅刻では天と地ほど違うわ」

 

 歓楽街の女王と呼ばれているステューシーは自分のスタイルに自信を持っていたが、創造海賊団に入って以来その自信を無くしかけていた。それは自分以上の実力、同等のスタイル、裏社会へのコネ、そしてすべての女性が羨む老いを止めることが可能な悪魔の実。自分の上位互換とも呼べるマーリンが居たからだ。そのためステューシーは一方的にマーリンを敵対視していた。

 二人の険悪な雰囲気を感じ取ったのか、たまたまなのかは定かではないが、普通の人間よりかなり小さな男が話に割って入った。

 

「植物の世話をしたいので、早く話を進めるれす!!」

 

「レオグロウの言う通りだ。私は今の短い時間でも莫大な(かね)を生み出せる。他の奴らもそうだろう?ならこの無駄な時間は我々全体の損失になるはずだ」

 

 小さな男、レオグロウは自分のシノギの一つである植物の育成を早くやりたいがためにピリピリしていた空気を断ち切り話を無理矢理進めた。

 それに賛同するかのように見せかけて、ピンクの派手なスーツを着込んだ高身長の男は自身の手腕を自慢した。

 

『創造海賊団三英 財務師団師団長 “黄金帝ギルド・テゾーロ” 懸賞金10億5000万ベリー』

 

「テゾーロの言う通り過ぎたことを考えても時間の無駄だね。各々のアガリを回収するよ」

 

「まずぼくからは各種フルーツ、野菜の盛り合わせれす!!」

 

 初めにアガリを渡したのは創造海賊団の最高幹部に位置する三英の一人であるレオちゃんことレオグロウだった。彼は環境師団の師団長であり、主なシノギは植物の育成の研究だ。そのため彼が提出したアガリはレオグロウが能力を使い品種改良を行い、丹精込めて育て上げたフルーツと野菜だ。

 

『創造海賊団三英 環境師団師団長 “樹精のレオグロウ” 懸賞金8億3300万ベリー』

 

「う〜ん〜♡!!やっぱりレオちゃんのフルーツは美味しいね!!……野菜は……後で食べるね。……きっと」

 

「おれが料理してやるから野菜もしっかり食べろよ」

 

「え〜……検討するよ。あはは……よし!!次は誰の番かな?」

 

「話を変えやがって、今日の晩飯に出してやる」

 

「そ、それだけは〜〜!!……って!?なんでキャンドラーに私の晩御飯決められてるの!?僕の方がえらいんだよ!!!僕団長だよ!?君は副団長、分かる!!?」

 

「それとこれとは別だ」

 

 漫才みたいな掛け合いをしている二人。彼女らは一見可愛らしい女性さんとイケオジのミスマッチの組み合わせだが、彼女らは創造海賊団のNo.2とTOPだ。

 イケオジ……多種多様な海賊団が所属する創造海賊団を纏めるディアンヌの最初の仲間であり、ディアンヌに負けず劣らずのカリスマ性を持ち合わせる男。

 

『創造海賊団副団長 “破天のキャンドラー” 懸賞金22億4760万ベリー』

 

「酷いよ〜!!料理を作ってくれることはありがたいけどさぁ〜……はぁ、仕方ないから食べてあげるよ」

 

「偉そうだな。……まあ偉いんだが……なんか気に食わねェ。だが時間もねェ。次のやつは誰だ?」

 

「私が出そう。仕事のメインがカジノだからメインは金になるが……構わないだろう?」

 

「お金なんていくらあっても足りないくらいだからね。順番だとマーリンになるかな?」

 

 レオグロウと違いテゾーロのシノギはカジノを中心としたグラン・テゾーロの経営なので、特産物などはないが、国を経営しているため他の幹部とは比べ物にならないほどのアガリを納めることが出来る。その莫大な量の資金の一部は他の幹部たちの活動資金にもなっているため、創造海賊団の屋台骨と言っても過言ではない。

 次にディアンヌに指名されたのはマーリン。彼女は元々ドレスローザ商会の会長を勤めていた経歴を持っていた。商会長として信頼を勝ち取り、手に入れたコネを海賊になってからも存分に使い裏社会との繋がりを手に入れていた。そのため彼女のアガリはお金ではなく裏社会の繋がりを利用して手に入れた商品が主だった。

 

「今回はこれだ」

 

 彼女が懐から取り出したのは一つの宝箱だった。それを受け取ったディアンヌが開けると中に入っていたのは変な模様の果物……悪魔の実だった。

 

「へぇ〜、悪魔の実かぁ〜〜。ちなみに種類は分かってる?」

 

「今回はドフラミンゴも手を出して来たからな。少々お金は掛かってしまったが、自然系(ロギア)だから損ではないだろう」

 

自然系(ロギア)かぁ〜……キャンドラーは要らないよね?」

 

「前に言ったかもしれねェがおれは悪魔の実は食うつもりはねェ。食べたとしても自身の膂力が重要な動物(ゾオン)系だ」

 

 キャンドラーは悪魔の実の力を信用していなかった。悪魔の実の力自体はディアンヌを傍で見て来たため知っているが、最終的に勝敗を決めるのは覇気と膂力だと思っているため、変則的な攻撃を得意とする超人系(パラミシア)は自分には向いていないと思っており、自然系(ロギア)は覇気を持たない相手からのダメージを受けなくなる。そのため油断を生んでしまうと考えているため、悪魔の実を食べるつもりはなかった。

 

「与えるとしたら六傑なんだろうけど……なんか自然系がしっくりくる人が居ないんだよね〜。ちなみに欲しい人居る?」

 

 彼女の問いかけに既に悪魔の実を食べた者を除いて思案顔をした。彼らの実力は四皇の幹部たちにもある程度戦えるほど強くなっている。しかし自然系を食べたとして、四皇幹部たち相手に有利になるかと言ったら、NOだ。四皇幹部たちは基本的に武装色の覇気を使いこなし、自然系の体に攻撃を当ててくる。そのため自然系の優位性は全くない。その実に応じた攻撃手段を手に入れることが出来るが、今から食べたとして完全に使いこなせるまでに時間が掛かる。その間に強力な動物系が手に入ったとしたら、簡単に追い付かれてしまう。動物系は実力者が食せば、他の実に比べたら簡単に使いこなすことが出来る。この場に居る幹部たちはそう考えていたため誰も手を挙げなかった。

 

「やっぱり?……どうしよっかなぁ〜。幹部候補に与えてもいいんだけど……賭けに出て見習いにあげようかな?どう思うキャンドラー」

 

「おれは団長に従う」

 

「こういう時だけ団長って言うのはせこいと思うよ!!?……もう、僕一人で考えるかぁ〜。よし!悪魔の実は次の幹部会までに決めておくから六傑のみんなのアガリを受け取っていくよ!」

 

「誰も行かないのならおれが行こう」

 

 周りを見渡して誰も前に出ないのを見て先頭に立ったのはオールバックにした黒紫色の髪に整えられた髭を生やした男。

 

「モンピートはどのくらいかな?」

 

「……三英に比べたら少ないが他の六傑よりかは豊作だ」

 

「そらァは聞き捨てならないにゃあ。わしのアガリはそこのジジイよりかは多いぜよ!!」

 

「……低レベルな争いだ。それより団長にはおれの牛肉を食べてもらおう」

 

「ねぇヴェルゴ?流石にアガリの摘み食いはいただけないよ?」

 

 モンピートが他の六傑より自分が上だと思わせるような発言にチーターのミンク族が食ってかかった。

 二人の言い合いを低レベルだと言い放ったのは元海軍将校のヴェルゴだ。彼は口元に食べかけのハンバーガーを付け、アガリを提出した。その姿にディアンヌは直ぐにツッコミを入れたが、ヴェルゴは口元に食べ物を付けているのが日常だったので、特に反応を見せずに無視をした。ヴェルゴもヴェルゴで口元にハンバーガーがくっついてることに気付いていないので、何故摘み食いがバレたのか分かっておらず、頑張ってポーカーフェイスを貫き通そうとしていた。

 

「……今回もハンバーガー向けの牛肉だ。キメ細やかな霜降り牛になっている」

 

「別にいいんだけどさぁ〜、ステーキ向けの牛肉を作れない?」

 

「牛肉はハンバーガーになってこそ……そこにレオちゃんが作ったポテトを添える……完璧だ」

 

「牛肉なんかよりわしの作ったワイン“ミーク”の方が美味いぜよ!!」

 

「自分の名前をワインに付けるなんてイタすぎるぞ」

 

 ハンバーガーが大好物であるヴェルゴがハンバーガーとそのセットを完璧と言ったことにミンク族のミークは、張り合うように自分の作ったワインを掲げた。

 ミークは自分の名前をワインに付けているのだが、イタすぎるとモンピートにツッコまれてしまった。しかしミークは自身の何処がイタいのかが分かっていないため首を傾げるだけだ。

 モンピートのその言葉に青筋を浮かべる者がいた。

 

「自分が作った物に自分の名を付けて何が悪いんだ?なぁ答えてくれモンピート」

 

「――っ!!すまない。そんなつもりはなかった」

 

「違う私は謝って欲しいのではなく、何が悪いのかを聞いている」

 

「ダメだよテゾーロ。弱い者イジメは良くないよ」

 

 テゾーロはミークを問い詰めた。彼の凄みに当てられたモンピートだけでなく近くに居た他の六傑たちも無意識に一方後ろに下がっていた。

 ディアンヌが六傑たちを擁護するために発した言葉は逆に六傑たちを馬鹿にしているようにも取れる。そのため六傑たちの空気はピリつき始めた。

 

「あれ?なんか悪いこと言っちゃった?でもさぁ君たちが弱いのは一目瞭然だよね?ドレスローザ包囲網の時だって四皇の幹部たちに勝てなくて三英に助けて貰ってたでしょ?」

 

「……あれから私たちも成長しています。団長には及ばなくても……マーリンには負けない筈だわ」

 

「ふっ、笑わせるな。私に勝とうなど百年早い」

 

「なら私の前で戦ってみる?もしステューシーが勝ったら三英の席を譲ってもいいよ?」

 

 ステューシーはドレスローザ包囲網の頃でも完成された戦闘技術を持ち合わせていたが、そこにプラスして武装色の覇気を鍛え上げることによって、今では三英であるマーリンにも負けないと自負する程の自信をつけていた。それは他の六傑たちも同じである。ドレスローザ包囲網では過半数が四皇の幹部たちに敗北を喫していた。その敗北を胸に今日まで戦闘技術だったり、覇気や悪魔の実を鍛え上げてきた。

 しかしマーリンは自分の実力が三英に追いついたと言うステューシーを鼻で笑った。ステューシーたちが鍛錬を積んでいたのと同じように三英たちも鍛錬を怠らずに続けていた。それは実力に圧倒的な差があるディアンヌが居るからだ。巷ではディアンヌの実力は四皇に迫るものがあると言われている。そのため最高幹部である三英たちも四皇幹部に負ける訳には行かないという心情を皆持っていた。

 

「タダで受けるって言うのは我々には旨味がないな」

 

「マーリンの言う通りです団長。もしやるって言うのなら赤字分を補填してからでないと」

 

「そうれす。わざわざ戦う必要なんかないれす!!六傑が我々三英に勝てるわけないれす」

 

 三英たちが言うことも一理ある。三大機関襲撃によって停止されていた業務による赤字はテゾーロのポケットマネーによって補填された訳なのだが、無駄だと分かっている赤字を続ける程テゾーロは優しくなかった。それはマーリンとレオグロウも同じだ。マーリンは七武海から追い出された際に商会長としては表舞台から消えざるを得なかったため、今のシノギの基本は裏社会との取引なためぼったくられないためにも自らが取引に向かう必要がある。レオグロウが管理する植物たちはレオグロウの能力によって成長させた物なため本人が必要なのは誰の目を見ても明らかだ。

 そんな彼らの時間を補填する程のお金は六傑たちに集められるわけなく三英に挑むのを諦めてしまった。

 

「……思いついた!!」

 

「いきなり大声出すなよ。二日酔いなんだから頭に響くじゃねェか」

 

「あ、やっぱり?機嫌悪かったもんね……てか、大事な会合の前日に二日酔いになるまで飲むのはやめようね」

 

「仕方ねェだろ。昨日はいい酒が手に入ったんだから」

 

「ねぇ、そのお酒僕知らないんだけど!?」

 

「わしの程ではないが美味かったぜよ!!」

 

「あれは美味かったな。なあアーサー」

 

「ええ、良品があまり出回らない“西の海(ウェストブルー)”のお酒の良品でしたから」

 

「あれ?幹部全員飲んでたりする?」

 

 ディアンヌの質問に幹部たち全員が頷いた。お酒を飲まなそうなレオグロウですら頷いているのにディアンヌは驚愕していた。

 トップであるディアンヌに襲った海賊から手に入れたお酒を報告していないのには理由があった。創造海賊団の裏ルールとして“ディアンヌにお酒を提供してはいけない”というものがある。これはドレスローザで行った宴会にて酔ったディアンヌは酷い絡み酒となり、酔いが深くなるとディアンヌは能力を使って絡んだ。絡んだ相手がキャンドラーだったため、怪我するようなことはなかったが、末端の船員が絡まれたら怪我ではすまない。そんな理由からキャンドラーによって発案された裏ルールによってお酒がディアンヌまで流れることはなくなった。

 ちなみにミークがアガリとして持ってきたお酒はキャンドラーと二人だけで居る時に開けられるので、例外だ。

 

「私も飲みたかったのに……まあいいや。……キャンドラーのせいで話が逸れちゃったけど、僕が出すお題に答えられた人は僕のポケットマネーで肩代わりしてあげてもいいよ」

 

「肩代わりってなんのですか?」

 

「そりゃあ三英に挑む際に発生する赤字の補填だけど?」

 

「――っ!……そのお題ってのはどんなのでしょうか?」

 

「僕が飲めなかった“西の海”のお酒で一番美味しいのを持ってきた人のを肩代わりしてあげるよ。あ、条件として孤児院の戦闘能力上位六名から各々一人ずつ連れて行ってね」

 

「足でまといを連れて行けと?」

 

 孤児院の子供たちはそこらの子供とは比べ物にならないほどの実力を持ち合わせているが、六傑からしたらそこらの子供と変わりなかった。

 

「そうしないと君たちには簡単すぎるでしょ?そのくらいのハンデがないと五大ファミリーが可哀想だもん。……ちなみに子供を死なせたら……僕がそいつを殺すから

 

「あまり脅してやるなディアンヌ。これも修行だと思ってやればいい。足でまといを抱えた状態での戦闘ってのはだいぶ厳しいもんだ。ドレスローザ包囲網がいい例だ。ディアンヌが本気で能力を使えば、攻めてきた敵はカイドウを残して殲滅出来た」

 

 ディアンヌは自分の部下である六傑を完全に下に見た発言をした。彼女が条件をつけたのに失敗したら殺すなどと言うのは理不尽だと誰もが思った。しかし彼女の顔から見るに冗談とは思えないので、気を引き締め直した。キャンドラーは今回のお題に正当性を持たせるためにディアンヌを例に出した。

 そんなキャンドラーの発言に六傑たちは息を呑んだ。普通は妄言に聞こえるような発言も実力者であり、この中で一番ディアンヌと付き合いが長いキャンドラーが言うからこそ説得力があった。

 

「お供に連れていく子供は早い者勝ちだよ。じゃあよーい……スタート!!」

 

「“手品師の悪戯(コンジュラー・ジョーク)”」

 

「ニャ!?出遅れたぜよ!!?」

 

 唐突に開始を宣言したディアンヌの声にいち早く反応したのはモンピートだ。彼は某外科医の如く島の港に意図的に置いてある大きな岩と自身の場所を入れ替えた。

 他の六傑はそのような便利な能力を持ち合わせていないので自分の足で港へと向かって行った。

 部屋に残った三英と団長、副団長は誰が一位を取るのか、予想し合っていた。

 

「やっぱり古参のアーサーに勝って欲しいな〜〜。でもモンピートの悪魔の実は便利だよね〜〜〜〜」

 

「アーサーは難しいだろう。団長と会った時ならまだしも、今じゃ、隠居人みたくナワバリの外に出てないからな。それに対してヴェルゴは海軍の頃の名残か知らないが、外の海賊を潰し回ってるらしいからな」

 

「ぼくはカンツイに勝って欲しいれす。彼は植物に水を掛けてくれるから勝って欲しいれす」

 

「賭けるか」

 

「賭けをするのなら私が取り仕切りましょう。そうですね……掛け金の三倍を支払いましょう」

 

 キャンドラーの提案を皆が承認する前にテゾーロが取り仕切りを請け負った。わざわざ止めるようなことでもないので、自分の賭ける人を誰にしようかと考えていた。

 ディアンヌはいち早く賭けようとしたが、ディアンヌの声をかき消すように三英とキャンドラーが賭ける相手を叫んでいた。

 

「ぼくはカンツイれす!!」

 

「私はアーサーとヴェルゴに賭けよう」

 

「おれはミークとステューシーだな」

 

「なんで僕が最後なのかな!?まあモンピートが確率高そうだし別にいいんだけどさぁ……最近団長としての威厳てものがない気がする」

 

「元々威厳などないんだから心配するなディアンヌ」

 

「余計に酷いよ!!?」

 

 各々自分が勝つと思う人にお金を賭け始めた。そして最後に残ったディアンヌは最近自分に威厳がなくなってきていると思い始めていたが、キャンドラーによって元々威厳なんてものは無いと分からされてしまった。

 

「もう、みんな酷いんだからぁ〜〜〜、でも、でも〜〜そんな君たちも本当は僕のこと尊敬してるんでしょ」

 

「実力とカリスマ性は尊敬していますが……人としては……」

 

「はっきり言ってやれ、お前は性格ブスだってな」

 

「性格はブスだけど顔は可愛いってこと?ありがと〜〜〜♡!!」

 

「頭痛くなるポジティブさだな」

 

「その頭痛は二日酔いのだろ」

 

 

 ――海軍本部

 

 ハチノスで明るく六傑を見送ったディアンヌたちは知らなかった。今まで六傑全員がまとまって同じ目的地に向かうことは無かった。それは六傑間の仲が悪かったこともあるが、一番の理由は大抵のことは六傑が一人向かえば事足りていたからだ。

 そんな六傑がまとまって“西の海”に向かったとなれば、海軍は警戒せざるを得ないだろう。ディアンヌが想像していた以上に海軍は事を重く捉え、大将の派遣も考えていた。

 

「何故だ!赤髪が“東の海(イーストブルー)”から“偉大なる航路(グランドライン)”に戻ってきたと思えば、今度は創造の所の六傑が“西の海”で勢揃いだと!?」

 

「そうカッカするなセンゴク。赤髪もそうじゃが、穏健派なんじゃから気にせんでもいいじゃろ」

 

「創造が穏健派だと!!?あいつらは三大機関襲撃を皮切りにハチノスで起こった事件!!……そして四皇のナワバリにちょっかい出した。結果、四皇のナワバリ近くの治安が急降下しておる!!」

 

「ハチノスでの事件は海賊の抗争じゃし、四皇の件もナワバリを放置し続ける政府の怠慢が招いた結果じゃあ。わっはっは……!!本当にクザンに言った通りになったわい」

 

「失礼します」

 

 キレながらもこれからの方針をどうするか考えているセンゴクと何も考えてなさそうで、何も考えていないガープが話している部屋を巨大なノックの音と共に体の色が濃緑の巨大な男が覗き込んでいた。

 

「どうしたんじゃドロール(・・・・)?」

 

「お久しぶりですねガープ中将。要件ですが……私に任せて頂けないでしょうか」

 

「……なぜ知っている?この件はまだ下には話してないぞ」

 

「私は個人的に創造に興味があり、独自に調査をしています」

 

「前にも言っておったな……六傑全員の相手になるかもしれないが、大丈夫か?……言いたくないが、奴らは強いぞ」

 

 部屋を覗いていたのは海軍本部“中将”ドロールだった。彼はジョン・ジャイアントが海軍に入隊してから、少しして入隊したのだが、その悪魔の実の能力と巨人族の膂力、彼の掲げる正義を評価され異例の昇進を重ねた結果、ジョン・ジャイアントを超えて中将までのし上がった男だ。

 

「知っています。しかし報告書を読んで、彼女が海賊になった理由を知りましたが……私の同胞である巨人族が死を恐れず……政府のエージェントに挑んだ結果……同胞は死に……彼女に過激な思想を植え付けてしまった。……それは我らの巨人族としての血がそうさせた……その責任はこの手で取らなければならないはずだと思っています」

 

「彼女のような海賊が産まれたのは政府の責任じゃ、お前が気にするようなことではない!それでも納得出来ないって言うのなら行けばいい」

 

「ガープ!!勝手に決めるでない!!!創造海賊団は四皇に並び、“海軍特殊司令部”の管轄だ!」

 

「……では、異動願いを出します」

 

「――っ!相当な覚悟を決めているのか……分かった。今回の件はドロールに任せる」

 

「了解しました!」

 

 部屋を覗いている状態で指令を出された。傍から見たら異様な光景だったが、彼らは至って真面目だった。

 ドロールの覚悟を見せられたセンゴクは仕方なくドロールに西の海に向かうように指令を出した。

 

「……創造か……子供のような感じに思えたが……彼女の闇はどこまで深いんだ……」

 

 センゴクはガープが部屋から居なくなると、壁に貼られたとある紙を見て、独り言を呟いていた。

 

『創造海賊団団長 “創造のディアンヌ” 懸賞金25億ベリー』




ここから原作に向けて進んでいきます。
三大機関襲撃の終わりに述べられた一件はもう少し先で話されます。
この話を作ってる最中に1059話が出て、ハチノスに王直が居たことが分かってしまったので、曖昧に事件としか書けませんでした。もっと詳しいことが分かれば後に過去回想として出すかもしれませんが、今のところは話を考えてはいません。
創造海賊団の懸賞金が上がったのは、三大機関襲撃の際ではなくハチノスに拠点を置いた際に上がりました。
金獅子の懸賞金も出そうかとも思いましたが、話の流れ上金獅子を出すのが難しかったので、いつかは出そうと思います(出すとは言っていない)
次回から西の海だったり、残った人達だったりの話になっていきます。

感想、評価をして頂けたら嬉しいです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。