いぬも歩けば棒に当たる。お兄様が歩けばライスを拾う 作:祭囃子.
「しまった米買うの忘れた。」
それは珍しく残業をした帰り道、久々にカレーでも食べようかと考え家にない玉ねぎと人参、目に留まったカレールーを買った時の事。
どこか投げやりな雨が降る中、弱々しい街灯に照されながら傘を差して歩いていた。
家にもう少しで着く所で電信柱の下に大きな耳が照らされているのが見えた。雨が降っているのに傘も差さず、薄紫の制服を着て泥で汚れた小さな帽子を頭に載せていた。訳ありそうな彼女を無視していくわけにもいかず、話し掛けることにした。
「...生きてるのか?」
その言葉にウマ娘は耳をぴんと張り反応する。しかしこちらの質問には答えず耳は再び情けなくしおれる。
「面倒くさいものを見つけたもんだなぁ」
この街じゃあまり見ないが治安の悪い街では道ばたで暮らすウマ娘も珍しくはない、ほとんどがレースに負けて才能の差や残酷なレースの世界に絶望し、路頭に迷ってこうなる者が多いのだと父は教えてくれた。
話しかけておいてこうするのは人としてどうかと思うがやっかい事を家に持って帰るような物好きではない。
「ま、これでも食いな」
かと言って見捨てるのも後味が悪いので買った人参をウマ娘に与える。彼女がむさぼり食ってる間に去るとしよう。夢中で食べている彼女を尻目に帰路に戻る
「っ!ま、待って...!」
帰ろうとする私に気づいたのか彼女は私の服の裾を掴んできた。寒さでか震える小さな手が痛々しく見えるがもう一人養う余裕はない。
「すまん」
そう言ってはらうとあっけなくその手は地面についた。その気になれば成人男性も顔負けの力を持っているだろうに。それとも何日も食べておらず力がでないのか。
「お願い…置いてかないで…もう走りたくないの…お願いぃ…うああぁぁ」
1歩、また1歩と離れていくごとに彼女の声は悲惨になっていき、ついには泣き叫び始めてしまった。
気になってしまいちらりと後ろを見ると、彼女は雨水と涙でぐちゃぐちゃになりながらはらわれてしまった腕を私の方に必死に伸ばしていた。
その光景は見捨てた私にはずきんと深く心が傷んだ。
周りには彼女と私以外、誰もいない。
彼女の泣き声と雨音しか聞こえない。
「…あぁもう!」
頭をがりがり掻いて彼女の方に近寄る。そうして倒れた彼女を担ぎ上げ、再び家の方に歩き始める。
するとぽとりと何か落ちたような音がして、後ろをみるとぐしゃぐしゃになった手帳のようなものが落ちていた。
このウマ娘のかと思い拾うと名前はひどく汚され上手く読めないが『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』と書いてあるのが見えた。
☂
普通見知らぬ男に運ばれそうになったら抵抗するのが定石な気がするが、このウマ娘はぴくりとも動かずされるがまま、私の家まで運ばれた。とはいえ運ぶ私も私だが。
重い荷物運びながら乱暴に玄関を開ける。靴を手も使わず脱ぎ捨て、買ってきた物も適当に放り投げる。そしてウマ娘を慎重に、優しく椅子まで運んで下ろす。
しかし改めてまじまじとみても謎のウマ娘だ。ここらじゃ見ない薄紫の制服を着ていて毛先がはねたロングヘア。バラの装飾のついた小さな帽子、どこかで見たことのあるような姿だったが出てこないので考えるのは止めてタオルを持ってくることにした。
タオルとさっき放り投げた食材を持って再びリビングに戻るとそのウマ娘は身を丸めて震えていた。
雨に打たれて寒かったのかと近寄ると小さく何かを話していた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいライスのライスのせいで...」
今にも消えそうな小さな声で話しているため話している内容は全くわからなかったが悲観的な事を話しているようだった。反応に悩むため話を遮るように話しかけた。
「いきなり運んで言うのもなんだが名前は?」
そう尋ねるとウマ娘は妙に狼狽え目を泳がせた後、私の持つビニール袋に目線を合わせた。
「ら、ライス…カレーライス…です…」
いまいち信憑性のない名前だがそもそもウマ娘のレースに興味もないのでそうかと呟きライスの頭をわしわしタオルで拭く。
「あーライス?腹減ってるか?」
「ヒッ……あ、あの…その…」
ライスという単語にライスは大袈裟ともいえるほど肩を震わせ手で耳をふさいだ。ライスと呼ぶのは避けた方が良いのかもしれない。
「えーじゃあカレー?飯食いたい?」
カレーと試しに言い換えてみるがライスは一向に反応せずまたぼそぼそと何かを呟き始めた。このまま呼び掛けても私の声は届かなそうなのでタオルをかけたまま放っておき、遅めの晩飯に取りかかるのであった。
なんとか2食分の米は合ったのでカレーを作ることにした。到底客人に出す飯とは思えない野性味あふれる料理だが想定外の来客なので許してもらおう。
「ほれカレー出来たぞカレー」
雑な晩飯が出来た所でライスを呼ぶが反応がやはりない。ライス、と呼ぶとびくりと体を震わせ錆び付いたような首の動きを見せてようやくこちらを向いた。
「な、なん…でしょうか…」
「ううん、カレーライス。」
「…?」
「まいいや食えほら」
噛み合わない会話を早々に捨ててスプーンで掬ってライスの口に半ば無理矢理入れる。するとゆっくり咀嚼して大事そうに飲み込んだ。旨いか不味いかと聞こうとすると間髪入れずに私からスプーンを取りガツガツと食べ始めた。
女の子がしてはいけない食べ方をしてるなと思いながら私も食べ始めた。
少し食べて思っていたより辛かっため卵を入れるかと席を立ち、ライスの方に目を向けると彼女は泣きながら食べていた。相当訳ありそうだったので視線を冷蔵庫に向け卵を探した。
新しく買ったルーは外れだなと自分の運を恨みつつようやく食べ終わると彼女はもう食べ終わっており、眠そうな目でかくんかくんと船を漕ぎ始めていた。流石に他人の身体を洗うのは面倒なためな揺すって起こした。
「あっ…ごめんなさい…ライスまだお礼すら言ってないのに自分勝手に寝始めちゃってごめんなさい…」
「そういうのいいから風呂入れ風呂」
「え…?え、ええっと…ら、ライス…」
「あぁ、はいこれシャンプー、これがボディーソープな。着替えは…これで良いか?脱いだ服はここにでも入れといて。じゃ」
また何か始まりそうな雰囲気だったので風呂場に運びつつ伝える事を伝えて風呂場に置いてきた。
話を聞けば聞くほどライスは闇が深そうで相当訳ありな子を拾ったようだ。
「こりゃとんでもない物を拾ったもんだなぁ」
そんな物思いにふけつつライスが戻ってくるのを皿洗いをしつつ待ち始めた。
「あ、あの!」
「ん?」
珍しく二人分の皿洗いを終わらせテレビで芸人が叫んでいるのをぼけーっと見ていると後ろからライスの声がした。振り返って目を合わせるとまたライスは目に見えて怯え、目をそらして身を縮めた。
「お、お風呂...お借りしました...」
それを聞いた私はおもむろに立ち上がり、泥やらが落ち綺麗になったライスに近寄る。一歩近づくごとにライスは更に怯えて揺れる瞳でこちらを見てきた。
手に届くような距離までライスに近づくと、ライスは何かを恐れるように震え始めた。その姿が痛々しく、うざったく見え、ついライスの頭を撫でてしまった。
「私はお前に危害なんて加えないぞ」
そうやって数秒撫でた後に自分がやっている事に気づき慌てて手を離し、逃げるように風呂場に向かった。後ろから泣き声が聞こえ、やってしまったなぁと1人反省しながら風呂に入ることになった。
風呂から出るとライスはソファにもたれかかって寝ていた。両目の周りが少し赤みがかかっていたのであの後相当泣いたんだろう、と頭の片隅で考えながらライスをベッドに運ぶ。中学生ぐらいの小さく軽い身体を大きなベッドに寝かせて去ろうとすると背中をぐんと引かれた。驚いて後ろを見るとライスが小さな手でつかんでいた。
「お姉様...いなくならないで...」
ウマ娘の力では到底逃げられそうにないため私の手を握るライスの手を両手で包みそのまま膝立ちで眠りにつくのであった。
家出少女概念とライスシャワーの相性が良さそうなので書いてみました。臆病なライスを可愛いと思う人は一定数いそうですがここまで臆病だと好き嫌いが分かれそうですね。私は好きです。人気が出ようが出まいが続きを書いて行きたいです。
それはそうとウマ娘のガシャフクキタルの新衣装でしたね。浴衣きてほしかったなぁ...ネイチャの浴衣姿見たかったなぁ...。衣装ガシャとキャラガシャ変えて欲しいところはある。マチタンとかカフェとか爆逃げコンビとかいつくるかな石が足りませんね。もうちょっと出やすくして欲しいねピックアップ
ではまたご縁がありましたらどこかでお会いしましょう。祭囃子.でした。感想お待ちしてます。