英雄兵士監禁物語 作:木偶人形
うわまぶし!?
久し振りの光で目が焼かれる……って目隠しが外されたのか。
それにしても変な……変な、ゆめ?
あれ? どんな夢だっけか。昔の夢だったよな?
まぁいいか。所詮夢は夢だしな。
体の調子は……うん、良いだろう。手枷足枷首枷はそのままだが眠ってしまっている間に服は着させられた様だ。ちゃんと上半身裸じゃない。やったぜ。
何だ……? 今思考に違和感があったような……?
まぁいいか、魔力同調でやり過ぎれば洗脳の真似事も出来るらしいがメロディア様がそんな事もする筈無い。していたとしても何か理由があって仕方なくだろう。
それにその事に対して気にしていられない事情が出来た。
そう、人間ならば必ず逃げられない生理現象。そろそろ来るかなぁとは思っていたがもしかしたら来ないかもと希望を抱いていた時期もあった。
そう、その事情とは……
───便所行きてぇ(絶望)
声が出せない、自分で動けない、誰も居ない。
漏らした終わる……いや、漏らす事に関しては初めてではないからそこまで羞恥や躊躇いは感じない、戦闘中漏らしたヤツを見たことあるし俺も経験あるし……だが、居るか分からないが雑用の治療師よりも先にメロディア様が来てしまった場合多分俺は情けなさで死ぬだろう。つーかもう殺せ。
気合いを出せば1日ぐらい排出しなくても問題ない様には出来るには出来るが……やりたくない。普通に辛い。日常で漏らすのと戦場で漏らすのはやはり精神的な負担が桁違いだ。後者は仕方ないか、と割り切れもするが前者は普通に不甲斐なさとかで感情が滅茶苦茶になる。心が折れるわ。
念のため周囲に視線をやっても用を足す様の壺やそれに類ずる物は見えない。
焦りが生まれるのを感じる。どうにかして排泄を止めるか、便所を探すことを考える。
考えている間に治療師の方が来てくれる事も期待していたがそんな
脱出を試みるか……? 便所に行って帰ってくるくらいなら許されるんじゃないか?
今思えば重篤化するには年単位で時間が掛かるらしいからここまで拘束される謂れはない筈……警戒されてる?
メロディア様なら俺が暴走しても簡単に取り押さえられるだろう、だが俺達は邪神を討伐したと言うことで過大評価を受けている可能性がある。倒せたのは倒せたがあれはあの時のメンバーが居て、その上犠牲が多く出る前提で動いた結果だからな。生き残りの5人でもう一度戦っても今度は半日持たないんじゃないか?
詳しく説明をした宰相殿とその報告を受けた王様しか詳しい事情は知らない。100年前の兵士の俺らの情報とかも残っていないだろうし、探らせるつもりは無いと王様は言っていた。
ぽっと出の特記戦力として警戒されている可能性があるのか。治療だとしても長期間の拘束で暴れるかも、という予測もあるかもしれない。
そこまで考えたがめんどくさくなって俺は枷を外しに掛かった。
俺は排便がしたいんだ。
師であるメロディア様の前で位見栄を張らせろ。邪神戦の一ヶ月で人間性とか全部削られたに等しいが、だからこそ安全圏に居る間くらいは人間的尊厳を守りたい。
あれこれ理屈こねてみたが小難しいことはない。
俺はただひたすらに便を漏らしたくなかった。
手枷の構造を見る。鍵穴は無い、魔法で施錠解錠が出来るタイプだろう。枷をされた者が魔法を使えなくなるくらいに魔力のという特徴からしても便利なものだ。俺の生きてた100年前には無かったが……予測するに特定の魔力の波か専用の魔法で解錠されるのだろうか?
外すのは至難だな、じゃ鎖の方はどうだ?
ガチャガチャと揺らしてみるがかなり強度はありそうだ。魔力の方は……? 大部分を拡散されながらも僅かに浸透、これ……いけるな?
俺の属性は地属性に少しの幻属性、その他がゴミのように積み重なっている。因みにメロディア様は幻属性が一番高いらしい。
特徴としては地属性が地面等の操作の他物質の強度をある程度操作できる。メロディア様は物質の密度が何やらと言っていたが俺には理解できなかった。アカイは確か……重さ、重力を操っているとか言っていた。
ともあれ普通の頑丈な金属、つまり魔力が流れる様な金属ならば干渉が出来る。内側から広げるようなイメージだ。そうすれば何故かでかくなり、強度が落ち脆くなる。そうなれば鎖を引きちぎれる……筈だ。
早速魔力を通すために集中をする。
ある程度形が出来たところで鎖に魔力を長そうとして、動きを止めた。
枷は特殊な素材で出来ていたのに何故鎖の方はただの強度が高いだけの鉄なんだ? 俺は集中させていた意識を少しだけ戻す。
おかしい、俺は地属性……メロディア様はその事を知っている筈だ。ならこうして鎖に干渉する何て思い付かない筈はない。
俺の魔力操作の技術が想定よりも上回っていた? それとも…………
何か、何かおかしい。違和感がある。
まるで鎖を壊される事は想定済みで、それで何かが起きる……違う何かを見極めている? ダメだ、判断が出来ない。
俺が暴れる、それに対する判断材料? 俺が鎖を破壊して逃げ出そうとすれば誰かが気付く仕組みになっている、または監視されている……理由はどうであれ可能性は高いか。
そうなった場合、下手すると師匠の立場が危うくなる可能性がある。いや王様脅したとか言っていた時点で今更かもしれんが出来るだけ師匠に迷惑をかけたくない。
便意は……我慢するか、一先ず誰か来るまでは我慢して、監視付きで良いから連れてって貰おう。気合いで後1日は耐えられるし。辛いが。
俺が魔力を霧散させたとほぼ同時に部屋の唯一である扉が開かれる。
「気分は、いかがですか? ユート」
いや喋れないんですが……
俺は解放された視線と手振りで特に問題はないことを伝える。
メロディア様の視線が僅かにずれた。鎖を見た……?
観察されてる……っ!
他にも一通り周囲を見渡したメロディア様はゆっくりと俺と視線を合わせる。
平常心、平常心だ。俺は悪いことをしていないし、責められる謂れはない。ただ排便したかっただけだし行動には移していない。
「ちゃんと大人しくしていた様ですね、これなら外しても大丈夫でしょう」
メロディア様が俺に近寄り、その手を俺の後頭部へと回される。外してくれるらしいので抵抗せずに受け入れる。問題があるとすればちょっと視線を何処に向けたら良いのか困惑するくらいか。目の前にメロディア様の顔がある。
「しばらく空けてしまい申し訳ありませんでしたね、ですが雑務を終わらせてきたので今日は1日中一緒に居られますよ」
1日中……?
疑問に思いながらもようやく俺の猿ぐつわが外され解放される。流石に長時間付けられていた為、糸を引いてメロディア様の手に持たれる猿ぐつわの役目を果たしていた布は分厚く、頑丈で……何より俺の唾液を幾分か吸い込んでいた。直ぐに床に置かれるか処分されると思っていたのだがメロディア様にそうする気配はない。
気まずくなった俺は処分するように進言する。
メ、メロディア様? 付けてた自分が言うのも何ですが汚いので処分するか一旦床に捨てませんか?
「…………そうですね。ではそうしましょう」
メロディア様が魔力を一瞬で布に浸透させたかと思うと次の瞬間布は跡形もなく消えていた。
……幻属性によるテレポート? 幻属性にそんな性質があったか?
だがそうとしか見えなかった、今聞く程の事ではないし一旦置いておこう。目の前から消えたという事実が大切だ。
「私の名前を、覚えていてくれたのですね」
……? 当然の事を言われて俺は困惑した。
「それに……浸透している様ですし、後は時間ですね……」
何かを考え込むメロディア様に俺は一先ず優先度の高い用件を伝える。
メロディア様、少しの間で構わないので枷を外していただけませんか?
「……何故でしょう?」
うっ、目が怖い……こちらの全てから情報を抜き出そうとする目だ。観察されている……
だが怯んではいられない、俺は排便……もうめんどくさいので言い直すがウンコがしたいのだ。
俺はその事をメロディア様に伝えた。直接ではなく遠回しに、便所に連れていってくれと。
メロディア様はそこまで話を聞くと納得した様に頷いた。頭を上げた時には既に先ほどの観察するような目は消えていた。
その手を俺の片腕に繋がれた枷に向けるメロディア様。どうやら解放してくれるらしい。
「……聞かないのですね」
何が? そう言い換えそうとして口をつむぐ。
先ずは考える、その必要性を感じた。何に対してメロディア様は俺から聞かれると思った?
分からないが……素直に聞き返すのは、少し不味いと思った。何故、というのは自分でも分からない、ただ体の内側からそんな思考が沸き上がった。
ここは無言を貫く。誰が他に監視しているかも分からない。
ガシャン、という音ともに腕の枷の一つが外れる。体感数時間ぶりに解放された手首を何度か動かして調子を確かめる。
「さて、外れました。……もうひとつの腕の枷を外します。動いてはいけませんよ?」
動きませんけど……メロディア様、ここを出てどちらに行けば便所にたどり着くのでしょう?
「それは教えません、そしてこの建物内を歩く時はまた目隠しをして貰います」
では誰か案内役が?
俺はようやく一般治療師に会えるのかと期待をした。ともかく気兼ね無く世話になれる存在だからだ。
しばらく世話になるのだから人となりを知れる程度に会話ぐらいはしておきたい。
だがそんな必要は無い様で……
「勿論私が案内します」
と言うことらしい、どうやらそれ程までに俺は警戒をされている様だ。過剰に過ぎる。
だが、次の瞬間そんな考察も吹き飛ばされた。
メロディア様が当然の様な表情と声色を維持しながら恐ろしい事を俺に伝えたのだ。
「当然中まで一緒ですよ? 目隠しは外せませんからね……何処か適当な場所に間違えられても困ります」
俺は全力で
ほぼ排便の話だった……