霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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最悪の世代ってカッコいい奴ばっかりだよねって話。



西の海 始まりの霧編
運命を変えた出会い


僕の目の前には体中のいたる所に切り傷がある黒い服に身を包んだ人達が死んでいる。なぜこんな惨状になっているかは分かっている。だからなのか、僕はこの光景を目の前にしてここまでの自分の人生を思い返していた。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

僕は西の海の大きくて人口が多い、マフィアがいる島に生まれた。

物心ついた時から両親は二人で料理屋を開くほど仲が良く、近所からもおしどり夫婦として知られていた。

 僕はそんな両親の元で育てられてはっきり言って誰にも負けないくらい幸せな日々を送っていたんだ。

 

二人共優しくて、時にはダメな事をしたら怒ったりもしてくれたけど、それも愛情を感じるような叱り方で僕は素直で女の子のように可愛い子と評判の子供に育った。

 

それから、7歳を超えるぐらいかな?家の店の手伝いを始めたりして、僕はこの島の事が段々と分かってきたんだ。

 親からも度々言われていたのだが、町の中にはよく黒い服を着た大人の人がいて、その人達はマフィアと言ってこの町を仕切っている人達で、月に一度町の人が住んでいる住居に入るとお金を集めていた。

 

僕はそれが自然の光景として見ていたのだが、マフィアの人達にお金を払えない人が泣きながら土下座している意味はこの時点では僕は分からなかったんだ。

 

でも10歳になる頃にはマフィアの事も分かったんだ。近所の友達の家がお金を払えなくなって、それからマフィアの人達が家に入る所を見てから、その子は見なくなった。そして僕は気づいたんだ。お金を払えなかった人達は殺されるか、連れて行かれることに……。

 

それでもどこか対岸の火事だと思っていた僕はその後二つの事を知ってしまった。

 

一つ目はたまたま見てしまった……海軍の人がマフィアの人からお金を貰っていることころを。確かに海軍の仕事は海賊を倒す事だと思うけど、僕は思ってしまったんだ。『海軍は目の前で困っている人がいても必ず助ける訳ではない事』に。悪を倒す事がかっこいいと海軍に憧れていた僕にとってそれはショックや嫌な気持ちを抱いた。

 

二つ目もたまたま聞いた。僕が夜ふと目を覚ますと母さんと父さんが話す声が聞こえてきたんだ。二人共沈んだ声をしていて、会話の内容が聞こえるようにベッドから出てドアに近づいて耳をすました。

 

「どうしようか……これじゃああと一年もすれば払えなくなってしまう」

 

「だ、大丈夫よ。来年にはきっと売り上げも良くなるし、もしもとなったら他の人に借りましょうよ」

 

「だが、もしも事があると思うと今から怖くて仕方がないんだ……よ。せめてルーファスが大人になるまでは絶対にこの日常を壊したくはない」

 

「そうね。ルーファスさえ無事に育ってくれたら、例え私たちが殺されても後悔はないわ」

 

その後も二人は対策などを練っていたり、あってほしい未来の想像なんかをしていたけど、僕は二人の言葉を聞いていて自分がこんなにも愛されているのとと家がそんなにも苦しい家計になっていることに涙が止まらなかった。

僕はその言葉を聞いた次の日からより一層店の手伝いを頑張っていた。少しでも両親の助けになればとただただ必死だった。

 

それから一年が経ち僕は11歳になる頃になると、日に日に両親の顔が切迫した物になってることが多くなっていた。両親がお金を近所の人に借りているのを見たこともあった。それを見た僕もだんだんと不安が増していっていて、昔見居なくなった友達の顔を思い出したりして僕も殺されてしまうんだという気持ちが大きくなっていっていた。

 

そしてついにその日は来てしまった。その日は今月の徴収の日で、お父さんの顔が不安でいっぱいだと言うのが、見て分かるほどだった。母さんも意味もなく周りをキョロキョロしたりしており、僕も覚悟をしてその時を待った。

 

そしてドアが開かれ外から黒い服を着たマフィアが入って来た。いつものようにそいつらはアタッシュケースを開けると、お父さんに向かって入れろと言って来た。

お父さんはマフィアの言葉を受けると少し深呼吸をすると、マフィア達の足元に土下座をし始めた。

 

「すみません。お金は用意は出来ませんでした……。ですので、来月まで待って下さい!」

 

お父さんのその必死の懇願に対して来ていたマフィアの中で一番偉いと思われる男が鼻を少し鳴らすと、他のマフィアよりも少し前へ出た。

 

「おい、親父さん逃げなかったのは褒めてやる。どうせ逃げても変わらないからな。だが、お金が無いと言うのならそれ相応の物を貰っていくしかないな」

 

そう言ってそいつが近くで見ていた僕と母さんに向かって、首を振った。それと見るとなるや近くにいた他のマフィアが僕と母さんに向かって来て、僕たちを連れていこうと服や体を引っ張ったりつかんで来たりした。

 

「ま、待ってくれ。妻と子供だけは連れて行かないでくれ!頼む!私の事はどうしても構わないから。二人だけは……二人だけは……」

 

「黙っとけ、金も用意できない奴が何を言ってやがる。お前なんかはもうなんの価値は無いんだよ!」

 

その言葉の後に銃声が聞こえると……頭から血が出ていて動かないお父さんとそれを見て叫ぶお母さんの声が聞こえた……。僕は何が起こったのか理解できなくて覚悟していたはずなのに、涙が止まらなくて泣き叫ぶことしか出来なかった。僕がお父さんの姿を見たのはそれが最後だった。

 

僕とお母さんは口を押さえられてマフィアの本拠地に向かうため通りを進まさせられた。その間に僕たちを見た人々の目線が嫌だった。やめてくれ、やめてくれ、やめろ。そんな可哀想な奴を見る目でこっちを見ないでくれ。どうして、どうして、あんな幸せな日常が壊されなきゃいけなきかったんだ。

 

僕とお母さんは本拠地に連れて行かれて、別々に場所に入れられた。

僕が入れられた所には他にも人がいてその全員の目が死んでいたけど、入れられて後も僕は多分一日中は泣き叫んでいたんだと思う。

 

 

それから1週間が経った。

僕はいつかはいつかはここからこの生活から抜け出してやると言う思いとこれは仕方がないんだという思いが混濁していた。

 

1週間の間に教え込まれたことだが、ここでは払えなかった金を仕事をして返していって、返し切ったら出られるらしいのだが、同じの部屋の人に聞いた所使い物にならなくなった時だけ売られるために出れるらしい。

最後の希望を潰されたようなそんな感覚だった。マフィアの言うことを信じていた訳ではないがそれでも希望にすがりたかった。

 

そんな僕は初めてマフィアに仕事を始めると呼ばれた。

お仕事は僕にも出来ることらしく、僕はいつかのために心を壊さずに頑張ろうと心に誓って仕事に挑んだ。

 

 

ここに入れられ初めてから一年が経った。一年の間に僕の白のメッシュが入った黒髪はお仕事の関係上で肩くらいに伸ばされていた。

 

あいつらの言う通り仕事は簡単なものだった。僕は可愛い顔だからと男性の相手も女性の相手もやらされた。相手がして欲しそう顔をするだけでみんな喜んでいた。本当に……簡単な仕事だ。

 

それから母親が死んだと聞いた。死因は自殺か衰弱死だったそうだ。

ほとんどの時間が仕事で自分のことを騙しているからなのか、僕は涙が上手く出せなかった。

 

そんな事などがあったからか、いつからか僕は『これは仕方がない事なんだ』『自由なんてどこにもない』と現実にあきらめをつけていたのだけど。それでも、心のどこかで奇跡は起こると思っている自分の気持ちに嫌悪感を抱いていた。

 

 

そしてついに入れられてニ年が経って13歳になる頃だった。この先この大勢の中の一人として死ぬはずだった僕に奇跡が起こったんだ。

その日もいつもの様に仕事が終わって、いつもの雑居部屋に入って寝ようとしていると、ドアが開いて僕よりも年下の綺麗な格好の少女が入って来たんだ。

 

顔を見るに確か二、三回見た事があったと思うマフィアの娘だった。その子は部屋に入ってくると「この人は違うなー」とか言いながら中にいる人達の顔を覗きこんでいった。僕の所にその子が来たと分かると、癖になってしまった偽りの笑顔を向けて僕は少し嫌味を込めて興味本位で話かけてみた。

 

「マフィアのお嬢さんがこんな場所に何の様ですか?」

 

僕の声を聞いて、顔を覗き込むと「うん、いいね」とか言ってきた。

 

「いいよきみ!その取ってつけたような笑みをしてるのにまだ死んでないその目とか、歳も近いみたいですし……一緒に来て、いや、一緒に来てください!話がある感じです!」

 

こちらを敬ってるのか分からない態度だが、マフィアのお嬢さんのお願いとあれば行かない理由など無いので大人しくついていく。

進んで行くとマフィアのお嬢さんの部屋に着いたようで、中に入れられて2人きりになったのを確認すると、お嬢さんはドアに鍵をかけた。

 

「えーと君名前なんていうんですかー?」

 

身長差と相手がこちらに敬語を使ってきているので、多分僕の方が年上だけど、相手はお嬢さんなんでどんな距離感で話せばいいかすごく迷う。

 

「僕はエルドリッチ・ルーファスです。呼び方はなんでも大丈夫です。お嬢さんの名前も聞きたいですけど……」

 

「じゃあルーって呼ばせていただきますー。私はマグメルって言います。気軽にマグーとでも呼んで下さい。それと私に敬語は使わないで下さいね」

 

「分かったよ。それで話って言うのは何かな?マグー」

 

「はい。話っていうか、お願いみたいなもんですけど……このマフィアを潰して私と一緒に生きてくれませんか?」

 

ん?、僕は聞き間違いでもしたのかな?だってマフィアの頭の娘でしょ?その子が自分の親のマフィアを潰して欲しいと頼んで来て。しかも僕と一緒に生きたいとはどういうことなんだ?

 

「まず理由とか聞いてから決めたい」

 

この一年間で学んだ感情を偽る技術を使い勤めて冷静に聞いてみた。

 

「分かりました。私の親ってマフィアの頭の父親と北の海から来た母親から生まれた所謂愛人の望まれてない子って奴です。母親は私を産んで直ぐに居なくなって、父親には疎ましく思われながら育てられました。だからマフィアの奴らは裏では私を蔑むし、何も知らない人は私の事を恐れた目で見る。私は生まれた時からずっと一人だったんです。それで、この間父親の話を聞いちゃったんです。来月の私の12歳の誕生日に偶然を装って殺すことを」

 

「だから殺される前に殺すんです。でも、私一人じゃ成功してもその先生きられない。それで協力者兼相棒とする人間を探してたんです」

 

僕が思っているよりもマグーは酷い暮らしをしてきたようだった。11年間マフィアの娘というだけでこんな人生になってしまった彼女に僕は悲しさを覚えて、彼女の行動に移す勇気を讃えた。これが僕の求めていたチャンスなのかもしれないが、なぜ僕なのかは分からない。

 

「理由は分かったけど、なんで僕なの?」

 

「それはですね……ほとんど話しかけられた事が無い私に作った笑顔を話しかけた勇気とか、あそこにいたのに逃げる事を諦めてない目をしてるのに、それでいて現実から逃げていない感じのところですかね。それに……勘ですけど、信頼出来ると思いましたから」

 

彼女が僕の事を高く評価している事に驚いている。ここまで評価されてるのは素直に嬉しかった。マグーの話を聞いて、僕はこれが最後の希望なのだと、これを断れば自分は一生あの中だと思えてならなかった。だから僕はマグーと一蓮托生する思いで了承することにした。

 

「分かったよマグーの話に乗るよ。それで作戦とかはあるのかな?」

 

「ありがとうございますルー。作戦はありますもちろん!まず明日このマフィアは海賊と悪魔の実を二つ取引をするんです。そこがチャンスです。結構大きな取引で5億ベリーは入ると言っていたのを聞いていたので、海賊が来るまで準備しているところを狙います。ほぼ全員のマフィアが集まりますからね」

 

なるほど……大きな収入が入ると浮ついている高い位のマフィアがいっぱいいるから潰すにはもってこいというわけだね。僕よりも年下なのにすごいな。

でも、いくら浮ついているといってもマフィアの幹部達をそう簡単に倒せるだろうか?

 

「作戦は分かったけど、武器もない子供の僕らでどうやって殺すのに躊躇がないマフィア達を倒すの?」

 

マグーは「それはですねー」と笑顔を浮かべながら部屋の隅に向かって、床の木を外すとそこから小さい宝箱を取り出した。そしてこちらに戻って来ると、その宝箱を僕に渡してきた。

僕がその宝箱を開けるとその中には白色で周りにイチゴのような点々がある丸い形をした果実が入っていた。

 

「それ何か分かりますルー?それね悪魔の実なんですよー。結構苦労したんですよ。一応娘だから入れる頭の部屋でバレないように隠してあったそれを盗んでくるのは」

 

これが悪魔の実なのか……もしかして渡してきたって事は僕がこれを食べるってことなのかな?それに確か悪魔の実って確かカナヅチになったり色んな種類があるんじゃなかったかな?

 

「悪魔の実っていっぱい種類があるって聞くけどこれは何か分かるの?」

 

「なんと悪魔の実図鑑に載ってたんですよ。そしてこれが世にも珍しい自然系の霧に変化出来る『キリキリの実』だってことが分かったんです!

そして悪魔の実を食べれば常人じゃ敵わない能力が手に入るのでそれで全員殺そうという訳です。私は狙っている実があるので、ルー食べて下さいお願いします」

 

僕が食べることには拒否感は無かった。カナヅチというのもあまり泳ぎが得意では無い僕には関係ないし、人を殺せば真っ当な生き方は出来ないのでその場合力を持っておいて損は無い。それに自然系は無敵って昔友達が言っていたから。

だから僕は意を決してその実を食べた。……吐きそうなくらい不味かった。これは二度と食べたく無いとは思ったが勿体ないので完食はした。

 

「どうです?何か変わった感じはしましたか?」

 

「うん……すごい不味かったけど、確かにいままでの自分とは違う感じがする」

 

僕が意識をしなくても足が霧状になったりしてしまったので、いまいちまだ制御出来てない事を嫌でも実感した。

明日には能力を使いこなせるようにしなければならないので、ギリギリまでは練習しなければ

 

「じゃああらためてこれからよろしくお願いしますねルー。明日から私たちの人生は変わるんです」

 

「うん、もちろんだよ。僕らは変わるんだ」

 

硬い握手を結んだ二人の人生はここから始まるのだ。

 

 




オリ主が食べた悪魔の実はモクモクの実と似ているだけですので、スモーカー君はこの小説でも登場します。
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