霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
この活気あふれる島に滞在してから、数週間経った今日は、アデルがこの船に乗ってから一年が経った日だ。僕とマグーの誕生日はもう終わって、この間アデル誕生日も祝ったばかりなので、パーティーとかはしないけど、高そうなお店で食事だけはすることにはした。
「いやーやっぱり高いお肉は美味しいですねー」
「うん。僕が作るやつよりも全然美味しくて、料理を一応担当してる身としては見習えるよ」
「えー、ルー兄のお料理おいしいのにー」
まだまだ幼くて天然で、こんなにも純粋な笑顔をアデルに言われてしまったら、僕はまるでお父さんみたいにほっこりするような気持ちになってしまう。
「まぁまぁ、私とルーはお尋ね者ですから、念のために早く出ましょうか」
僕らはしっかりとお勘定を払って、店を出て船への道を歩いていた。その光景は、マグーと二人の頃は兄弟みたいに見られていたけど、三人になった今はどんな風に見られているのかな?まだ兄弟かな。いつかは一眼見ただけで、海賊団と見られたいなぁ。
そんな風に三人で話していて、段々と自分たちの船に近づいて行くと、少しおかしな所が見られた。船の帆が降りていて、しかも、少しずつ船が港から離れて行っているように見えるのだ。
「ルー。あれって私の勘違いだったらいいんですけど……私たちの船が段々と離れて行ってませんか?」
「うん。明らかに離れて行ってるね。もしかしたら、船泥棒かもしれないから、僕見て来るよ。マグーはアデルを見てて、船が戻ってこなそうだったら来て」
「ルー兄頑張ってきてね?」
僕は穏やかな顔で頷くと、すでに沖のほうへ出ている船へと、空を浮いて向かって行き船の上に着くと、操舵を握っている男が一人だけいる甲板へと降り立った。
「やはりな。聞いていた通りの能力のようだな」
薄く動きやすい服を着ていて坊主なその男は、淡々とした喋り方で僕の方へと話しかけて来た。
「誰なんですか貴方は?僕たちの船を勝手に使って」
その男の漂う雰囲気は只者では無くて、僕が会ったことのあるマフィアのようで、それとも何か違うような気もする。
「俺は殺し屋ダズ。ダズ・ボーネスだ。お前と狂銃に対して殺しの依頼が二つも来ていたんでな、依頼により殺すことにした」
殺し屋なんて言うものに会えるということにもびっくりしたし、僕たちみたいなまだまだ弱小海賊団にそれが二つも来ているということにはもっと驚いた。まだ、そこまで人に恨みは買っていないと思っていたんだけど……。
「ちなみに、その依頼主が誰なのか聞いてもいいですか?」
「普段は言わないことを流儀としているんだがな、今回はどちらの依頼主から伝言を頼んでいるからな伝える。一つ目、花の国の国王から「国宝を返せ」二つ目、ある海賊団から「花の国で船長を殺して許せねぇ」どちらも要約はしたがな」
一つ目は花の国の王様かな、でも、殺し屋に依頼するほど恨まれてるんだね僕ら。二つ目は花の国で殺した船長が懸賞金300万の海賊だよね。まさか、生き残った人たちがここまでするなんて思わなかったな。
「じゃあ僕たちを殺しに来たんですね」
「ああ。殺し屋だからな」
僕は刀を構えて、殺し屋は素手で構えを取った。普通に見たら刀を持っている僕の方が有利かもしれないけど、相手は殺し屋だからどんな手を使ってくるか分からないから警戒しないと。
そして、僕と殺し屋がお互いに戦うために近づこうとした所で、未だに沖に向かって動いていたこの船が大きく揺れた。原因を探るため、周りを見ましてみると、ほどほどの距離にドクロが書かれた船と何も帆には書いていない船が両脇に確認できた。
「もしかして、貴方のお仲間ですか?」
「いや、俺は一人で行動する。あいつらには全く身に覚えが無いな」
殺し屋は知らないかのように感じられて、僕の感覚でも、彼は集団行動するタイプには見えないから、本当に知らないのかな。
そこから、まだお互いにどちらが先に仕掛けるかを探り合っていると、両脇にあったどちらの船も段々と近づいて来て、ついにはこの船を挟んで衝突をした。
「クッ、わざわざ当たりにきて、この船がどうなってもいいってことですか」
ドクロの方の船からは明らかにガラの悪そうな野郎共がこの船に降りて来て、もう一つの方の船からはサングラスをしていたり、スーツを着ていたりする人達が降りて来た。
「おい、話が違うじゃねぇかよ
「それはこちらのセリフだ。これはお前達の手の者では無いのか?」
どうやら会話から察するに、スーツを着た方は世界政府直属の諜報機関のCPらしい。そして、横暴な言葉遣いの方はやっぱり海賊みたいで、何かしらの取引の場所にこの船が近寄ってしまってこうなったのかな。
「いんや違うな。船に乗っているやつを見てみろよ。二人とも新聞で見た顔で、殺し屋ダズに国宝を盗んだルーファスって野郎共だぜ?俺達とは関係ねぇな」
「だが、この取引が大きな物ということはお前達も分かっているだろう。人に見られるのは不味いが、どうせここにいる全員には消えてもらうんだ。問題は無い」
なんか僕と殺し屋が立っている間に話が進んでいってはいるけど、何か不穏な空気が漂って来た気がするんだけど……。
「ヘッ、最初から俺たちまで殺すつもりだったということか?やってやろうじゃねぇか。こっちにはお前らの目当てのニコ・ロビンと15億相当の悪魔の実も持っているんだ。簡単には渡す訳にはいかねぇからな」
二つの組織が僕らの船の上で、いよいよ一触即発まで来てしまった。それに、なんか両脇の船は錨も下ろしてきたから、やる気満々だし。普通に迷惑なんだけど。
「あの、僕の船の上で勝手にやる気を出さないでもらえませんか?何か嫌なんですし、今から戦うのに邪魔なんで」
「黙っていろ霧隠れ。これは重要な任務だ。お前に口出し出来るような事柄では無い」
「お前は大人しく船を貸してくれればいいんだ。後で分け前ぐらいは渡してやるからよ」
どっちの味方するのも嫌だな。それに、そのニコ・ロビンっていう人と悪魔の実も気になるし、どっちも海賊らしく奪っちゃおうかな。多分もう少しで、マグーも来るだろうし、その時は皆殺しを選択をすると思うから。先にやっておこう。
「それじゃあ、この船の艦長としてみなさんには邪魔なんで、この船から立ち去ってもらいます」
「霧細工
僕はこの一年で開発した新しい技で、空中に無数の霧の弾丸を生成すると、それを両翼にいるCPと海賊に向かってぶっ放した。
悲鳴が聞こえてけど、思ったよりも人数は減らなかったかな。それよりも、僕の攻撃が合図になったみたいに二つの勢力がついに戦い始めて、それに紛れるように殺し屋が僕に向かって攻撃を仕掛けて来た。
「
手を思っ切り下ろしてきたので、チャンスだと思い刀で受け止めたのだけど、その手と刀は時々金属音を鳴らしながらも拮抗していた。
「クッ、ただの手のひらでは無いんですね」
「ああ。俺はスパスパの実を食べた全身刃物人間だ。容易く切れるとは思わないことだ」
ならばと、周りにいる奴らを蹴散らしながらも、殺し屋に能力の攻撃を当てるも効いているように思えない。そして、三隻の船がぴったりとくっついて、それをここにいる全員がそれぞれ移動しながらも戦っていると、僕のそばに空から背中にアデルが乗っている獣形態のマグーが降りて来た。
「これどういう状況なんですか、ルー?」
「僕たちへの殺し屋が来て、たまたまこの辺がCPと海賊の取引場所だったみたいで、今は僕たちも合わせて四つ巴状態かな」
「面白そうな事になってますねー。アデルは安全そうな場所に隠れておいて、危なくなったら叫んでください」
「うん。分かったマグー姐」
マグーは人型に戻ると、さっそく近くに居たCPに向かって発砲した。そこから続くように周りの奴に発砲し上手く当て続けると、マグーは喜色を浮かべていた。
「さぁさぁ、どんどんかかって来て下さい!私を倒せるものならね」
一気に周りのヘイトがマグーに向いた事で、僕は殺し屋に対して戦いを集中出来て、アデルは逃れることが出来たみたいだ。
「これで、少しはお前に集中が出来るな」
「マグーのおかげです。感謝した方が良いと思いますよ」
「ああ、そうさせてもらう」
堅物な人だなと分かったけど、僕が今から考えなくちゃいけないのは鉄の身体を持っているあの人にどうやって傷をつけるかだ。でも、僕には鉄を切ることは出来ないし、覇気も扱うこともまだ出来ない。だったら……切れるようになるまで切ってみせるだけだ。
「鴎突き」
僕は刀を突きの形に構えて踏み込むと一気に進み首元に突き刺したけど、そこから押し込むことが出来なかった。反撃される前に二歩下がると、また構えて技を繰り出す。
「
殺し屋の顔を刀で血が出てくるギリギリに傷をつけようとしたのだが、その全てが顔に当たっても、金属音が鳴り弾かれてしまった。
「無駄だ。お前の攻撃では俺に傷をつけることは出来ない」
「それはお互い様ですけど、僕はあなたを切るまで逃げるつもりはありませんから」
「やってみせろ」
駄目だ。ただ切って切ってをしているだけじゃあ、切れる気がしない。今度はもっと相手の隙を読み取って、いけそうな場所を一気に切る。それしか、僕が勝つ方法は無い。
「
殺し屋は覇気を持っていないようで、その攻撃は霧になり無効化しつつ、僕は心を落ち着かせて一番相手に効くでポイントを探り、僕が全力を出せるようなタイミングを待つ。
「
まだだ。このタイミングじゃない。チンジャオやガスパーデが使っていた覇気を思い出すんだ。それをそのタイミングを再現するんだ。
「何をしているんだ。戦闘の放棄か?」
「いえ、これこそ勝つための布石です。貴方を倒すための」
「無駄だと言うことを教えてやる」
「
来た!勝負を焦って大技を仕掛けて来た。大技だから隙も大きくて、焦ったから技の精度も少し下がっているはず。やるならここしか無い。僕は刀を一旦鞘にしまい、居合の構えを取る。
「居合い
刹那。僕の刀はこれまでよりも早く動き、殺し屋の攻撃が僕に当たると同時に、不思議な感覚を纏った攻撃で相手を横一閃に切った。
殺し屋は声にならない声をあげたと思うと、血を出しその場に倒れた。このくらいの血の量では死にはしないと思うけど、意識は失ったみたいで、勝負は僕の勝ちだ。トドメを刺すなんて無粋は真似はしない。僕は殺し屋としてのプライドがある貴方と戦って成長出来たことに感謝しているから。
ロビンは次話で出ます。
今話の15億の悪魔の実はオリジナルの実です。