霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
マグーから離れたアデルは、船の中を敵に見つからない様に器用に走り回っていた。その様子はこの状況に対して、危機感などをあまり抱いていないようだった。しかし、アデルはまだまだ子供で、不安なのか手にマグーから渡されたピストル一丁を大事そうに持っていた。
そんなアデルは敵の海賊船の船室から、手に海楼石の手錠をしていて、静かに甲板の様子を見ている女性を見つけた。それがアデル中にある正義感のようなものに触れたのだろう。アデルは助けなきゃと急いでそこに向かった。
「お姉ちゃん大丈夫?捕まっちゃったの?」
その大人っぽい落ち着いた女性ニコ・ロビンにアデルは話しかけていた。
「ええ、でも大丈夫。それより貴方はどうしてこんな危ない所にいるの?」
「マグー姐に安全な場所にかくれてなさいって言われたから、探してるの」
ロビンは考えているようだった。果たして敵なのかどうなのかを。もしかしたら、世界政府の刺客かもしれないなど、あらゆる可能性を考えてながらも、ロビンは情報の収集を図ってみることにした。
「マグーお姉さんって何してる人なの?」
「マグー姐はね、ふくかんちょうでね、すっごく強いんだよ。虎さんになることも出来るんだよー!ルー兄もね、体がすーって消えたり、かんちょうだから船のことなんでも知ってるんだよ!」
アデルは自身を助けてくれた優しい人たちのことを誰かに自慢出来る時が来たと嬉しく思ったのか、ロビンに対して多くのことを話した。
「それでね、わたしが川に流されてるのを助けてくれたの。お兄ちゃんもお母さんもお父さんももう死んじゃたらしいんだけど、わたしねルー兄とマグー姐が居るからさびしくないんだ。そうだ!おねえちゃんも捕まってるんだったら、一緒に行こ?」
その会話内容とあどけない笑顔から、ロビンは、この子は不幸な境遇から海賊に命を助け出された子供なんだろうと結論付けた。そして、提案通りご厄介になりたいと思ったが、ロビンは追われる身。少し船に乗ることはあってもこんな幼い子に迷惑はかけられないから、仲間になることは無いだろうとロビンは考えた。
「ええ、それも悪くないかもしれないわね」
「そうでしょー!それよりね、お姉さんのおとなりにある机の上の箱には何が入っているの?」
アデルの高さからギリギリ見えるその箱はロビンと共に世界政府に売られる予定だった物。15億もの大金で取引される予定であった悪魔の実が入っている箱だった。この船に捕まってしまったロビンはこの箱の中身についても、盗み聞きなどをして知っていた。だからこそ、それを正直に言ったものかと迷っていた。
「この中には、悪魔の実が入っているの。食べたら泳げなくなってしまうものなの」
ロビンは出来るだけ子供特有の多い知的好奇心を刺激しないように、マイナスな意見で簡潔に説明をしていた。
「それ知っているよー?マグー姐がねすごく不味かったって言ったやつでしょ?わたしも食べたいって言ったらまだ早いって言われたけど、食べてもいい?」
ロビンが対応に困っていると、そこに扉を勢いよく開けて焦った様子のサングラスをかけたCPの男が入って来た。その男は素早くドアを閉めて、その部屋のロビンとアデルを確認すると、アデルの首を思いっきり掴んで、持ち上げた。
「何してるの?狙いは私なんでしょ。その子は関係無いはずよ」
「いや、何。貴様とこいつが親しそうに見えたからな。いくら悪魔の子ともいえども子供を人質に取られたら身動きが取れないと思ってな」
男はゲスな笑みを浮かべたまま、ロビンに対して首で近づいて来るように合図をする。ロビンは男の言う通りに動こうとした。しかし、その時にアデルが掴まれた状態で、男の足を蹴ったり、箱の乗った机を倒しながら暴れ出した。
「このクソ餓鬼が。大人しくしやがれや!」
暴れ出したアデルを鬱陶しく思った男は、床に叩きつけて、そのまま足で踏みながら手に持ったピストルをアデルに向けた。アデルは苦痛に顔を歪ませて泣きそうになりながらも、強気に男の方を睨んでいた。
「分かった。貴方の言う通りにするから。この子を離してちょうだい」
「ああ、それでいいんだよ」
そのまま男がロビンの身柄を逃さないように、腕を引っ張りながら、ドアの方から出ようとすると、部屋の中から咀嚼音が聞こえてきた。ロビンがまさかと振り返ると、アデルが床に転がった箱から悪魔の実を取り出して泣きながら食べていた。男はその箱が有ったことに気づいていなかったようで、一瞬呆気に取られていた。しかし、それが取引に使う悪魔の実、そしてそれをアデルが食べていると理解すると、冷や汗をかきながらアデルに向かって銃口を向けた。
「お、おいふざけんなよ。政府が欲する悪魔の実のは重要なんだ、それを食べやがって。俺もあいつみたいに投獄されちまうじゃねぇかよ」
元は男が気づかなかったミスなのだが、本人はそんなことを気にしていられ無い程に取り乱しているようだった。その間にアデルは実を食べ切って、立ち上がり、男に向かってピストルを向けた。
「おいしくなかったけど、お友達のお姉ちゃんをたすけれるから、頑張って食べたよ?……お姉ちゃんこれって食べたら、わたしもマグー姐みたいに虎さんになれる?それとも、ルー兄みたいにふぁーさってできる?」
アデルは親切なロビンを助けたい一心で食べたようで、後のことやどれだけの価値のものかを分からずに食べたようだった。ロビンもこの実について詳細なことは知らないので、何故CPが取り乱すほど狙うのかは分かっていなかった。
「分からない。この実は貴方達CPが狙うほどの価値があるような物なの?」
「そ、その実はな、古代兵器をも増やせる力があると言われているフエフエの実だ。15億もの大金がかけられてるんだぞ?」
男は、食べられたというよりはそもそもが海賊の嘘だったということにすべく、アデルに対して、引き金を引いた。だが、ロビンが直前に気づいて体当たりをしたおかげで、その弾がアデルに当たることは無かった。
「ニコ・ロビン貴様、邪魔しやがって!てめぇから殺してやる」
CPにとってニコ・ロビンに対して最善なのは生捕りである。しかし、最悪逃走される可能性もあるならば、殺しても構わないとも命令を受けていた。だったら殺すしかないと男は考えた。
だが、その時一つの銃声が響いた。それはアデルが両手で持ったピストルで男の体を撃ったものだった。
命中した場所が良かったようで、男がもう動くことは無かった。
「お姉ちゃんだいじょうだった?マグー姐のところにいこう?」
「ええ、そうね」
ロビンはアデルに対して男を殺したことについて聞こうとした。けれど、アデルのピストルを握る手が小刻みに震えているのを見ると、居た堪れない気持ちになり、静かにその手に自身の手を重ねてながら船室のドアを開けた。
★ ★ ★
船室でアデルがロビンと会っていて、ルーファスがダズとタイマンで戦っている時、マグメルは海賊とCPを一挙に相手していた。
「アハハ、さぁさぁどんどんかかってきてください!まぁ……倒せるものならですけど」
マグメルは戦いの中、違和感を感じていた。それは撃った弾に当たるのが海賊ばかりで、CPにはあまり当たっているように感じないのだ。そこで、CPが
「ああ、そういう仕組みだったんですね」
そして観察の末、マグメルはしっかりと剃と紙絵の仕組みについて理解することに成功していた。そして不恰好ながらも真似をすることにも。
「う〜ん、真似出来たのは良いですけど、あんまり使い道なんかは無さそうですねー。それだったら、強敵にしか使いたくは無いですけど、こっちの方が早いですから」
マグメルは獣型に変身するとその背中の翼を使い空中に飛んだ。それに対して、空中に虎が座した姿を見た海賊からは銃撃が、CPは空中を蹴って近づいて来た。それにカウンターする形で、マグメルは技を繰り出した。
「これで一気に狙えますね」
「
そのマグメルの翼が高速で揺れたと思うと、その翼から光った鋭い刃の様な物が無数に射出された。それは海賊達のピストルを容易く切断し、その身をも切り裂き殺していった。CPもその量に対して、捌き切れ無く空中から地上に落とされることになった。それを三隻ともの甲板に対して行うと、マグメルは真っ赤に染まった甲板の上に人型で降り立った。
「本当はもっとじっくりとやりたかったですけど、数が数なので仕方ないですよね」
マグメルのその攻撃によって海賊とCPは全滅し、甲板の上に立っているのは三隻すべてを合わせてもルーファスとマグメルだけとなっていた。
「ルー!ちゃんと勝てたようでなによりですねー。見たところ傷も無いようですし」
「うん。一応僕自然系だから。マグーは大丈夫?結構暴れたみたいだけど……」
ルーファスは甲板の惨状に少し目を逸らしながらも、マグメルに対して心配の声をかけた。
「アハハ、私は大丈夫ですよー。それに、ルーやアデルには当たらない所にしか攻撃もしてませんから。それで殺し屋と戦ってみてどうでした?」
「うん。得るものはあったよ。覇気の使い方っていうのも何となく掴めた気もする。マグーはどうだった?」
「私ですかー?まぁレベルアップは出来ましたかね。世界政府って意外に強い人が居そうだなーとも思いましたよ?」
それから、二言、三言会話をした二人は、マグメルがアデルが入って行った船室を見ていて、そこに入ろうと二人にして向かったが、その直後にそこから、ロビンとアデルが一緒に出て来た。
そして、その銃を持ったアデルの姿を見たルーはマフィアから逃げ出した日のことを思い出し、マグメルはそれより昔のことを思い出して、船室で一体何があったか大体のことを察した。
「ア、アデル大丈夫ですか?」
「うん。だいじょうぶだよ?ちょっとこわかったけど、ちゃんとたおすこともできたから」
ルーファスとマグメルによる心配の声や少しの褒め言葉や少しの謝罪が終わると、ロビンとルーファス、マグメル、アデルによる軽い自己紹介や何があったかの説明があった。
「アデルも悪魔の実食べたんだ。能力の制御とかは大丈夫?」
「うん。だいじょぶだよルー兄。つかれるけど、手に持ったら増やせるようにもなったから」
アデルの手には全く同じピストルが握られており、片方のピストルは弾を打ち切ると、消滅していった。そんな風にアデルのフエフエの実の能力確認が一区切りつくと、マグメルがロビンに対して聞きたいことを聞いた。
「それで、ロビン……さん。世界政府に追われてるんですよね?船……乗りますか?」
マグメルはまだ警戒した様子でロビンに尋ねたのだが、それを聞いたアデルはロビンとマグメルの二人に対して一緒の船に乗ろうと頑張っておねだりをした。
「分かったわ。
「じゃあ殺し屋さんは海賊の船に置いておいて、死体はCPの船に全部乗せて、色々貰っておくものは貰ってから出発しようか」
ロビンが少し悩んだ末の答えに、ルーファスは初めからこうなることが分かっていたようで、直ぐに的確な指示を出した。そして、自身は直ぐにロビンの海楼石の手錠の鍵を探しに行った。
そこから、無事ロビンの手錠が外れ、貰うものを貰ったミスト海賊団の船は偉大なる航路に向けて出港をした。
ロビンはあと何話か居て、その後は船を降ります。
そしてついに偉大なる航路に。
フエフエの実の簡単な説明
無生物を増やせる悪魔の実。一つにつき一度に一個までしか増やせない。増やしたものは少し使うと消滅してしまう。
能力者は能力を使うごとに体積に比例して体力を消費する。
増やしたものは増やした元の無生物が原型を無くしても、消滅する。
古代兵器、多分プラトンだけだが、理論上は個数を増やせるということで、15億の価値がつけられていた。