霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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トレジャー海賊団編終了と新章への布石



戦人さん、八策日さん、メイン弓さん誤字報告ありがとうございます!


待ち受ける多くの変化

 甲高い金属音が辺りに響くような音が出ている。それは森の中、鎖と刀が撃ち合っている音だ。何度も何度も聞こえるその音は調和の音をしている。決してどちらの勢いが欠けてしまっては出せないような音。

 

「ジャララララ。もう満身創痍なんじゃねぇのか?動きが鈍くなってるぜ?」

 

「それはお互い様です。それに……僕は逆境でこそ、力を発揮してきましたから、問題ないです」

 

 鎖を纏ったマッド・トレジャーから時折出される鎖を刀でいなしながら、ルーファスは刀をその纏われた鎖へと撃ち付ける。それは鎖を切ることは出来ながらも、マッド・トレジャーが鎖を自身の体に巻き直す速度には追いつくことは出来なかった。

 

「ふぅー。霧隠れ 五里霧中 三倍霧」

 

 ルーファスの技によって、辺り一面はこれまでのルーファスの戦いよりも、濃く濃く霧が立ち込めた。その霧で、マッド・トレジャーの目線からはもう木のシルエットしか確認出来ず、ルーファスの姿も影として霧に映るもののみだった。

 

「ジャララララ、それで隠れたつもりかクソ餓鬼がよ。俺の鎖は全方向に出せるんだよ!」

 

 マッド・トレジャーは言葉通りに身体から四方八方に鎖を飛ばした。だが、鎖がルーファスの影がある所に当たっても、他の場所に当たっても、人の体に触れたと言う感触は無かった。

 

「霧の中は僕の独壇場です。例え貴方がどれだけの攻撃範囲を持とうとも、この霧の中では無意味です」

 

 どこからともなくルーファスの声が聞こえてくる。それは隣から聞こえるようにも、上から聞こえてくるようにも聞こえていた。ここまで霧の中に閉じ込められてしまっのなら、よっぽどの覇気を持った実力者で無ければ、ここから抜け出すことは出来ないだろう。

 

「霧細工 賤ヶ岳」

 

 七本の槍がマッド・トレジャーに襲い掛かる。どこからともなく来るその攻撃に、マッド・トレジャーは自身の鎖によほどの自信があるのか何もしなかった。そして、その自信通り七本の槍は鎖を壊しても、その先にある皮膚を掠めることしか出来なかった。

 

「ジャララララ。虚勢はその辺にしておけよ。知ってるんだぜ?自然系は能力を使うごとに体力を使うってな。あと、霧を生成出来ても二、三回ってところだろ?」

 

 ルーファスにとって、その言葉は図星だった。見聞色を覚醒させるためとはいえ、あの攻防でルーファスの体力は多く消費されていた。だが、図星で虚勢だといっても、そんなことはルーファスも織り込み済み。何故なら、この霧は自身の技の前段階なのだから。

 

「確かに、僕にはもう生成出来る霧の量は限られています。でも、それは貴方も同じです。現に、槍で削った部分の鎖の纏いが遅くなっています。だから、僕は次の一撃にかけます」

 

「ジャララララ。乗ってやろうじゃねぇか。俺も次の一撃に賭けてやるよ」

 

 ルーファスは自身を成長させてくれた戦いを提供したマッド・トレジャーに敬意を払い、マッド・トレジャーは自身をここまで戦わせた生意気な餓鬼に一杯食わせてやるという気骨を抱いて、技を放つ。

 

「マッド・チェーン!パーティー!!」

 

「霧分身 八苦」

 

 マッドトレジャーは木の幹ほどある鎖の束を生成し、霧が生成されている範囲を外から囲うようにし、内に向かって一気に寄せた。霧が立ち込める森の中で、ルーファスの影が四つ現れる。その全てが鎖の速度に追いつかれまいと一斉に走り出し、マッド・トレジャーに向かって行く。だが、鎖が影に追いつき、影と鎖が触れてしまうと影は消滅した。

 だが、消滅したその瞬間に、マッド・トレジャーの背後から刀を抜いている影が近づく。

 

「ジャララララ!そりゃ本気で最後の一撃になんてするわけねぇよな!分かってんだよ。それぐらいなぁ!!」

 

「チェーンスピア!!」

 

 幾つもの鎖が集中して槍のような形状になった鎖がその影を貫いた。

 

「貴方が最後の一撃にしないことは分かっていました。でも、僕も最後の一撃にするつもりなんてありませんでしたから、お互い様ですね。まぁ、僕ら海賊ですから、仕方無いですよね」

 

 影が貫かれた瞬間、マッド・トレジャーの頭上に影が三つ現れていた。それら三つの影は全て刀を構えて、技を放つ。

 

啄木鳥溜め(きつつきだめ) 速解放」

 

 全ての影の刀が鎖を貫き、皮膚を貫き、マッド・トレジャーの意識を刈り取るには十分なほどの出血を出させた。

 

「……刺激的な冒険だったぜ……がはぁ」

 

「僕も少しは冒険というものに興味が持てました。感謝してます」

 

 

★ ★ ★

 

 

 僕らがトレジャー海賊団と戦い終わってから一週間後、僕らはアラバスタに上陸して砂漠の上に居た。トレジャー海賊団の後始末は、僕とマッド・トレジャーが戦った島に船員を全員適当に置いて、船に残っていた少量のお宝を盗んだくらいしかしていない。

 戦い終わった次の日なんかは、一日中、戦いお疲れ様会とロビンさんお別れ会をしていて、最後の方なんかはよく覚えていない。確か、アデルとカリーナが泣きながら笑っていたことだけ薄らと覚えている。その次の日に頭が痛かったから、ついつい気分でお酒を飲んでしまったんだろうな。

 

 そして、今日はロビンさんとのお別れの日だ。なんだかんだ言って、長い付き合いになったけど、色々な常識や知識も教えてもらったから感謝している。他のみんなも同じようにロビンさんとの思い出を振り返っているのか、マグーはどこか上の空で、カリーナは薄ら微笑んでいて、アデルに関して言えば大号泣していた。

 

「じゃあ、一番付き合いが短いあたしから。泥棒なんてこそこそしてるあたしなんかに、色々教えて頂いて有難う御座ました。なんか、一味の中で一番頼りなる大人でした!」

 

 そ、そうなんだ。僕とかマグーは頼りない大人だったんだ。あんなことばかりしてたら、そう思われるのも無理は無いのかな。

 

「ええ、ありがとう」

 

「……私からも言いたいことありますよ?でも、一言だけにしときます。最初は素っ気なくして申し訳なかったって思ってます。今は……仲間ですけどね」

 

 珍しくマグーがしおらしいなと思ったけど、ロビンさんが入ったばかりの頃の態度を反省してたのか。でも、今はロビンさんの事も仲間と認めてくれているのは何か嬉しいよね。

 

「……ありがとう」

 

「わたし……ぐす……ロビンさんのこと……ん……好きです……あっちに行ってからも……がんばってください」

 

 この二人は出会いからずっと仲良くしている印象があったから、アデルが泣くのも分かるかな。それでも人間、別れが無ければ成長出来ないこともあるって聞いたことがある。それに、また会えることも出来るだろうしね。

 

「私も好きよアデル。これからも頑張って」

 

「……ロビンさん。僕から言えることはこれまでありがとうございましたってことです。そして、絶対に死なないで下さい。僕らは仲間です。死んだら敵討ちはさせてもらいますから」

 

 仲間なんて言葉は小っ恥ずかしいけど、ロビンさんと僕らの関係を表す関係は他に思いつかなかった。ただ、ロビンさんには僕らのことは忘れて欲しくは無いけど、信用出来る人や仲間と出会って楽しくは生きてほしい。

 

「分かったわ。それじゃあ、またいつか」

 

 アラバスタの砂漠を歩いて行ったロビンさんの姿は、進めば進むほど小さくなっていって、その姿が点になり見えなくなるまで僕らはずっとその方向を見つめていた。砂漠の暑さで手に汗が滲んでくるほどに。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ロビンさんとの別れから数週間後、ロビンさんが居ない生活に慣れてきた頃、それはいきなりだった。いつもと同じように僕とマグーが覇気の特訓をして、アデルが延々に物を増やして、カリーナがビーチチェアで寛ぎながらジュースを飲んでいた時、電伝虫のコール音が船の中に鳴り響いた。

 

「初めての電伝虫の相手はいったい誰なんですかねー?」

 

 マグーはわくわくしているようだったけど、僕は言いようの無い不安があった。番号を知っているのは僕ら以外だとロビンさんだけだけど、こんなにも早い連絡だとあまり良くないこと知れないからだ。それに、別の人だったらだったで、どこで僕らの番号を知ったのかという疑問も浮かんできてしまう。

 

「あたしは出る方に賛成でー!」

 

「わたしも出た方が良いと思う」

 

 みんなはあんまり警戒してないけど、大丈夫かな?とりあえずは、出てみるけど……。

 

『はい、もしもし誰ですか?』

 

『俺だ。その声はエルドリッチ・ルーファスか?』

 

 声は全く知らない。その割に俺だとか言われても分からない。だけど、こっちの名前は知られているみたい。

 

『貴方の声に聞き覚えは無いので知りませんけど。誰ですか?』

 

『俺はカポネ・ベッジだ。西の海でマフィアをやってる。あんたに依頼があって連絡した』

 

 ……マフィアか。あまり良い思い出は無いけど、僕が恨むべきマフィアは全員殺した。だから、見ず知らずのマフィアである彼には特に思うところは無い。

 

『お前の経歴は調べさせてもらった。マフィアとの依頼は嫌だろうが、了承してもらいたい』

 

 僕の経歴なんて少ないから調べる事も少ないだろうし、マフィアの情報網のすごさはマグーに聞いたことがあったから、そこまで苦労することは無かっただろうな。でも、この分だとみんなの分まで調べられているのかな?

 

『マフィアというだけで、忌避感は抱きませんよ。依頼の内容によります』

 

『俺とそのファミリーは陸の暮らしに飽きててな。数年の間に、海に出て海賊になろうと考えている。そこで、あんたにやって貰いたいのは西の海の適度な掃除だ』

 

 思っていたのと全然違う依頼内容だった。もっと、大物の暗殺だとかそんな所だと思っていた。でも、これを受けると西の海に留まることになるのか……。

 

『もちろん、報酬はそっちの言った物でいいが、一応あんたらは数年前に西の海の五代ファミリーの一つを潰してる。それの後始末と責任を今取れとも言ってるんだぜ?』

 

 確かに、僕とマグーは僕らが生き残るが為にマフィアを全員殺した。あのマフィアが全体的に悪いにしても、その責任は取らなければならないのかもしれない。マグーには悪いけど、これは僕のケジメの問題だから受けさせてもらおう。

 

『いいですよ。その依頼受けさせて貰います。報酬はお金に加えて、水夫を200名ほど集めてほしいです。期限は2.3年ほどが限界です』

 

 僕らとしても、いつまでも西の海に留まるつもりは無い。だから、2年ほどが一番ちょうど良い期間だと思う。報酬もこの船は人数が居ればいる程、航海が早くなって戦力も増すと思うので、そろそろ追加しようかなというのをこの間話し合ったばかりだった。

 

『問題無い。あんたたちは、そこそこ実力のある海賊の中でも頭が回ると聞いていたからな。受けてくれると思っていたぜ。また、追って連絡する』

 

 そして、僕たちミスト海賊団はグランドラインを逆走して西の海へと戻ることとなった。

 

 




ロビンとはここでお別れです。原作まで行ったら一度ぐらいは会うことになるかな?
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