霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
マグーから明日迎えに来ると言われた僕は、自分のいた雑居房に戻っていた。そこで、周りが自分を見ていないことを確認すると、さっきもらった悪魔の実のキリキリの実の練習を始めた。……まさか自分にこんな奇跡がくるとは思ってなかったけど、明日は絶対に失敗することは出来ない。ここで失敗したら僕の人生は終わってしまうから。
目が覚めたら朝になってしまっていた。自分の身体を霧にすることをずっと練習していたらいつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。でも、当初の目標であった自分の意思で身体を霧にすることもまぁ出来るようになっていた。昔、友達から聞いた通りなら、自然系の悪魔の実は無敵らしいので、この練習をする必要はないんだけど、僕の生き死にを左右するこの出来事では油断することは出来ない。
基本仕事があるまではこの場所で待機しているんだけど、今日に限っては昨日マグーが言っていた通りに、マフィアの組員が来ることは無くてマグー本人がここの雑居房に来てくれた。
「おーい呼びに来たよ。ルー君一緒に来てもらってもいいかな?」
僕の方を向きながらも、マグーは笑顔で声をかけてきた。多分ここにいる他の人にバレないように僕のことを気に入っているボスの娘を演じているんだろう。僕は周りの奴らに奇異な目で見られながらも、黙って顔を俯けながらマグーに着いて行った。
「ここまで来れば大丈夫ですかね。さて、ルー。調子はどうですか?キリキリの力は扱うことが出来ましたか?」
「うん普通に戦うぐらいなら大丈夫だと思うよ。それで、これからどうするか具体的に聞いてもいいかな?」
「了解しました!とりあえず、私が拾ってきたこの刀を渡すので、これと能力を使って、この先に主要なメンバーがもういるので、殺して取り引きする予定の二つの悪魔の実を取ってきてください」
「え、それで終わり?それにその間マグーは何してるの?」
「これで終わりですね。私はルーが遂行している間にこの建物のお宝やこれからに必要な物を集めて来ます。終わったら取引相手の海賊が来る前には、迎えに行きますよ」
「分かったよ。じゃあ……お互い生きて会おう」
「はい!御武運を祈りますってやつですね」
僕はマグーとここで分かれると、そのまま少し進んで中から大きめな話し声が聞こえるドアの前に立った。悪魔の実の取引で金が5億以上手に入るからって、どんちゃん騒ぎをしているみたいだ。未だに不安でいっぱいだけど、僕は負けない。そんな決意をしながらドアを普通に開けて入っていった。
「あ?おい、この餓鬼はどこの房のやつだ?取引相手が来る前にさっさと摘み出せ。相手様に失礼になるだろう」
座っているここのマフィアのボスが俺を捕まえて追い出せとか言っているけど、関係は無い。どこからか恐らくマグーが撃ったと思う銃の音が聞こえたので、僕も歩を止めることは無く進み続けた。
「おいおい。脱獄でお前は囮か?うちの組織に馬鹿みたいに昼間から銃ブッ放すやつなんていねぇからな。てめぇらこいつをとっとと始末しやがれ」
ボスの掛け声で、周りの奴が持っている銃の先が僕に向けられて、そのまま躊躇も無く発砲された。その銃弾は僕の身体に直撃しても、その部分だけが霧になって何事もなく通り過ぎていった。
「ボ、ボスこいつ銃弾が効きません!悪魔の実の能力者だと思われます」
「見たら分かることいちいち言うんじゃねぇ!てめぇ。その悪魔の実は海軍の奴と交渉中だったのによ。……手引きしたのはあの小娘か?母親と共に路頭に迷ってたのを快く迎え入れてやったのを恩を仇で返しやがって!」
「僕はマグーと生きることにしたんだ。そのためにここで貴方達には死んでもらいます」
どれだけあいつらが、僕を撃ってきているか分からないほど撃たれている。僕はここで全員を殺すんだ。そうだ。僕が新しい人生を始めるには、仕方ないんだ。
♦︎ ♦︎ ♦︎
僕が切られて死んでいる死体達の前で、これまでの自身の行動を振り返っている間にどのくらい経ったんだろう。僕の身体は返り血を浴びまくって、血に染まっていないところが少ないぐらいだ。部屋の中は締め切っているせいで、鉄の匂いがすごいしているが、もう気にならなくなってしまった。
……ああ、そういえばもらった刀途中から折れちゃったんだっけ。じゃあこの良さそうな刀をもらっていこうかな。後、悪魔の実も取ってこいっていってたから、二つ共この小さい布袋の入れておこう。
「ルー!待ちましたか?ちょっと欲張ったり、時間があったから牢の鍵を開けていたら、遅くなっちゃいました」
準備完了して、待っていた僕の前に現れたマグーは、僕よりも全身が血に染まっていて、その上その顔は笑いながら話しかけてきたせいで、狂っているように思えてならなかった。
「いや、待っていないよ。僕もちょうど準備完了したところだし」
「あはぁ。それなら良かったですよ。さぁ早く行きましょうよー。目立たないところに船を準備して」
マグーが最後まで言い切る前に、この建物のどこかの木がバキバキと大きな音を立てて壊れていく音がした。その衝撃で僕たちが立っていた場所も地震のように揺れていた。
「ニーーン。結構痛いだイーン。こんなこと何の意味があるだイーン?」
「いきなりマフィアの根城から大勢の人間が出てくる。妙に静か過ぎる。しかも、血の匂いもしてきやがる。明らかに変だろうが」
外からこの現象を起こしたと思われる奴らの声が聞こえてきた。心配になってマグーの方を振り向くと、マグーは僕の耳に口を近づけて、耳元で「多分取引相手の海賊」と言ってきた。僕たちはあいつらから見たら取引を壊した邪魔者だ。僕は殺せないけど、マグーは見つかったら確実に殺される。
僕の考えが読めたのか、マグーは僕に「逃げましょう」と言いながら手を引っ張っていったのだが、その逃げるための一歩を踏み出した瞬間に、壊されていない僕たちの周辺の壁などが爆発したみたいにいきなり吹き飛んでしまった。
そして、開放感があふれるようになったこの場所から、黒い格好をした変なゴーグルをかけた男と尻尾が生えてサングラスをかけている男と目が合ってしまった。
「おい、いたぞマッハバイス。血だらけで何か荷物を持ってやがるあいつらに違いない」
「分かってるだイーン。責任はとらせるだイーン。10tヴァイス!!!」
僕は尻尾がある方が飛び上がると、さっきみたいに落ちてくると予想して、耐えることの出来ないマグーに悪魔の実を渡して先に行かせることにした。
「マグー先に逃げておいて、僕もすぐに追いつくから」
「……分かりました。ここから先で待っていますから、絶対生きて来てくださいね」
マグーが走っていったぐらいに、上から尻尾の奴が落ちてきて、そのまま僕のことを押しつぶした。多分10tって言っていたから、あいつも体を重くするとかの能力者なんだろうなとか思っていながら、僕は押しつぶされて霧になった身体を元の身体に戻した。
「グラディウス、こいつ全く効いてないだイーン」
「チッ、自然系の能力者ってことだろ。今の俺らに対抗手段はない。こいつのことを無視して逃げた女の方を追うぞ」
「絶対に追わせるわけにはいかない。二人で新しい人生を始めるって決めたんから」
僕の能力的に利はこちらにあるのだけど、刀を振っても、上手いこと当てられずに、お互いにダメージを全く与えられなくて、体力だけが消費されていっていた。
「仕方ねぇこのままじゃ埒があかないからな。自然系と言えども、吹っ飛んでもらうことにしよう」
ゴーグルの男が意味深な言葉を言ったかと思うと、僕の周りの地面がどんどん膨れ上がっていった。これに嫌な気配のした僕はその地面から逃げようとしたのだが、
「逃げようとしてももう遅い。これでお前はダメージを負うことになるからな。パンク
その瞬間周りの地面が爆発して、直接的にダメージはないものの、その爆風と衝撃によって吹っ飛ばされて、ダメージを負ってしまった。だけど……僕はその衝撃と痛みから自分の能力の使い方をやっと分かった気がする。これまでは回避ばかりに使っていたけど、この能力の本質はそんなもんじゃない。浅く広がっていくそんなイメージなんだ。
「確かに今の攻撃で僕の身体はボロボロになりました。でも、今の攻撃のおかげで分かったんです。僕の能力の力が」
「
僕が思った通りに霧が身体から出てきて、薄く漂い周りが見えにくくなるぐらいの霧がこの島の半分を覆い尽くす。そして、僕と尻尾のマッハバイスとゴーグルのグラディウスの周りを濃く自分以外が見えない霧が満たした。
「周りが見えないだイーン。どうするだグラディウスだイーン?」
「マッハバイス、飛んで霧の範囲を確認しろ。もう逃げた可能性もあるが探すぞ。見つからなかったら……大人しく若に……報告だ!」
グラディウスの方がキレて頭の黒いのが爆発したのを見届けてから、僕はそこを離れて、霧となって霧の中を移動しながら町を超えて行き、小さな砂浜に着いた。
そこには波の音だけが聞こえてくる場所で、あるものといえば、小さな船とその前で堂々と仁王立ちしながら、町の方角を見ているマグーがいた。
「遅くなってごめんマグー。ちょっとあの人達を撒くのを苦労しちゃってさ。ハハハ」
「はぁー本当心配したんですからね?相手がルーよりも格上だったらどうしようとか、色々考えたんですから」
「本当無事に帰って来れて良かったよ。霧はもう解除したけど、これからどうするの?」
「とりあえず船に乗りましょう!それで血だらけの服を捨てて、新しい服に着替えましょう」
マグーの言葉に従って、とっとと船に乗ると、船が出港して僕がこれまで過ごしてきたこの島からどんどん離れて行った。もちろん、悲しい気持ちもある。でも、僕には僕が帰ってくるまで裏切らずにずっと待っていてくれたマグーがいる。そんな今はどんな関係かは分からないけど、信用出来るマグーといれるなら、この先は大丈夫だと思えていた。
この小説での原作キャラの登場頻度はバラバラになると思います。