霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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久々の更新です。


各々の試練

 

 燃える甲板。マグメルとエースの戦いはエースが優勢の勝負をしていた。器用に三つの変身を繰り返しながら、エースの火を避けるマグメル。マグメルの拳やピストルを火に変えることで避けるエース。どちらとも悪魔の実の技量に関してはピカイチだった。

 

「やるな。前半の海にいるとは思えない実力だ」

 

「もちろんですよ。私たちは四皇になるんですから」

 

 悪魔の実の使い方に関しては互角レベルだとしても、火というのは元来生物に対しては有効なもの。戦っていく中でそこで2人の戦いの差がついていた。

 それを分かっているからこそ、マグメルは構える。今は人型なので最高火力は出ないが、それでも十分な相殺が出来る技を。

 

「魚人空手 五千枚瓦正拳!」

 

「四皇はお前が思ってるほど甘くないぜ」

 

「鏡火炎!」

 

 マグメルの放った拳と衝撃波はエースの出した火に受け止められ、そのままカウンター的に放たれた火はマグメルの全身を包み込んだ。だが、その火の中にいようとマグメルは叫び声を上げること無く、鋭い目つきでエースを見据えていた。

 

「マグー姐!」

 

「おいおい、近づいたら危ねぇだろ」

 

「でも、助太刀ぐらいはしないと」

 

「相手はメラメラの実。武装色じゃないとダメージは無理なんだよ。分かるか?」

 

「うっ……分かってる」

 

 マグメルの元へ向かおうとしたアデルをヴィレムが止めてるうちに、マグメルを包み込んでいた火は消え、その中から人獣型に変身したマグメルが出てきた。

 

「やってくれましたね。ちょっと油断しましたよ」

 

「やっぱり動物系はタフだな」

 

 人獣型になったことでスピードが増して、パワーが増したマグメルの力量はエースに迫るものがあった。そして、火を何度身に浴びても何度も向かって来るマグメルにエースは生半可な技ではこの勝負が長引きそうなことを悟る。

 

「付き合いたいのはやまやまなんだけどな、急いでるからよ。船が燃えても文句言うなよ」

 

「火拳!!!」

 

 エースはマグメルに向かって火を纏った拳を大きく突き出し、その拳から大きく燃え盛った火の渦が放出された。船の元々少ない木の部分を燃やしながらも、その火は一直線にマグメルに向かう。

 

「どんな攻撃でも打ち消してあげますよ!」

 

 虎になっている指先を奇妙な型に変えると両腕すべてを武装色で覆い構える。

 

「私に模倣出来ない技はありません!」

 

「竜爪拳 竜の息吹き!!!」

 

 エースの放った炎の渦がマグメルの両拳に当たると同時に、お互いに打ち消しあって、大爆風を起こす。その余波で戦艦が大きく揺れると、ルッカが出した縄が船全体を覆い、転覆することを防いだ。

 

「いやー見事なもんだな」

 

「馬鹿かヴィレム。俺が能力でバランス取らなきゃこの船がひっくり返ってるぞ」

 

「剃!」

 

 まだ大爆発の影響で視界が曇っている中、マグメルは見聞色でエースの大まかな位置を探ると、エースの目の前に現れた。

 

字渦(じか)

 

 そして、手の中に小さな風の渦を作るとそれをエースに押し当てる。しかし、エースもそれを読んでいたようで最小限に触れられる面積を減らすと、マグメルに火で作った槍を突き刺す。

 

「神火 不知火!」

 

「……そろそろ限界ですか」

 

 マグメルは迷う。ここから勝つ為に仲間を巻き込んでしまいかねない技を使うのか使わないのかを。だが、今のこの船は艦長であるルーファスから任せられるている身、無駄な犠牲は出さないとマグメルは不本意ながらも敗北を認めることを決意する。

 

「……手打ちにしますか」

 

「おれも急いでるからな、いいぜ」

 

「じゃあな、お前ら」

 

 勝負を終えたにも関わらず笑顔を見せたエースは甲板に乗っていた自身の船を海に投げると、それに乗ってまた偉大なる海を駆けていった。

 

「おえ、やってくれましたねあの人。四皇の幹部に劣勢なんて……私も弱いですね」

 

 マグメルは口から吐いた血を拭う。結局のところ、手打ちにすることか、敗北することしか選ぶことが出来なかった自分の弱さを悔やみ、悔しそうに言葉も紡ぐが、その顔は強い人間と戦えて満足そうだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 場所と時間は変わり、アラバスタ。懸賞金6000万ベリーがつこうとしている麦わらの一味の海賊狩りのゾロ。懸賞金はつけられていないものの、高度な見聞色も相まってゾロと拮抗する実力を持つシオン。

 2人の対決は狭い室内ということでシオンは能力を使うことを躊躇して、純粋な剣術勝負となっていた。

 

「虎狩り!」

 

「嫌な技名です!鴲閉め(しめじめ)!!」

 

 三刀流の技に小刀の二刀流のシオンの技は体格も関係して押し負ける。

 

「強ぇな。だが、勝てねぇ相手じゃない」

 

「ハァ、兄様に誓って私は貴方に勝ちますよ」

 

 普段の戦いの中では見せないように気をつけている三つ目だが、今回ばかりは強敵ということで、シオンは髪の間から三つ目が見えてしまうことに気を遣う余裕などは無かった。

 

「三つ目?珍しいな」

 

「お気になさらず。強さにはほとんど関係しませんから」

 

 シオンは勝ちを考えている。しかし、帰りも2人を背負って帰ることを考えてると、ギリギリの勝ちではいけなかった。だからこそ、シオンは強敵であるゾロとの対決は大傷を負う前に決着をつけることを望んだ。

 

百舌鳥刺し(もずざし)!」

 

 突き刺すような剣戟を高速で打ち出す。小刀の二刀で、その手数はいくらゾロといえども、侮れないものとなっていた。

 

「刀狼流し」

 

 だが、その剣戟もゾロによる受けの技によりいなされ、逆にシオンの方が傷を負ってしまった。

 

「貴方。気配以上に強くありませんか?」

 

「そんなもんじゃ測ることは出来ねぇよ」

 

「鬼!斬り!!」

 

 高度な見聞色の使い手であるシオンは直感する。この技がヤバいことに。しかしながら、戦闘をしている空間は広く無い宮殿の廊下、中途半端にしか左右に避けることが叶わない。

 

「受け止めます!鳩構え(はとがまえ)

 

 ゾロの大技を最小限のダメージを負うようにして体を構え直し、技を受け止めたシオンはカウンター気味に二刀をゾロの体に食い込ませた。

 

「ふぅー」

 

 傷を負って一度距離を取ったゾロは息を吸って吐いて手拭いを頭に巻く。それを見たシオンも自身の気合いを入れ直すという意味で前髪を三つ目を曝け出すように分ける。

 

「本気です。兄様直伝の流派で貴方に勝ってみせます」

 

 今までに無いスピードでゾロに近づき、首元へ向けて刀を振るう。直感か勘でそれを察していたゾロはギリギリのところでそれを避けて、両手に持った二刀で反撃する。刀を振るって身もガラ空きなシオンは宮殿の壁に激突するのも承知で獣型に変身すると鳥の爪でその二刀を受け止める。

 

「でけぇ鳥だな。だが、切れ無いことはねぇな」

 

「兄様にもらった素晴らしい悪魔の実です。覚悟して下さい」

 

 シオンは爪で二刀を持ち直すと、ギリギリ出来た低空飛行でゾロの元へとガガガガと宮殿の壁と擦り合う音を響かせながら近づいく。その光景は相対する人間によっては恐怖を抱く光景なのだが、ゾロは微塵も恐怖している様子には見えず、目つきを鋭くし、淡々と刀を構える。

 

鳶掛り(とびがかり)!!」

 

「三刀流奥義!三・千・世・界!!!!」

 

 一瞬の内に交差した両者。切られた箇所から血が噴き出て、段々と人間態へと戻っていくシオン。シオンの切られた箇所や、足の辺りに切り傷を負わされ、座り込むゾロ。どちらが勝ったかは目を見るよりも明らかだった。

 

「負けられねぇんだよ」

 

「ハァ、ハァ。私だって負ける訳には」

 

 負けて無いと言いたげに倒れ込んだ体を起こそうとするシオン。だが、そこに宮殿中が濃い霧に包まれていく。

 

「ま、待って下さい兄様!私はまだ勝てます」

 

 シオンの声も霧に包まれ段々と聞こえなくなり、霧が晴れた頃にはシオンの姿はその場から無くなっていた。一時的に立てなくなったゾロはルーファスとカリーナを追っていたチャカに見つけられると、怪我の治療に連れて行かれるのだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 頑張って三刀流の剣士を足止めてくれたシオンを回収して、僕は今、アラバスタ付近の上空を飛んでいた。僕自身の体力の問題とシオンの傷を治療する為に手頃な島を探しているんだけど、いまいち見当たらない。

 

「本当に申し訳ありません兄様。私が勝てなかったあまり、迷惑をかけてしまって」

 

「目的の物は手に入れることが出来たし、シオンはよく頑張ってくれた。今はゆっくりと休んで」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 シオンが疲れのあまり眠ってしまってから少し経った頃にやっと人が住んでいて、そこそこ発展している島を見つけた。そこに降り立ち、医者にシオンの治療を頼んで、カリーナと一緒に医者の家の前で待たしてもらう。

 

「それで、これからどうするおつもりなんですか?」

 

「シオンの回復を待って、近くにある海軍の船を襲おうかなって考えてる」

 

「それ、目的ってあるんですか?」

 

「近々、聖地マリージョアに七武海が集められて、次の七武海の選考や品定めをするらしいんだ。そこで顔を覚えてもらおうかなって思って」

 

 僕の言葉にカリーナは露骨に嫌な顔をした。まぁ、ただの海賊でしか無い僕たちが、世界政府の中心部とも言える場所に行くのは危険極まり無いけど、このままダラダラと懸賞金を上げることに努めても、僕よりも上の人に空いた席を取られてしまうかもしれないから、これくらいの努力はしないと。

 

「そんな恐ろしい話は置いておいて、結局今回盗んだ物はどうだったんですか?あたしあんまり見えなかったんで」

 

「うん。こんな感じで、本当に名前の通り水みたいだよ」

 

 僕は手に持った水の入った瓶を見せる。これがあった場所には厳重な警備がされておらず、この水も見る限りは何の変哲も無いので、厳格そうな警備の人が豪水に触るなと言われなかったら、盗むのも躊躇したぐらいだった。

 

「ウシシ、確かにそうですよね。でも、もしものことも考えてとっておいたらどうですか?」

 

「うーん、そうすることにするよ。何処かで使うタイミングもあるだろうし」

 

 数日経ちシオンの傷もほとんど回復して飛べるようになった頃、聖地マリージョア付近にある海軍本部の永久指針を狙い海軍を船を狙う為、シオンに乗らせてもらって空を飛んだ。

 

「シオン。負担ばかりかけてごめん。僕が飛ぶのが上手く無いからばかりに」

 

「いえ、この力は兄様からもらった物です。兄様にいくら使おうと問題無いです」

 

 本当にみんなには苦労ばかりかけて申し訳……無いな。お返しになるかは分からないけど、帰ったらシオン含めみんなには好きなものを渡していきたいな。

 少し飛んでいると、海軍の軍艦を見つけた。海軍の船なら本部所属の人が乗ってる船が良いんだけど、この船の人の多さは本部の可能性が高いかな。違っても別のを探せば良いんだけなんだけど。

 

「すみません。海軍本部への永久指針が欲しいです。大人しく渡してもらえますか?」

 

 シオンとカリーナに一声かけてから、僕は空から船に向かって飛び降りた。海賊だからと言って、無駄な殺傷をする必要は無いから一応の脅しはかけておく。これで本当に渡してきたら、それはそれで昔は海軍に憧れていた分際としては勝手で申し訳無いけど嫌な気分になる。

 

「いきなり降ってきて、永久指針が欲しいって海軍なめてんのか」

 

「スモーカーさん!この顔……間違いありません。西の海の新星、霧隠れエルドリッチ・ルーファスです!」

 

 スモーカー……彼がそうなのか。クロコダイルを倒したっていう海軍本部の大佐っていうのは。じゃあ、少しだけ我儘になってもいいかな。シオンとカリーナが侵入して盗むまでは時間があるだろうから。

 

「何が目的かは知らねぇがな、海賊なんかに渡すものは何一つは無いんだよ!」

 

 十手を持ったスモーカーさんの手が躊躇も無しに僕の方へ飛んできた。この伸びている間の手は僕と同じ霧なのか?でも、同じ悪魔の実は存在しないはずなんだけどな。

 

「七武海を倒した実力味わせてもらいます!」

 

 スモーカーさんとの戦いは久々に僕への良い経験になるだろうと心を躍らせて、僕は能力を出す準備をする。

 




ジャンプ本誌で新情報がほぼ毎週更新されるので楽しみが増しつつ、この小説と矛盾する設定が出ないか怯える日々。
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